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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年09月05日

T1リーグ第15節 帝京×関東第一@駒沢補助

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0905komaho.jpgここ数年の東京高校サッカー界を間違いなく牽引してきた両者の今シーズンラストマッチ。十条の黄色と新小岩の黄色が激突する一戦はおなじみ駒沢補助です。
T1リーグでは毎年あと一歩届かなかったとはいえ、一昨年まで7年連続2位という驚異的な安定感を誇る結果を叩き出してきていた帝京。ただ、昨年は惜しくも3位でのフィニッシュ。今年も現在は2位と1ポイント差の3位という位置に付けており、約1ヶ月ぶりとなるリーグの再開初戦を制して、首位を快走する実践学園とのポイントを詰めたいゲームです。
プリンスリーグ関東の再編を受けて降格を余儀なくされ、今年は久々にT1リーグを戦っている関東第一。ただ、そのリーグ戦ではここ5試合勝ちがなく、公式戦でも6月のインターハイ予選以来、3ヶ月近く白星から見放されているのが現状。とはいえ、「夏は非常に良かったんです」と小野貴裕監督はチームの仕上がりに一定の手応えも。「キッカケがどこで来るかという感じ」(小野監督)という中で、その"キッカケ"を掴みたい90分に臨みます。駒沢補助にはアギーレジャパンの初陣を録画予約してきたであろうサッカー好きが集結。18時ちょうどに注目のゲームはキックオフを迎えました。


開始早々のチャンスは帝京。まだ最初のホイッスルから1分経たない内に、カウンターから磯野拓也(3年・川崎フロンターレU-15)が中央を持ち出し、高橋優人(3年・横河武蔵野FC JY)の左クロスは中央へ。ボールに飛び込んだ古市拓巳(3年・岐阜VAMOS)はオフェンスファウルを取られますが、まずは十条の黄色が積極的な姿勢を打ち出します。
対する関東第一は、8分に右から佐藤勇斗(3年・VIVAIO船橋)がCKを蹴り込むも、帝京のCB寺田渚(3年・西脇中)がしっかりクリア。10分に坂東智也(3年・VIVAIO船橋)が入れた左FKもDFが大きくクリアするなど、セットプレーのチャンスもシュートには繋がらず。逆に15分は帝京。ドイスボランチの一角に起用された大塚迅人(1年・FC東京U-15むさし)が右へ展開したボールを、平井寛大(2年・帝京FC)がクロスに変えるもDFがカット。16分にも関口悠太(1年・FC東京U-15むさし)を起点に、高橋のリターンを受けた磯野のシュートはDFのブロックに遭ったものの、フィニッシュの手数は帝京に。
そんな中、徐々に見え始めてきたのは「ペナ前の崩しの所はトレーニングでずっとやっている」と小野監督も話した、関東第一の"ペナ前の崩し"。20分、佐藤が右へ振り分け、音泉翔眞(3年・VIVAIO船橋)がドリブルから1人かわして放ったシュートは、GKの目前でDFが何とかクリア。23分、坂東のパスから音泉が左へ持ち出し、そのまま枠へ収めたシュートは帝京のGK岩崎波瑠(2年・横浜栄FC)が懸命に弾き出し、リバウンドも詰めた鈴木隼平(2年・Forza'02)より一瞬早く岩崎がキャッチしますが、「ドリブルとか独特のモノを持っている」と指揮官も評する音泉の連続シュートで、関東第一にもようやくリズムが生まれてきます。
ただ、「相手を見ながらのサッカーがだいぶできるようになってきた」と日比監督も話した帝京は、寺田と大庭健人(2年・文京クラッキ)のCBでボールを持つ時間も創りつつ、右の長倉昂哉(2年・さいたま木崎中)と左の高橋を縦へシンプルに走らせるシーンも。29分には尾田雄一(3年・帝京FC)のパスから、長倉が得意のシザースでカットインを試み、こぼれを拾った高橋のシュートはDFにブロックされましたが、悪くないペースでゲームを進めていきます。
30分には関東第一に決定機。佐藤が左サイドを縦に切り裂き、丁寧に折り返すと坂東はダイレクトで右へ。待っていた音泉のシュートは、今シーズン公式戦初出場となった岩崎がファインセーブで回避しましたが、直後に佐藤が蹴った右CKへ高い打点で合わせた角口のヘディングも枠の右へ。33分も関東第一。音泉、角口とパスが回り、立石爽馬(1年・フレンドリー)が右へ送ったボールを二瓶亮(2年・江東葛西第三中)はクロスまで。佐藤のシュートは岩崎が正面でキャッチしたものの、複数人のイメージがシンクロしたアタックで、「ボールを持っていない選手が、持っている選手に対してどういう関わり方をしたらどういう風にボールを運んで来れるか」(小野監督)という課題に対して窺える解決策の糸口。
39分は帝京。古市、高橋と繋いだボールを左から尾田が右足で放り込み、ニアへ飛び込んだ長倉のヘディングは枠の左へ。40分も帝京。高い位置でボールを奪った古市が、そのまま中央を運んで打ち切ったシュートは関東第一のGK岸将太(3年・松戸クラッキス)がしっかりキャッチ。お互いに攻撃の狙いを出し合い、見所の多かった前半はスコアレスでハーフタイムへ入りました。


