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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年10月30日

T1リーグ第18節 成立学園×実践学園@駒沢第2

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1030koma2.jpg戴冠の行方は今シーズンも最終節へ。都内初制覇に向けて"18試合目"に挑む実践学園が最後の最後で対峙するのは、2年連続で夏の全国を経験している成立学園です。
17試合を消化してわずかに1敗。第16節で土が付くまで15戦無敗という素晴らしい数字を叩き出して、ここまでT1リーグの首位を快走し続けてきた実践学園。その敗れた東京朝鮮戦を引きずることなく、その次のFCトリプレッタユース戦は小池将史(3年・北区赤羽岩淵中)のドッピエッタを含む5ゴールを奪っての完勝で、いよいよ戴冠に王手という所まで。「1年間トータルで勝つというのは本当に実力がないとできないこと。このタイトルの意味合いは一番大きいんじゃないかな」とは野口幸司コーチ。引き分け以上が優勝条件ではあるものの、目指すのは90分後の勝利に他なりません。
対するはここまで勝ち点23の5位と、ほぼ来シーズンのT1残留を手中に収めている成立学園。今シーズンはインターハイ予選で2年連続となる全国を経験したものの、信じられない決勝敗退のリベンジを期して臨んだ選手権予選では、難敵の東京朝鮮と延長にもつれこむ熱戦を演じながらも無念の初戦敗退。3年生にとってはこれが正真正銘のゼブラを纏って戦うラストマッチ。目の前で易々と優勝を見せ付けられる訳にはいきません。スタンドには両チームの関係者に加え、少なくないTリーグファンの姿も。東京の覇権を懸けたラストマッチは、成立のキックオフで幕が上がりました。


開始と同時に勢い良く立ち上がったのは、引退試合に燃える3年生がスタメンに10人も名を連ねた成立。3分には右サイドでボールを持った上田悠起(3年・成立ゼブラFC)が得意の左足アウトで縦に出し、開いた上村諒斗(3年・クラブ与野)のクロスをボレーで叩いた平園尚臣(3年・成立ゼブラFC)のシュートはクロスバーを越えましたが、サイドアタックからファーストシュートを放つと、9分にもCBの中村樹生(3年・クリアージュFC)が右へ正確なサイドチェンジを通し、走った吉田将也(3年・成立ゼブラFC)のクロスはDFのクリアに遭ったものの、まずは「自分たちでやり切ろうという話をして」(太田昌宏監督)ピッチへ送り出されたゼブラ軍団が押し込みます。
11分も成立。上田が左へ回し、SBの伊東優介(3年・大津高)が縦へ付けたボールを平園が折り返すと、ファーまで抜けたボールは流れたものの、ここもサイドから完全に崩した形を創出すると、実践ベンチは早くも決断。「中盤でボールを奪えないというのと、前線が2トップでは何回もサイドを変えられるというイメージ」(野口コーチ)を払拭すべく、4-4-2の布陣から3-4-3にシフトして、「前に人数を追わせて、後ろがより方向を限定した中でボールを取れるようなイメージ」(野口コーチ)の共有を図りましたが、14分も成立。平園のパスから伊東が左クロスを上げ切り、町田ジェフリー(1年・浦和レッズJY)のワントラップボレーはDFにブロックされるも、スタメン唯一の1年生が滲ませる勝利への意欲。
