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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年10月13日

高校選手権東京A準々決勝 駒澤大学高×都立三鷹@都立大泉G

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1012oizumi2.jpgインターハイ王者の赤黒が挑む夏冬連覇の道はいよいよクォーターファイナル。待ち構えるのは過去に東京制覇も経験している都立の雄。舞台は引き続き都立大泉高校グラウンドです。
インターハイ予選は関東第一、都立駒場、成立学園と東京を代表する難敵をすべて1点差で下し、夏の東京を初めて制した駒澤大学高。臨んだ全国では中京大中京に1点差で敗れたものの、チームには確かなモノサシが。先週の初戦は昨年度ベスト4の東海大高輪台を撃破して勝ち上がってきた都立西を、都内屈指のストライカー安藤丈(3年・FC駒沢)のハットトリックや、鈴木隆作(3年・JACPA東京FC)のFK2発などで7-0と一蹴。「凄く優勝したいので、そのためにも一戦一戦しっかり大事に戦いたい」とは安藤。4年ぶりの全国へ、まずは西が丘行きの切符を勝ち取るための80分間を戦います。
初戦でぶつかった日体荏原を2-0で退けると、2回戦では昨年の西が丘を経験している東京実業を向こうに回し、長島潤也(3年・渋谷広尾中)と巽健(3年・SC相模原)の2ゴールで振り切って、このステージまで勝ち上がってきた都立三鷹。苦しい戦いを強いられているリーグ戦でも3週間前には成立学園に3-0で快勝を収めるなど、チームは間違いなく上り調子。「Tリーグでは駒澤にやられたけど、そこから成長できたと思っているので、どれだけできるか楽しみ」と話したのはCBの湯浅辰哉(3年・プロメテウス)。最高の相手と西が丘を懸けて対峙します。ピッチの周囲には両校の応援団がぎっしり。第2試合は14時30分、キックオフを迎えました。


序盤からリズムを掴んだのは駒澤。右SHの隠地大河(3年・三菱養和調布JY)、左SHの山口将広(3年・足立千寿桜堤中)、1トップの安藤、その下の幸野高士(3年・FC多摩)と前線の4人にいずれもレフティを配し、ワイドを使いながら押し込む時間を。9分には鈴木が右から蹴ったFKを、ファーでキャプテンの須藤皓生(3年・北区赤羽岩淵中)が高い打点で折り返し、ここは三鷹のGK武田啓介(3年・東村山第二中)がキャッチしたものの、「立ち上がりは結構押し込まれて苦しかった」と巽。積極的に立ち上がる赤黒。
ただ、このFKの直前に山口の負傷で試合が中断すると、わずかに流れへ変化が。10分は三鷹。右からSBの傳川祐真(3年・東村山第七中)がスローインを放り、河内健哉(3年・FC駒沢)のクロスは巽もシュートまで持ち込めなかったものの、惜しいシーンを。直後にもボランチの堀田将弘(3年・FC.GIUSTI世田谷)がミドルを打ち込み、駒澤のGK守屋樹(3年・東京小山SC)にキャッチされましたが、続けて手数を繰り出すと炸裂したのは「それをコンセプトでやっている」(堀田)ショートカウンター。
11分、自陣でボールを持った堀田は正確に縦へ入れると、一気にカウンター発動。運んだ平光太一(3年・FC.GIUSTI世田谷)は、「本来シュートを打つんですけど、よくパスを出したなと思う」と佐々木雅規監督も意外なラストパスを左へ。「ダイレクトで打とうと思ったけど、入る気がしなかった」という巽は切り返しで相手を外すと右足一閃。ボールは低い弾道でゴール左スミへ突き刺さります。「チャンスはそんなにたくさんはないけど何回かあるので、練習の時からしっかり決めていこうという意識は持たせてきた」と佐々木監督。劣勢だった三鷹が1点のリードを手にしました。
15分にも三鷹に決定機。右から平光が蹴ったCKは中央でフリーの河内へ。狙ったヘディングはゴール右へ外れたものの、あわやというシーンにどよめく観衆。17分は駒澤。山口が左へ振り分け、吉田一貴(3年・FC習志野)のクロスを収めた幸野はシュートまでいけず。19分も駒澤。鈴木が右へ流し、上がっていたSBの荒井佑太(3年・VIVAIO船橋)が好クロスを入れるも、柳澤歩(3年・フッチSC)のシュートはDFがコースに入り、こぼれを武田がキャッチ。22分も駒澤。吉田の右ロングスローから鈴木が浮かせ、柳澤が頭で繋いだボールは、山口に届かず武田がキャッチ。サイドアタックからゴール前には迫るも、決定的なシーンには繋げられない駒澤。
24分に早くも1人目の交替を決断した大野監督。佐藤瑛磨(2年・立川第四中)を右SHへ送り込み、サイドに1つ変化を。27分にその右サイドでCKを奪い、鈴木のキックをファーで合わせた安藤のヘディングが武田にキャッチされたのを見届けると、さらに30分には2人目の交替も。竹上有祥(2年・ヴェルディSSレスチ)をCBへ投入し、その位置にいた平井康介(3年・Forza'02)がボランチへ、柳澤が1トップ下へそれぞれスライドして、全体の強度を高めに掛かります。
ところが、次の決定的なシーンを創り出したのは三鷹。32分は巽のドリブル突破で得たCK。左から巽が自ら蹴ったキックは絶妙の軌道を描き、中央でフリーになった傳川は至近距離からヘディング。ゴールへ向かったボールはクロスバーに跳ね返り、飛び込んだ田嶋優也(3年・昭島瑞雲中)のヘディングもクロスバーを越えましたが、「あそこで決め切れたら一番良かったですけど、そんな簡単にはいかないですよね」とは冷静な長島。「ウチはカウンターかセットプレーですから」と指揮官も笑う後者の狙いから脅かした駒澤ゴール。
36分は駒澤。鈴木の右CKは一旦DFが弾き、須藤が押し戻したボールは武田が確保。39分も駒澤。鈴木の左CKはニアで堀田が大きくクリア。40分も駒澤。鈴木の左FKはここも三鷹ディフェンスが確実にクリア。「球際で負けないように、体を張って行くしかないと思っていた」(堀田)三鷹の集中は途切れず。0-1というスコアのまま、最初の40分間は終了しました。


