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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
昨年もセミファイナルで対峙した両者のリターンマッチは第2戦。柏がアウェイで1点のリードを奪い、優位に立って迎えるホームゲームはもちろん日立台です。
14年ぶりに国立の空へカップを掲げたのは昨シーズン。迎えた今シーズンもリーグ戦ではなかなか調子が上がり切らない中でも、このナビスコはわずか1敗でグループリーグを突破するなど、カップ戦での強さをしっかり発揮している柏。前述したように、土曜日に行われた第1戦は敵地でレアンドロと工藤壮人がゴールを挙げて、勝利と2つのアウェイゴールを奪取。史上4クラブ目の連覇へ向けて、ホームで凱歌を上げたい一戦です。
昨年のセミファイナルも第1戦の敗戦が響き、柏に屈する格好で2001年以来の戴冠を絶たれた横浜FM。ACLへの参戦を受けて、グループリーグは免除されていたため、今年のナビスコはこのステージからの登場となりましたが、第1戦はホーム三ツ沢で悔しい黒星を享受。さらに、中村俊輔、中町公祐、兵藤慎剛と3人の主力を負傷で失い、栗原勇蔵もレッドカードで出場停止という苦境を強いられる中で、チームの反発力と総合力が試されます。気温は20.9度と、もはや秋の訪れはすぐそこまで。待ったなしのセカンドレグは横浜のキックオフでスタートしました。
好リズムで立ち上がったのは柏。4分、茨田陽生がレアンドロに送り、こぼれ球を茨田が狙ったシュートはヒットしなかったものの、5分には右から、6分には左から共に高山薫がFKを放り込み、同じく6分には大谷秀和が左へ展開したボールから、橋本和が上げたアーリーに工藤が飛び込んだヘディングは枠の右へ。7分にも高い位置でボールを奪ったレアンドロが素早く狙ったスルーパスは、工藤の前でファビオが何とかカットしましたが、まずはホームチームが得点機を窺います。
ただ、8分に藤本淳吾が右サイドから25m近いミドルを枠内へ打ち込み、菅野孝憲がキャッチしたあたりからギアの上がった横浜の圧力。12分には左サイドから奈良輪雄太が鋭いボールを入れたクロスは、菅野がワンハンドで好セーブ。13分にも藤本の右CKを、ニアで合わせた矢島卓郎のヘディングは枠の右へ。14分にも藤本、矢島、奈良輪とボールが回り、藤本が裏へ落とすと、矢島のヘディングは伸び切ってしまい、クロスバーの上へ外れますが、久々のスタメン出場となった奈良輪が広範囲に動いて掻き回し、アウェイチームへ移っていったゲームリズム。
「相手もビハインドで、前から来なきゃいけない、点を取らなければいけないという状況で、自分たちがなかなか下で繋ぐことができず、相手の得意な高さで主導権を取られて、押されていた部分はあった」と茨田も振り返ったように、続く横浜の攻勢。17分も横浜。矢島が粘ってボールをキープし、そのまま放ったミドルはゴール左へ。22分も横浜。奈良輪の仕掛けで獲得した右CKを藤本が蹴ると、ここはファビオに競り勝った橋本がクリアしましたが、打ち出し続ける「しっかりとボールを奪いにいく、それからゴールに向かうという姿勢」(樋口靖洋監督)。
歓喜はお家芸のセットプレーから。23分に藤本が蹴った左CKは素晴らしい軌道を辿って中央へ。ゾーンで守る柏ディフェンスの間にうまく飛び込んだ中澤佑二が頭で叩き付けたボールは、バウンドしながらゴールネットへ到達します。貴重な先制弾は、同時にアグリゲートスコアでも大きな意味を持つアウェイゴール。横浜がまずは1点を強奪してみせました。
以降も「相手の前から来るプレスと、非常に意識の高いセカンドボールの奪い方、反応の所で、ウチが下でリズムを創っていくという、本来持っていきたかったリズムが創れなかった」とネルシーニョ監督も認めたように、やや中盤をボールが行き来する中でも横浜がペース自体は握っていましたが、一瞬で太陽王を照らしたのは「1点取られて多分目が覚めたんじゃないかなと思う」と話した"陽"の名を持つ20番。
31分、橋本からのパスを受けた茨田は落ち着いた間合いから一撃必殺のスルーパス。走った高山薫が中央を見定め、GKとDFの間にこれまた極上のグラウンダークロスを通すと、「僕は押し込むだけだったんで、ほとんどカオル君のゴールかなと思う」と話した工藤が難なくプッシュ。茨田のアイデアに高山と工藤が共鳴した完璧なフィニッシュ。「ゴールを取れない時、取れている時と、しっかり自分のプレーに対して反省をしながら、改善できたというのは良かったと思う」という工藤はこれで公式戦3戦連発。この試合は1-1。アグリゲートスコアでは再び柏が一歩前に出ました。
ややボランチと中に入ってきがちなSHへの対応をに苦慮していたものの、この前後から「はっきりボランチがボランチを見て、ワタルが淳吾さんを見てという形に変えて、やり方がはっきりしたのかなと思う」と大谷が話したように、マーカーも整理されてきた柏は攻撃にも好リズムが伝播。39分には大谷のパスから橋本が斜め前に素早く付けると、スムーズなターンで前を向いた高山のシュートは枠の左へ。44分にも工藤が右サイドからラインの裏へスルーパスを通し、レアンドロのループはわずかにクロスバーを越えましたが、「質の高さで相手のラインを下げることで、こっちのカウンターがうまく機能していた」とは工藤。45+2分には藤本の左CKを中澤が頭で残し、拾ったファビオのシュートは高山が果敢なブロックで潰し、小椋祥平のボレーは枠の上へ。前半の45分間はお互いがゴールを奪い合うも、柏がセミファイナルへ一歩近付いた格好でハーフタイムへ入りました。
