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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年09月14日

高校選手権東京A1回戦 東海大高輪台×都立西@駒沢第2

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0914komazawa2.jpg昨年の選手権予選ベスト4が早くも登場。2年連続での西が丘を狙う東海大高輪台と、2年連続での都大会進出を果たした都立西の対峙は駒沢第2です。
アタッカー陣に強烈なタレントを有し、東京高校サッカー界に新風を吹き込んだのは1年前。トレードマークでもある黄色と黒のユニフォームを纏い、久々に西が丘まで駆け上がった東海大高輪台。今シーズンのインターハイ予選は、2次予選初戦で都立野津田と3-3で打ち合った末にPK戦で敗退を余儀なくされ、所属しているT2リーグでも苦戦が続いていますが、「本当にメンバーが揃って良い状態でやれれば、去年と同じくらいやれるはず」と川島純一監督も話したように、昨年超えへの準備は着々と整っています。
昨年の選手権予選は1次予選で4勝をマークし、実に8年ぶりとなる都大会を経験。その都大会でもきっちり1勝を記録するなど、近年ではかなりの好成績を収めた都立西。迎えた今シーズンは、インターハイ予選でも支部予選を勝ち抜いて、1次予選へと堂々進出。今大会は1次予選からの登場となりましたが、都立勢を相次いで退けると、最後は都立八王子東とのPK戦を制してこの都大会へ。「1年間通して、勝っていても負けていても自分たちのことを自分たちで喋れなければ、それは選手じゃないからというのをずっと話してきている」とは高橋祐之監督。積み上げてきた"自分たちで喋るサッカー"を難敵相手にぶつけます。駒沢第2は朝から強い陽射しと蝉の声。晩夏の選手権予選は高輪台のキックオフでスタートしました。


ファーストシュートは高輪台。5分、右SBに帰ってきた岡田侑也(3年・GRANDE FC)のクリアから、こぼれを拾った小池英翔(2年)のシュートは枠の左へ外れましたが、「地区トップはレギュラーでずっとやっていたけど、トップトップの公式戦は初出場」(川島監督)だという小池が早速積極性を披露。6分にも今部直哉(2年・FELICE・FC浦安)が蹴った左FKを、収めた飯野克憲(3年・インテリオールFC)はシュートまで持ち込めなかったものの、まずは高輪台が押し気味にゲームへ入ります。
10分には都立西にビッグチャンス。右サイドを独力で抜け出した湯浅太周(3年・武蔵野第三中)はそのままフィニッシュ。枠へ飛んだボールは高輪台のGK安齋優太(3年・川崎チャンプ)が弾き出したものの、好チャンスを創出。14分にもカウンターからドリブルで運んだ服部智也(3年・西東京田無第四中)が右へ振り分け、小梁川恵太(2年・世田谷千歳中)のクロスは中央と合いませんでしたが、きっちりやり合う覚悟を鮮明に。
とはいえ、全体のペースはまだ高輪台。15分には野村浩輔(2年・FC東京U-15深川)とのワンツーから、今部が狙ったボレーはクロスバーの上へ。17分には綺麗な形。飯野が左へ振り分け、今部は反転からサイドをえぐって中へ。小池が落としたボールを飯野が叩いたシュートは枠の左へ外れましたが、ようやくらしいアタックが出てくると、歓喜の瞬間は1分後。
18分、CBの池野勇人(3年・JACPA東京FC)がピンポイントフィードを相手ディフェンスラインの裏へ落とし、抜け出した渡邊夢大(3年・FCトリプレッタ)のシュートは都立西のキャプテンでもあるGK佐々木祥彦(3年・FC.GIUSTI世田谷)がファインセーブで回避したものの、この流れの二次攻撃からそのまま左へ残っていた渡邊に再びボールが。得意のドリブルで2人を置き去り、そのまま打ち切ったシュートは二アサイドを貫き、ゴールネットを揺らします。やはりここぞという局面で頼りになるのはこの男。高輪台がスコアを動かしました。
さて、「予定としては前半を0-0でいって、後半に勝負をしたかった」(高橋監督)都立西は1点を追い掛ける展開に。22分には小梁川のドリブルで獲得したFKを右から服部が蹴り込み、こぼれに反応した鶴巻俊人(3年・品川荏原第一中)のシュートはDFがブロック。23分にも服部がミドルレンジから狙ったシュートは安齋がキャッチするも、2つの手数を繰り出すと、28分に「先に取られてしまったので、多少計画を変更しなくてはいけなくなった」高橋監督が決断したのは1人目の交替。湯浅に替えて中野正樹(3年・杉並アヤックス)をそのまま最前線へ投入します。
「精神的にもチームの支えなのは間違いない事実」と指揮官も認める中野の投入で、少し変わったゲームリズム。32分にはカウンターからその中野が中央を運んで左へスルーパス。受けた鶴巻のカットインはDFに阻まれたものの、早くも1つチャンスに絡むと、34分には決定的なシーン。ここもカウンターから服部が左へ展開し、西田将(3年・FCトリプレッタ)が中央へ折り返すと、服部の絶妙スルーでファーががら空き。小梁川のシュートはわずかにクロスバーの上に外れ、先制とはいきませんでしたが、「リズムが少しずつ良くなってきて、ゴール前まで行けていた」と高橋監督。逆に40+1分には高輪台も、飯野を起点に渋谷雄隆(2年・GRANDE FC)が中央へ通すと、小池は収め切れず。都立西も確実に巻き返し始めた前半は、スコアレスドローでハーフタイムへ入りました。


