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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年11月19日

キリンチャレンジカップ2014 日本×オーストラリア@長居

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1118nagai.jpg王国でのワールドカップも経験した2014年の日本代表ラストマッチ。おそらくはアジアの覇権を懸けて争うことになるサッカールーズとのホームゲームは、大阪・ヤンマースタジアム長居です。
10月までの4試合はブラジル相手の完敗を含む1勝1分け2敗(※記録上は引き分けたベネズエラ戦が勝利扱いに)。なかなか結果という意味での芳しい数字は残らなかったものの、「ブラジル戦までは我々にとって有用な試合で、たくさんの選手を見ることができた」と自ら認めたように、いわゆるワールドカップメンバー以外の選手の実力はきっちり見極めた感のあるハビエル・アギーレ。遠藤保仁、長谷部誠、吉田麻也、内田篤人とザックジャパンを支えた選手たちも戦列に復帰し、迎えた豊田でのホンジュラス戦は6ゴールで完勝。「勝たないといけない大会だと言い続けている」(アギーレ監督)アジアカップに向けて、試金石とも言うべき難敵のオーストラリア戦をホームに迎えます。
対するオーストラリアは、チリ、スペイン、オランダという"死のグループ"に組み込まれたワールドカップのグループステージ敗退後も、昨年10月に就任したアンジェ・ポステコグルー監督がそのまま続投。ただ、1月に開幕するアジアカップは地元開催ということもあって、大会初制覇はマストの目標。「ワールドカップに出場した選手以外にも有能な若手が出てきているので、チーム内でスタメンを巡る競争が非常に激しくなっている」とは指揮官。今回来日した顔触れにもワールドカップでメンバー外だった選手が約半数近く含まれており、やはり年内ラストゲームを勝利という結果でポジティブに締め括りたい所です。この日の長居に集まったサポーターは46312人。両国の国歌斉唱を経て、アジア注目の一戦はオーストラリアのキックオフでスタートしました。


ファーストシュートはオーストラリア。開始33秒、CFに入ったマシュー・レッキーのパスから、ジェームズ・トロイージが思い切ったミドル。ボールはゴール左へ外れましたが、まずは3トップに入った2人の連携で先制への意欲を明確に。6分にもやはりトロイージとレッキーのコンビネーションからCKを獲得すると、トロイージが左から蹴ったボールはこぼれ、シュートまでは繋がらなかったものの、悪くない形でゲームに入ります。
さて、以降も立ち上がりの15分におけるボール支配率で61.1%という数字を叩き出したように、ボールをきっちり繋いでいくのはアウェイチーム。「ロングボールを全然蹴ってこなかったし、中盤にもボールを扱える選手が多くいて、後ろもビルドアップをトライしようとしているのは感じた」と吉田が話し、「今までのサッカーとは全然違うし、繋ぎも上手かったし、個人の仕掛けも良かった。蹴ってくると思っていたので驚きましたね」とベンチで見ていた今野泰幸も同調したように、アレックス・ウィルキンソンとトレント・セインズフリーで組むCBはもちろん、GKのマット・ライアンも頻繁に使いながら、丁寧なビルドアップを。左右にボールを動かしながら、窺う一瞬のタイミング。
ただ、「前半の前半はゲームを完全にコントロールしていた」とポステコグルー監督が語った中でも、先に決定機に近い形を創ったのは日本。16分、ルーズボールを拾った遠藤が左へ展開すると、スタメン起用されたSBの太田宏介は得意のクロスを鋭く中へ。飛び込んだ武藤嘉紀のヘディングはライアンがわずかに触り、クロスバーにヒット。結果的には武藤が飛び出しの時点でオフサイドでしたが、「宏介くんが良いボールを上げるのは知っているので」と武藤も話したFC東京のホットラインで、あわやというシーンを創出します。