後半の序盤はお互いに手数。49分は柏。大田が右のハイサイドへ落とし、走ったレアンドロが入れたグラウンダークロスは、横浜のGK榎本哲也が足でクリア。50分は横浜。左サイドで伊藤翔が何とか残し、奈良輪が中へ短く出すと、しっかり回り込んでいた伊藤のシュートは枠の右へ。58分は柏。「ディフェンスとのコミュニケーションが、試合と練習を重ねていくにつれてどんどん良くなっているというのは自分でも感じている」と話すエドゥアルドの好フィードを高山が引き出し、レアンドロを経由して高山が打ち切ったボレーは枠の上へ。58分は横浜。中央で藤本とスイッチした奈良輪は独走も、マーカーに寄せられながら放った左足シュートは枠の左へ。「相手から2点目、3点目を取りに来ようという気持ちは凄く感じた」とは工藤。とはいえ、柏はアグリゲートスコアでの優位性を頭に入れつつ、冷静にゲームを運んでいきます。
すると、64分に爆発した黄色いスタンド。抜群の安定感を誇る鈴木大輔が頭で前に弾き返すと、拾った茨田は喜田拓也に寄せられてバランスを崩し掛けながらも、持ち直してそのまま中央を独走。「どこに蹴るか落ち着いて判断できる状況で、3つの選択肢をくれた」前線3人の中で、茨田が選択したのは左を走った工藤へのスルーパス。「自分で勝負しても良かった」状況の工藤は、しかし「2対1ができていて、モンちゃんもフリーだったので、出した方が確率が高いのかなと」右へラストパス。飛び出したGKを見定め、レアンドロが浮かせたシュートは静かに、それでいて力強くゴールネットへ収まります。「あのゴールの90%は工藤のもの」とパートナーを称えたストライカーもさすがの決定力。ここも茨田のアイデアにレアンドロと工藤が共鳴した完璧なフィニッシュ。逆転を意味する"2"の数字が、柏のスコアボードに灯りました。
すっかり意気上がる黄色いサポーターを後ろ盾に、勢いは確実に柏。66分、高山のFKに橋本が競るも榎本がキャッチ。67分、太田の右CKはDFが何とかクリア。69分に藤本が蹴った左CKもクリアで凌ぐと、70分のチャンスは流れの中から。橋本、レアンドロとボールが回り、茨田は右へ振り分け、太田がカットインから狙ったシュートはDFに阻まれるも、「2点目からはうまく時間を使いながら、試合を進めたんじゃないかなと思う」と工藤も語った通り、柏が明確に進む勝利への道筋。
71分の決断は樋口監督。「最低でも2点を取らなければならなかったという状況」で、喜田に替えて送り出したのは藤田祥史。「前で数的に合わせにいってボールを奪うという狙い」(樋口監督)の下、小椋をアンカーに置いて、その前には奈良輪と藤本を配し、前線には右から藤田祥史、矢島、伊藤を並べ、「リスク覚悟の形」(同)で大逆転を目指します。
それでも76分のチャンスは柏。大谷を起点に橋本が繋ぎ、茨田のゴール右スミを狙ったコントロールショットは、榎本がファインセーブで回避しましたが、「CBの前、ボランチの後ろでボールを受けられた時というのは、自分の特徴や長所を生かせるチャンスだと思う」と話す茨田の躍動感は特筆モノ。横浜は気勢を削がれてしまいます。
79分に柏が大谷と栗澤僚一を、80分に横浜が伊藤と齋藤学を、さらに81分には柏が太田と藤田優人を相次いで入れ替えると、次のゴールへ絡んだのは最後にピッチへ駆け出した男。82分、投入後のファーストタッチでいきなりFKのキッカーを任された藤田優人は、右サイドから完璧なボールを中央へ。「ゴールを狙って突っ込んでいったし、相手の2枚の間に突っ込めて、そこにドンピシャでボールが来た」と振り返ったエドゥアルドが「得意のヘディング」で押し出したボールは、ゴールネットへ弾み込みます。「練習中から彼が良いボールを蹴るというのはわかっていたし、信じてそこに入っていっただけ」と話したエドゥアルドの加入後2ゴール目は、藤田優人の好アシストから。「2試合に渡るゲーム全体のオーガナイズと、組織と個々の状況判断、ゲームクオリティが高いレベルで結果も残せた」とネルシーニョ監督も納得の完勝。柏がセミファイナルへと駒を進める結果となりました。
連覇まであと3試合に迫った柏にとっては、収穫の多い試合だったと思います。中でも「今は動きと意図が合うだけじゃなくて、ゴールにも結び付いていることは彼らにとっても自信になるし、当然チームにとってもプラスの要素」と指揮官も言及した前線の3人のコンビネーションの向上が結果に現れた部分は、とりわけ大きな収穫だったと言えそうです。そのコンビネーションを問われ、レアンドロが「試合を重ねるにつれて関係性が良くなってきた」と話せば、3人の動きを「裏に抜ける選手、足元に来る選手という所で相手のDFラインも困惑していたと思う」と評したのは茨田。「彼らの中央でのトライアングルの質を上げるために、私からの要求とオーガナイズをずっと伝えてきている」(ネルシーニョ監督)ことが実を結び始めている柏の進撃は果たしてどこまで。 土屋
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