後半は高輪台のビッグチャンスから。44分に小池のドリブルを都立西のCB柴田普天(3年・SOLCOLINA FC AS)を何とかストップして生まれたCKは、左から今部がショートで。渡邊が戻し、今部が打ち切ったシュートは佐々木が懸命に弾き、詰めた榎園玄己(3年・FCトリプレッタ)が枠へ収めたシュートも佐々木がファインセーブで応酬。守護神の仁王立ちで点差は変わりません。
45分には早くも都立西に2人目の交替が。「前半は右サイドの攻撃がうまくできなかった」と見ていた高橋監督は、小梁川を下げて中田千紘(1年・FC多摩)をそのまま右SHへ投入。スタメン唯一の2年生から1年生へのスイッチで、サイドの推進力向上に着手。48分には高輪台も渋谷のパスから野村がカットインミドルを放つも、佐々木ががっちりキャッチ。そして訪れた"自分たちで喋るサッカー"のラッシュ。
49分は都立西。左から西田が蹴ったCKはDFの頭に当たってゴール方向へ。ここはカバーに入っていた岡田がライン上で掻き出しますが、あわやオウンゴールというシーンに。49分も都立西。ラインの裏へ抜け出した中野は飛び出したGKもかわし、中央へ折り返すもDFが何とかクリア。51分も都立西。右サイドで収めて縦へ持ち出した服部が折り返し、ワンフェイクで右へ外した中野のシュートは右ポストにハードヒット。52分も都立西。西田が中央へスルーパスを通し、走った鶴巻は先にボールへ触るも、果敢に飛び込んだ安齋がキャッチ。この時間帯は「ゴール前まで行けていたし、リズムが少しずつ良くなってきた」(高橋監督)都立西が完全にペースを掌握。
53分も都立西。中央右、ゴールまで約25mの距離から中野が選択したのは、直接狙うようなキックモーションからのショートパス。カベの横からフリーで抜け出した服部のシュートは安齋が気迫のファインセーブで立ちはだかったものの、トリックプレーから絶好の同点機を創出。54分も都立西。西田の右CKを中野がバックヒールで流すも、DFが間一髪でクリア。55分も都立西。西田は右CKをストレートボールで放り込み、ニアへ突っ込んだ服部のヘディングはゴール右へ。「ウチはそんなに力のあるチームじゃないので、ゴール前まで行けるか行けないかという所が大事」と高橋監督。ゴール前でのアタックが続きます。
一方、「攻撃の所がいつもに比べると関わりが少なかったので、ハーフタイムで修正した」(川島監督)高輪台もようやく反撃を。57分に左SBの後藤優一(3年・品川大崎中)を起点に野村、飯野と回し、渡邊が打ったシュートはDFがブロック。58分にも右CKを短く始めた今部は岡田のリターンをクロスに変え、榎園の折り返しをゴールへ押し込んだ野村のプレーはハンドという判定に。直後にも右サイドを独走した岡田のシュートが枠内を襲い、佐々木が何とかセーブ。その右CKを今部が放り、こぼれを再び今部が折り返すも、飛び込んだ榎園にはわずかに合わず。「バランスは後半良くなったと思う」と川島監督。白熱の一戦はラスト15分間へ。
67分の交替策も都立西。ボランチで奮闘した瀬川菊(3年・淀橋FCジュニオール)と坂本良太(1年・練馬石神井中)をスイッチさせると、坂本を右SHへ送り込み、「本来はトップの選手」(高橋監督)だという中田を中野と最前線に並べ、最後の勝負へ打って出ると、スタンドの沸騰はわずかに1分後。
68分、相手の最終ラインでパス回しが停滞すると、ここに突っ掛けた鶴巻はボール奪取。少し縦へ運んで中央を見ると、そこには「真ん中に走っていればボールが来るかなと思って、信じて走っていた」という服部の姿が。想いを託したパスが送られ、想いを乗せたシュートが服部から繰り出されると、ボールはゴール右スミへ吸い込まれます。「ダッシュしていて『ヤバい、ヤバい、ヤバい』と思っていた」殊勲の服部はゴールと同時に足が攣って倒れ込みますが、まさに執念の同点弾。「非常にマジメで、最後まで絶対試合を捨てる子たちではない」と高橋監督も太鼓判を押す都立西が、スコアを振り出しに揺り戻しました。
「確かに流れは持っていかれていましたよね。向こうも行けるぞ行けるぞみたいな感じだったし」と振り返った川島監督は、失点を受けて71分に小池と土屋諒太郎(3年・FC目黒)を入れ替え、前線の配置も少しいじって攻撃の微調整を。72分には渋谷のパスから土屋が早速シュートにチャレンジするも、佐々木ががっちりキャッチ。流れを再び引き戻せるか。
75分は都立西。西田のミドルはクロスバーの上へ。76分も都立西。服部の右FKを最終ラインで踏ん張っていたCBの池田龍(3年・西東京田無第四中)が頭で合わせるも、ボールはゴールへ飛ばず、池田も足が攣ってしまいます。77分は高輪台。今部のループミドルは大きくクロスバーの上へ。「後半最後の方は足を攣るヤツもたくさん出てきた」と高橋監督も言及したように、最終盤はプレーが途切れるごとに足を攣らせる選手が続出していた都立西でしたが、2点目のゴールは許さず。所定の80分間が終わったことを告げるホイッスルが鳴り響き、熱戦は前後半10分ずつの延長戦へもつれ込むことになりました。


