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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年11月09日

高校選手権東京A準決勝 堀越×東京農業大第一@西が丘

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1108nishigaoka2.jpg23年ぶりの全国を狙う古豪と初めての全国を目指す新鋭の対峙。過去2度の優勝経験を持つ実力者に、1次予選から怒涛の6連勝を重ねてきたチャレンジャーが挑む一戦は引き続き西が丘です。
最後に冬の東京王者に輝いたのは実に23年前。近年はあと一歩まで勝ち上がってきながらも、なかなか全国の舞台が遠い堀越。今シーズンは新人戦の地区予選敗退で関東大会予選に出られず、インターハイ予選も1次予選で修徳に屈するなど、トーナメントコンペティションでは結果が出なかったものの、昨年末の昇格決定戦に勝利して掴んだT1リーグの経験は「『こういう時間帯は通じた』『こういう戦い方は通じた』というのは凄く手応えがある」と佐藤実監督も認めた大きな成果に。今大会も準々決勝は2年連続でベスト4へ進出していた東海大菅生を1-0という僅差で破り、この舞台まで駒を進めてきています。
1次予選の初戦が行われたのは8月16日。そこから6回の勝利を1つずつ確実に積み重ね、6年ぶりに西が丘の舞台へ帰ってきた東京農業大第一。新人戦、インターハイ予選と早期敗退を強いられたものの、前者は国士舘、後者は実践学園との対戦と相手に恵まれなかった面も。そもそもこのチームの立ち上げは、昨年の選手権予選でも存在感を見せた正則学園を倒し、T3リーグ制覇を勝ち取った昨年9月の優勝決定戦。1年以上を掛けて磨いてきた実力をこの最後の大会で遺憾なく発揮し、準々決勝では国士館をPKで倒して、新人戦のリベンジも達成。「この1ヶ月は真剣に全国を目指してやってきた」と石川創人ヘッドコーチ。その勢いで東京の頂点を真剣に目指します。スタンドの観衆は気付けば5404人とほとんどフルハウス。ファイナル進出を懸けた第2試合は、13時ちょうどにキックオフを迎えました。


先に細かいパスワークからチャンスを掴んだのは堀越。2分、キャプテンの石上輝(3年・練馬光が丘第二中)を起点に新井真汰(2年・TACサルヴァトーレ)が右へ繋ぎ、北田大祐(2年)の折り返しを叩いた田口雄大(3年・TACサルヴァトーレ)のシュートは枠を外れましたが、いきなりスムーズなアタックを。農大一も7分には平信拓海(3年・目黒東山中)が左サイドからカットインしながらシュートを放つも、DFにブロックされたボールは堀越のGK横山洋(2年・TACサルヴァトーレ)がしっかりキャッチ。「結構きちっとゲームに入れたかなという印象」と佐藤監督も話したように、まずは堀越が勢いを持って立ち上がります。
リズムそのままに迎えた先制点。8分、田口からのボールを受けた石上は「シュートっぽいクロスで入れば良いかなという感じ」と高速クロスをグラウンダーで中へ。GKも懸命に触りましたが、そのこぼれに誰よりも速く反応した湯浅麗士(3年・NOB)がきっちりボールをゴールネットへ押し込みます。「右サイドでスペースを創って抜け出すというのは自分たちの形」と石上も胸を張った狙い通りの形から成果を。堀越が1点のリードを手にしました。
以降もゲームリズムは中野の紫。「農大は真ん中が強いと聞いていた」(石上)こともあって、中盤は右から田口、森田大介(3年・FC府中)、湯浅とトレスボランチ気味に中央を固め、時には石上も後ろに下がって「守備の時は4枚で固めるという形」(石上)を徹底。この布陣を敷いたことで、石川コーチも「ビルドアップから中盤に付けて、中盤で少し時間を創ってというのはウチがずっと目指してきた所なんですけど、そこに相手が人数を掛けてきて、きっちり潰されてしまった」と振り返ったように、農大一は中盤でなかなかタメが生まれず、1トップの浅田拓郎(3年・FC渋谷)とその下に入った板倉将太(3年・多摩鶴牧中)もやや距離感が遠く、ボールが行き来する展開に飲み込まれてしまいます。
20分も堀越。湯浅のパスを受けた田口が股抜きからエリア内へ侵入し、枠へ飛ばしたシュートは農大一のGK森本圭(3年・世田谷松沢中)にファインセーブで阻まれますが、直後のCKを田口が左から蹴り入れると、インスイングで曲がってきたボールはDFを掠めて、そのままゴールネットへ飛び込みます。ここ最近はスタメンを外れることの多かった3年生が、この大舞台でしっかりゴールという結果を叩き出し、点差は2点に広がりました。
続けて繰り出す手数。22分も堀越。ここも右サイドを石上が切り裂き、折り返したボールをダイレクトで合わせた田口のシュートは枠の上へ。26分も堀越。石上が右へ振り分け、北田の折り返しを新井が落とすと、走り込んだ田口のシュートはDFが何とかブロック。34分も堀越。湯浅が右から蹴り入れたCKを、ファーで合わせた石上のヘディングは森本にキャッチされましたが、隠さない3点目への意欲。
ただ、フィニッシュ自体には至らない中でも、「浮き足立たずに腹を割った感じで」(石川コーチ)中澤裕(3年・大豆戸FC)と奥陽寛(2年・FC多摩)のドイスボランチを中心に、ピッチ内で声を掛け合いながらチャンスを窺っていた農大一。ベンチも37分には守備面で奮闘していた牧野裕也(3年・緑山SC)とキャプテンの杉木智大(3年・東京農業大第一中)を1人目の交替としてスイッチすると、40分に生まれた追撃弾。左サイドをSBの黒田祥吏(3年・港区高陵中)が果敢にドリブルで運び、中央へ付けたパスを1トップの浅田拓郎(3年・FC渋谷)が思い切り良く右足で振り抜いたシュートは、少しDFに当たってコースが変わり、ゴールネットを揺らします。農大一が一瞬で上げたギアに対し、「相手の勢いに対してうまく修正できなかった」とは佐藤監督。点差は1点に縮まった格好で、最初の40分間は終了しました。


