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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年11月08日

高校選手権東京A準決勝 都立三鷹×修徳@西が丘

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1108nishigaoka1.jpg蝉の鳴く真夏から繰り広げられてきた東京の選手権予選もいよいよ大詰め。310校の中からわずかに8校のみが立つことを許される夢舞台は「ずっと目標にしてきた西が丘」(都立三鷹・巽健・3年・SC相模原)です。
一昨年は後半アディショナルタイムに同点ゴールを浴び、延長戦の末に敗退。昨年は後半アディショナルタイムに決勝ゴールを許し、降りしきる雨の中で敗退。2年続けて土壇場での失点を喫し、選手権予選に別れを告げられてきた都立三鷹。迎えた今大会は2回戦で激突した昨年ベスト4の東京実業を1点差で退けると、準々決勝では優勝候補筆頭の呼び声も高かった駒澤大学高相手に巽のゴールで先制し、後半アディショナルタイムにゴールネットを揺らされたシーンもオフサイドで切り抜け、呪縛からも解き放たれた格好でこの舞台まで。「西が丘を目標にずっとやってきたけど、これからが本当の勝負」とは堀田将弘(3年・FC.GIUSTI世田谷)。7年ぶりのファイナルと、その先を明確に視界へ捉えています。
対するは現在東京2連覇中。昨年は全国ベスト8まで駆け上がり、一躍全国からも注目される存在となった修徳。ただ、「今まではうまくいかないことばかりだった」とキャプテンの小野寺湧紀(3年・荒川第五中)が振り返ったように、今年はリーグ戦もトーナメントコンペティションもなかなか芳しい結果が残せず、苦しいシーズンに。それでも過去2年間負けのない選手権予選は、PK戦までもつれ込んだ都立大泉との初戦を何とかモノにすると、準々決勝の関東第一戦は終了間際に小野寺が決勝ゴールを叩き込み、堂々たるベスト4進出を。「去年も最初の方はうまく行っていない時期もあったので、いつかは自分たちもああいう風になれると信じて毎日練習に取り組んできた」とはストライカーの雪江悠人(3年・三郷JY)。3連覇へ向けて間違いなくチームは上昇気流に乗っています。雨の予報も出ている東京は鈍色の空。気温11.0度と冬の訪れを感じるコンディションの下、修徳のキックオフでセミファイナルは幕を開けました。


ファーストシュートは修徳。キックオフのボールを小野寺が短く出すと、雪江は45mロングを枠の左へ。おなじみのキックオフシュートでゲームに入ると、2分にも許享文(3年・修徳中)が左へ振り分け、和田裕太(2年・三郷JY)のクロスは雪江の目前で三鷹のGK武田啓介(3年・東村山第二中)がパンチングで回避しましたが、鋭いサイドアタックを。三鷹も3分には左サイドでルーズボールを拾った巽が、クロスバーを大きく越えるミドルにトライ。お互いにやり合う姿勢を鮮明に打ち出します。
すると、先にスコアを動かしたのは都立の星。5分、右サイドの高い位置でボールを拾った巽は、「シュートで終わろうと思って」ミドルを放つと、「ミスキックだと思った」と自ら振り返ったボールはゆっくりとゴール左スミへ吸い込まれます。キャプテンマークを託された巽は、これで1回戦から数えて圧巻の4戦連発。早くも三鷹が1点のリードを手にしました。
6分にも堀田の縦パスから、こぼれを河内健哉(3年・FC駒沢)がボレーで狙い、ここは修徳のGK久保井寿(2年・クリアージュFC)にキャッチされたものの、惜しいシーンを迎えた三鷹でしたが、徐々にサイドを中心に押し込み始めたのは前回王者。12分には右から小野寺がショートコーナーを選択し、石原海(2年・ジェファFC)のリターンを小野寺が蹴り入れたクロスは、三鷹のボランチ田嶋優也(3年・昭島瑞雲中)がきっちりクリア。15分には石原が右へ送り、上がってきたSBの田原迫隼人(3年・Forza'02)のクロスに、左SBの中村大志(2年・ジェファFC)が飛び込むもわずかに合わず。16分にも小野寺のパスを受けた田原迫のクロスは、高く上がってクロスバーにヒット。「修徳はトーナメントに強いというのもわかっていたし、同じサッカーになるというのもわかっていた」とは堀田。エンジンの掛かり出した修徳。
19分も修徳。田原迫が左へサイドチェンジを通し、和田が上げ切ったクロスは三鷹のCB金澤宏樹(3年・府ロクJY)が確実にクリア。直後も修徳。田原迫のシンプルなフィードから、抜け出した雪江のボレーはヒットせず。23分も修徳。足達広大(3年・レジスタFC)のフィードを雪江が収め、小野寺、雪江と繋ぎ、小澤翔(2年・荒川南千住第二中)が放ったミドルはクロスバーの上へ外れるも、サイドアタックを繰り出して狙う同点弾。
ところが、次に歓喜の瞬間を享受したのも三鷹。26分、中盤から堀田が左のハイサイドへフィードを送り、収めた巽はマーカーを振り切って右足でクロス。ここへ走り込んだ河内がGKより一瞬早く頭で触ると、ボールはゴールネットへ弾み込みます。「最初はそんなに緊張しなかったんですけど、楽しもうというのはみんなで言っていた」とは堀田。やや押し込まれる中でも"楽しむ"マインドをピッチで共有していた三鷹が、前半で2点のリードを奪いました。
小さくないビハインドを背負い、「最初の2点はずっと言い続けてきたこと」と岩本監督も話した修徳は、2失点目の直後から降り出した雨の中で何とか反撃を。28分には小澤が右へ展開し、田原迫のアーリークロスに小野寺が飛び込むも、薄く頭に当たったボールは枠の左へ。34分には三鷹も右SBの傳川祐真(3年・東村山第七中)が、ゴールまで35m強の位置から意外な直接FKを枠の左へ打ち込むも、36分は再び修徳。小野寺が左へパスを流し、和田の丁寧なクロスは三鷹のエアバトラー湯浅辰哉(3年・プロメテウス)が高い打点で大きくクリア。三鷹が2点のアドバンテージを握ったまま、最初の40分間は終了しました。


