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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年11月10日

高校選手権東京B準決勝 実践学園×保善@西が丘

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1109nishigaoka1.jpg2年ぶりの覇権奪還を狙う高尾の野武士軍団に挑むのは、10年ぶりの聖地登場に意気上がる都心の男子校。実践学園と保善の激突は言うまでもなく西が丘です。
夏も冬も東京を制したのは2年前。雌伏の1年を経て、再び西が丘の舞台に帰ってきた実践学園。今シーズンはここまでトーナメントコンペティションこそ関東大会予選は都立東久留米総合に、インターハイ予選は成立学園に早期敗退へ追い込まれたものの、シーズンを通じての実力が問われるT1リーグでは、堂々たる東京初制覇を達成。「どっちかと言うと今年のメンバーはキツいだろうと、彼ら本人も思っていたと思うけど、それが今まで獲ったことのないタイトルを獲れちゃうくらいになったというのは単純に彼らが凄いなと。逆に教えられることが多いし、別に能力があるから勝てる訳じゃなくて、取り組みとか謙虚さとかが大事だと改めて教わった」と話すのは野口幸司コーチ。"心で勝負"の伝統を胸に、立ちはだかるあと2つへ挑みます。
最後に西が丘まで勝ち上がってきたのは10年前。ここ4年はベスト16の壁が立ち塞がり、上位進出を阻まれてきた保善。それでも迎えた今大会はかえつ有明と日大豊山を共に1点差で退けると、優勝候補の一角と目されていた成立学園に競り勝った東京朝鮮にも、やはり1点差できっちり勝利してベスト4まで。過去2回挑戦していずれも跳ね返された西が丘での1勝を部員132人全員で狙います。朝方には降っていた雨も止み、昨日の寒さとは打って変わって、気温も20.0度と観戦者にも絶好のコンディション。ファイナルへの最終関門は保善のキックオフでスタートしました。


3分のファーストチャンスは実践。左から新井直人(3年・FC渋谷)が蹴ったFKに、高橋龍世(3年・FC多摩)が頭で突っ込むもここはオフサイドの判定。4分のファーストシュートは保善。左サイドで細かくパスを繋ぎ、ドイスボランチの一角を占める渡部司(3年・FC CRECER)の左足ボレーはゴール左へ外れましたが、まずはお互いに攻撃的な姿勢を打ち出し合います。
「こっちが思うほど緊張感はなかったかな」と野口コーチも振り返った実践は、ゲームキャプテンを務める渡辺東史也(3年・八王子由井中)も「最初は良い入りというか、自分たちのペースで入れた」と話した通り、上回った前へのパワーで攻勢に。8分には相手のバックパスをGKがクリアミスすると、小池将史(3年・北区赤羽岩淵中)がチェイスしてあわやというシーンを。直後の左CKを渡辺が蹴ると、その流れから橋本康平(3年・東京SレイエスFC)のピンポイントクロスを、渡辺が合わせたヘディングは保善のGK内堀智裕(2年・Forza'02)が正面でキャッチ。9分にも左サイドから須田皓太(3年・JACPA東京FC)が完璧な折り返しを送り、黒石川瑛(2年・AZ'86東京青梅)のシュートはDFに当たってわずかに枠の左へ逸れましたが、続けて創り出した決定的なシーン。
さて、2度のピンチを凌いだ保善も11分にチャンスが。渡部が最終ラインの裏へ浮き球を落とし、CFの吉楽徳馬(3年・JACPA東京FC)が抜け出しかけるも、戻った新井が何とかブロック。その右CKを10番の舟越裕哉(3年・A.N FORTE)が入れると、CBの大野慶彦(3年・あきる野FC)が当てたヘディングは実践のGK柿崎陸(3年・FC.GONA)が丁寧にキャッチ。シュートシーンまでは至りません。
13分も実践。右SBの新井が外にドリブルで流れながら、そのまま枠へ収めたミドルは内堀が弾き、詰めた黒石川の決定的なシュートも内堀がファインセーブで回避。16分も実践。ピッチ中央、ゴールまで約35mの距離から高橋が直接狙った強烈なFKは、ピッチコンディションも考慮して内堀はパンチングで阻止。23分も実践。中央で小池がきっちり落とすと、黒石川のシュートは内堀がしっかりキャッチ。「もっとスペースに蹴れと言っていたけど、逆に彼らの判断で繋げるという所で意外と良いリズムもあった。そういうのは今年のメンバーは自主的に変えられる」と野口監督。少しずつにじり寄る相手のゴール。
ただ、保善も右から小澤和司(3年・武南Jr)、吉楽、荻野智紀(3年・町田鶴川第二中)と並んだ3トップと、その下に位置する舟越へ少しずつボールが入り始め、時折チャンスの芽を創出。27分には左SBの石井拡(2年・JACPA東京FC)が蹴った左FKを、右SBの岡田淳(3年・FC駒沢)がヘディングで残したボールはDFがクリア。28分にも石井の右FKをDFがクリアすると、荻野がボレーで狙ったシュートは枠の左へ。32分にも小澤のパスから吉楽が抜け出しかけ、ここは戻った橋本に体を入れられてボールを失いましたが、大勢が詰め掛けた赤い応援席を沸かせ始めます。
すると、35分に実践に訪れた絶好の先制機。左サイドを細かいパスワークで崩すと、エリア内まで侵入した百瀬隆平(3年・JACPA東京FC)はDFともつれて転倒。ホイッスルを吹いた主審はペナルティスポットを指し示します。キッカーは左腕に腕章を巻いた渡辺。「ピッチ上の監督はアイツ」と野口コーチも信頼を口にする渡辺のチョイスは、「野口コーチに『真ん中蹴ってみ』と言われていて、『外したら俺のせいだ』と言われていたので、最初から決めていましたし、落ち着いて蹴れました」というど真ん中へのチップキック。ゆっくりと蹴ったボールは、ゆっくりとゴールネットへ吸い込まれます。強心臓ぶりを発揮した渡辺の華麗な先制ゴール。実践が1点のアドバンテージを手にしました。
折れなかった保善の反発力。40+1分、ボランチの細野大樹(3年・FC CRECER)が右へ展開すると、ボールを受けた岡田はドリブルスタート。少し運んで相手のプレスが弱いと見るや、まだゴールまで25mはある位置から右足一閃。糸を引くような軌道を残し、ボールはゴール左スミへ一直線に突き刺さります。「アレはシュートが凄かった」(野口コーチ)「あのゴールは相手を褒めるべき」(渡辺)と実践サイドも認めざるを得ない右SBのゴラッソが飛び出し、1本目の枠内シュートで保善がスコアを振り出しに戻して、最初の40分間は終了しました。


