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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年10月11日

キリンチャレンジカップ2014 日本×ジャマイカ@ビッグスワン

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1010bigswan.jpgアギーレジャパンのセカンドラウンドはレゲエとサンバのリズムと共に。まずは、レゲエボーイズをホームで迎え撃つ金曜ナイトゲーム。舞台は新潟。デンカビッグスワンスタジアムです。
新しい風はメキシコから。代表でもクラブチームでも高い経験値を有するハビエル・アギーレを新指揮官に迎え、再び終わりなき蹴球道を歩み出し始めた新生・日本代表。先月のファーストラウンドはウルグアイに敗れ、ベネズエラに引き分け、結果は1分け1敗。それでも武藤嘉紀や柴崎岳、森岡亮太といった90年代生まれの選手がメンバーに名を連ねるなど、確実にフレッシュな空気も吹き込む中、まずはブラジルとの一戦に向けて、1つ勝利をモノにすることで弾みを付けたい90分間に臨みます。
リヨンで対峙したのはもう16年前のこと。あの世界での1勝を日本相手に得て以降は、ブラジルW杯予選でも最終予選で最下位に沈むなど、なかなか国際舞台での目立った活躍はないジャマイカ代表。彼らの次なるターゲットは11月に行われる地元開催のカリビアンカップ。プレミアのレスター・シティでプレーするウェストリー・モーガンやジャーメイン・テイラー、デーン・リチャーズなど、ベテランの域に入りつつあるタレントを中心に、「非常に新しいチーム」(ビンフリート・シェーファー監督)で新潟へと乗り込みます。2年ぶりの代表戦新潟開催とあって、チケットはソールドアウト。39,628人の観衆を集めた一戦は19時29分、ジャマイカのキックオフでスタートしました。


4分のファーストアタックは日本。本田圭佑を起点に柴崎が左へ展開。受けた武藤が思い切って狙ったシュートはDFのブロックに遭い、ルーズを拾った武藤を経由して、左サイドを切り裂いた香川真司のドリブルはシュートまで繋がらなかったものの、1つチャンスを創出すると、6分には岡崎慎司の突破で獲得したゴールまで約25mの左FKを本田は枠内へ。ジャマイカのGKライアン・トンプソンも何とか掻き出しましたが、「ミーティングでは先月よりパフォーマンスを上げていかなくてはいけないという話をした」というアギーレ監督も言及したように、日本が意欲的に立ち上がります。
一方のジャマイカは最終ラインに5枚の大型選手を並べ、5-3-2の布陣できっちりブロックを作って引き込む戦い方を選択。10分にはレフティのケマー・ローレンスが右FKを蹴り込むも、ニアで本田がクリア。11分にここもローレンスが入れた右CKは西川周作がしっかりキャッチ。「相手も体つきもいいのにあまりガツガツ来ないというのがあった」とは酒井高徳。まずは専守防衛の姿勢を明確に。
15分に沸いたスタンド。柴崎の短い横パスを受けた香川は、30m近い距離にも躊躇せず左足ミドルを敢行。ボールはわずかに枠の左へ逸れましたが、中盤起用となった10番が惜しいシーンを自ら創ると、スコアが動いたのはその直後。16分、「点を取るだけじゃなくて、チームの助けになれるかどうかが重要」と語る岡崎が猛チェックでボールを刈り取って右へ。本田のショートパスに外を回った柴崎の速いクロスをGKが弾いたボールは、ナイロン・ノスワーシーに当たってゴールの中へ転がり込みます。結果はオウンゴールでしたが、岡崎と柴崎の積極性が呼び込んだ先制点。日本が1点のアドバンテージを手にしました。
19分も日本。本田が左へ送り、長友佑都の折り返しを柴崎がシュート。DFに当たったボールを武藤が収め、再度の折り返しは本田もシュートまで持ち込めずも、インサイドハーフの柴崎が生み出すダイナミズム。23分にはジャマイカもアルバス・パウエルのスローインからジェボーン・ワトソンが右クロスを放り込み、ローレンスのヘディングは枠の左へ外れるも、ようやくファーストシュートを記録。25分も日本。右で本田が相手を背負って時間を創り、地元凱旋となる酒井がカットインしながら放ったミドルはトンプソンにキャッチされるも、右サイドの2人でフィニッシュを取り切ると、次の決定機もこの2人で。
32分、中央からのアタックは一旦モーガンのタックルに阻まれるも、相手の横パスに猛然とダッシュした酒井は躍動感溢れるインターセプトからそのままドリブル開始。「シュートも思ったけど2対1だったし、圭佑君の方が確率が高いと思ったので」左へ出したスルーパスは本田の足元へピタリ。飛び出したGKを見極め、ループで狙った本田のシュートは、しかしクロスバーをかすめて枠の上へ。追加点とはいきません。
ジャマイカは基本的に2トップがCBの塩谷司と森重を、ジョエル・グラントがアンカーの細貝萌をほとんどマンツーマンで見るような対応を序盤から取っており、さらに「(ニコリー・)フィンレンソンとワトソンに『日本にボールが渡ったら、そのまま真っすぐ香川の所に行けと指示した」とシェーファー監督が明かしたように、ドイスボランチも香川と柴崎をケアしていましたが、30分過ぎからはそのチェックも緩み出し、日本が比較的自由にボールを持てる展開に。それでも、やや攻撃が右に偏った印象もあり、「スペースを埋めながらセカンドボールを拾っていくことを意識していた」という細貝を経由する流れが少なく、グループでの効果的なテンポアップは停滞気味に。
39分は日本。本田が右へ付けると、酒井はエリア内まで切れ込んで強引にシュート。このこぼれに飛び付いた岡崎のオーバーヘッドはわずかにクロスバーを越えるも、「前で『ゴールをコイツは狙っているな』と思わせることが大事だと思う」と話すブンデスのトップスコアラーがさすがの嗅覚。42分も日本。中盤で武藤と柴崎の92年コンビでボールを奪い切り、ドリブルで運んだ武藤のパスから岡崎が狙ったシュートはDFがブロック。「思い切り良く行こうかなと思ってやった」という酒井と本田の連携もスムーズに、右サイドの躍動感が目立った前半は日本が1点をリードしてハーフタイムへ入りました。