後半はスタートから動いた岩本監督。「2点取られたから行くしかない」と石原海と宮腰一生(3年・江東大島西中)を入れ替え、CBの河野哲志(3年・ナサロット)を最前線へ、最前線の雪江が右SHへ、左SHの和田が左SBへ、左SBの中村がCBへ、それぞれスライド。宮腰は左のSHへ配され、残された40分間で逆転を狙います。
44分は修徳。左から雪江が得意のロングスローを投げ込み、金澤が懸命にクリアしたボールはわずかにゴール左へ。直後の左CKを小野寺は鋭く放り込み、ここは武田がフィステングで応酬。47分は三鷹。堀田のパスから河内が右サイドをゴリゴリ運び、上げ切ったクロスへ飛び込んだ長島潤也(3年・渋谷広尾中)のボレーはヒットせず。48分も三鷹。左SBの安田航(3年・FC.GIUSTI世田谷)がドリブルで持ち出し、長島の左クロスはファーへ流れ、拾った平光太一(3年・FC.GIUSTI世田谷)のシュートは和田が体でブロック。ゲームリズムに大きな変化なし。
岩本監督は50分に2枚目の交替を決断。ボランチの小澤を下げて、186センチの長身FW堀川颯(3年・バリエンテオンセ)を送り込み、河野とのダブルハイタワーで勝負に。51分には宮腰が右からFKを、56分にも小野寺が左からFKを放り込むも、共にシュートには至らず。58分と59分にはいずれも宮腰が決定機に繋がりそうなスルーパスをラインの裏へ蹴り入れましたが、ここはいずれも武田が抜群の思い切りと飛び出しで完璧なクリア。「後半はドッと来るなという感じはしていた」(佐々木監督)中でも、巽が「駒大戦も東実戦も後半はずっとあんな感じだった」と話したように、湯浅と金澤のCBコンビを中心に途切れない三鷹ディフェンスの集中力。
62分に修徳が切った3枚目のカード。和田と根岸航(1年・ジェファFC)をスイッチすると、「バック3枚にして攻撃に行くしかない」(岩本監督)と最終ラインは田原迫、足達、中村の3バックに移行し、さらなる圧力を前へ。65分には宮腰の左クロスへ、ファーから突っ込んだ河野のヘディングはわずかに枠の右へ。67分には三鷹も湯浅が積極的なインターセプトから35mミドルをゴール右へ。刻々と磨り減っていく残された時間。
ディフェンディングチャンピオンの咆哮は68分。右サイドへの展開から昨年の全国も経験している田原迫がアーリーを放り込み、ファーに潜った宮腰の折り返しを河野と堀川が粘って残すと、至近距離から宮腰が押し込んだボールはゴールネットへ到達します。これが過去2年の選手権予選を無敗で潜り抜けてきた"東京のドイツ"、修徳の底力。たちまち点差は1点に縮まりました。
「ヤバいと思いましたし、正直焦りました」と堀田。修徳のトーナメントコンペティションにおける驚異的な強さは誰もが知る所。72分は修徳。雪江の左ロングスローはDFがクリア。73分も修徳。雪江の左ロングスローから、河野が合わせたボレーは湯浅が体でブロック。73分も修徳。雪江の左ロングスローから、宮腰が頭で狙ったシュートはクロスバーの上へ。76分は修徳の決定機。雪江が裏へ送ったボールに堀川が抜け出すも、湯浅が間一髪のタイミングでスライディングを繰り出し、何とかスローインへ。「前に大きい選手が3人くらい出て来て、競り負けていたので結構苦しかった」と巽。いよいよセミファイナルは最終盤へ。
78分も修徳。田原迫の右FKを堀川が高い打点で打ち下ろすも、副審のフラッグが上がってオフサイドの判定。79分も修徳。小野寺の右FKは絶妙のコースを辿るも、雪江と河野が重なってしまい、ボールはゴール右へ。80分も修徳。宮腰、小野寺と繋いだボールを堀川はシュートまで持ち込めず、ルーズを宮腰が打ち切るも、2人の三鷹ディフェンスが飛び込み、きっちりシュートブロック。「ここでやられたら意味がないと思っていたので、チームみんなで中で声を掛け合っていた」と堀田。掲示されたアディショナルタイムは4分。
80+2分も修徳。小野寺のパスから右サイドをぶち抜いた雪江のシュートは、全力で戻った堀田が体に当ててブロック。直後のCKを小野寺が蹴ると、ドンピシャで当てた足達のヘディングは、しかし武田が正面でキャッチ。80+3分も修徳。田原迫の右アーリーを雪江が頭で落とし、宮腰が抜け出しかけましたが、ここも武田が大事に大事にキャッチ。「駒大戦もそうでしたけど、ハッキリやるしかないし、中途半端だとまた拾われて危ないので、大きくやろうと言っていました」と巽。修徳にとっては速過ぎる、三鷹にとっては遅過ぎる時計の進度。
80+5分も修徳。左から雪江が放った渾身のロングスローは傳川が必死にクリア。80+6分も修徳。左から小野寺が蹴ったCKを武田がパンチングで弾き出すと、素早く反応した中村はヘディングを枠内へ。ゴール方向へ向かったボールは、しかしカバーに入っていた田嶋がほとんどライン上で掻き出し、直後に西が丘へ鳴り響いたのはタイムアップのホイッスル。「この結果は驚きです。やっぱり子供たちの力は凄いなというだけですね」と佐々木監督も自らの教え子を賞賛した三鷹が、駒澤大学高に続いて難敵を撃破し、7年ぶりとなるファイナルへと駒を進める結果となりました。