17分はオーストラリアにビッグチャンス。右サイドからロビー・クルーズが好クロスを上げると、中央でフリーになったレッキーのヘディングは枠内を急襲。ここは川島永嗣がきっちり弾き出しましたが、日本から見ればややルーズな対応を突かれた格好に。18分にも本田圭佑のイージーなパスミスをマッシモ・ルオンゴがかっさらい、エリア内まで入りながらシュートへは持ち込めなかったものの、このワンシーンに象徴されるようにボールアプローチで上回ったのもオーストラリア。「前半は相手がかなり強いプレッシャーを掛けてきたので、あまり繋ぐことができなかった」とアギーレ監督。取り戻せないゲームリズム。
20分には日本に狙いの1つが。最終ラインでボールを持った森重真人は、シンプルなフィードを右の裏へ。既に走り出していた酒井高徳にはわずかに届かず、飛び出したライアンがヘディングでクリアしましたが、狙えるタイミングでは縦へという意識が表出したワンシーンに。25分には酒井の横パスから本田が枠内ミドルを放ち、少しずつチャンスは創り始めるも、30分には香川の横パスが相手に渡ってしまい、オーストラリアのカウンター発動。ルオンゴが右へ振り分け、クルーズがグラウンダーで狙ったクロスはトロイージに届かなかったものの、全体の歯車はなかなか噛み合いません。
「ハセさんになるべく真ん中にいてくれという話はしましたけど、1人で相手の2人はカバーできなくなっていたので、その時には中盤を厚くするという話をしていた」(吉田)中で、「もちろん相手のプレーによる部分もあり、こちらが快適にプレーできていなかった部分もある」と見ていたアギーレ監督の決断は35分過ぎ。長谷部をアンカーに置いて、その前に遠藤と香川を並べる中盤の逆三角形を、香川を頂点にした正三角形にシフトして、システムを4-2-3-1へ変更。実際にはルオンゴとマッカイもそこまで効果的に長谷部の両脇を使えていた訳ではなかったと思いますが、「持ち場を離れてプレスに行くのでバランスも崩れやすくなるし、そこで潰せなかった時に逆の所にボールを出されると苦しくなるなと思っていた」と吉田も話した、CBと中盤の連動という部分と、長谷部が低い位置でプレスの標的になっていたこともあって、中盤が完全にマッチアップする形へ移行します。
その効果は先に攻撃面で。39分、遠藤の縦パスをバイタルに潜って受けた香川は素早いターンから右へ。本田が懸命に伸ばした右足の折り返しはライアンがキャッチしますが、中盤の縦関係が1つのチャンスに。40分にも川島のキックを拾った香川は、本田のリターンスルーパスから右のハイサイドへ侵入。折り返しはミレ・イェディナクにクリアされるも、守備でも基本的にはアンカーのケア中心に役割が軽減された香川が、積極的にアタックへ絡み出します。
42分はオーストラリア。マッカイのパスから強引にルオンゴが放ったミドルはゴール左へ。43分もオーストラリア。セインズブリーのフィードにレッキーが走るも、読み切っていた川島が飛び出してヘディングでクリア。45+1分は日本のFK。ピッチ中央、ゴールまで約30mの距離から本田が狙ったキックは、ライアンが丁寧にキャッチ。序盤はオーストラリアがポゼッションしながら優位に進め、攻守に役割が明確になった日本が徐々にリズムを取り戻した前半は、スコアレスでハーフタイムへ入りました。


後半はスタートから日本に1人目の交替。遠藤に替わって投入されたのは、これがアギーレジャパン初登場となる今野。「前半はやりにくそうだったし、かなり押し込まれてペナルティエリアにも入られていたし、かなり相手のレベルが高いなって思っていた」という今野はそのままドイスボランチの一角に送り込まれ、4-2-3-1は継続したままで残りの45分間に臨みます。
48分はオーストラリア。右サイドからクルーズが上げたクロスをレッキーがファーで折り返し、ルオンゴはシュートまで至らなかったものの、いわゆるオーストラリア"らしい"空中戦の一端が。49分には右サイドのスローインから、クルーズがカットインしながら大きくクロスバーを越えるミドルを。後半もまずはオーストラリアに手数と勢いが。
