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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年08月09日

インターハイ決勝 大津×東福岡@中銀スタ

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0808kose.jpg夏の日本一に王手を懸けた最終決戦。灼熱の山梨を舞台に繰り広げられたインターハイもいよいよファイナル。舞台は山梨中銀スタジアムです。
初戦となった浦和東戦で5ゴールを挙げて大勝すると、優勝候補の一角と目されていた立正大淞南には2点を追い付かれる嫌な展開を強いられながら、PK戦で辛くも逃げ切りに成功。3回戦の初芝橋本戦も2点リードを吐き出しながら3-2で振り切り、長崎海星を5-0、5年ぶりの優勝を目指す前橋育英を1-0でそれぞれ下して、同校史上初の全国ファイナルへと辿り着いた大津。バックスタンドには部員の、メインスタンドには保護者やOBの応援団が陣取り、一気に頂点まで駆け抜ける準備は整っています。
作陽を6-0、神戸弘陵を8-1と衝撃のスコアで粉砕して、わずか2試合で大会の主役へ鮮やかに躍り出ると、3回戦では地元開催での優勝を狙う山梨学院大附属を1-0で撃破。その3回戦で決勝ゴールをマークしたキャプテンの中島賢星(3年・アビスパ福岡U-15)を警告累積で欠いた準々決勝も鹿児島実業を4-2で一蹴し、昨日のセミファイナルは青森山田を3-1で倒して、17年ぶりの優勝へあと1勝まで迫った東福岡。"赤い彗星"復権へ向けて、最後の1試合に臨みます。スタジアムには彼らと同年代の高校生も含めて、3200人もの観衆が。ファイナルの火蓋は大津のキックオフで切って落とされました。


開始1分経たずに仕掛けたのは"ヒガシ"の左翼。ボールを引き出した赤木翼(3年・UKI-C.FC)が縦に加速したドリブルから獲得したCK。末永巧(3年・レオーネ山口U-15)が左から入れたボールはDFのクリアに遭いましたが、そのドリブルで大会を沸かせてきた赤木が早くも持ち味を。8分には中村健人(2年・UKI-C.FC)が右へ振り分けると、増山朝陽(3年・福岡板付中)の低空クロスはそのままゴールに飛び込み、最終的に判定はオフサイドとなったものの、9分にも中村が右に展開した流れから、増山が鋭いクロスを送り込むなど、まずは「"ヒガシ"の特徴であるワイド攻撃」(赤木)からチャンスを窺います。
11分は大津に訪れた好機。田原悟(3年・ブレイズ熊本)、一美和成(2年・エスペランサ熊本)とボールが回り、葛谷将平(3年・府ロクJY)が裏へ落とすと、走り込んだ坂元大希(3年・サガン鳥栖U-15)はオフサイドと判定されますが、悪くないアタックを。「これまでの東福岡の強烈なサッカーを見ていて、ウチのサッカーをやってどこまで通用するかを見てみたかった」と平岡和徳監督が話したように、きっちりサイドに蓋をしながら、平岡拓己(3年・ソレッソ熊本)と田原のドイスボランチもセカンドを回収しつつ、明け渡さないゲームリズム。
14分は東福岡。右SBの堀吏規伸(3年・レオーネ山口U-15)を起点に、中村が折り返したボールを中島がエリア外から狙うもヒットせず、大津のGK井野太貴(3年・ブレイズ熊本)がしっかりキャッチ。18分も東福岡。中盤で「正直バランスは難しいしキツいですけど、サイドが強いので僕が奪ったら逆にチャンスなんです」と話す近藤大貴(3年・サガン鳥栖U-15)が言葉通りにボールを奪取し、中村を経由したボールを左足で叩いた末永の「手応えもあったし、入ったと思った」と自ら振り返ったミドルはクロスバーを直撃。ただ、手数は繰り出す中でも東福岡のアンカーを務める近藤が「サイドは相手のマークも厳しくなるし、詰まっていた部分はある」と話したように、サイド攻撃の迫力は大津にうまく消された格好で、完全にペースを掴むまでには至りません。
20分は大津。右SBの河原創(2年・ソレッソ熊本)が縦に落とし、マーカーと併走していた古庄壱成(3年・大津北中)のミドルは大きく枠の右へ逸れるも、ようやくファーストシュートが記録されると、セカンドシュートで動いたスコア。23分、左のハイサイドで一美が粘って残し、3列目から飛び出した田原を経由して、葛谷は右へラストパス。古庄が少し窮屈な体勢から狙ったシュートは、ゴール左スミへ一直線に突き刺さります。完璧と言っていい崩しを披露しての堂々たる正面突破。大津が先制点を奪いました。
以降はペースも手数も大津。26分には葛谷が高い位置でボールを奪い、一美が左へ展開すると、坂元の折り返しを葛谷がダイレクトで狙ったシュートは東福岡のCB加奈川凌矢(3年・UKI-C.FC)が体でブロック。28分にも一美が中央をスルーパスで貫き、古庄が走るもここは飛び出した東福岡のGK脇野敦至(2年・WestKidsDuel FC)が大きくクリア。34分にも右サイドでラインを割りそうなボールを古庄が粘って残し、河原は中央へ鋭いパスを。受けた一美が右へ流れながら打ったシュートは枠の右へ外れるも、積極的なトライを。35+2分には東福岡も、近藤のヒールパスから中島が右へ振り分け、最後はCFの木藤舜介(3年・アビスパ福岡U-15)がオーバーヘッドを試みるもヒットせず。平岡監督も「前半については満足している」と話したように、大津がほぼパーフェクトに近いゲーム運びで1点をリードして、最初の35分間は終了しました。


