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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年10月25日

高校選手権神奈川準々決勝 麻布大附属×湘南工科大附属@BMWス

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1025bmw1.jpgインターハイの神奈川王者とプリンス関東所属の古豪が対峙するビッグマッチ。全国へと続く扉を明確に捉えたクォーターファイナルはShonan BMWスタジアム平塚です。
2年連続で夏の神奈川を制して全国を経験するなど、その実力は常に県内でもトップクラスの麻布大附属。ところが、選手権予選に限っては、ファイナリストとなった6年前を最後に、このベスト8の壁をなかなか破れない時が続いており、「最近はなかなかこういう所まで来れなかったんですよね」と安彦篤監督も苦笑い。9年ぶりとなる冬の全国を目指すべく、重要な一戦に挑みます。
最後に全国へと勝ち上がった大会を遡れば、前校名の相模工大附属時代の34年前。近年の選手権予選はやはりベスト8から先がなかなか遠い湘南工科大附属。とはいえ、今シーズンは過酷な昇格決定戦を勝ち抜いて参戦したプリンス関東で貴重な経験を積んできており、「年がら年中自分たちより速いヤツらに晒されてきているから、そういう免疫はあるし、練習でもそういう速さを求めるようになっている」と室井雅志監督。久々のベスト4やその先も決して手の届かない目標ではありません。ちなみに、安彦監督と室井監督は日本体育大で選手とコーチの間柄だったという過去が。「凄くお世話になった方なので室井さんとも良い試合をしようと話していたし、こういう場で戦えるというのは幸せだなと思います」と安彦監督も語る指揮官同士の因縁も含めた注目のクォーターファイナルは、湘南工科のキックオフで幕が上がりました。


麻布のファーストシュートは4分。ドイスボランチの一角を任された後藤祐哉(2年・横浜宮田中)のミドルはゴール右へ。湘南工科のファーストシュートも4分。昨年から10番を背負う上米良柊人(3年・相模原上溝中)のミドルは枠の左へ。6分に竿下征也(3年・横浜釜利谷中)が続けて蹴った右CKを挟み、セカンドシュートを先に取ったのは8分の麻布。中山克広(3年・横浜FC JY)のミドルは湘南工科のGK菊池大輝(3年・FC湘南JY)がしっかりキャッチしたものの、まずはお互いにミドルレンジからゴールを窺います。
ただ、少しずつリズムを掴んだのはCBの星野颯(3年・SC相模原JY)と小磯直人(3年・バディーSC JY)にGKの菊池も加わりながらしっかりボールを回しつつ、「相手のスタイルを考えたら当然狙うべきスペース」と室井監督も認めるハイサイドを取り始めた湘南工科。9分には石塚龍成(3年・湘南ベルマーレ小田原JY)、植木勇作(3年・湘南ベルマーレ小田原JY)と繋ぎ、石山悦寛(2年・湘南リーブレ・エスチーロ)が右へ振り分けると、SBを務める横山晴槻(3年・スエルテFC)のアーリークロスはDFに引っ掛かりましたが、サイドアタックから惜しい形を。直後には右から横山が、左から勝山聖也(3年・CLUB TEATRO)が相次いでCKを蹴り込むなど、繰り出していく攻撃の手数。
14分には麻布もキャプテンの阿部速秀(3年・川崎西中原中)が中央で粘ってスルーパスを出しましたが、走った竿下とは合わず菊池がキャッチ。逆に16分は湘南工科。石山が高い位置で相手ボールを回収し、石塚の反転シュートは麻布のGK秋山直也(3年・横浜FC JY)が何とかキャッチ。直後にも上米良が枠内ミドルを打ち込むと、18分も湘南工科。左から勝山が蹴ったFKを、ファーの植木がボレーで叩いたボールはクロスバーの上へ。さらに23分も湘南工科。松井航希(3年・バディーSC JY)のパスを上米良が右へ流し、植木が丁寧に狙ったシュートは枠の左へ外れたものの、押し気味にゲームを進めるのは湘南工科。
さて、この試合に向けて「プレスの練習はしてきた」(安彦監督)麻布は、とりわけ「キャプテンの子は下に降りて繋ぐのはうまいので、あの子にだけは自由にさせないように結構良いチェックが入った」と安彦監督も言及したように、アンカー気味の勝山に対してはある程度きっちりプレスを敢行し、実際に「相手の寄せもうまいというか、ウチはそこで動かせなかった」と室井監督もビルドアップに関してはうまく行かなかった印象を持っていたようですが、せっかく奪ったボールをまたミスパスで失うシーンが頻発。加えて、相手の張り出した両ウイングのケアに追われ、「サイドバックが上がれなかった」(安彦監督)こともあって、厚みのある攻撃も繰り出せず。30分にはカウンターから中山が左へスルーパスを通し、竿下は完璧なトラップで抜け出したものの、GKと1対1で狙ったシュートはわずかにゴール右へ。絶好の先制機も生かし切れません。
32分は湘南工科。CBの小磯が左へサイドチェンジを送ると、横山を経由して植木が狙ったスルーパスは、石塚が収め切れなかったものの好トライ。33分も湘南工科。勝山が鋭いパスカットからそのままスルーパスを通し、走った石塚のシュートは麻布のCB藤田和樹(3年・町田JFC)が必死にブロック。直後には勝山が左ショートコーナーを、35分には横山が左FKを蹴り込むなど、セットプレーも含めて続けたチャンス。
そんな中、38分に訪れたのは麻布の決定機。左から竿下が蹴り入れた高精度のCKに、ドンピシャのヘディングで合わせたのはCBの岸星斗(3年・横浜FC JY)。完璧な一撃は菊池の驚異的なファインセーブに阻まれましたが、ゴールの可能性を漂わせると、一瞬でスタジアムを支配したのは「アイツはとにかくシュートが一番うまい」と安彦監督も認めるストライカー。
その時は前半終了間際の40分。中山が縦に入れたパスを、阿部が巧みにダイレクトで触ると、エリア外でボールを受けた竿下は寸分の躊躇もなく右足一閃。高速でクロスバーを叩いた球体は、地面に弾みながらゴールネットへ突き刺さります。「こういう場でああいう所を狙えるのは凄いと思う。完全に狙って打っていますからね」と指揮官も賞賛した11番のまさにゴラッソ。1分後に迎えた上米良の決定的なシュートも秋山がファインセーブで回避し、「前半を考えると1-0は100点の出来」とは安彦監督。リズムを掴み切れなかった麻布が1点をリードする格好で、最初の40分間は終了しました。


