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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
2月に開幕したT1リーグも残すはわずかに2節。まだ十分に優勝の可能性を残している2位と、残留へ向けて1試合も落とせない9位の対峙は駒沢第2です。
インターハイ予選では関東第一、都立駒場と難敵を共にウノセロで沈め、初の全国大会出場権を獲得するなど、昨年同様に都内屈指の実力を有すると目されている駒澤大学高。リーグ戦でも首位を快走していた実践学園に勝ち点3差まで迫っている中、先週の練習試合でやはりインターハイ予選で群馬準優勝に輝いた常盤相手に10点差ゲームで大勝を収め、「冬に向けて行けるかなというような手応えは少しできた」と大野祥司監督。その勢いをこの90分間に持ち込みたい一戦です。
新人戦はまさかの地区予選敗退を強いられたものの、年末の昇格決定戦を制してT1へと戦うステージを移した堀越。リーグ戦ではここまで最多失点を喫しての4勝と難しい戦いが続いていますが、「去年のトーナメントは残念ながらT1のチームに全部負けていて、T1のレベルが全然わからない状況で入っていたけど、今年は良い経験をさせてもらっているので、『こういう時間帯は通じた』『こういう戦い方は通じた』というのは凄く手応えがある」と佐藤実監督。自らの現在地を推し量る上でも、夏の東京王者は格好の判断材料です。18時前から駒沢第2に降り出した雨は、みるみる内に土砂降りに。観戦者にとっても精神力が試されるゲームは、駒澤のキックオフでスタートしました。
いきなりのラッシュは赤き王者。3分に幸野高士(3年・FC多摩)がミドルレンジから狙ったファーストシュートは枠の右へ外れましたが、4分にも安藤丈(3年・FC駒沢)が左サイドをドリブルで運び、ゴール右へ逸れるシュートまで。5分にも左から山口将広(3年・足立千寿桜堤中)が中央へパスを送ると、柳澤歩(3年・フッチSC)のシュートは枠の左へ。さらに6分にも安藤のミドル、7分にも鈴木隆作(3年・JACPA東京)のクロスから安藤のヘディング、10分にも安藤、幸野と繋いで柳澤のミドルなど、枠は捉えられなかったものの、とにかく駒澤がシュートで終わる積極性でペースを掴みます。
一方、「蹴って、こっちも蹴ってという形で、そこは当然駒大さんにパワーがある」と佐藤監督も言及した流れの中で、なかなか攻撃の時間を創れなかった堀越は、20分にようやくチャンスが。鳥塚裕仁(2年・板橋桜川中)のパスを引き出した小磯雄大(1年・ヴィラセーゴ津久井)は左のハイサイドへ鋭いパス。走った石上輝(3年・練馬光が丘第二中)は一歩及びませんでしたが、悪くないカウンターを。23分にも田口雄大(3年・TACサルヴァトーレ)の蹴った右CKのこぼれを北田大祐(2年)が頭で差し戻し、富樫草太(2年・FC町田ゼルビアJY)のシュートは枠の左へ外れるも、続けて繰り出した手数。
以降は基本的にボールは駒澤が動かす中で、「中盤のプレッシャーがはっきりしなくなってきたことで、ボールを何とか収めて散らすことが少しできるようになってきた」(佐藤監督)堀越が、アンカーの森田大介(3年・FC府中)を防波堤にショートカウンターを狙う展開に。24分は駒澤。左SBの吉田一貴(3年・FC習志野)が縦に付け、山口が枠へ収めたシュートは堀越のGK横山洋(2年・TACサルヴァトーレ)がしっかりキャッチ。27分も駒澤。ピッチ中央、ゴールまで約25mの距離から鈴木が直接狙ったFKは、横山がしっかりキャッチ。インターハイ予選準決勝の再現とはいきません。