嫌な形でハーフタイムを迎えることとなった実践。それでも、「ゴールはやられたけど全然悪くはなかったので、自分たちで切り替えて、後半の最初で勝負を決めようと話していた」と渡辺が話せば、「アレはシュートが凄かったから逆に忘れていいと。ただ、その前にいくつか声を出してやっていればダブらないでマイボールにできたとか、簡単にかわされているとか、そういう所から綻んであのシュートまで行ったから、ゴールはもう忘れるしかないけど、そういう守備の徹底はしっかりしようという所」を強調したと野口コーチ。後半はスタートから黒石川に替えて横溝聖太郎(3年・FC杉野)をボランチへ投入し、杉山が前線へ、須田が右SHへそれぞれスライドして、残された40分間に向かいます。
実った交替策。43分、新井が左から蹴ったFKはファーでフリーになっていた横溝へ。素早く放ったシュートは、内堀が驚異的な反応を見せて足で掻き出しましたが、ルーズボールを橋本がそのままクロスへ変えると、ファーに残っていた横溝は頭でゴール右スミへボールを流し込みます。「アレは采配というか偶然かな」と笑ったのは野口コーチですが、投入したばかりの横溝がいきなり目に見える結果を叩き出し、実践が再び1点のリードを奪いました。
またも追い掛ける展開となった保善。43分にはゴール前へ入れたボールに吉楽が飛び込むと、GKとDFともつれて混戦に。こぼれを狙った舟越のシュートがDFにブロックされると、以降はなかなか前へとボールを運べず。51分に杉山が高い位置で粘ってわずかに枠の右へ外れるシュートを放つと、直後の52分には1人目の交替を。細野を下げて安斎司(3年・FC KASUKABE)をそのままボランチへ送り込み、整える中盤のバランス。
54分も実践。橋本の右FKが中央にこぼれ、混戦の中で粘った高橋はシュートを打ち切れず、間一髪で内堀がキャッチ。55分も実践。橋本の左FKから、新井が枠へ収めた好シュートは内堀がファインセーブで応酬。56分も実践。橋本の右CKを渡辺が残すと、新井のシュートは枠の左へ。57分も実践。橋本、小池とボールを回し、杉山のミドルは内堀が弾き出し、詰めた小池はゴールネットを揺らすも、ここはオフサイドの判定。「3点目を取ればダメ押しなのに、それでもまだピリッとしない所が落ち着かない」とは野口コーチ。2-1のスコアは変わらず。
59分に決断した保善ベンチ。荻野に替えてCBへ間宮駿人(3年・A.N FORTE)を送り込むと、CBで奮闘していた高橋を最前線へ。その下に右から吉楽、舟越、小澤を並べる布陣にシフトして、勝負に出る姿勢を鮮明に。60分に須田のパスから小池が打ったシュートは、岡田が体でしっかりブロック。61分に百瀬のクサビを小池が落とし、橋本の左クロスを新井がダイレクトで叩いたボレーも枠の右へ。凌いで凌いで狙う乾坤一擲の瞬間。
ところが保善を襲ったアクシデント。64分、相手へのファウルで警告を受けた選手は、9分前にも1枚イエローカードをもらっており、これで退場処分に。1点のビハインドを負った状況にもかかわらず、さらに数的不利のビハインドも被って、残りの15分近くを戦うことになりました。