少し嫌な形でハーフタイムを迎えた堀越。「相手が前に来るのはわかっていたので、逆に前に行って1点取れたら自分たちの流れの試合だなというのは感じていたので、もう1回大きいことをやろうと」石上を中心に話し合い、「相手は点を取りに来るわけだから、そこを逆に利用する」(佐藤監督)スタンスで残された40分間に挑みます。
すると、46分に田口が裏へ落としたパスから、石上が枠の上へ飛ばしたミドルを経て、47分に飛び出した貴重な追加点。ここも右サイドに開いた石上が粘って粘ってクロスを放り込むと、中央で合わせた湯浅のヘディングはGKもよく反応したもののわずかに掻き出せず、そのままラインを越えてゴールの中へ転がり込みます。「元々フリーランニングできるし、ボールも持てる」と指揮官も評した湯浅はこれでドッピエッタ。再び点差は2点に開きました。
畳み掛ける紫。50分に右から湯浅が蹴ったCKはDFのクリアに遭いますが、今度は逆から田口がCKを蹴り入れると、ニアへ全速力で突っ込んだのは3バックの右を任されている東岡信幸(2年・TACサルヴァトーレ)。粘り強い守備に定評のあるCBのヘディングがそのままニアサイドを貫き、ゴールネットへ突き刺さります。「この1週間はコーナーキックの練習をやってきた」(石上)という、その成果が見事スコアに直結。大きな4点目が堀越に記録されました。
一気に点差を広げられてしまった農大一。52分には平信が蹴った左CKもシュートまでは持ち込めず。53分に奥の横パスを冨田優太郎(3年・SC相模原)が巧みにDFラインの背後へ放り、浅田が抜け出しましたが副審のフラッグが上がり、惜しくもオフサイド。直後には「子供たちの方から3枚にして前に上げたいという話があった」と石川コーチが明かしたように、CBの鈴木勇也(2年・FC駒沢)と丸山一樹(2年・FC府中)を入れ替え、最終ラインは冨田、小島順平(2年・大宮ソシオ)、黒田の3バックに移行させ、3-5-2気味の布陣で反撃態勢を整えます。
ところが、次の得点も「トレーニングの中で色々なバリエーションを組んでやっていたので、そこは1つ成長かなという風に思う」と指揮官も認めた堀越のセットプレーから。57分、右から湯浅が入れたCKは中央でこぼれるも、東岡が拾って右へリターン。帰ってきたボールを湯浅は利き足と逆の右足で優しいクロスを上げると、3バックの中央に入った富樫草太(2年・FC町田ゼルビアJY)のヘディングはドンピシャで5点目。ここもトレーニングから選手たちで「盛り上がりながらやっている」(石上)セットプレーの威力を遺憾なく発揮して、さらにリードを広げました。
「ちょっと後ろが重くなっちゃって、トップが孤立しちゃうような状態」(石川コーチ)こそ解消されつつあったものの、セットプレーをモロに食らった格好で4点差を突き付けられた農大一は、60分にも湯浅の右CKから最後は富樫に枠内ヘッドを打たれるも、ここは森本が何とかキャッチ。62分には最前線の杉木が左サイドをえぐり、中央へ上げたクロスは横山が確実にキャッチ。遠い2点目のゴール。
66分に堀越は1人目の交替。右サイドで躍動した北田を下げて、秋葉龍星(3年・FC Branco八王子)を送り込むと、72分には富樫と黒澤周平(3年・八王子FC)も入れ替え、残り10分間のゲームクローズを3年生に。73分には安定の守備力を見せていた鳥塚裕仁(2年・板橋桜川中)のFKがこぼれ、こちらも中盤で潰し役として機能していた森田のミドルは大きくクロスバーを越えたものの、時計の針を進めるのには十分なチャレンジ。75分にも吉田碧橙(3年・FC Consorte)、石上、吉田とボールが回り、田口のシュートは枠の左へ外れるも、着々と近付いてくる勝利の瞬間。
76分に農大一は小田原就(3年・大宮ソシオ)を、77分に堀越は橋本拓巳(3年・FC府中)をそれぞれ送り込み、アディショナルタイムは3分間。80+1分には農大一が中村亮介(1年・東京農業大第一中)を、堀越が鶴田一真(3年・FC府中)を投入し、堀越はピッチ上に9人の3年生が。そして80分間に付け加えられた3分間も過ぎ去ると、西が丘を切り裂いたファイナルホイッスル。「うまくもないし、何か特別なことができる子がいるわけじゃないし、じゃあ何をするのかと言ったら、地道にひたむきにやることが大事で、自分のできる範囲をキチッとやりましょうということは言いました」と佐藤監督も話した堀越が、22年ぶりとなるファイナルへと勝ち上がる結果となりました。