後半はいきなりのビッグチャンスで幕開け。42分、右に開いた佐藤のクロスは中央でポッカリとフリーになった柳澤へ。丁寧にトラップで収め、丁寧に蹴ったシュートは、果敢に前へ出た武田が全身で超ファインブロック。44分にも鈴木の左CKから山口が右へ流し、佐藤がダイレクトで叩いたシュートは枠の右へ。この戦いが「気持ちとか相手より粘るとかそういう勝負」(大野監督)であることは明白。間違いなくスイッチの入った赤黒。
48分は三鷹。後方からのフィードを河内が頭で競り勝ち、巽が裏へ落としたボールへスライディングで飛び込んだ長島のシュートは守屋が阻むも、「相手のCBが強いので、そこに食らい付いていくしかなかった」というストライカーが裏への脅威を。49分は駒澤。山口のパスから吉田が右足で上げた左クロスに、安藤と佐藤が飛び込むもわずかに合わず。51分も駒澤。左から山口が中へ付け、柳澤が狙ったシュートに体を投げ出した三鷹ディフェンスは3人。55分は三鷹。巽の右FKに頭を振った河内のシュートは枠の右へ逸れるも、時折窺う追加点への可能性。
55分は駒澤に3人目の交替。野本克啓(2年・FC多摩)をピッチへ送り込むと、57分には鈴木、佐藤と繋いだボールを、右から野本が鋭く中へ。ここは河内が決死のスライディングでクリアしたものの、早くも投入の成果を1つ。59分は駒澤のFK。ゴールまで25mの位置でスポットに立ったのは、1週間前に2本の直接FKを沈めている鈴木。右足で押し出したキックは壁を越えるも、わずかに武田が触ったボールはクロスバーを直撃。どうしても1点を奪えません。
62分は三鷹に1人目の交替が。SBで奮闘しながら負傷でプレー続行が難しくなった傳川が下がり、金澤宏樹(3年・府ロクJY)がそのままの位置へ。66分は駒澤。山口が左から上げ切ったクロスはCBの吉野秀紀(2年・三鷹中等教育学校)がクリア。直後も駒澤。鈴木の左CKはニアで堀田が懸命にクリア。69分も駒澤。吉田の左ロングスローは、ここも掻き出した三鷹ディフェンス。ゲームはとうとう最後の10分間へ。
三鷹が迎えた後半最初の決定機は71分。田嶋のパスを河内が裏へ送り込むと、走った長島のボレーはジャストミート。ボールは必死に飛び付いた守屋に弾き出されましたが、「前の試合は最後の5分で交替させられたのが本当に悔しかったので、それは絶対しないように最後まで頑張ろうと」前線から相手を追い掛けまくっていた長島のワンプレーで、三鷹に再び点った勇気の灯。
このままでは終われない駒澤のラッシュ。72分、野本の左CKを武田がパンチングで弾くと、巽が大きくクリア。ケガを負った平井と望月幹也(3年・FC.GIUSTI世田谷)の交替を挟み、73分にショートコーナーのリターンを山口から受けた鈴木の左クロスは、肋骨の骨折を負いながらピッチに立ち続けている湯浅が力強くクリア。76分、竹上のフィードを山口が丁寧に繋ぎ、中央で振り抜いた安藤のボレーは武田が正面でキャッチ。77分、吉田の左クロスを野本がボレーで狙うも、ボールはクロスバーの上へ。押し切りたい駒澤。乗り切りたい三鷹。
78分は三鷹に2人目の交替。左SBで粘り続けた安田航(3年・FC.GIUSTI世田谷)と芝崎鉄平(1年・三鷹中等教育学校)をスイッチ。78分は駒澤。吉田の右ロングスローは、この大事な局面で起用された1年生の芝崎がきっちりクリア。79分も駒澤。鈴木の左FKがこぼれると山口が拾い、安藤の丁寧な落としから佐藤が狙ったシュートはクロスバーの上へ。アディショナルタイムは長めの5分。果たして勝利の女神はどちらに微笑みを。
80+2分に佐々木監督が切った3枚目の交替カード。平光を下げて、渡部圭(2年・三鷹F.A.)に託したゲームクローズ。80+3分は駒澤。右から望月が放ったグラウンダークロスを安藤が正確に収め、佐藤が打ったシュートはわずかにゴール左へ。80+6分は駒澤のラストプレー。左サイドで獲得したFK。キッカーは当然鈴木。じっくり時間を掛け、3年分の想いを乗せて蹴り込んだボールは、ワンバウンドしながらそのまま右スミのゴールネットへ弾み込みます。大歓声に包まれた駒澤応援団でしたが、上がっていたのは副審のフラッグ。飛び込んだ駒澤の選手がオフサイドという判定。ゴールは認められません。
騒然とした雰囲気の中、再開されたゲーム。そして86分28秒、大泉の空へ吸い込まれた試合終了を告げるホイッスル。「終わった時は一瞬何も考えられなかったです」という堀田の言葉は、おそらくイレブンだけではなく、58人の部員と4人のマネージャー全員の一致した想い。「苦しい戦いになるのは最初からわかっていたので、守備から入るというのはチームで徹底していた」と堀田が話す貫かれた"徹底"。三鷹が7年ぶりに西が丘へと駒を進める結果となりました。


