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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年08月18日

J2第27節 横浜FC×讃岐@ニッパ球

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0817mitsuzawa.jpg置かれた立場は異なれども、お互いにここからの浮上のみを義務付けられている現状は一緒。14位と21位が晩夏に差し掛かりつつある横浜で対峙する一戦は三ツ沢です。
21試合でわずかに4勝と、厳しい戦いを強いられた前半戦は過去の話。22節からは怒涛の4連勝を飾り、前節はアウェイで千葉とも引き分け、9戦無敗継続中で14位にまで浮上してきた横浜FC。「自分たちは目標があるわけで、もうその目標を諦めて終わるのか、もう1回みんなで勝ちにこだわってトレーニングして、試合をやって、結果を出すのか、じゃあどっちなのと言った時に、今は結果にこだわってトレーニングもできている」と話すのは中盤のキーマンとも言うべき松下裕樹。唯一の"目標"へ向けて、もう一度チームのベクトルを揃えていくための試合が続きます。
待望の初勝利は第15節。21位と22位の直接対決となった富山戦にアウェイで競り勝つと、以降は2勝5分け4敗と着実に勝ち点を積み上げ、最下位に位置する富山との差を広げつつある讃岐。前節も熊本相手に後半アディショナルタイムの同点弾で勝ち点1をモノにするなど、チームは上り調子。「讃岐はここの所で良い戦いを見せているので、ある意味では千葉より難しい試合になるよと選手に伝えた」とは敵将の山口素弘監督。アウェイとはいえ、勝ち点3への強い意欲は変わりません。気温27.6度、湿度57%と、三ツ沢の夜は絶好のコンディション。勝利のみを目指す90分間は横浜FCのキックオフでスタートしました。


「非常に良い集中力、テンションでゲームに入ってくれた」という山口監督の言葉を証明したのは、いきなり見せた目の覚めるような先制パンチ。3分、パク・ソンホが確実に落とし、寺田紳一が左へ付けると、ここにいたのは16節以来のスタメン出場となった野村直輝。「体が勝手に動いた」と自ら振り返る、エリア外から冷静にコントロールされたシュートは、ゴール右スミへ美しい軌道を描いて吸い込まれます。「今日結果が出せなかったら次はないという気持ち」でゲームに臨んだルーキーのゴラッソ。ホームチームが早くもリードを奪いました。
さて、あっという間にビハインドを背負った讃岐。7分にはクリアボールを拾った小澤雄希が強引にミドルレンジからファーストシュートを放つも、ボールはクロスバーの遥か上へ。それほど横浜FCが前からプレスに来なかったこともあって、ある程度は最終ラインでボールは持てるものの、そこから縦へとボールを入れるスイッチが見つからず、攻撃の形はなかなか出てきません。
一方の横浜FCも「基本的には良い状態の時にはプレッシャーに行くし、全部が全部ハイプレッシャーは難しい部分はあるが、その部分は選手が判断ができているのかなと思う」と山口監督が話したように、行く所と行かない所を判断しながら、リードもあってそれほど無理には出て行かず。22分に松下裕樹のパスから、松下年宏が左足で打ったミドルは讃岐のGK石井健太がキャッチ。23分にもCBの野上結貴が左へフィードを送り、SBの中島崇典がトラップで縦へ持ち出してクロス。パク・ソンホはスライディングで飛び込み、わずかに触れませんでしたが、悪くないチャレンジを時折繰り出します。
すると、次にハマのサポーターへ歓喜をもたらしたのはセットプレー。31分、パク・ソンホのポストから松下年宏が獲得したCK。これを右から松下年宏が自ら蹴ると、中央でマーカーへ完全に競り勝ち、ヘディングでゴールへ叩き込んだのは野上。3本目のシュートで2つ目のゴールを生み出す効率の良さ。CBの今シーズン4点目が飛び出し、横浜FCが点差を広げます。
「2点目も入っちゃったので、あとは失点は絶対しないように」(松下裕樹)前半を乗り切りたいホームチームに対し、アウェイチームも終盤に手数。37分には中央左、ゴールまで約30mの位置から持留新作が直接狙ったFKは力なく枠の左へ。43分、高い位置で寺田から小澤がボールを奪い、その流れから堀河俊大が右へ流したボールを、我那覇和樹が叩いたシュートはDFがしっかりブロック。「積極的に受けないで、前半はうまくゲームを進められたらなと思っていた」という松下裕樹の言葉通りに進んだ展開。横浜FCが2点のアドバンテージを握って、ハーフタイムに入りました。