ただ、「なかなかハマらなかった時に3バックにするということだったので、後ろが3になるかなとは思っていた」とキャプテンマークを巻いた渡辺東史也(3年・八王子由井中)が話せば、「練習から3バックも結構やって来たので戸惑いはなかった」とは右SBから左CBへスライドした新井直人(3年・FC渋谷)。前線から杉山大周(3年・FC杉野)、小池、百瀬隆平(3年・JACPA東京FC)が追い掛けることで、内田悠磨(3年・東松山ペレーニャ)と中村のCBコンビに、その2人の間に落ちる柴田知樹(3年・成立ゼブラFC)とGKの八木優樹(3年・東急SレイエスFC)も加わり、悠々と後ろからボールを繋いでいた成立のボール回しもやや制限されることに。また、単純に前線に3枚が並んだことで、奪った後の当て所もシンプルに増加。21分には橋本康平(3年・東急SレイエスFC)、杉山、小池とスムーズにパスが回り、百瀬はわずかにシュートまで持ち込めなかったものの、「互角にリズムが取れたかなという感じ」(野口コーチ)まで回復したゲームの趨勢。
「実践の前への迫力だったり、縦への強さにちょっと押し込まれて、ファウルが多くなってという形になってしまった」と太田監督が話した成立はややボールロストが頻発し、頼みの上田にもボールが入らず。30分は実践。渡辺がFKを左へ蹴り分け、橋本のクロスは八木が何とかキャッチ。33分も実践。渡辺の右FKは杉山が競り勝つも、飛び出した八木がキャッチ。34分も実践。左サイドで百瀬が中央へ放り込むと、DFと入れ替わった小池が抜け出し、ここはよく戻った内田が間一髪でクリアしましたが、「我慢していつも通り自分たちのペースが創れた」(渡辺)実践の攻勢は明らか。
36分にはファーストシュート。自ら投げたスローインのリターンを百瀬が左クロス。走り込んだ須田皓太(3年・JACPA東京FC)のヘディングはゴール左へ外れたものの、ようやくシュートを記録。直後にも杉山の落としから小池が枠内ミドルを見舞うと、37分はカウンター発動。杉山が中央を運んで左へラストパスを送り、須田のシュートは体で飛び込んだ中村がブロックするも、続けて繰り出す手数。
38分も実践。渡辺の左CKがクリアされると、拾った百瀬のヘディングから新井が左足で狙ったミドルは枠の右へ。40分も実践。新井が斜めに入れたボールを須田はダイレクトではたき、杉山の目前でDFと八木が凌ぐも、狙いの明確なアタックを。43分は実践の決定機。百瀬を起点に右サイドを抜け出した小池がマイナスに折り返し、フリーで枠に収めた杉山のシュートは吉田がライン上で超ファインクリア。44分も実践。小池のミドルは枠の右へ外れるも、立て続けに訪れる"あと一歩"。
「フィニッシュで手こずるのはいつも通り」と野口コーチも笑ったリズムの破調は、前半終了間際の45+2分。破ったのは「昨日の時点から結構得点はできるんじゃないかなと自分の中では思っていて、チームメイトにも言っていた」という7番。右サイドから橋本が蹴り込んだFKが跳ね返されると、橋本と一緒に立っていたスポットからすぐさまこぼれに反応した新井は左足一閃。弾丸と化したボールは超速で左のサイドネットへ突き刺さります。「アイツはいつかやってくれると思っていたので、『遂に来たか』という感じ。自分のことのように嬉しかった」と渡辺が話せば、「正直入った時はビックリしました」とは新井本人。「やらなきゃとか勝ちたいというのは一番内に秘めている子。後ろをやっても一生懸命やってくれるし、自分が自分がという風にならなくなった精神面の成長はすごく感じるから、ああいう大事な所で決められたのかな」と野口コーチも認めるゴラッソが飛び出し、実践が1点のリードを奪って最初の45分間は終了しました。


ハーフタイムに動いたのはビハインドを負った成立。小池拓斗(3年・武南高)を左SBへ、町田ブライト(3年・鶴ヶ島南中)をFWへそれぞれ送り込み、ブライトとジェフリーで組む町田ブラザーズの2トップにシフトして、「ウチが自分たちでボールをなくしちゃうし、アバウトになっちゃった部分があった」(太田監督)20分以降の反省をフィードバックして、勝負の45分間に臨みます。
