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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
昨年度の東京王者であり、全国ベスト8まで躍進した強豪校が1回戦に登場。1次予選から勝ち上がってきた、25歳の青年監督率いる都立高とのゲームは引き続き駒沢第2です。
ここ2年間の選手権予選は負けなし。すなわち東京連覇を達成し、昨年は国立を目前にしてPK戦の末に敗れたものの、全国にもその名を轟かせた修徳。今シーズンはトーナメントコンペティション、リーグ戦となかなか結果の付いてこない時間が続いているものの、やはり最大の目標は選手権。百戦錬磨とも言うべき岩本慎二郎監督の下、帝京以来5年ぶりとなる3連覇に向けて、まずは初戦に挑みます。
1次予選は2試合を大差で制し、迎えた日大三との決勝は7-6という激しいPK戦をものにして、都大会へと駒を進めてきた都立大泉。今シーズンから指揮を執っているという弱冠25歳の青木亮監督が率いるチームは、「インターハイも選手権の1次予選も厳しい試合で何とかやってきているということが、彼らにも自信になっていると思う」とその指揮官も手応えを口に。初戦でいきなりディフェンディングチャンピオンと当たる組み合わせにも、臆するつもりはまったくありません。やや1試合目の興奮が覚めやらない駒沢第2は相変わらずの炎天下。予定より20分ほど遅れて、ゲームはキックオフを迎えました。
ファーストチャンスは都立大泉。4分、最前線に構える舞田大輝(3年・中野北中野中)は思い切ってミドルゾーンからシュートチャレンジ。ボールはゴール右へ外れましたが、まずは難敵に対してファイティングポーズを見せ付けると、修徳も6分には石原海(2年・ジェファFC)が巧みなトラップからシュートまで持ち込むも、ここはDFがきっちりブロック。9分にも河野哲志(3年・ナサロット)のフィードを小澤翔(2年・荒川南千住第二中)が落とし、昨年の全国も経験している小野寺湧紀(3年・荒川第五中)が狙ったシュートはクロスバーを越えたものの、手数を出し合って前半は立ち上がります。
「普段はこういうシステムを使わないが、『今日は引いて守ろうね』という形でやっていた」と青木監督も話したように、都立大泉は普段の3バックではなく、前線に舞田を残した4-2-3-1を選択した中で9枚はきっちりブロックを構築。「守りが主体になるゲームになることは見越していた」(青木監督)中でも、時折ロングスローで反攻を。16分に左から渡辺康平(3年・練馬南が丘中)が投げ入れたロングスローを加藤康希(2年・朝霞エステレーラJY)がすらすも、ボールは修徳のGK砂川鉱一(2年・三郷JY)がキャッチ。17分に渡辺が放ったロングスローも砂川に掴まれますが、はっきりとした脅威を相手に突き付けます。
17分は修徳。笈川勇斗(2年・ヴェルディSSレスチ)のパスを受けた小野寺はドリブルでタメを創って左へ送り、許享文(3年・修徳中)が枠へ収めたミドルは都立大泉のGK宮嶋直輝(2年・大泉高校附属中)が確実にセーブ。この左CKを小野寺が蹴り込み、河野が頭で残したボールを石原海が叩くもクロスバーの上へ。26分も修徳。左SBの和田裕太(2年・三郷JY)がアーリークロスを放り込み、小野寺のヘディングは枠の右へ。チャンスは修徳が生み出すものの、全体的なゲームの流れは膠着状態に。
一撃必殺のセットプレーは34分の修徳。キッカーを任された小野寺が狙ったのは、低いボールでのニアゾーン。ここで待っていた河野はトラップで浮かせると、そのままオーバーヘッドを敢行。ジャストミートしたボールは二アサイドをぶち抜き、ゴールネットへ突き刺さります。「能力的には抜けている」と岩本監督も認めるCBがド派手なゴラッソ。修徳が得意のセットプレーからスコアを動かしました。
スイッチの入った修徳の連続攻撃。36分には小野寺の左CKから、気分を良くした河野のヘディングはクロスバーの上へ。37分にも小野寺が鋭いドリブルで運び、そのまま打ったシュートは懸命にDFがブロック。38分にも小野寺が右からCKを蹴り込み、こぼれを和田が打ち切ったボレーは小川龍人(3年・石神井マメックス)が体でブロック。畳み掛けた岩本軍団。
ところが、次に歓喜の瞬間を迎えたのはファーストシュート以降、1本のシュートもなかった都立大泉。39分、右サイドで獲得したFK。レフティのCB斎藤健人(3年・九曜FC)は柔らかいボールをニアへ蹴り込むと、ここに飛び込んだのは杉山拓人(3年・板橋桜川中)。キャプテンが薄く当てたヘディングは、確実にゴールネットを揺らします。「崩して取るのはなかなか難しいというのは彼ら自身がわかっているので、良い所でのセットプレーは確実にモノにしようという所で、練習していたことが綺麗に出た」と青木監督もしてやったり。劣勢だった都立大泉がワンチャンスで追い付いてみせました。
