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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
6月に続いて3ヶ月ぶりに興味深いマッチメイクが実現。"日の丸"の下に集いし、同年代の2チームが激突する一戦はおなじみ秋津サッカー場です。
アジア大会の初戦を4日後に控え、いよいよ最終調整段階に入ったU-21日本代表。4年前の同大会も関塚隆監督が率いるU-21の代表で臨み、結果は堂々の優勝。1つのクラブから招集は1人というルールはあるものの、大島僚太、西野貴治、植田直通など、既にJリーグでの試合経験を十分に重ねている選手も選出されており、手倉森誠監督の元で連覇へ向けた最後の実戦に臨みます。
対するは2015年7月に韓国で行われるユニバーシアードを目指し、頻繁にトレーニングキャンプを重ねている全日本学生選抜。すべて3年生以下の選手で構成されているこのチームは、実際に室屋成(3年・明治大)がアジア大会のメンバーに選ばれ、澤上竜二(3年・大阪体育大)、湯澤聖人(3年・流通経済大)が国内キャンプまでの帯同となる追加招集メンバーとしてU-21日本代表で活動するなど、世代的にまったくの同世代。「レベル的にはJでやっているし相手の方が上なんですけど、そこで負けていたら変わらないと思う」と話すのは松下佳貴(3年・阪南大)。トレーニング相手で終わるつもりは毛頭ありません。練習試合の枠には収まらない注目の一戦は、16時30分にキックオフされました。
U-21日本代表はGKが牲川歩見で、4バックは右から室屋、植田、西野、秋野央樹。中盤はアンカーに野澤英之が入り、その前に大島と野津田岳人が並ぶ逆三角形。前線は右に荒野拓馬、中央に鈴木武蔵、左に中島翔哉を配した4-3-3でスタート。一方の大学選抜はGKが石井綾(3年・中京大)。最終ラインは右から奥山政幸(3年・早稲田大)、山越康平(3年・明治大)、萩間大樹(3年・専修大)、高橋諒(3年・明治大)。ドイスボランチを松下と徳永裕大(2年・関西学院大)が務め、SHは右に八久保颯(3年・阪南大)、左に小林成豪(3年・関西学院大)を。1トップ起用の呉屋大翔(3年・関西学院大)の下に長谷川竜也(3年・順天堂大)が控え、こちらは4-2-3-1で試合に入ります。
2分には大学選抜が小林の左CKから、4分にはU-21が室屋のオーバーラップから、共にチャンスの一歩手前まで創りましたが、お互いになかなか攻撃をシュートで終われない中でも、「前回より圧倒的にボールを持つ時間が増えた」と神川明彦監督も振り返ったように、ポゼッションで上回ったのは大学選抜。「裕大と2人でボールをどんどん受けて、僕たちで攻撃を創るというイメージでいった」という松下と徳永を中心に左右へ散らしつつ、相手の隙を窺いながらボールを動かします。
14分は大学選抜。中央左寄り、ゴールまで25m弱のFKは小林が小さく出して呉屋が狙うも、大島が果敢にブロック。15分はU-21。大島のパスを右で受けた室屋が左足で中央へクロスを送り、鈴木が潰れたこぼれを荒野が拾うも、シュートには至らず。18分は大学選抜。右サイドでボールを持った奥山はDFラインの背後へ好フィード。走った八久保は飛び出した牲川が目に入ってか、ボールには触り切れなかったものの惜しい形を。22分にも八久保が倒されて獲得した右FKを松下が蹴り込み、DFのクリアに遭いましたが、チャンス自体を多く創り出したのは大学選抜。
さらに27分に果敢なチャレンジを見せたのは、明治大の同期でもある室屋と再三やり合っていた高橋。相手のサイドチェンジを思い切り良くインターセプトすると、そのまま左サイドを独走、独走。50m近くを全力で駆け上がり、最後のシュートは枠の左へ外れましたが、「アイツは中心ですから」と指揮官も信頼を寄せる左サイドバックがスタンドを沸かせます。
さて、攻撃のリズムを何とか変えたいU-21は前半の途中でシステムチェンジ。野澤と大島をドイスボランチで組ませ、右SHは中島、左SHは野津田が担当。前線は鈴木と荒野が2トップで並ぶ4-4-2にシフトすると、33分には大島を起点に鈴木が右へ振り分け、「やっぱり良かったですね」と神川監督も認めた室屋がグラウンダーで送ったクロスは山越が何とかクリアしたものの、1つサイドアタックを。34分にはバイタルに潜った中島が石井にキャッチを強いるミドルを放つなど、ようやく出てきた手数。
「4-3-3はマッチアップ的にはやりやすかったんですけど、4-4-2へ変えられた時にちょっとしたズレだったりを使われてしまった」と松下も話した大学選抜は、ボール回しのスムーズさこそやや減退する中で、フィニッシュへの意欲は変わらず。36分には萩間の縦パスから徳永が左へ送り、長谷川のカットインミドルは枠の左へ。42分にも呉屋とのワンツーから、小林がトライしたループ気味のシュートは枠を越えるも、関学コンビで狙いは明確。45分にはU-21も野澤、野津田と繋ぎ、室屋がマイナスに折り返したボールから中島のシュートはクロスバーを越えましたが、この日一番の良い形を創出すると、45+1分には中島が再び枠内ミドル。とはいえ、「やりたいこともある程度できていた」と松下が認めれば、「ちょっとずつ良さは出しつつあったね」とは須佐徹太郎チームリーダー。大学選抜のアグレッシブさが目立った前半は、スコアレスでハーフタイムに入りました。