後半のファーストシュートも成立。47分、上田の右ロングスローはこぼれ、拾った三角のミドルは枠の右へ外れたものの、同点への意欲満々。48分には実践も中盤でルーズボールを収めた和氣貴也(2年・横河武蔵野FC JY)が左へ展開するも、橋本の鋭いクロスは中と合わず。52分は成立。中央を吉田がドリブルでグングン切り裂き、上村の折り返しは間一髪で実践のCB高橋龍世(3年・FC多摩)がパスカットしましたが、成立も惜しいシーンを続けて生み出します。
それでも、「このままズルズル行くと危ないなと思った」という渡辺の想いはチームの共通認識。55分には橋本の右FKを、横溝聖太郎(3年・FC杉野)が触ったシュートは枠の右へ。57分にも横溝が中盤で引っ掛け、ショートカウンターから3対2の局面で小池が狙ったシュートはGKの正面を突き、思わずベンチも頭を抱えましたが悪くないアタックが。58分にも高橋がトライした左足ミドルは、DFに当たってわずかにクロスバーの上へ。受けずに前へ。実践は前へ。
62分に訪れた2度目の歓喜。相手の長いボールを高橋が頭で弾き返すと、拾った杉山はドリブルスタート。少し運びながらシュートもパスも可能な場面で、「このチームの中では一番テクニックがある」(野口コーチ)14番は迷うことなく前者を選択。強烈なシュートは懸命に反応したGKの手を弾いて、ゴール左スミへ飛び込みます。「今まで彼に足りなかったのはゴールという所で、そのこだわりが出てきている分、ああやってパスも出せたと思うけど、自分で打って決めるというのは成長かなと思う」と野口コーチも評価した杉山が大きな追加点を記録。実践がまた一歩、東京制覇へ近付きました。
64分には中盤で奮闘した和氣と大山友幸(2年・三菱養和巣鴨JY)を入れ替え、中盤のバランス維持に着手した実践。65分にも新井の左FKを須田が頭で残し、杉山が放ったシュートはDFに当たってクロスバーを越えますが、あわや3点目というシーンも。61分に町田ジェフリーと田島大資(3年・東松山ペレーニャ)をスイッチしていた成立は、失点を受けてCBの中村と左SBの小池もポジションチェンジ。すると、67分にはその中村が絶妙の縦パスを送り、上村が迎えたGKとの1対1はクロスバーの上へ外れたものの、一瞬変わった風向き。
駒沢に轟いたゼブラの咆哮。68分、右サイドでボールを受けた上田は渾身のスルーパスを縦へ。走った町田ブライトが丁寧にマイナスへ折り返すと、ここに飛び込んだのはボランチから左SHへスライドしていた三角。大事に蹴り出したボールは、左スミのゴールネットを力強く揺らします。「あのゴールは素晴らしかった」と太田監督も言及した、3年生で崩し切っての綺麗な追撃弾。たちまち点差は1点に縮まりました。
73分に橋本と菊地恭平(2年・青山SC)を入れ替え、大山を最終ラインに落としつつ、ゲームリズムの変化を食い止めに掛かった実践でしたが、「あの1点で相手にリズムが出てきちゃって、その後もウチのバランスが悪かった」と野口コーチ。「前へ出ようと言っていたんですけど、気持ち的にみんなが引いちゃった所があった」と渡辺。74分に八木を下げて湯沢慶(3年・東京ベイFC)を投入するGK同士の交替を経て、76分も成立。上田が右へ展開し、吉田の折り返しから上村が狙ったミドルは枠の右へ。78分には増田稜(3年・成立ゼブラFC)もピッチへ解き放たれ、11人の3年生で狙う同点と逆転。82分にも上田の右CKがゴール前を襲い、実践のGK柿崎陸(3年・FC.GONA)が懸命にパンチングで掻き出すと、渡辺が何とかクリア。実践も84分に3枚目の交替カードとして天下谷真一郎(3年・FCトリプレッタJY)を送り込み、ゲームはいよいよラスト5分間とアディショナルタイムへ。