後半も先にチャンスを創ったのは大津。37分に葛谷が粘って右へ展開すると、古庄の速いクロスは脇野が何とかキャッチ。東福岡も39分には中村のドリブルから左CKを獲得するも、末永のキックはニアで平岡がクリア。41分にも赤木が右足で上げた左クロスから、木藤が頭に当てたボールはゴール右へ。ハーフタイムを挟んでも大きな流れに変化なし。
43分は大津。自陣でボールを持ったCBの野田裕喜(2年・ブレイズ熊本)は、少し運ぶと45m近いロングシュートを枠の右へ。45分は東福岡。ここも堀が起点になり、中村、木藤、中村と細かく回すと、増山が上げたクロスは中と合わずにタッチラインの外へ。直後の45分も東福岡。右サイドを堀がぶち抜き、上げ切ったクロスは野田が確実にクリア。得意のクロスがフィニッシュまで繋がらず、シュート数も伸びません。
逆に近藤も「9番にやられた感じはあった」と認めたように、大津は1トップに入った一美が前線での基点創りに奔走し、実際にかなりの確率でボールを収めたことが、カウンター時にもパスワーク時にも大きな後ろ盾に。52分には左サイドの高い位置で一度は失ったボールを奪い返した一美が中へ切れ込み、ワンテンポずらして放ったシュートはクロスバーをかすめて枠の上へ。53分にも左サイドで坂元のパスを一美が綺麗にダイレクトで返し、坂元のシュートは右サイドネットを捕獲。追加点かと思われたシーンの帰結はオフサイドとジャッジされたものの、「今年のウチのスタイルの中の、ゴール前の崩しの良い所が出た」とは平岡監督。追加点への香りをピッチへ漂わせます。
東福岡に訪れた絶好の同点機は56分。増山が右へ長い球足のパスを送ると、GKより先にボールを収めた木藤は懸命に中へ。走り込んでいた増山がボールを止め、すかさず反転からのシュートを枠に収めましたが、全力でカバーに戻っていた河原はライン上で決死のクリア。崩れない大津の鉄壁。57分にもエリア内まで侵入した中島がDFともつれて転倒するも、岡宏道主審はフェアなコンタクトと判断してノーホイッスル。スコアは変わりません。
先に動いたのは森重監督。59分には足を引きずる木藤を下げて、餅山大輝(2年・ルーヴェン福岡)を最前線へ投入。60分に加奈川の右アーリーに赤木が競り勝ち、餅山のヘディングがヒットしなかったシーンを見届けると、中村と山根つばさ(3年・大村郡中)も入れ替え、最後の10分間へ向けてアタッカー陣のパワーを増強します。
61分にはCBの倉本龍吾(3年・ソレッソ熊本)が2回連続でヘディングのでクリアを敢行するなど、「DFラインは4枚とも本当に頑張ってくれた」と指揮官も認めたように、右から河原、野田、倉本、大塚椋介(2年・ブレイズ熊本)で構成された4バックを中心に、守備陣の集中が途切れない大津。「10番の心臓を最後は止めなきゃと思った」平岡監督の決断は64分。先制弾の古庄に替えて、送り込むのはDF登録の時松拓海(2年・ロアッソ熊本U-15)。与えられた役割は10番、すなわち中島へのマンマーク。"心臓"を止める仕事を2年生に託します。
66分は東福岡。赤木が左へ付けると、切り返した山根の右足クロスは井野がパンチングで防ぎ、赤木が頭で落としたボールを近藤が叩いたボレーは大きくクロスバーの上へ。残された時間はわずか。追い詰められた東福岡。67分には大津も左サイドで葛谷が上げ切ったクロスは、わずかに一美へ届かず。始まった初優勝へのカウントダウン。
"赤い彗星"は死なず。68分の執念。「中島からも『俺にはマークが付いてるから』と言われていたので、自分を使ってくれとみんなに言っていた」という近藤が、ボールを引き出して左サイドへ展開。このパスを受けた赤木が「GKが前に出ていたので、誰にも当たらなくてもゴールに入ってくれたらいいなと、上を越すくらいのボールを蹴ってやろうと」クロス気味のボールを送り込むと、「蹴った瞬間に無回転で行ったので入ったなと思った」軌道は、その確信通りに右のサイドネットへそのまま飛び込みます。熊本県出身で「相手には小学校低学年の頃からの友達も結構いたので、熊本だけには絶対に負けられない気持ちは大きかった」と語った11番が土壇場で叩き出したのは、起死回生の同点弾。ファイナルは最後の最後でスコアが振り出しに。前後半10分ハーフで争われる延長戦へ、勝敗の行方は縺れ込むことになりました。