後半はスタートからジャマイカに選手交替が。ほとんどボールタッチのなかったリチャーズとロザに替えて、18歳のマイケル・シートンとダレン・マトックスを投入。「4人のストライカーを試し、カリビアンカップで誰を使うかを見極めた」とシェーファー監督が話したように、2トップをそっくり入れ替えて、残された45分間に挑みます。
49分に武藤がトライした枠内ミドルで動き出した後半も、最初の崩した形は右から。柴崎が右へ振り分け、酒井のクロスを岡崎がこの日2度目のオーバーヘッドで叩いたボールはゴール左へ外れたものの、9番のCFがビッグスワンを揺らすと、53分に煌いたのは「彼はワールドクラス。本田や香川と自然にプレーできている。まるで20年もプレーしているようだ」と指揮官も賛辞を惜しまない新7番。中央でボールを持った柴崎は、ルックアップから30m近いグラウンダーのパスをグサリ。芝生の絨毯を美しく滑ったボールは武藤に届き、最後はシュートを打ち切れませんでしたが、1本のパスで大観衆に示してみせた際立つ才能。
56分にも酒井の縦パスをエリア内へ潜った柴崎が繋ぎ、岡崎が枠へ飛ばしたシュートはトンプソンがファインセーブで回避しましたが、決定的なシーンを披露すると、岡崎は59分で御役御免。これが代表デビューとなる小林悠が右ウイングに入り、武藤が中央へ、本田が左へそれぞれスライド。この配置に関しては「右の小林がトレーニングで良かったから、本田を左に持ってきた」とアギーレ監督が説明。フレッシュな顔触れが前線に並びます。
61分は日本の決定機。長友が左へ流したボールを香川が収め、右足アウトサイドで巻いた絶妙クロス。武藤のヘディングはトンプソンがワンハンドで弾き出すも好トライ。63分にフィンレンソンとヒューアン・グレイをスイッチしたジャマイカの交替を挟み、65分にも日本の決定機。本田、香川、本田と短く回し、柴崎が右へ展開したボールを酒井はピンポイントで中へ。フリーで走り込んだ香川のシュートはわずかに枠の右へ外れ、「正直2回のチャンスは決めてもらいたいですよね。でも、本人が一番悔しいと思うので」と苦笑したのは前半に続いて2度目のアシストチャンスを逃した酒井ですが、「我々は2日前に来ただけでなく、20時間のフライトに乗って来た」とシェーファー監督も言及するなど、足の止まり始めたジャマイカを尻目に、続けて掴んだビッグチャンス。
67分にはジャマイカに後半のファーストチャンス。ローレンスの右CKを高い打点で撃ち下ろしたモーガンのヘディングは枠の左へ逸れましたが、ようやくトータルで2本目のシュートを記録すると、70分にはパウエル、シートンとボールが回り、ワトソンのミドルはゴール左へ。71分にもシートンが粘って残したボールを、パウエルが果敢にトライしたミドルは西川がキャッチしましたが、膝の負傷で離脱中だというリーズ・ユナイテッドでプレーするロドルフ・オースティンの代役候補として、右WBからボランチへスライドしたパウエルがチャンスに関与し、3本のシュートを4分間に集めます。
72分には代表初キャップの19番にチャンス。香川と柴崎の連携で左サイドへ侵入すると、エリア内のこぼれにいち早く反応した小林がすかさずシュート。ここはトンプソンのセーブに阻まれるも、73分には武藤に替わり、柿谷曜一朗がピッチに登場するとスタンドからは大歓声が。75分にはジャマイカも4人目の交替を。グラントを下げて19歳のカーデル・ベンボーを投入し、残り15分へ向けてアタッカーに変化を加えます。
79分のビッグチャンスはレゲエボーイズに。メインスタンドサイドで後ろ向きにボールを持った長友はバックパスを選択すると、このボールが弱くマトックスの足元へ。期せずして転がり込んだ絶好機にも、しかしマトックスのドリブルに勢いがなく、懸命に戻った森重がボールを奪い取り、何とか事無きを得たものの、前半からクロスミスも目立った左SBに一抹の不安が残ったことは、今後への懸念材料かもしれません。
82分には自ら「試合に入る前は緊張しました」と話し、右サイドでコンビを組んだ酒井も「本人は試合前に凄く緊張していて、『やべ~』とか言っていたんですけど、『大丈夫だ、大丈夫だ』と言って、お互い鼓舞し合いました」と笑った塩谷が、インターセプトから持ち上がると、マーカーを1人かわして縦へ。受けた本田のシュートはトンプソンにキャッチされましたが、「シオからは結構良い縦パスが入っていた」とパートナーの森重も認めたように、縦への意欲はパスで表出していた中で、この持ち上がれる攻撃力も彼の大きな魅力。「取った後の持ち上がりだったり、パスというああいうプレーをもっともっと出せたら良かったんですけど、今日はそこまで出せなかったので、また試合に出るチャンスをもらえたら出していきたいと思います」とは本人ですが、「彼は今日パーフェクトなゲームをした。満足している」と指揮官も合格点を出すなど、上々の代表デビューだったのではないでしょうか。
88分には太田宏介、89分にはこちらも代表初キャップとなる田口泰士と、相次いでピッチへ解き放たれた日本にとって、このゲーム最後の見せ場は"同級生"コンビ。90分、左サイドで柴崎はショートコーナーを太田へ短く。中を見据えた視線の先には、高校3年間を共に過ごした盟友の姿が。振るった左足で描いた軌道が中央を捉え、小林のヘディングはわずかにクロスバーを越えたものの、9年の時を超えて再結成された2人のフィニッシュワークがこの日のチームラストシュート。「今日は得点数が内容を表していないゲームだった。点差を付けるチャンスが、ハッキリとしたチャンスだけでも4つあった。チームが機能したことを嬉しく思うが、結果には満足していない」とアギーレ監督も振り返った通り、点差には消化不良の感も否めなかったものの、ひとまずは3試合目にしてアギーレジャパンが初勝利を挙げる結果となりました。