「今年のチームが始まった時にここまで来れると思っていなかった」と石上も素直に話した堀越は、前述したように何と22年ぶりとなるファイナル進出。そんな中、実は同校のOBでもある佐藤監督は、その22年前に1年生のサッカー部員としてスタンドから声援を送っていたそうです。「堀越が活躍するようになるのを小学校時代に見て、『ああ、こういうチームって本当に凄いな。良いチームだな』と思って入らせてもらった」という母校と共に、23年ぶりの全国を懸けて戦うファイナル。その指揮官も信頼を寄せる石上は、「選手権に行くのは小さい頃からの夢だったので、そのために堀越に来ましたし、何としても勝ちたい」とキッパリ。あと1つの勝利を手繰り寄せるべく、1週間後の西が丘決戦に臨みます。
最後は大差でのラストゲームになってしまったものの、1次予選から西が丘の舞台まで堂々と駆け抜けてきた農大一。例年はインターハイで引退するのが通例の3年生も、今年は全員がこの選手権予選まで残って日々練習に励んできました。「途中の3バックへの変更も中から出てきたことなので、堀越さんはボトムアップでやられているということで、ウチはどうなんだろうと考えた時に、私からも色々なことを落とし込めたし、生徒からも私に対して言ってこれる関係を創れたという意味では、3年生には逞しくなったなと感謝しています」と話す石川コーチも選手を前に挨拶した際には涙ぐむ一幕も。「僕らは本当に文武両道を目指していて、今週もみんな模試とか受けていますし、これからセンター試験も控えている。西が丘を目標にやってきたチームなので、ここまでは素晴らしかったと。次は個々の目標もしっかり達成できるようにサポートしていきたいなと思いますし、それが本当に終わって、勉強もやり切った時点で3年生とは良い笑顔で握手をしたいと思います」と最後は笑顔を見せた情熱溢れるコーチの下、真夏の初戦から数えて7試合の選手権予選を戦い抜いた農大一イレブンの今後にエールを送りたいと思います。     土屋

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