一瞬で変わったゲームリズム。40分も都立大泉。後方からのフィードが弾むと、マーカーに競り勝った舞田が抜け出し、バウンドを合わせて放ったシュートはわずかに枠の左へ。40+1分も都立大泉。加藤が左CKをグラウンダーで蹴り入れ、最後は杉山が打ったシュートはDFがクリア。直後も都立大泉。渡辺がこの日3本目のロングスローを投げ込み、大牧直暉(3年・府ロクJY)が競り勝ったヘディングは砂川が何とかセーブ。「向こうが焦ってくれて、そこでもう1つ欲しいなという時間帯ではあった」と青木監督。終盤に都立大泉が猛攻の3分間を見せた前半は、1-1のタイスコアでハーフタイムに入りました。
後半はスタートから修徳に選手交替が。笈川を下げて宮腰一生(3年・江東大島西中)を左SHへ送り込み、石原海を右SHへスライドさせて、サイドの推進力向上へ着手するも、ホイッスルが鳴って先にチャンスを創ったのは都立大泉。43分に加藤が倒されて得たピッチ中央のFKは、ゴールまで約30m。これを舞田が無回転気味に直接狙うと、左右にブレたボールはわずかに枠の左へ外れましたが、都立大泉に傾いていたゲームリズムは継続か。
50分に和田のクサビを小野寺がヒールでフリックし、小澤のリターンから小野寺が粘って打ち込んだシュートを宮嶋がキャッチすると、両チームが相次いで交替を。青木監督は左SHの石野智輝(3年・板橋高島第三中)に替えて、福田遼太(2年・大泉高校附属中)をピッチへ。一方の岩本監督はボランチの石原健流(2年・ヴェルディSSレスチ)と足達広大(3年・レジスタFC)を入れ替え、足達はCBのポジションへ。CBの河野が最前線に上がり、小野寺と小澤が1列ずつ下がる「最初から練習していた形」(岩本監督)で、勝ち越しゴールへの意欲を押し出します。
「思っていたよりも早く、点を取らなきゃと修徳側がなってきた」と感じた青木監督。57分は修徳。小野寺が時間を創って左へ送り、宮腰のクロスはわずかに河野と合わず。61分も修徳。宮腰が左へ振り分け、和田のクロスは河野に合いませんでしたが、「速いし、足元もあるし、高さもある」と指揮官も評する河野の1トップは確かな圧力に。63分には石原と雪江悠人(3年・三郷JY)を入れ替え、さらなるバージョンアップを図る前回王者。
64分も修徳。足達のパスから河野が右クロスを送り込み、こぼれを狙った小澤のシュートは枠の左へ。65分も修徳。小野寺の左FKをニアで合わせた小澤のヘディングは枠を捉えるも、カバーに入っていた小林陽太(3年・杉並FC)がライン上で決死のクリア。68分も修徳。SBの田原迫隼人(3年・Forza'02)がクロスを上げ切り、雪江のヘディングは宮嶋がキャッチするも、「どうしてもこっちが前に運ぶ機会は減ってしまった」と青木監督も振り返った通り、修徳のラッシュが続きます。
69分に2枚目のカードを切ったのは都立大泉。奮闘した大牧が足を攣ってしまい、加藤裕紀(3年・練馬東中)とスイッチ。71分は修徳。小野寺の右FKを低い体勢で合わせた足達のヘディングは右ポストを直撃し、詰めた雪江のシュートはDFがクリア。72分は都立大泉の交替。やはり奮闘していた右SBの江口廉(3年・練馬大泉中)も足を攣ってしまい、加藤大地(1年・杉並FC)がそのままのポジションへ。73分は修徳。和田の左アーリーから、河野のヘディングは枠の左へ。75分は都立大泉にとって最後の交替。渡辺も足を攣らせて、安部龍之介(3年・練馬大泉中)との入れ替えを余儀なくされ、実に4バックの3人が交替する「満身創痍の状態」(青木監督)で最終盤へ。
76分は都立大泉に訪れた久々のチャンス。舞田が獲得したFKは左サイド。ゴールまで25m強の位置から、小川が直接狙ったキックは大きくクロスバーの上へ。79分も都立大泉のセットプレー。加藤がマイナスにグラウンダーを蹴り入れ、杉山のスルーを挟んで斎藤が狙ったシュートもクロスバーの上へ。80+2分は修徳。小澤のパスを引き出した小野寺は、ミドルを放つも宮嶋がキャッチ。80+5分も修徳。雪江が右からロングスローを放り、こぼれに反応した足達のシュートをDFがブロックすると、規定の時間はここで終了。「本当に守って守って、最後は本当によく我慢してくれたなという所」と青木監督。勝敗の行方は第1試合に続いて、前後半10分ずつの延長戦へ委ねられることになりました。
