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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
10日後に選手権での直接対決を控えた"十条ダービー"がこのタイミングで実現。成立学園のホーム扱いで行われるゲームの会場は、東京朝鮮グラウンドです。
インターハイでは2年連続で全国の舞台を経験している中、後半終了間際に大逆転で勝ち越しながら、結局延長戦で競り負けた選手権予選決勝のリベンジを今年こそは果たしたい成立学園。「全国で勝つために必ずやるという意味では、去年も夏の全国でやられて選手権の決勝まで行ってということも含めて、チームとしてリバウンドメンタリティが出てきたのかなという風に思う」と話すのは太田昌宏監督。去年届かなかったあと一歩を埋めるための準備を着々と整えています。
4日前に実践学園のアウェイに乗り込んだゲームは、GKのチョン・ジョンオ(3年・西東京朝鮮第一中)とエースのハン・ヨンテ(3年・東京朝鮮第一中)という両輪が圧巻のパフォーマンスを見せ、首位から勝ち点3を強奪してみせた東京朝鮮。トップディビジョン残留に向けて、シーズン2度目の連勝をアウェイ扱いの"ホーム"で達成したい90分間に臨みます。断続的に降り続いていた雨も何とか止み、人工芝のピッチはむしろ好コンディション。10日後を視野に間違いなく入れた"十条ダービー"は、成立のキックオフでスタートしました。
「最初は相手に勢いがあって何回かピンチがあった」と太田監督も振り返ったように、序盤のゲームリズムは東京朝鮮。5分はハン・ヨンテのドリブルで獲得したFK。ピッチ中央、ゴールまで約30mの距離から帰ってきたチェ・フィジョン(3年・神奈川朝鮮高)が直接狙ったボールは枠の左へ外れましたが、6分にもチェ・ギョンオ(2年・東京朝鮮第一中)、ハン・ヨンテ、リャン・ヒョンジュ(1年・大宮アルディージャJY)と細かく繋ぎ、ハン・ヨンテが縦へ持ち出して放ったシュートは枠の左へ外れたものの、まずは"アウェイチーム"が勢い良く飛び出します。
7分には吉村伸(2年・アセノSC)が強引な枠外ミドルでファーストシュートを記録した成立。少しメンバーに変化を加えた中で「ちょっとずつボールがずれて、守備の所で向こうも5バック気味になるから行きづらかったりして、攻守においてリズムが取れなかったかなという感じはしていた」と太田監督。10分は東京朝鮮。高い位置でボールを奪ったリャン・ヒョンジュがそのまま打ったシュートは枠の左へ。11分は東京朝鮮の決定機。CBのキム・ジョンホ(3年・東京朝鮮中)が高精度フィードを裏へ落とし、抜け出したリ・キョンチョル(2年・東京朝鮮中)のシュートはわずかに枠の右へ逸れましたが、ペースは完全に東京朝鮮。
13分も東京朝鮮。リャン・ヒョンジュの左ロングスローから、こぼれを叩いたキム・ジョンホ(3年・東京朝鮮第五中)のシュートは枠の右へ。19分も東京朝鮮。右からリ・キョンチョルが、左からリャン・ヒョンジュが蹴ったCKは、どちらも成立のGK湯沢慶(3年・東京ベイFC)のパンチングに回避されるも、24分は左サイドで粘ったリャン・ヒョンジュが枠の左へ外れるシュートまで。1年生のリャン・ヒョンジュが良くボールに触り、攻撃をきっちりフィニッシュで終わらせます。
さて、25分を過ぎたあたりから「流れを持っていかれないように我慢して踏ん張っていた」(太田監督)成立にも徐々に手数。26分には平園尚臣(3年・成立ゼブラFC)が右へ回すと、谷田部竜汰(1年・横浜F・マリノスJY)の好クロスがニアへ入り、飛び込んだ竹本大輝(1年・成立ゼブラFC)のヘディングはチョン・ジョンオがファインセーブで掻き出したものの、スタメンに抜擢された1年生の連携でようやく意図したサイドアタックを。30分にも長島滉大(2年・成立ゼブラFC)、吉村と回ったボールを平園が右へ振り分け、上がってきた矢田部のシュートはチョン・ジョンオにキャッチされるも、続けて右サイドでフィニッシュを取り切ります。
一瞬の切れ味は「ボールが入ったら本当に仕事をするから良い選手ですよね」と敵将も認めた赤き虎。34分、細かいパスワークから少し浮いたボールをハン・ヨンテは絶妙のボレーで枠内へ。湯沢もファインセーブで応酬しましたが、その一連はまさに"虎"。39分にもそのハン・ヨンテが前で基点を創り、左からキム・ジョンホが入れたクロスを、リ・キョンチョルが合わせたヘディングは枠の左へ外れるも、ゲームに様々な色彩を与える10番の推進力。
40分は成立。竹本が左へ展開すると、キャプテンの上村諒斗(3年・クラブ与野)がカットインから放ったシュートは、味方に当たってオフサイドという判定に。45+1分も成立。河口海斗(2年・成立ゼブラFC)からのリターンを長島が右へ流し、竹本が思い切ってトライしたミドルはわずかにクロスバーを越えるも、「思った以上に堂々とやっていたし、練習試合のイメージよりも公式戦でこれぐらいできるんだという発見はあった」と指揮官も言及した竹本の積極性は魅力十分。やや成立が押し返した格好の前半は、スコアレスでハーフタイムへ入りました。