後半はスタートから麻布が2枚替え。大木健汰(2年・東急SレイエスFC)に替えて、「とにかく彼を入れて、前の時間を創って動かすだけ動かそうと」負傷を抱えたエースの塚越亮(3年・横浜FC鶴見JY)を早くも投入。さらに、「相手の攻撃はワイドの所が凄く良いのでそのケアと、サイドからドリブルで入っていける」と評された近藤秀太(3年・FC多摩)を中島翔(3年・FC HORTENCIA)とそのまま入れ替えて左SBへ送り出し、残りの40分間に臨みます。
後半のファーストシュートは麻布。44分に後藤が狙ったミドルは枠の左へ外れましたが、まずは積極的な姿勢で立ち上がると、やはり10番を託された塚越のボールタッチがアクセントになることで、「後半の頭はだいぶボールを動かせた」と指揮官も振り返った通り、麻布がパスワークのテンポを掴み出し、うまく時計の針を進ませていきます。
少し縦へのパワーが減退した湘南工科は59分、横山の右CKを小磯が頭と足で続けて狙うも、共にDFがきっちりブロック。61分には高い位置で植木がボールを奪い、石塚のパスから石山が打ち切ったシュートは麻布のボランチに入った宮澤博人(3年・横浜奈良中)がよく戻ってブロック。66分にも松井と替わったばかりのカリヨ・イサミ・ホセ(3年・横浜F・マリノスJY追浜)が粘って繋ぐと、石塚のシュートにもDFが果敢に飛び込み、最後はこぼれを秋山がキャッチ。最後の局面ではしっかり体を張って凌ぐ麻布。何とか押し切りたい湘南工科。
「先に取られて後半バラけかけたけど、アイツらがそこを意識して声掛けながら、やるべきことをやる我慢はちょっとできた」と室井監督も話した湘南工科の同点機は67分。左SBの春木拓夢(1年・横浜F・マリノスJY追浜)を起点に勝山、上米良と回し、カリヨがスライディングで右に繋いだボールを石塚はシュートまで。このボールも体を投げ出した麻布ディフェンスに当たり、一端は途切れたかに思えた流れから直後に最高の歓喜が。
68分のCKはこの試合8本目。右から横山が丁寧に蹴ったボールを、ニアに飛び込んだ勝山はヘディングで枠内へ。秋山が抜群の反応でわずかに触ったボールはクロスバーを叩いてピッチへ舞い戻りましたが、誰より早く反応した石塚が右足を振り抜くと、ゴール前の人垣をすり抜けた軌道はゴールネットへ力強く飛び込みます。沸騰した青とオレンジの応援団。ストライカーがゴールへの執念を結実させた湘南工科が、スコアを振り出しに揺り戻しました。
追い付かれた麻布は、「動かすことに専念し過ぎたのもあるし、とにかくウチが研究されていて、クサビのボールはだいぶ切られていた」(安彦監督)こともあり、失点までに記録した後半のシュートは44分のミドル1本のみ。ボールはフィフティかそれ以上に握っていたものの、肝心のフィニッシュワークまで繋がりません。71分は湘南工科。カリヨが右へ振り分け、植木の折り返しに走り込んだ石塚のシュートは枠の左へ。80分も湘南工科。横山の右CKはこぼれ、小磯が入れたクロスは何とかDFがクリア。勢いは湘南工科も逆転まで持ち込むことはできず、セミファイナルへの切符は前後半10分ずつのエクストラタイムで奪い合うことになりました。