後半の終了間際に渋谷と佐藤草太(3年・川崎チャンプ)を入れ替えていた川島監督は、後半のスタートから3枚目のカードを投入。今部に替えて須田大翔(2年・足立六月中)を3トップ下へ送り込み、野村を左ウイングへスライドさせて延長に臨むと、いきなりのチャンスも高輪台。右から渡邊が蹴ったCKを、榎園がボレーで狙ったシュートはわずかにクロスバーの上へ外れるも、スタンドがどよめいて20分間の幕が上がります。
83分は都立西。中野が右へ展開し、坂本が1人振って放ったシュートはクロスバーの上へ。87分は都立西。西田の右CKはそのままゴールキックへ。90分は高輪台。渡邊とのコンビネーションから須田が打ち切ったミドルはクロスバーの上へ。エンドが入れ替わった延長後半は92分に都立西。西田の右CKはDFがクリア。93分は高輪台。渡邊の右CKを榎園が頭で折り返すと、岡田のシュートは佐々木がキャッチ。94分は高輪台。右サイドを切り裂いた渡邊のシュートはわずかにゴール左へ。「延長は正直あのまま続けていれば点は入るかなと思っていました」と川島監督。勝ち越しゴールの香りは高輪台に。
突如として訪れた都立西の連続セットプレー。96分からの2分間で左から3本のCKを西田が蹴り込み、安齋のパンチングやDFのクリアに阻まれたものの、「コーナーも取れていたし、セットプレーもあったので、どこかで1回合えばいいかなという気持ちでずっとやらせていた」という高橋監督の想いに、選手が応えたのは土壇場も土壇場。
左サイドで都立西が獲得したFK。スポットに立った服部は、「去年の都大会の1回戦でも、池田にFKを合わせてゴールというのがあったので、それをイメージして」中学時代からの盟友目掛けてボールを送り込むと、池田の頭には当たらなかったものの、ゴール前でバウンドしたボールは、そのままゴールネットへ飛び込みます。その時間、98分41秒。「彼には1度足を攣った時に『オマエを替えるつもりはないから』と言ったので、最後まで行ってくれればいいかなと思っていた」と高橋監督も話した服部の直接FKは、本人も「気付いたら入っていたみたいな感じ」と振り返る魂の一撃。土壇場で服部のドッピエッタが飛び出し、都立西がこの試合で初めてリードを奪いました。
追い込まれた高輪台も最後の反攻。100分には野村のパスから佐藤が叩いたミドルは、わずかにゴール左へ。100+2分、土屋が裏へボールを送り込み、走った渡邊の目前で飛び出した佐々木がクリアすると、駒沢第2を切り裂いたタイムアップのホイッスル。「ジャイアントキリングを起こしてやろうと思っていましたけど、まだ信じられないというか嬉しいです」と服部。都立西が劇的な逆転勝利で、2回戦へと駒を進める結果となりました。


