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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年10月20日

J2第37節 岡山×山形@カンスタ

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1019kanko.jpg勝ち点差2で競り合う6位と8位の直接対決。初めてのJ1を目指す備前のエンジと、J1復帰を虎視眈々と狙う出羽の青白が激突する舞台はKankoスタジアムです。
ここ2年は昇格プレーオフ圏内を明確に捉えたシーズンを送り、間違いなくトップディビジョンをその視界に見据えている岡山。迎えた今シーズンは序盤戦こそ二桁順位での時間が続いたものの、9節の札幌戦で勝利を収めてからは3度の連勝を含む驚異の18試合負けなしを記録し、一気に一桁順位の前半までジャンプアップ。ただ、ここ5試合は3分け2敗とややブレーキ気味で順位も6位まで下降。「どのゲームも大事だが、特に大事なゲームという位置付け」(影山雅永監督)で、再び上昇気流に乗りたいホームゲームに臨みます。
一旦の終焉を迎えたJ1生活はもう3年前。ここ2年はシーズン後半に失速し、続けて10位と難しいシーズンを強いられてきた山形。柏、札幌と2チームを昇格に導いた石﨑信弘監督が16年ぶりにチームへ復帰して挑んだ今シーズンは、一度の連勝もなく中位に甘んじてきたものの、ここへ来てようやく昇格プレーオフ圏内を窺う位置まで浮上。勝利を収めれば順位が入れ替わる可能性のある今日の一戦は、天皇杯でのベスト4進出を追い風にして、絶対に勝ち点3を奪いたい今シーズンのキーゲームです。注目の一戦を見届けようとスタジアムには7826人の観衆が。偶然にも双方のサポーターが入場する選手を迎え入れたのはまったく同じ"Over the Rainbow"。J2全体にとっても重要な90分間は、山形のキックオフで幕が上がりました。


開始早々に煌いた青白の閃光。山形のファーストアタックはディエゴが収めて右へ流し、上がってきた山田拓巳のクロスが鋭く中央へ上がると、飛び込んだ山﨑雅人のヘディングは左スミのゴールネットを揺らします。「本当に理想とした形のゴールじゃないかと思う」と石﨑監督も認めた先制弾は、その時間わずかに開始1分18秒。あっという間にスコアが動きました。
「ホイッスルが鳴ったと同時にハードワークする」(松岡亮輔)山形のギアは上がるばかり。4分にも右に流れた山﨑のパスから松岡が枠内シュートを見舞うと、8分には早くも2度目の歓喜が。最終ラインでボールを持った當間建文がシンプルにフィードを流し込むと、「パッと見たらギャップが空いていたので、良い形で抜けられた」川西翔太は独走。GKとの1対1も冷静に、ゴール右スミへボールを送り届けます。「継続して点が取れていることは良いこと」と語る川西はこれで公式戦3試合連続ゴール。山形のリードは2点に変わりました。
以降も勢いは山形。「中盤でのセカンドボールはほとんど拾われて、それで二次攻撃、三次攻撃をやられていたのでキツかった」とは久々に岡山の左WBを任された久木田紳吾。まずは、「前の3人は凄くプレッシングに行ける」と宮阪政樹も話したように、前から1トップ2シャドーがプレスを掛け、縦に入ったボールのセカンドは宮阪や松岡が殺到して奪取し、そこから縦へ早くという形を徹底。14分にはカウンターから宮阪が左へ振り分け、川西のクロスは岡山のGK中林洋次にキャッチされましたが、この場面も人数的には4対3と、山形の切り替えは実に素早く。最初の15分間でホームチームを圧倒してみせます。
さて、「今日のような立ち上がりになると、余計色々なものが圧し掛かって、自分たちらしさが出せなくなってしまうのかもしれない」と影山監督も振り返った岡山。15分に上田康太が蹴った左CKはDFにクリアされますが、17分には鎌田翔雅の縦パスから澤口雅彦が粘って2人を振り切りながら中へ。押谷祐樹のシュートはヒットしなかったものの、ようやくファーストシュートが。19分にもらしいパスワークからCKを獲得すると、20分にも千明聖典が左へサイドを変えた展開から田所諒が繋ぎ、押谷の枠内ミドルは山形のGK山岸範宏がキャッチするも、少しずつ押谷と清水慎太郎の2シャドーも流れに顔を出し始め、見えてきたチャンスの芽。
ただ、2点のリードを得たことで、落ち着いてゲームを進める山形はしたたかに。25分、後藤圭太のパスミスから川西が左へ付け、立ち上がりから推進力を生んでいたキム・ボムヨンのカットインシュートは、後藤が自ら責任を持ってブロック。その左CKを宮阪が蹴り込むと、突っ込んだ石井秀典が至近距離から放ったシュートはわずかにクロスバーの上へ。31分、右サイドで舩津徹也がスローインを放り、ディエゴのフリックから宮阪が左足で打ち切ったミドルは枠の左へ外れるも、「できるだけ前からプレッシャーを掛けて、高い位置でボールを奪っていく」(石﨑監督)狙いの徹底で明け渡さないゲームリズム。
影山監督の決断は34分。澤口の負傷で試合が止まったタイミングを見て、「久木田は左サイドで生きるかなと思ったが、逆に相手のプレッシャーで苦しむことになったので、久木田も田所も本来に戻してDFラインの安定を図った」と、久木田をここ最近の定位置だった右CBへ、鎌田を左CBへ、田所を左WBへそれぞれスライドして、全体のバランスを整え直します。
38分は山形。中央右寄り、ゴールまで約30mの位置から、宮阪が直接狙ったFKはわずかにクロスバーの上へ。40分も山形。山田のクロスから、ディエゴが右足で叩いたボレーはゴール右へ。43分も山形。キム・ボムヨンの左ロングスローをディエゴが流し、ゴール前に落ちたボールはシュートまで行けずもあわや。45+2分は岡山。久木田のロングフィードから押谷が抜け出し掛けましたが、最後はオフェンスファウルという判定に。「相手の配置が変わったからウチのサッカーが変わるという訳ではなかった」と宮阪も話した山形が、2点のアドバンテージを握ってハーフタイムに入りました。