輝いた15番。50分、相手の縦パスへ猛然と寄せた今野は、ボールを強奪するとそのまま左サイドをドリブルで運んで中へ。少しコントロールにもたついたものの、マーカーをずらした香川のシュートはライアンが正面で弾き、リバウンドは詰めた武藤の頭上を越えてしまいましたが、今野の強さが生きた格好で流れの中から最初の決定機を創出すると、52分にも岡崎がボックスでヘディングを枠内へ。ここもライアンがファインセーブで掻き出すも、「後半は初めからスペースができ始めて、相手も落ちてきた」と武藤も振り返った通り、ゲームリズムはホームチームへ。
アギーレ監督も57分には武藤を下げて、ホンジュラス戦で2ゴールを挙げた乾貴士を送り込むと、2分後にはその乾に絶好の先制機が。うまくボールを受けた今野が右へ展開し、酒井のクロスはピンポイントでファーサイドへ。フリーで飛び込んだ乾のヘディングは枠を捉えられず、本人も周囲も頭を抱えましたが、61分にも右サイドで本田、酒井と繋いだ流れから、乾のシュートはDFがブロック。すぐに流れに乗った乾も躍動し、前半の形勢は完全に反転。
すると、歓喜の中心に躍り出たのは「正直試合には出られないと思っていた」という31歳。62分、本田が右から蹴ったCKはゴール前の密集を抜けると、ファーサイドには「フラフラしていたら」まったくのフリーになっていた今野。ヘディングで押し込んだボールは、ライアンの頭上を破ってゴールネットへ飛び込みます。「僕は途中から入ってマークもいなかったし、運が良かったですね」とは本人ですが、代表通算2ゴール目を挙げた男に対してはフィールドプレーヤーのほぼ全員が手荒い祝福。伏兵の意外な先制弾で日本が1点のリードを奪いました。
後半の開始15分間はボール支配率が38.7%まで低下し、テンポが上がらない中で失点を献上したオーストラリア。ポステコグルー監督は63分に2枚替え。前半の躍動感が薄れてしまったトロイージとルオンゴを下げて、6月までセレッソ大阪でプレーしていたミッチ・ニコルズと重鎮マーク・ブレシアーノをピッチへ解き放ち、何とか奪い返したいゲームリズム。65分には岡崎のポストから、本田のパスを乾が枠の右へ外したシュートを経て、67分にはブレシアーノを起点にレッキーが右へ。イバン・フラニッチのクロスはDFがクリアしましたが、3度のワールドカップを経験しているベテランがまずは存在感を発揮します。
輝いた9番。相手の横パスを奪った本田のお膳立ても、岡崎のシュートがライアンに阻まれて迎えた左CKは68分。本田のキックはファーまで流れましたが、拾った森重はウィルキンソンの股間を通すウイング顔負けのドリブルで右サイドの局面を打開。そのまま強めにグラウンダーで入れたクロスに、突っ込んだ岡崎は強引なバックヒールを敢行すると、ボールはゆっくりとゴールネットへ転がり込みます。「フォワード陣がみんな点を取っていて、自分もそこの得点レースに乗っかっていきたいと思ったし、ゴールを決めるか決めないかでこれがラストチャンスだと思っていた」と危機感を抱いていたストライカーが見事に結果を。点差は2点に広がりました。
「ゴールを1点許してから、ハーフサイドで一方的に攻撃を仕掛けられるという展開になってしまった」とポステコグルー監督。72分にはここもブレシアーノが起点となって右へ流し、クルーズのクロスはDFがクリアし損ね、マッカイが放ったシュートはしかし森重がきっちりブロック。73分にはマッカイに替えて、過去の日本戦で4ゴールと絶対的な相性の良さを誇るティム・ケイヒルを3枚目のカードとしてピッチへ。75分にもブレシアーノの右CKをウィルキンソンが何とか残すも、川島が冷静にキャッチ。「2ゴール目を入れられた時に『ああ、これはもうちょっと逆転は難しいかもしれない』という雰囲気にチーム全体がなってしまったように感じた」と指揮官も認めた通り、オーストラリアにとっては前半と一変して、難しい時間が続きます。