87分は成立に絶好の同点機。上田が左へ振り分け、中村が上げた最高のクロスを、吉田が左足でジャストミートしたボレーは、しかしクロスバーにハードヒット。「一番危ない所に行くことはいつも心がけているけど、特に苦しくなった時に自分が一番しゃべろうと思っている」と話す渡辺を中心にこれ以上の失点は許したくない実践ディフェンス。90分に百瀬と替わり、ピッチへ全力で駆け出したのは10番を背負う山下浩二(3年・FC.VIDA)。「メンタルが強いのでみんなを前向きにできるパワーがある」と深町公一監督も評したチームキャプテンに託された、戴冠へのゲームクローズ。
90+2分は実践。杉山のパスから飛び出した山下のシュートはDFにブロックされたものの、そのシーンに対するスタンドの異様な盛り上がりを見れば、キャプテンの強烈な影響力は明らか。90+3分は成立。上田のパスから増田が上げたクロスは柿崎が大事にキャッチ。90+3分は実践。天下谷の思い切ったミドルはクロスバーの上へ。90+4分は成立のラストチャンス。上田が蹴った右CKがこぼれ、柴田が叩いたミドルがクロスバーを越えると、しばらくあって駒沢の夜空へ響き渡ったファイナルホイッスル。「普段の練習から良い取り組みがあるので、抜き出た選手はいないですけど、全員の力を合わせてここまでやってこれたのかなと思っています」と渡辺も笑顔を見せた実践が、まさに全員の力を結集した格好で堂々たる東京制覇を達成する結果となりました。


これが3年生にとっては本当のラストゲームだった成立。試合後には涙を流す選手もいましたが、この日の90分間の中でもボールを大事にしながら、局面局面でアイデアを生かしつつ、攻撃的に戦う"成立らしさ"は随所に現れていました。中学時代も含めて6年間近く"ゼブラ"のユニフォームを纏ってきた選手たちも、これでとうとうその"ゼブラ"ともお別れ。ただ、「今年のウチは"ワンハートフットボール"なんで。心を1つにして、仲間のためにサッカーするんだということをみんなに言っている」という太田監督や宮内聡総監督を筆頭に、サッカーを"愉しむ"ことに長けた指導陣と過ごした3年間、あるいは6年間は彼らにとってかけがえのない財産。新たな道へ歩みだす成立の選手たちに大きな拍手と今後へのエールを贈りたいと思います。
「今年のチームは取り組みが良いし、こちらが言ったことを一生懸命謙虚にやる分、こういう成果が出るのかな」と野口コーチも評した実践。その野口コーチが続けて「そこまで期待されていた学年じゃないだけに、どっちかと言うと今年のメンバーはキツいだろうと彼ら本人も思っていたと思うけど、それが今まで獲ったことのないタイトルを獲れちゃうくらいになったというのは、単純に彼らが凄いなと。逆に教えられることが多いし、別に能力があるから勝てる訳じゃなくて、取り組みとか謙虚さとかが大事だと改めて教わった」と話したように、昨年からほとんどレギュラーが入れ替わる中でもリーグ序盤から結果を出し続けてきたのは、「今年のチームは感謝の気持ちだったり、私生活の部分は歴代で一番良いんじゃないかというのは自分でも思っているし、監督もそう言ってくれている」と新井も口にする、日頃から積み重ねてきた"心で勝負"の部分がやはり一番大きかったのかなという印象です。「今年1年は彼らと一緒にやることが楽しいよね。可能性を無限に感じるね」と笑顔を見せたのは野口コーチ。2月からスタートしたT1を制したのは、磨き続けてきた"心"を拠り所にして、昨年や一昨年のチームと比較されて個の実力を不安視されながらも、最後にはその弱みを「どのメンバーが出ても同じ力をコンスタントに出せる」(新井)という強みにまで昇華させた、高尾の野武士集団・実践学園でした。       土屋

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