「前半を0-0で終えた時に『今日はお互いに勝った者が強くなるんだろうな』と思っていた」と小野監督が振り返ったように、双方が内容を結果に繋げたいような45分間を経て、迎えた後半は帝京に好リズム。48分に高橋が狙ったミドルは枠の右へ外れ、50分に大塚が思い切り良く放ったミドルも枠の右へ外れましたが、2つのミドルに先制への意欲を滲ませると、直後の50分にも平井が右から上げたクロスを、ファーで拾った高橋が岸にキャッチを強いるシュートまで。勢いはカナリア軍団に。
53分も帝京。左サイドから高橋が右スミへ飛ばしたシュートは、カバーに入った菊池優生(3年・三菱養和JY調布)が間一髪でクリア。直後も帝京。左からのクロスを長倉が左足でミートしたボレーは、しかしわずかにゴール左へ。54分も帝京。古市のミドルは岸がわずかに触り、左のゴールポスト直撃。直後の左CKを尾田が蹴ると、高橋のヘディングは枠の右へ。「自分たちでハーフタイムに修正ポイントを話していた」(日比監督)帝京の続くラッシュ。
ところが、先にスコアを動かしたのは「真ん中の"上"の競り合いに負けていたので、相手の矢印が前を向いてしまい、後ろに重心を置いてサッカーをやらなきゃいけなくなっていた」(小野監督)関東第一。61分、後方からのフィードを角口がしっかり収めて左へ送り、受けた菊池は佐藤からのリターンを呼び込んでそのままクロス。ここへきっちり走り込んでいた角口がヘディングを振り下ろすと、ボールはゴールネットへ弾み込みます。「逆サイドで余る人と、同サイドに勢いを持って行く人」(小野監督)というチームの狙いが体現されたのは、佐藤と菊池の同サイドコンビによる崩しでも、ペナルティエリアの中に音泉と鈴木も入ってきていた部分でも明らか。押し込まれていた関東第一が1点のリードを奪いました。
「ゲームを支配していても一発でやられるという部分で、サッカーの怖さという部分をまた勉強させてもらった」と日比監督が話したように、ペースを握っている中でビハインドを負うことになった帝京。61分には角口に収められ、鈴木を経由したボールを音泉にミドルレンジから狙われ、岩崎が何とかキャッチしたシーンを見ると、日比監督は1人目の交替を決断。磯野に替えて長身FWの山駿介(3年・クマガヤSC)をそのまま前線に送り込み、前へのパワーを増強すると、すぐさま迎えた決定機。
67分は左サイド、ゴールまで約25mの位置から尾田が直接狙ったFKはカベに跳ね返されましたが、その流れから左サイドでボールを持った古市は中央へピンポイントでアーリークロス。ここへうまく入った長倉のヘディングは、バウンドしながらゴール右スミへ吸い込まれます。前半にも似たような形からチャンスを掴んでいた長倉も見事でしたが、「1つ前に出たことで貪欲になる、守備もする、限定するという部分で褒めてあげたいなと思うくらい良かった」と指揮官も賞賛した古市のクロスで勝負あり。たちまちスコアは振り出しへ引き戻されました。
手痛い失点を受けて、それでも「失点した後に自分たちで集まって話したりしていたので、もともと僕はそこを子供に任せると言っているし、そこを変えてもしょうがないかな」と感じた小野監督。ただし、71分には音泉を万代勇輝(3年・FC府中)に入れ替え、交替カードの投入というメッセージを。75分には坂東の右クロスに鈴木が頭から飛び込み、軌道はわずかに枠の左へ逸れるも、「失点した後とかに気負っちゃうという自分たちの課題」(小野監督)に向き合う姿が。77分にはCBが2枚目のイエローカードで退場となりますが、「またハードルが上がったけど、それでやっちゃうしかないよなと」と感じた小野監督の想いは、おそらくチームの共通理解。ピッチの中で信じられるものは何か。見定めるためのラスト10分間。
80分に動いた両ベンチ。帝京は奮闘した大塚を下げて、浅見颯人(2年・FC多摩)を山のすぐ後ろへ。関東第一は鈴木を下げて、ルーキーの石島春輔(1年・JSC CHIBA)をやはり角口のすぐ後ろへ投入し、最後の勝負へ。85分にはその石島がいきなり右サイドで3人のマーカーを切り裂き、強心臓振りを披露。86分にも佐藤の右FKをファーで万代が折り返し、角口はわずかに届かなかったものの、「高校サッカーには信じてやる強みってあって、目を瞑ってでも蹴ったらそこにいるとか。それはウチにないものだったけど、今年のウチには必要な部分」と小野監督が話した"部分"は終盤の随所に。
そして帝京の終盤にも、「プレーするというのは、あくまでも子供たちがピッチの中で主導権を握ってやることなので、僕らはある程度制限とルールと規律だけの部分を守ってやらせている」と日比監督が語った選手の積極的な自立性が。88分に尾田が右から蹴ったCKは一旦DFに跳ね返されるも、再び尾田が放り込んだクロスを寺田が懸命にヘディングで合わせ、ボールは枠の左へ逸れましたが3年生で惜しいチャンスまで。90+2分に佐藤が流し込んだ右FKへ、飛び付いた戸室公輔(3年・クリアージュFC)がゴール右へ外したヘディングがこのゲームのラストシュートとなり、勝敗という意味での決着は付きませんでしたが、「次に繋がるようなゲームを今日はやってくれたし、今までのTリーグの中でも非常に良かった」(日比監督)「次に繋がる内容ではあったというか、気持ちをちゃんと出し切ってやっていたので、そこは僕は良かったんじゃないかなとは思っている」(小野監督)と両指揮官も納得の表情。実りのある勝ち点1ずつを双方が分け合う結果となりました。