三鷹にはここ2年に渡る、呪縛とも言うべき事象がありました。それは、『ロスタイムの失点』。昨年は帝京戦。0-0で迎えた80+2分にCKから失点を許し、無念のベスト8敗退。一昨年も帝京戦。1-0でリードして迎えた80+4分にロングフィードから同点弾を叩き込まれ、延長戦の末にベスト16敗退。「ブログとかに『お得意のロスタイム失点』とか書かれちゃうんです」とは佐々木監督。土壇場での失点で次のラウンドへの進出を絶たれる光景を、今の3年生は2度に渡ってその目に焼き付けてきました。特にどちらの試合もスタメンで出場していた巽は「1個上や2個上の代を見てきたので、自分たちの代はそれをなくそうと集中を切らさないようにしました」と。「先輩たちの悔しい想いを見ていますので、それが大きかったですね」と佐々木監督も話したように、過去2年の経験が「FKの時にヤバいなと思いました」と巽が素直に明かした最後のFKも、何とかオフサイドで凌げた部分に繋がったのかもしれません。「西が丘を目標にずっとやってきたので、凄く嬉しかった」と語った堀田も、続けて「でも、これからが本当の勝負だと思います」と目線は既にその先へ。呪縛から解き放たれた三鷹の次なる相手は、3連覇を目指す強敵の修徳です。
最後に残念ながら西が丘を目前にしての敗退となった駒澤にも触れておきたいと思います。昨年の選手権予選は決勝まで進んだものの、レギュラーは全員が3年生。まったくの新チームとしてスタートした今シーズンは須藤や鈴木、安藤などセンターラインのタレントが実戦を積むごとに成長し、前述したように同校史上初となるインターハイでの全国出場を成し遂げるなど、結果的に1年前のチームと肩を並べたか、あるいはそれ以上のパフォーマンスをここまで発揮してきました。「負けているというのもあって頭が回らず、『勝ちたい勝ちたい』みたいになってしまって、ただ真ん中に放り込んでいるだけになってしまった」と声を振り絞ったのは安藤。夏に東京を制したことで、そして昨年のファイナル進出という成績を受け、優勝候補の筆頭として今大会を迎えた選手たちに掛かるプレッシャーは並大抵のものではなかったはずです。4年ぶりとなる冬の全国への扉は開けられなかったものの、シーズンを通して力強い"コマダイ"らしさを見せてくれた彼らにも大きな拍手を贈りたいと思います。        土屋

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