「後半の最後は完全にポゼッションも修徳側だったので、『延長は無理しないで逃げ切って、きっちりPKにしに行こう』と」選手に伝えたのは青木監督。ただ、81分に許の左アーリーから雪江が放ったシュートもDFが弾き出し、直後のCKとロングスローを凌ぐと、87分には都立大泉にチャンス。加藤がスルーパスを通し、抜け出しかけた舞田には中村大志(2年・ジェファFC)がタックルで滑り込み、シュートは打たせなかったものの、チラつかせた舞田の脅威。
88分は修徳。許の左クロスがこぼれ、小澤が枠へ収めた強烈なミドルは宮嶋が何とかキャッチ。89分も修徳。雪江がロングスローのフェイクから、自分で上げたクロスは宮腰もシュートまで持ち込めず。90分も修徳。小野寺の右ショートコーナーを受けた小澤は、鋭い反転からラインと平行に運んでクロス。流れたボールを和田が再び中へ入れるも、小野寺のヘディングは枠の右へ。スコアは変わらず、勝負は最後の10分間へ。
91分は都立大泉が迎えた千載一遇のビッグチャンス。エリア内でバックパスを受けたGKへ全力で寄せた舞田は、キックを自らの体でブロック。こぼれを拾い、すかさず打ったシュートは何とか砂川が弾き、さらにリバウンドを叩いたシュートも枠の左へ逸れましたが、舞田の献身的なワンプレーが影響してか、岩本監督は93分に砂川と鴇田龍平(3年・修徳中)というGK同士の交替を決断。95分にはここも舞田が無回転FKを左サイドから狙い、ボールは枠を大きく外れるも、延長後半は修徳より先に創った"あわや"。
王者の意地。97分は修徳。小野寺の右FKから雪江がヘディングシュートを打ち切り、ライン上でボールに飛び付いた宮嶋は一旦こぼすも、何とかキャッチでリカバー。99分も修徳。ここも小野寺の右FKから、こぼれを河野がボレーで狙うも、杉山が体を投げ出してブロック。100分も修徳。ここも右FKを少し動かし、小野寺が上げたクロスを雪江がヘディングで当てるも、ボールはクロスバーの上へ。「本当に良く頑張って集中を切らさずに、しかも替わった選手があそこまでできたので、凄く良かったなと思う」と青木監督。2回戦へと進出する権利はPK戦で争うことになりました。
先攻の都立大泉。1人目の舞田はGKの逆を突いたものの、ボールは右ポストを叩いてGKに当たり、ゴールライン上でストップ。後攻の修徳。1人目の小野寺は宮嶋に方向こそ読まれていましたが、絶対に届かないコースへパーフェクトなPK。1人目の"10番"対決は明暗がくっきり分かれます。
都立大泉2人目の加藤は左スミへ丁寧に沈め、修徳2人目の宮腰はGKの逆を突いて成功。都立大泉3人目の小川は完全にGKの逆を突いて沈め、修徳3人目の河野は宮嶋に触られましたが、「強いボールだから入った」と岩本監督も話したように、ボールはゴールネットへ。都立大泉4人目の斎藤はやはりGKの逆に蹴って成功。修徳4人目の許は右を狙い、宮嶋もわずかに触りましたが、揺れたゴールネット。いよいよキッカーは運命の5人目へ。
外せば終わりの都立大泉5人目は、PK戦へ気勢を上げる円陣の中で「新聞載るよ~」と大声を張ったキャプテンの杉山。右へ蹴ったボールは鴇田が触るもゴールへ収まり、決めれば終わりの修徳5人目は途中出場の雪江。会場すべての視線が注がれる中、雪江が蹴り込んだのはど真ん中。ゴールネットが激しく揺さぶられ、熱戦に打たれた終止符。「ど真ん中に蹴れる度胸あるヤツが5番をやらないと」と岩本監督に送り出された雪江が幕引きを担当し、修徳が辛くも次のラウンドへと歩みを進める結果となりました。
ディフェンディングチャンピオンを極限まで追い詰め、最後はPK戦で散った都立大泉の健闘が光った一戦でした。「前任の先生が凄く頑張って積み上げて下さったものや、今まで教わったことをきっちり出してくれて、本当に良く頑張ってくれたと思います」と話す青木監督の目には涙が。その理由を問うと、「自分の経験のなさ、キャリアのなさ、力のなさが不甲斐ないなという所が一番。もっと何かしてあげられれば良かったし、ここまでアイツらが頑張って試合をしてくれたので、何か僕自身が1つ2つもう少しできることがあったら、あとわずかの所で手が届いたのかもしれないなという所で恥ずかしながら」とのこと。その想いが指揮官を苛むくらい、選手たちは持てる力の最大値を出し切った100分間プラスアルファだったのかなと思います。12人の3年生から、25歳の新米監督と39人の後輩たちへ託された夢の続き。確かな手応えと少しの悔しさを残して、4年ぶりに挑んだ都大会から都立大泉は堂々と去っていきました。 土屋
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