一気に試合を決めたい実践のラッシュ。65分、新井が左サイドから蹴った鋭いFKは左のポストを直撃し、拾った渡辺のシュートはDFがブロック。68分、橋本が左サイドで縦に出したボールを、小池は冷静に中央へ。フリーで走り込んでいた杉山は、しかしコントロールを失い、シュートは弱く内堀がキャッチ。69分、杉山が左から中央へ優しく送るも、和氣貴也(2年・横河武蔵野FC JY)のシュートは内堀がキャッチ。「あそこで追加点が欲しかったんですけど、ズルズル行ってしまった」と渡辺。守護神の内堀を中心に、大野と高橋克弥(3年・フレンドリー)のCBコンビも必死に耐え続け、2-1のスコアは変わらず。
70分に実践は百瀬と天下谷真一郎(3年・FCトリプレッタJY)を入れ替えると、71分には保善も3人目の交替を。小澤に替わって、ピッチへ駆け出したのは坂本恭平(3年・FC KASUKABE)。74分に新井の左CKを、ファーで合わせた高橋のシュートはクロスバーを叩き、内堀が懸命に飛び付いてキャッチ。75分に右サイドから須田が放ったボレーミドルも枠の右へ。1点差のままでいよいよセミファイナルはラスト5分間とアディショナルタイムへ。
78分は保善。舟越の右CKはGKが弾き切れず、こぼれをDFが懸命にクリア。79分は実践に3人目の交替。和氣と大山友幸(2年・三菱養和巣鴨JY)をスイッチして、中盤の引き締めを。80分は保善。舟越の横パスを安斎は思い切ってミドルに変えるも、柿崎が大事にキャッチ。第4審判が掲げたボードの数字は"3"。180秒間に籠められた両チームの想い。
80+2分は保善。左から石井がFKを蹴ると、この土壇場で実践ディフェンスが仕掛けたのはオフサイドトラップ。結果は成功。潰したピンチの芽。直後にピッチサイドへ登場したのは、「今年のチームは、試合に出ていない中でもアイツがキャプテンとしてチームを引っ張ってきたので、最後は締めてくれという感じ」と野口コーチも話す山下浩二(3年・FC.VIDA)。渡辺もわざわざセンターラインまで走り、キャプテンマークを山下の腕に。そして、その山下も右サイドで確実に時計の針を進めると、主審が吹き鳴らしたのはタイムアップを告げるホイッスル。「最後は集中して全員で声を掛けて守れたので、何とか防ぎ切ったという感じですけど良かったです」と渡辺も安堵の表情を浮かべた実践が、2年ぶりのファイナルへ勝ち進む結果となりました。


これで先月末に優勝を決めたT1と選手権予選との二冠に王手を懸けた実践。「今日は吹奏楽部とダンス部にも来てもらっていたんですけど、ああいうのも初めて。2年前の西が丘はスタンドで応援していたんですけど、あの時から憧れていた舞台なので応援も力になりました」と渡辺が言及したように、独特の雰囲気も味方に付けながら、難しい展開を勝ち切ってとうとう最後の1試合まで辿り着きました。「今年のメンバーがT1で優勝できることが予想外だったけど、それがこうやって決勝まで来れるというのは嬉しいし、どちらかと言えばダメモトというか、当たって砕けろくらいの戦力なので、そういう意味ではここまで伸びてくれたチームが決勝でどれくらいできるのかは楽しみだね」と野口コーチが笑えば、「相手がどっちになろうと自分たちのやることは変わらないので、本当に最後は自分たちの戦い方をして、勝てたら最高だと思います」と渡辺。歴代の中でも屈指の"心で勝負"できるチームが、先輩たちもなし得なかったリーグとトーナメントのダブルに、1週間後の西が丘で堂々と挑みます。        土屋

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