29分は堀越のカウンター。北田が素晴らしいインターセプトから右サイドを持ち上がり、折り返しをダイレクトで石上が叩いたシュートはゴール左へ。30分は駒澤のセットプレー。自らが蹴った右CKのこぼれを山口が再び蹴り込み、キャプテンの須藤皓生(3年・北区赤羽岩淵中)が合わせたヘディングは横山がキャッチ。35分は堀越のアタック。田口、新井真汰(2年・TACサルヴァトーレ)、小磯と回して左へ振り分け、吉田碧橙(3年・FC Consorte)が右スミへ飛ばしたミドルは、駒澤のGK守屋樹(3年・東京小山SC)がキャッチ。37分は駒澤のセットプレー。鈴木の左FKがこぼれ、山口が放ったミドルは横山がキャッチしましたが、それぞれの狙いを体現したようなシュートシーンを交互に生み出す両者。
「トレーニングの中や練習試合も含めて出ていた形だったので、点が取れるならああいう形しかない」と佐藤監督も語った、綺麗な先制点は41分。右サイドへボールを運ぶと、粘って残した小磯は中央へクロス。ワントラップから素早く打ち切った石上のシュートは、ゴール左スミへ吸い込まれます。「ウチの戦術は石上。攻守に渡って出来が悪いという試合はない」と指揮官も信頼を寄せるキャプテンが確実に結果を。堀越がスコアを動かしました。
「ここまで18失点なので、『あと2節は絶対にゼロで抑える習慣付けをしよう』と言っていた」(大野監督)ゲームで、先制を許した駒澤。44分には吉田一貴の左クロスから、安藤が右足で打ったシュートは枠の右へ。45+1分には鈴木の左CKを須藤がヘディングで狙うと、GKを破ったボールはカバーに入った吉田碧橙がライン上でクリア。45+2分にも鈴木が蹴り込んだ右FKを、須藤が頭に当て切るも枠の左へ。「流れが少し来たので、前半は凄く良かったのかなと思う」と佐藤監督も話した堀越が、少ない決定機を確実に生かして、1点のリードを持ってハーフタイムへ入りました。
「アップとか見ていても強くなるなあと。冬に向けて良くなるなあと思って見ていました」と堀越を評したのは大野監督。後半もファーストシュートはその堀越。54分、左サイドで創った流れから石上が短く繋ぎ、小磯の放ったシュートはクロスバーを越えましたが、「スピードもあるし高校サッカーに慣れてきたのかなと思う」と指揮官も触れた1年生の小磯が、最前線で存在感を発揮します。
ところが、次のゴールは後半に入ってなかなか手数を打ち出せなかった駒澤。57分、長いフィードで押し込んだ流れから、浮き球を鈴木が頭で押し戻すと、そのボールに反応した幸野は瞬時にループシュートを選択。GKの頭上を破った球体は、そのままゴールネットへ弾み込みます。「ゴールはまぐれだと思うけど、だいぶ良くなっている」と大野監督も独特の表現で称えた10番の同点弾。スコアは振り出しに引き戻されました。
牙を剥いた赤黒軍団。59分に同点ゴールの幸野を下げて、佐藤瑛磨(2年・立川第四中)を送り込むと、63分には山口のドリブルで獲得したFKを、ゴールまで約25mの位置から鈴木が直接狙ったボールは横山がキャッチ。64分にも安藤のリターンから、山口が抜け出し掛け、ここは前半から奮闘の目立った堀越の右CB東岡信幸(2年・TACサルヴァトーレ)がスイープしたものの好トライ。66分にも佐藤のパスから山口が連続シュートを放ち、それぞれDFと横山に阻まれるも、「行ったり来たりというか、向こうが押し込む展開になった」と佐藤監督。掛ける駒澤の圧力。
67分も駒澤。佐藤のパスを安藤が胸トラップから戻し、佐藤が角度のない位置から思い切って狙ったシュートは横山が何とかセーブ。直後の左CKはシュートまで至りませんでしたが、68分も駒澤。こぼれを拾った佐藤は、ミドルレンジからループを狙い、ボールは枠の右へ外れたものの、「昨日は全然ダメだったけど、今日はヤツが流れを変えていた所も結構あると思う」と指揮官も認めた佐藤の躍動もチームの追い風に。
「周りの人間が全員関わっての得点」(大野監督)は72分の歓喜。ここも佐藤を起点に山口が右へ短く出すと、鈴木はそのままファーサイドヘのピンポイントクロスを。信じて走り込んだ隠地が利き足の左足で振り抜いたボールは、GKのニアサイドを破ってゴールネットへ突き刺さります。「柳澤も横で受けれる準備をして、相手がちょっとつられていたのもあったし、鈴木の見ている所とか、ワンタッチで蹴れる所もそうだし、隠地もやっぱり何だかんだで嗅覚はある」と振り返った大野監督も会心の一撃。駒澤がスコアを引っ繰り返し、1点のリードを手にしました。