「最後のあれくらい最初からやれば結果は違ったけど、結局普段のことが出るからね」と岩本監督も振り返った修徳は、これで選手権予選は3年ぶりの黒星。「プレッシャーはありましたね」と準々決勝後にキャプテンの小野寺が話していたように、今年のチームはこの2年間のチームとどうしても比較されることが多く、難しい1年間を過ごしてきたことは間違いありません。それでも、ここまでTリーグや各種トーナメントコンペティションを含めてなかなか結果を出せなかった中、最後の大会は苦しい試合を粘り強く制して、西が丘まで帰還したことは大きな勲章。修徳の選手たちには、この結果に是非胸を張って欲しいと思います。
「ここまで来るとも思わなかったので、もう本当に楽しもうと」(佐々木監督)西が丘での一戦に臨んだ三鷹。後半は1点差まで追い上げられ、非常に苦しい時間を強いられましたが、「駒大戦も1点差で抑えたので、失点した後も今回もしっかり1点差で抑えようと話していました」と巽が話せば、「最後の10分とかずっと攻められていたんですけど、最後まで集中を切らさないようにできたので、そこは成長できた部分かなと思います」と堀田。その守備の集中力を「応援が力になるというのは、こういうことなのかなと思いました」と堀田も言及した大応援団が後押しして、セミファイナルという難関を見事に突破してみせました。東京を制するために残された試合は、もはやわずかに1試合のみ。「西が丘が目標だったんですけど、ここまで来れたので絶対にしっかりあと1つ勝って、全国に行きたいと思います」と力強く語ったのはキャプテンの巽。土のグラウンドで日々研鑽を積んできた都立校にとって、7年ぶりの戴冠はもうすぐそこまで迫っています。     土屋

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