後半の終盤からはほとんどと言っていい選手が足を攣っていたものの、「攣ろうが何しようが3年生だし、最後まで行けやというつもりで行かせた」高橋監督の期待に応え、土壇場で大逆転勝利を収めた都立西。印象的だったのは延長開始前も、延長後半の開始前も、選手たちが非常によくベンチ前で喋っていたこと。これは前述したように、「この子たちは話すことが好きで、練習が終わってからも下手したら2時間でも3時間でも喋っちゃうので、それはこの子たちの特徴」と指揮官。厳しい局面のピッチ内でも"自分たちで喋るサッカー"は貫けていたんじゃないかなと思います。「昨日野球部が試合で負けてしまって、今日はアメフト部がちょうど同時刻に開始なんですよ。お互いに頑張ろうねということで、向こうにも当然応援が行っているし、こっちにも応援が来てくれている中で、校長先生はこっちに来ていただいたので負けられなかったなと。勝って良かったなと思います」と笑って明かしてくれた高橋監督。おそらくは同校のサッカー部史に残るような、素晴らしい100分間でした。
最後に。高輪台には3年生のマネージャーが1人だけいます。彼女の主たる役割は、川島監督曰く「俺の代わりに選手を怒って、選手を動かすこと」。1年生の頃から「部員100人の気持ちが沈んだら、それはオマエのせいだ」と指揮官から厳しい言葉を投げつけられ、涙を流すこともあったそうです。ただ、そんな彼女も3年間という長い時間を経て、今では川島監督も「アイツは本当に成長しました」と認めるまでに。役職こそマネージャーですが、実際はコーチングスタッフの一員としてチームを支えてきました。悔しい結果に終わった試合後、ふと気付くとベンチの方から「最後までちゃんとやれ!」と選手へ向けて毅然とした声が。それは女性のそれ。自身にとっても最後の選手権が終わったばかりのマネージャーその人が、俯く選手へ向けた最後の"指示"でした。高輪台が共学になって15年余り。その間に、3年間という時間を全うして卒業したいわゆるサッカー部の"OG"は、昨年のマネージャーに続いて彼女が2人目になるそうです。最後の最後まで監督から与えられた役割をやり遂げた彼女の3年間にも、大きな拍手を送りたいと思います。           土屋

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