後半のスタートから選手交替に着手したのは岡山。「立ち上がりの2失点で山形のDFラインが非常に高く、繋ぎながらという彼の良さが徐々に消されてしまった」と影山監督も評したウーゴを下げて、田中奏一を右WBへ投入。その位置にいた澤口が右CBに下がり、久木田はこの日3つ目のポジションとなるCFに移って、残り45分間へのキックオフを迎えます。
46分の好機は山形。右サイドをえぐった山田の右クロスは流れるも、拾ったキム・ボムヨンが残して、宮阪が枠の左へ外れるミドルまで。「後半もファーストプレーでサイドから崩せた」とはその宮阪。「次の点が勝負。後半立ち上がり、もう一回集中していこう」と指揮官に送り出されたアウェイチームの衰えない意欲。
とはいえ、負けられない岡山も手数を。49分、上田、田所、鎌田とボールが回り、上田が右足で狙ったミドルは石井が体を張ってブロックしたものの、持ち前のパス回しからフィニッシュまで。52分にも中盤で巧みに前を向いた千明を起点に、清水慎太郎のミドルがDFに当たったこぼれを、強引にダイレクトで合わせた押谷のボレーはクロスバーを越えるも、明らかに上がったテンポ。53分には上田が右から、田所が左から続けてCKを蹴り入れるなど、ようやくスタンドを沸かせるシーンが増えていきます。
そんな中、相手の選手交替を見て「逆に相手が裏を狙ってくるとハッキリしたし、確実にクリアしてセカンドボールもしっかり拾えていたので全然大丈夫でした」とは宮阪。57分にはサイドで宮阪と山田が粘って残したボールを、川西がクロス気味に入れたシュートはゴール左へ。63分にも宮阪がFKを素早く蹴り出し、川西のスルーパスからディエゴが枠へ飛ばしたシュートは、中林がパンチングで何とか回避。機を見て繰り出すアタックに滲ませる3点目への意志。
「ボールを持ててはいたけど、そんなに打開はできなかった」(久木田)岡山は、69分に上田が蹴った左FKの流れから、田中、田所を経由し、左サイドの押谷が右足で鋭いクロス。ファーへ飛び込んだ後藤はわずかに及ばなかったものの、惜しいシーンを。70分にも久木田がラインの裏へ抜け出し掛けるも、飛び出した山岸がきっちりクリア。73分には清水と久保裕一を入れ替え、前線のパワーを増強すると、78分にも押谷が今度は右サイドから左足で上げたクロスへ久木田が飛び込むも、ヘディングの当たりは薄く、山岸が大事にキャッチ。「点差に余裕があって、だいぶポジショニングとか裏のケアもできていた」(久木田)山形ディフェンスを崩し切れません。
69分に山﨑と伊東俊を入れ替えていた石﨑監督は、79分に2人目の交替を。川西を下げてロメロ・フランクを投入し、「チームとしてやるべきことをとことんやり抜き通す」(山岸)覚悟を一層鮮明に。影山監督も同じ79分に切った最後のカードは荒田智之。こちらもやるべきことは明確。ラスト10分。どちらが"やり抜き通す"か。
83分に記録されたゴールは"3点目"。右サイドを伊東がえぐり切ってクロスを上げると、頭に当てたボールを収めたディエゴはマイナスに中へ。「その前から結構スペースが空いているというのはあって、自分も得点を取れたらなと思っていた」という宮阪は、完璧なトラップから完璧なコントロールショットをゴール右スミへグサリ。「ディエゴともうまく顔があったし、良い所に置けたので流し込むだけだった」とは本人ですが、誰にとっても"流し込むだけ"とは言い切れない距離から繰り出すキック精度はさすがの一言。少し時間は掛かりましたが、石﨑監督も強調した"次の得点"は山形に入りました。
ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ。完成させたのは「彼の良さが随所に出たんじゃないかと思う」と指揮官も賞賛したナンバー10。90+1分、キム・ボムヨンのロングボールへ岡山ディフェンスの対応が曖昧に。ラインと完全に入れ替わり、独走した伊東はGKとの1対1も難なくゴール左スミへ沈めます。「先発の選手だけが選手じゃなくて、サブの選手が入ってどれだけ仕事をするかが大事」という石﨑監督の言葉を体現する伊東が乗せた"ストロベリー"。勝敗の行方は決しました。
わずかに見えた希望の光は90+2分。左サイドに開いた久保のクロスを、中央でトラップした荒田はすかさず左足で押し出すと、ボールはゆっくりとゴール左スミへ飛び込みます。直後にタイムアップの笛は吹かれましたが、「あの苦しい展開から1点取ってくれたというのは、間違いなく次に繋がると思う」とはキャプテンマークを巻いていた後藤。それでもファイナルスコアは1-4。これで勝ち点で岡山を引っ繰り返した山形が今シーズン初めて連勝を収め、今シーズン初めて昇格プレーオフ圏内へ浮上する結果となりました。