スタンドと気合を共有した両チームの円陣が解け、麻布のキックオフでスタートした延長は消耗戦。85分は麻布。中央、ゴールまで約30mの距離から竿下が直接狙ったFKはゴール左へ。89分は湘南工科。上米良、植木とボールを回し、横山のクロスはDFがクリア。90+2分は麻布。竿下の左CKは小磯がニアで懸命にクリア。流れの中からはシュートシーンを取り切れず、いよいよゲームは泣いても笑っても最後の10分間へ。
93分は湘南工科。決死のスライディングでボールを刈り取った上米良のスルーパスは、1分前に投入された齋藤拓人(2年・湘南リーブレ・エスチーロ)へわずかに届かず。同じく93分は麻布。宮澤が右へ押し出し、SBの加藤康平(3年・FC GLORIA)が折り返したボールを塚越が叩くも、DFが一瞬早くブロック。97分は麻布に交替が。中盤での奮闘で足を攣らせた宮澤と伊藤太玖(3年・三菱養和調布JY)をスイッチ。まさに総力戦。時間は延長後半のアディショナルタイムへ。
勝利の女神は時として残酷で気まぐれ。100+1分、後藤が右サイドへ散らし、加藤が素早く上げたクロスは中央へ。密集の中に飛び込んだ塚越がエリア内で転倒すると、宇治原拓也主審がホイッスルと共に指し示したのはペナルティスポット。湘南工科にファウルがあったというジャッジで、麻布にPKが与えられます。安彦監督も「ジャッジのことを言うつもりはないですけど、最後がPKかどうかというのもなかなか...」と言及するほどデリケートなシーンでしたが、麻布にとってみれば試合を決め切るまさにラストチャンス。重圧の掛かるキッカーは阿部。腕章を巻いた9番の選択は左。菊池の選択も同方向。そして、激しく揺れたゴールネット。土壇場で勝ち越した麻布が1週間後のセミファイナルへと駒を進める結果となりました。


ベスト16の川和戦でも後半終了間際に同点ゴールを奪い、延長で勝ち越すというゲームを経験し、今日も最後の最後で勝利をもぎ取った麻布。「これまでもとにかく動かして動かして自分たちのリズムでという試合が多くて、結果全国では粘れないというのが課題だった」と安彦監督も言及する中で、「粘って頑張ったみたいな形はこのチームはずっとなかった」(安彦監督)ということですが、この"粘って頑張った"2試合の勝利が大きな経験になったことは間違いない所。指揮官も「ちょっと逞しくなってきたのかなと。理屈じゃないんだみたいな所は感じている」と手応えを口にしていました。麻布は選手権予選で進出した過去4回のベスト4は、すべて突破してファイナリストになっているという悪くないジンクスも。9年ぶりの頂点まではあと2勝です。
残念ながらこのステージで涙を呑むことになった湘南工科も非常に素晴らしいチームでした。最後のPKに関しては「そんなもんですよ。それでウチが勝つこともあれば負けることもあるんですから」と話した室井監督も、「本当にいい加減なヤツらだったら何とも思わないけど、一生懸命やってきただけに何とか結果を出させてやりたいなというのがあったから、申し訳ないという気持ちしかないですよね」と勝敗に対する悔しさを滲ませていました。それでも、インターハイ王者に対して互角以上の100分間を戦ったことは大いに賞賛されるべき勲章。湘南工科の健闘にも大きな拍手を送りたいと思います。      土屋

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