「最後まで諦めるなという所でやりましたが、失点の形からしてなかなか切り替えられなかったですかね」と平岡監督。「『絶対勝てる』と言って延長へ入った。自分たちは2年間くらいキツいフィジカルトレーニングをしているので、走り勝つというのは自信があるんですよ」と近藤。展開的に如何ともし難かった勢いの差。衝撃は3番の左SBによって。
74分、大津が右サイドでカウンターを発動すると、立ち向かった末永はボールを奪い返してルックアップ。「早く攻撃に繋げようと思って、前を見たらGKが出ていたので、ゴールを狙えるかなと思って」センターサークルに差し掛かった位置からシュートモーションに入ると、そのまま50m近い距離のロングシュートを選択。ボールはゆっくりと、それでも確かな意志を抱いた放物線を描き、ゴールネットへ吸い込まれます。「今までも色々なシーンの中で、インターセプトして点に結び付けるという場面もあったので、"予測"というのは末永が持っているストロングポイント」という指揮官の言葉通り、ボールカットから超ロングシュートまで末永1人で完遂するパーフェクトな大仕事。とうとう東福岡が逆転してみせました。
こうなると「リードされて追い付いて逆転してという所で、気持ちにゆとりが出た分、もう1点という形に繋がったんじゃないかなと思う」と森重監督の言葉を待つまでもなく、躍動する"ヒガシ"。76分には増山が左サイドを独力でえぐってクロスを放り、ワントラップで打った赤木の決定的なシュートはわずかにクロスバーの上へ。79分にも近藤が左へ送り、増山のカットインシュートは井野が足でファインセーブ。緩めない追加点への意欲。
粘る大津も84分には一美が奪ったFKを河原がゴール前へ蹴り込むも、脇野が冷静にパンチングで回避。直後に葛谷が入れた右CKもファーへ流れ、拾った橋田夏希(3年・ロアッソ熊本U-15)のリターンを葛谷が上げたクロスも脇野がキャッチ。平岡監督も85分には3枚目のカードとして平野健二(3年)を送り込み、頂点への決意を采配に滲ませます。
最終盤に上回った決定力。97分、増山が右から折り返し、スムーズなターンから枠へ飛ばした赤木のシュートは井野がファインセーブで応酬するも、こぼれたボールにいち早く反応した餅山が頭で押し込んで3点目。100+2分、直前に交替で入った永田大樹(3年・福岡玄洋中)が左サイドを運んだドリブルから中へ戻し、餅山のシュートは井野がよく弾いたものの、増山が綺麗なボレーで沈めて4点目。そして103分18秒に迎えたのは、戴冠を告げるファイナルホイッスル。「肉体的にも精神的にも相手が先行している中で非常に苦しかったと思うし、そういう中でも最後に結果を残したということは一番の収穫ではなかったかなと思います」と自らの教え子を賞賛したのは森重監督。延長で底力を発揮した東福岡が、17年ぶりに夏の頂点へ上り詰める結果となりました。


壮絶な90分間だったと思います。「決勝戦にふさわしい、素晴らしい大津らしさを表現してくれたと思います」という平岡監督の言葉にも頷けるような、大津の奮闘も際立っていました。そんな中で東福岡を支えていたのは、「目的意識をハッキリ持ってトレーニングをしていれば、彼らはちゃんとやってくれる」と森重監督も口にした、トレーニングから来る絶対的な自信。「正直メチャクチャキツいです」と近藤が苦笑するフィジカルトレーニングは、赤木も「本当にキツい。夏なんかは最悪です」と同調するほど。ただ、赤木が続けて「それがあっての今日の後半の強さだったり、延長戦に入っても大津の選手は足が攣る中、"ヒガシ"の選手はそうでもなかったので、そういう所が今日の全国制覇に繋がったと思います」と話せば、近藤もそのトレーニングの効果を「タイムだったらもう1秒を短くしようと、あと一歩が出るようにと、自分なりに頑張っている」と口に。厳しいトレーニングがもたらす揺るぎない自信は、2人が声を揃えた「後半になれば絶対にやれると信じていた」という部分にしっかりと繋がっていました。「最後は内容は今ひとつ乏しかったかもしれないけど、結果が出たことによって本当に逞しさを感じたし、彼らは強いなと思います。ただ、僕はまだまだ行けると思っているので、まだ成長できると思っているし、そこを最後までしっかり伸ばして卒業させてあげたいなと思います」と森重監督。まだまだ十分な伸びしろを残しての日本一。これから遂げるであろう、さらなる進化が今から楽しみになるような、東福岡の圧巻とも言うべき戴冠に心から拍手を送りたいと思います。        土屋

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