続いたのは"エースのジョー"。77分、左サイドで吉田がロングスローを素早く投げ入れると、すぐさま反応した安藤はラインの裏へ。飛び出したGKを冷静に見極め、浮かせたループは角度のない位置からでしたが、確実にゴールネットへ転がり込みます。「去年の大川も15点くらいだったと思うので、ちょっと異常な数字だとは思うんですけど」と大野監督も驚く安藤の、なんとリーグ戦24点目が飛び出し、点差は2点に広がりました。
79分にはルーズボールを拾った新井が枠の右へミドルを外し、ようやく後半2本目のシュートが記録された堀越は、前へのパワーを打ち出すことができず、ほとんど攻撃の時間を創れません。81分も駒澤。鈴木、隠地、安藤と細かく回し、鈴木の左足シュートはクロスバーの上へ。82分も駒澤。安藤が左サイドで残し、隠地のループは横山がキャッチ。その隠地と野本克啓(2年・FC多摩)の交替を挟み、83分も駒澤。山口がボールを奪い、そのままマーカーともつれながら打ち切ったシュートは飛び出した横山が体でセーブ。貪欲に狙い続ける次の1点。
堀越も84分には北田と新井に替えて、谷野大地(3年・ACフツーロ)と岩村篤(3年・FC GONA)を送り込む2枚替えで前線に変化を加えますが、「2点目を取られて少しやることが不徹底になった」と見ていたのは佐藤監督。86分には野本の右FKから、ニアで須藤が合わせたヘディングは横山がファインセーブで応酬したものの、直後に安藤のラストパスを佐藤が狙ったシュートはGKを破るも、東岡が懸命のブロックで回避。どうしても押し込まれる流れに抗えません。
90+2分は再び"エースのジョー"。右サイドで佐藤のパスから野本が中央へラストパスを通すと、安藤はさすがの空間認知能力を発揮して、GKの届かないループをダイレクトで流し込んで4点目。90+4分は11番のレフティ。吉田が左ロングスローを投げ込んだ流れから、中央でボールを持った山口は左へ持ち出しながら、腰を回してゴール右スミへ送り込む5点目。「もちろん彼らの頑張りの結果ではあると思うけど、5点は出来過ぎ」と大野監督も話した駒澤が、終わってみれば5ゴールを奪い切り、貴重な勝ち点3を積み上げる結果となりました。
終盤にはゴールを続けて叩き込まれたものの、「駒大さんとは個のパワーが違うなというのはずっとわかっていた中でも、自分たちのしなければならないことはある程度できたのかなと思う」と佐藤監督が話した通り、堀越は決して悲観するような内容ではなかったと思います。「やろうとしていることのペースは悪いものではない」(佐藤監督)ことは疑いようもなく、あとは「駒大さんとか成立さんとか、チャンピオンが取れそうなチームとやった時に、その質の差がモロにスコアの差に出てきてしまうので、そこをグループで出させずに、逆にウチが出せるような展開ができれば、また変わってくるのかなと思う」と指揮官も触れた"グループ"での一体感が何より重要。石上という絶対的な支柱を頂く堀越も、選手権における注目校の1つであることは間違いありません。
「昨日武南と練習試合をやっていて確かに疲れはあったし、3-1で勝っちゃって勘違いした雰囲気があった」(大野監督)という駒澤は、それでも最後は大量5ゴールをマークしての快勝。「夏に中京大中京に負けて、とてもじゃないけど全国では勝てないと思ったので、そこから3、4人入れ替えたり、3年生にもう一度チャンスを与えたりしたことがだいぶハマった」と指揮官が話したように、インターハイで全国の舞台を経験したことで、チーム全体から健全な競争原理や目標自体のベースアップが窺えます。「選手権はやってみないと、勝負なのでわからないと思います。1試合1試合勝ち上がっていくしかないんですよね」と大野監督。4年ぶりの東京制覇へ向けて、機は熟しています。 土屋
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