これで6試合未勝利となり、順位を8位まで落としてしまった岡山。今季最多となる4失点を喫しての完敗となってしまいましたが、「残念な結果ですが、すべてが終わった訳でもチャンスがなくなった訳でもないので、引きずらないことが大事かなと思います」と影山監督も話したように、チームは既に前を向いている印象を受けました。ここからの起爆剤について問われた後藤は、「そこまでの大きな変化というのは、たぶん凄い選手が入ってくるとかじゃないと起きないと思うので、そういう変化は狙っていない。今まで積み上げてきたものを出して、1勝すれば流れは大きく変わると思う」と継続の重要性を強調。「1試合1試合を『やるだけやったよ』と言えるような戦いをすること、準備をすることが大事」とは指揮官。残り5試合。積み上げてきたものを信じ、目の前の試合に全力で勝負する覚悟は微塵も変わりません。
「入りが良くてウチが先に2点取れたのが非常に大きかった」(山岸)「前半の2点というのが勝負を分けたと思う」(宮阪)と2人が声を揃えたように、2ゴールを含めた最初の15分間がタイムアップの瞬間まで大きな影響をもたらすゲームになりました。ただ、その15分間を呼び込んだのは「ウチは湘南とかのように完全に相手を支配できるチームじゃないので、全員がハードワークしていくしかない」と山岸が表現した山形の"ハードワーク"だったのは間違いない所。それに加えて、途中出場の伊東が2ゴールに絡む仕事をしたのも、チームに好影響を与えるはずです。"連勝"と"昇格プレーオフ圏内"。2つの初めてを同時に手に入れた山形。彼らにとって虹の向こう側で待っているものは果たして。       土屋

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