「日本の選手たちが良いプレーをしたことが重要なのではない。選手たちにはロッカールームで『おめでとう』と言ったぐらいです。大事なのは限界まで追い込むことができるか。その点について『ありがとう』と言いました」とシェーファー監督が話したジャマイカの、このゲームに対する位置付けは当然差し引く必要があるとはいえ、「狙い通りの試合だったと思いますけど、1点じゃなくて、2点、3点と取れた試合だったかなと思う」と森重も触れた"追加点"という面以外では、決して収穫の少なくないゲームだったように感じました。中でも印象的だったのは「うまく攻撃ができない時に後ろが簡単に蹴るのではなくて、後ろで時間を創れば当然相手もセットするけど、回していければチャンスになると思っている」と口にした西川が入ったことによる、GKも使ったビルドアップのスムーズさ。「周作くんがあれだけラインと同じように入ってボールを回してくれるとディフェンスとしては楽というか、下げたボールを自分たちのボールにして剥がせたのは何回かあったので、それは凄く助かりました」と酒井が話せば、「GKを使いながらビルドアップをしてシュートまで行けたシーンもあったので、今日は色々なバリエーションができたんじゃないかなと思います」と森重。この日に関しては試合展開もあって、「2人とも同じレベルで戦える」と指揮官から評価されている川島永嗣と西川の、後者が持つ"足元"の優位性が目立つ格好となりました。4日後に対戦を控えているのは、メキシコ五輪での対戦も含めて過去3分け8敗と一度の勝利も与えてもらっていないブラジル。「ブラジル戦ではこんなチャンスは訪れない。試合後に見ていたらシュートは20本だった。ブラジル戦では1本だったとしても決めないといけない。フィニッシュの質を上げていかないといけない」と気を引き締めたアギーレ監督。軽妙な語り口で非常に楽しい会見を繰り広げてくれたシェーファー監督は、去り際に「14日のブラジル戦、頑張って下さい。簡単な試合ですよ」と笑顔で。果たして王国相手の90分間は簡単な試合か否か。その地はシンガポールです。      土屋

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