先に動いたのは東京朝鮮。後半開始からキム・ジョンホを下げて、ホン・セジン(3年・東京朝鮮第一中)を送り込み、少し選手の配置もスライドさせると、その東京朝鮮に到来した先制機。47分、右サイドをえぐって突破したハン・ヨンテがエリア内でDFに倒され、主審はPKというジャッジを下します。キッカーはリャン・ヒョンジュ。短い助走から左を狙ったキックはGKも逆。キッカーを任された1年生の冷静な一撃で東京朝鮮が1点のリードを奪いました。
「前半の途中から落ち着いて、ウチはウチでサッカーをやっていたんじゃないかなという風に思う」と太田監督も話した成立は、ビハインドを追い掛ける展開に。58分には上村のパスを矢田部がラインの裏まで蹴り込み、ややDFがもたついた所をかっさらった平園のシュートは枠の右へ。前半よりは河口と竹本がボールを捌いてリズムを創る中で、あとは縦へのスピードアップと共有したいフィニッシュへのイメージ。
61分は東京朝鮮に交替が。CBのキム・ヨンボ(3年・ACアスミ)に替えてペク・スンホ(2年・西東京朝鮮第一中)を投入。シン・テス(3年・大阪朝鮮高)が枠の右へ飛ばしたミドルを挟み、67分には成立に交替が。長島に替えて大野泰成(1年・成立ゼブラFC)を解き放ち、これでピッチ上には4人の1年生が堂々と立ち並びます。
68分は東京朝鮮。GKの位置を確認したチェ・フィジョンが、45m近い距離から狙ったロングシュートはゴール右へ。71分は成立。大野のセンス溢れるスルーパスから、吉村が抜け出し掛けるとマーカーがしっかりカットしましたが、次に記録されるのが同点弾でも追加点でもおかしくない展開が続く中、その絶好の機会は「少しは流動的に人が動くようになった分、ボールが動き出した」(太田監督)前者に。
74分、左サイドの上村が1つ溜めて縦へ付け、オーバーラップした西羽海(1年・鹿島アントラーズつくばJY)の上げ切ったクロスがDFに当たると、主審はハンドとジャッジしてペナルティスポットを指し示します。少し東京朝鮮にとっては厳しい判定に見えましたが、判定は判定。キッカーはCBの小池拓斗(3年・武南高)。左へ強く蹴ったボールはチョン・ジョンオも反応したものの、コースもスピードもパーフェクト。PKでやり返したゼブラ軍団。スコアボードに同じ数字が並びました。
78分は成立。伊東優介(3年・大津高)の左CKは何とかDFがクリア。78分も成立。左サイドできっちり繋ぎ、河口が蹴ったミドルはチョン・ジョンオがキャッチ。81分は東京朝鮮。右からリ・キョンチョルが素早くFKを蹴り込み、ハン・ヨンテが敢行したダイビングヘッドは枠の左へ。82分は成立。竹本が右へ流したボールはこぼれるも、拾った吉村のシュートは枠の右へ。斬り合う両者。熱戦は最後の5分間とアディショナルタイムへ。
ゲームを決めたのはやはり攻守の両軸。85分、成立の選手に当たったボールは自陣方向へ。一瞬オフサイドかと思われたシーンも主審はプレーオンを選択。ボールを収めたハン・ヨンテは粘って粘って左サイドをえぐり切り、中央へ丁寧に折り返すと、ここにいたのはCBのチェ・フィジョン。右足で押し出したボールはゴール右スミへ吸い込まれます。土壇場で生まれた勝ち越し弾。最後はカン・チソン(3年・東京朝鮮第五中)とホン・ジャンソン(3年・東京朝鮮中)を投入してクローズにも着手した東京朝鮮が、リーグ戦終盤に来て大きな連勝を達成する結果となりました。
選手権の前哨戦は、お互いに最後の最後まで勝ち点3を目指した好ゲームでした。少しメンバーを入れ替えて戦った成立は「次のゲームでやってくれるようなメンバーが、今日は垣間見れたかなという感じはしている」と太田監督も言及した通り、国体選抜で経験をつんでいる竹本を筆頭に、1年生にも使えるメドが立ったのは大きな収穫。「あそこで滑っていればとか、あそこでちょっと声を掛けていれば、あそこで切り替えて戻っていればとか、本当にそういう所で勝負のアヤというのが決まると思うので、練習からもっとアラートにトレーニングをして、細かい所にこだわってやるしかないと思う」という太田監督の下、残された時間で細部を詰めて決戦へ臨みます。
一方の東京朝鮮は、まずリーグ戦で考えてもここに来ての連勝はあまりにも大きな勝ち点の積み上げ。これで残留争いの渦からも一歩抜け出た感があります。そして、来たる選手権予選に向けてもほとんどベストメンバーで挑んだこの90分間で、おそらくは相手にやり辛い印象を十分に植え付けたはず。負けたら終わり。仁義なき10日後が非常に楽しみになるような木曜ナイトゲームでした。 土屋
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