76分にアギーレ監督が3枚目の交替カードとしてチョイスしたのは豊田陽平。岡崎はここでお役御免。Jリーグの得点ランクトップに立つストライカーに注がれる期待。77分にはキレキレの乾が香川とのワンツーからエリア内へ侵入し、こぼれたボールへ反応した豊田はわずかに届きませんでしたが、フィーリングは上々。82分にも乾が左からスルスル中央へ潜り、酒井が2人の間を割って繋ぐと、本田の浮き球は豊田の頭上へ。ここはマーカーとの競り合いで転倒し、フィニッシュは取れずも可能性を感じさせる"星稜ライン"。
85分も日本。香川が右へ送ったボールを、本田はグラウンダーで折り返すも、中央の豊田とはタイミングが合わず。87分も日本。吉田が鋭い縦パスを正確に通し、ターンしながらマーカーを外した本田の右足シュートは枠の左へ。90分には日本に絶好の追加点機。香川の展開から、酒井が送った右クロスは豊田にドンピシャも、枠へ収めたヘディングはライアンが意地のファインセーブで仁王立ち。11番の代表2ゴール目とはいきません。
宙を舞ったサッカールーズの魂。90+2分、イェディナク、アーロン・ムーイと繋いだボールを、左SBのアジス・ベヒッチはクロスまで。森重と太田の間へ巧みに潜り、相変わらずの高い打点でボールを捉えたケイヒルのヘディングは、確実にゴールネットを揺らします。「それが僕の仕事だからね」と言い切る34歳は、これで対日本戦は5ゴール目。ワールドクラスの一撃でオーストラリアが1点を返すも、試合はそのままタイムアップ。「チームとしては不必要な失点だったし、3点目を取っておけば試合は終わっていたので、その2つは非常にもったいなかったと思う」と吉田は気を引き締めましたが、試合中にきっちり施した修正以降はゲームを支配し続けた日本が、2014年のラストゲームを連勝で飾る結果となりました。


非常に日本にとっては収穫の多い試合だったと思います。まず、ザックジャパン時代にも採用していた4-2-3-1で結果が出たことに関してですが、アギーレ監督はオサスナ、サラゴサ、そしてエスパニョールでもシーズンの基盤を4-2-3-1で戦っていた経験もあり、元々好んで採用していた形であることは間違いありません。さらに、そもそも4年ごとに指揮官が変わることで継続性が失われるという意見があったことを考えれば、アギーレもしっかり前任者からの継続性を生かす形で、チームを創っていく意思があることも証明されました。ただ、それはシステム云々ではなく、個々のコンビネーションの継続性という部分で。実際に岡崎、本田、香川、今野とザックジャパンでも軸になっていた選手たちは当時とポジションを変えており、各々の役割自体にも小さくない変化が。それでも個々の連携という部分はポジションを問わず熟成されてきているのは明白で、あとはその連携を局面局面に落とし込むためのフォーマットを創っているのが現在だと。このチームでは1トップを任されている岡崎も、「元々の基盤はあると思うんですけど、なおかつ速いサッカーも4-1-2-3でやっているので、それが4-2-3-1でも可能になるんじゃないかなと思う」とチームの持つ"幅"について言及。続けて「監督は色々なアドバイスというか、選択肢を言ってくれるけど、やるのは自分たちという所がこのチームの一番の醍醐味というか、選手が良い判断をすれば監督がほめてくれるし、悪い判断をしたら責任を持ってやれみたいな厳しさもある」とも。実際にコンセプトにはめ込む形を今は取っていないため、個人の力量さえあれば新しい選手も入りやすいし、それぞれが今までと違うポジションでもプレーできるというメリットもある中で、「しっかり繋いでプレーすることもできるし、勝たないといけない時のプレーもできるようになった」と指揮官もある程度の手応えを感じているようでした。当然、"ノルマ"が課された大会を就任から約半年で迎えることを考えれば、ここまでの選手起用やチーム創りはごくごく理に適っているもの。ここまでの3ヶ月は「ディフェンディングチャンピオンとしての仕事が待っている」(アギーレ監督)アジアカップに向けて、トータルで振り返ってみても一定の納得が行くチームビルディングだったのではないでしょうか。       土屋

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