前述したように、おそらくここ数年における東京高校サッカー界の重要な局面では、常に鎬を削ってきた感のある帝京と関東第一。選手権の東京予選では逆ブロックに入ったため、実質今シーズン最後の対戦ということもあって会場へ向かいましたが、やはり両者の対戦は色々な示唆に富んでいました。「左右にボールも散らせて、前期でコテンパンにやられた時よりは良かったのかなと見ていましたけど」と日比監督が話したように、帝京は4月上旬に関東第一と"一巡目"を戦い、0-2で完敗を喫しています。あれから5ヶ月。数人の主力を欠く試合の中でも、日比監督は「ここに来て何が変わったかと言われれば、帝京の自分たちのサッカーを貫き通そうという部分が良くなったのかなと思う」ときっぱり。自主性という部分でも「自分たちで問題提起して、『ここがダメだったな』とか、『ここはこうだよな』ということが言えたことが良かった」と評価を口にしています。一方の関東第一も「前よりゴール前に行く迫力とかは個人頼みじゃなくて、ちょっと全体が関わるようになってきたかな」と小野監督。もともと個の能力に関しては他校の監督も羨むタレントを有している中で、「何をやってくるかわからないような個の良い所がある故に、周りが自分のアイデアと共有できないような部分があった」(小野監督)とのこと。それに対して「最後にゴールまで持っていくストーリーを共有できると良いなというのがあったので、インターハイが終わった後はペナ前の所に結構こだわってやってきた」(小野監督)成果が、この90分間の中でも少しずつ出てきているのははっきりとわかりました。この時期はどうしても選手権という大会を意識しない訳にはいかない時期。そのタイミングでも「まずは"その試合"という気持ち」(日比監督)を両者が前面に押し出した好ゲーム。アギーレジャパンの初陣を録画に回した意味は十分にある90分間だったと思います。        土屋

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