後半は双方がほぼ選手を総入れ替え。U-21はGKこそ牲川がそのまま入ったものの、DFラインは湯澤、岩波拓也、吉野恭平、山中亮輔の4枚に。中盤はアンカーを野澤がそのまま務め、その前に喜田拓也と原川力が。前は右に金森健志、中央に澤上、左に矢島慎也という、4-3-3へ戻して残りの45分間へ。大学選抜は所属チームの指揮官でもある島岡健太コーチが「まだまだ良くなりますよ」と太鼓判を押す前川黛也(2年・関西大)がゴールマウスへ。4バックは右から新井純平(2年・早稲田大)、今津佑太(1年・流通経済大)、井筒陸也(3年・関西学院大)、鈴木潤(3年・中京大)。中盤は野津田と広島ユースの同期に当たる平田惇(2年・東京学芸大)と西室隆規(3年・法政大)がドイスボランチを任され、その前に右から藤本佳希(3年・明治大)、端山豪(3年・慶應義塾大)、山根視来(3年・桐蔭横浜大)を起用。1トップは岡佳樹(2年・桃山学院大)が入る「6名も初招集がいる」(神川監督)4-2-3-1で後半へ挑みます。
49分の後半ファーストシュートはU-21。澤上のポストから、矢島が枠へ飛ばした強烈なミドルは前川が何とかキャッチしましたが、代表常連の8番がいきなりゴールへの意欲を滲ませると、60分にも右サイドからの流れを受け、中央でボールをもらった原川は思い切ってミドルを打ち込み、軌道は枠の左へ逸れたものの、ゲームリズムを少しずつ引き寄せます。
やや差し込まれる時間の長くなってきた大学選抜も、62分には端山と新井の右アタックからCKを掴むと、西室のキックはDFにクリアされるも、64分にはさらなるチャンスを。カウンターから岡が中央をドリブルで運び、端山が絡んで左へ流れたボールを山根は右スミへコントロールショット。牲川はキャッチで対応し、先制点とはいきませんでしたが、しっかり見せた反発力。
以降、試合はお互いにボールを動かす意識は感じられるものの、フィニッシュまで持ち込めない膠着状態に。72分の大学選抜は平田が右へ展開し、新井の折り返しへ走り込んだ端山のシュートもDFがブロック。U-21も喜田と野澤のドイスボランチに、矢島と原川がワイドに開き、金森と澤上を最前線に置いた4-4-2へ再度シフトしましたが、大きな変化は見られません。
流れが変わったのは72分の交替から。フィールドプレーヤーでは唯一"45分以上"出場していた野澤に替えて、秋野を中盤へ送り込むと、その秋野がボールを受けて捌いてパスワークのリズムを創出。75分には喜田がシュートレンジで選択したパスで、矢島はオフサイドになってしまい、絶好のチャンスを潰すも、83分には左サイドのスローインから矢島が枠の左へ外れるミドルを。84分にはこの日最大の決定機。秋野の鋭い縦パスをスイッチに、原川と矢島が粘って繋ぎ、飛び込んだ金森のシュートは枠の左へ外れましたが、「秋野君がサイドにいるか中盤にいるかは大きいと思った」と敵将の神川監督も言及するほど、秋野の存在感でU-21に生まれた攻撃のテンポ。
86分はU-21。原川が丁寧なスルーパスを通し、左サイドで抜け出した金森の1対1はわずかにゴール右へ。87分もU-21。矢島のパスを喜田がヒールで流し、澤上のシュートはゴール右へ。終盤に打ち出したU-21のラッシュに対し、「1年生とは思えないハートを見せてくれた」と指揮官も言及した今津と井筒を中心に、大学選抜もきっちり最後の局面で体を張り続け、失点は許しません。
規定の時間を回った90+1分はU-21のサイドアタック。よくボールに触っていた喜田が右へ展開し、湯澤がグラウンダーでクロスを放り込むも、今津が後方へ戻りながら確実にクリアで掻き出すと、これが双方にとって最後のチャンスシーン。「みんなで力を合わせて声を掛け合って、何とか相手の猛攻を防ぎ切ったので、ミスにも助けられましたけど、何とかスコアを整えられたので良かったです」とは神川監督。注目のトレーニングマッチはスコアレスドローという結果になりました。
大学選抜の健闘が光った90分間だったと思います。「結果はスコアレスドローだったけど、非常に内容も充実して、3ヶ月前の6月のゲームと比較しても成長が見られた良いゲームだった」と一定の評価を与えたのは神川監督。「前回の6月の試合では相手に終始ボールを支配されてという試合で、今回は自分たちも主導権を握るためにボールを回すというのをチームとして言っていたので、その部分はできたと思う」と松下も話したように、パスワークという部分では同じ難敵を相手にしても、3ヶ月間で格段の進歩があったようです。指揮官も感じた「あとは最後の1本のパスとか、ラスト前の1つ前の精度という所」という課題は、「前への推進力が少し足りなかった」(松下)と選手も把握済み。ただ、「アジア大会は来週ですけど、ユニバは来年なので(笑)、10ヶ月ほど時間がありますし、ちょっとずつちょっとずつですね」と神川監督。「大学側には大学側にしかできないこともあります。U-21は全員が全員公式戦の数を戦えているわけじゃないと思いますけど、それに比べて大学選抜は所属のチームで中心選手として戦っていると思うので、公式戦の慣れもあるし、そういう所はこっちにアドバンテージがあるかなと思います」と松下も口にした、各チームで主力を張っているという良い意味でのプライドと、あるいはU-21への"加入"を狙う向上心を胸に抱いた大学選抜の今後にも、是非注目したいと思います。 土屋
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