後半開始から動いたのは北野誠監督。「新しい選手を2人入れて、距離感が合わなくなった所が、僕の完全なスタートの選手のミスマッチだった」と前節から入れ替えた右SBのソン・ハンキと1トップ下の持留を下げて、武田有祐と木島良輔を投入する2枚替えを敢行。武田はそのまま右SBへ、木島は我那覇と2トップを組む格好で残りの45分間に挑みます。
後半もファーストシュートは横浜FC。47分、ピッチ中央、ゴールまで30m近い距離のFKを松下裕樹が直接枠へ収め、石井が何とかキャッチしましたが、「絶対に先に失点はしないようにというのを考えながら、ハーフタイムでも3点目を取ろうと言いながらやっていた」という狙いと気概を1本の直接FKで示してみせます。
そんな中、少し格の違いを見せ付けるような格好で、ピッチ上を駆け回ったのは35歳のストライカー。47分には右サイドに開いた木島がピンポイントでクロスを送り、フリーで合わせた小澤のヘディングは横浜のGK南雄太にキャッチされたものの、52分にも山本翔平、小澤と回ったパスを受けた木島は、前を向いた瞬間に思い切りよくミドル。少しドライブが掛かったボールはクロスバーに阻まれましたが、木島の躍動で讃岐にも射し込み始めたゴールへの光。
ところが、次の得点を記録したのも紺の"サード"ユニフォームを纏った横浜FC。56分にやや中央左寄りで獲得したFK。ゴールまでの距離はおよそ25m。短い助走から松下年宏が蹴り込んだボールはカベを越えると、ゴール右スミギリギリのポイントへ飛び込みます。24番を背負う30歳の今シーズン2ゴール目は大きな追加点。スコアは3-0に変わりました。
小さくないリードを手にした横浜FCは、58分に1人目の交替を。「相手がロングボールを蹴ってきたので、その圧力でセカンドボールで後手を踏んだ」と見ていた山口監督は、先制弾の野村に替えてアン・ヨンハをボランチへ送り込み、野崎が左SHへ、寺田が1トップ下へそれぞれスライド。ゴールこそ奪ったものの、やや失いかけていたゲームリズムをもう一度取り返す采配を振るいます。
63分は讃岐。岡村和哉が右へ振り分け、武田が中央に切れ込みながら枠へ飛ばしたミドルは南が何とかセーブ。64分も讃岐。武田が右から投げ入れたロングスローは中央にこぼれ、突っ込んだ木島はオフェンスファウルを取られたものの、途中出場の武田も2つのプレーで存在感を。逆に「3-0になった時点で、ゼロで抑えるのか、もう1点2点を取りに行くのかという所が、前と後ろで曖昧だった」と話したのは南。72分に右SBの市村篤司がカットインから枠の左へ外したシュートが、横浜FCにとって3点目以降は初めてのシュート。76分に野崎陽介と小池純輝を入れ替え、もう一度踏み込みたい攻撃へのアクセル。
78分に北野監督が切った3枚目のカード。小澤との交替でピッチへ解き放たれたのは高橋泰。これで讃岐は前線に右から高橋、我那覇、木島を並べる4-3-3にシフトして、最後の勝負に。79分には武田の右ロングスローから沼田圭悟が打ったシュートは、アン・ヨンハが体を投げ出してさすがのブロック。直後の左CKを堀河が蹴り込み、ファーへ飛び込んだ藤井航大のヘディングは薄く当たり、枠の右へ逸れるも勢いはアウェイチーム。
83分の衝撃。主役はやはりあの男。南が蹴ったFKを堀河が跳ね返すと、市村がクリアし損ねたボールを素早く木島が支配下へ。左サイドを運んで運んで、中央へのパスもチラつかせながら放ったシュートは、右のサイドネットを綺麗に揺らします。やはりスコアラーは木島。黄金世代を担った男が意地の一撃。点差は2点に縮まりました。
目には目を。86分の追加点。アン・ヨンハが素晴らしいタックルでボールを奪うと、拾った寺田は右に流れながらヒールキックでスルーパス。パク・ソンホはGKの脇を抜くシュートでボールをゴールネットへ確実に送り届けます。悩めるストライカーが9試合ぶりの一発。再び両者の差は3点に開きました。
88分にあるいはこの日で最も沸いた三ツ沢。仕事を果たした寺田に替わり、ピッチへ飛び出していったのは背番号11。三浦知良、日本サッカー界のレジェンド"カズ"の今シーズン初出場に、子供、大人、男性、女性、スタンドのほとんどすべてから送られる万雷の拍手に三ツ沢は包まれます。
ただ、最後のゴールはアウェイチームに。90+1分、左から堀河が蹴ったCKが中央に入ると、河合英治主審は横浜FCのファウルとジャッジ。エブソンを倒したアン・ヨンハにイエローカードが提示され、讃岐にPKが与えられます。キッカーはエブソン自ら。南も足で触ったものの、ゴールネットに収まってスコアは4-2。最後はエブソンとの接触でGKの石井がプレー続行不可能になり、そのエブソンがGKとしてゴールマウスに立つハプニングもありましたが、そのまま迎えたタイムアップ。「暑苦しい言い方かもしれないが、魂を込めたプレー、魂を込めた戦いをしようという所を強調している部分はある」と山口監督も語った横浜FCが連続無敗を10試合に伸ばし、勝ち点3をきっちり積み上げる結果となりました。


「横浜FCが今凄く調子が上がっている要因として、守備の構築があると思う。その横浜FCから2点取れたのは、唯一の次に繋がる所かなと思う」と北野監督が話したように、後半はゲームの流れを引き寄せながら2ゴールを奪った讃岐。ここ7試合でシーズンの半分近い11ゴールを挙げているだけに、勝ち点を積み上げるためにはやはり守備の部分の安定は急務だという印象です。木島という絶対的な切り札がいることを考えれば、彼の投入までに少なくともリードは許しておきたくない所。2失点目の「CKのずれ」(北野監督)のような部分は絶対になくしたい部分であり、守備時におけるディテールの追求が今後の課題になってきそうです。
これで10戦無敗。昇格プレーオフ圏内にいる6位の千葉と勝ち点4差まで迫った横浜FC。それでも、相手の最終ラインへそれほどプレスを掛けなかったことに対して松下裕樹が、「もうちょっと自分たちからアクションを掛けて、ボールを奪いに行く所を見せた方が良かったかなと。別に持たせておいてもいいやという所から、もう1ランク上を目指してという所も必要だと思う」と話せば、南は「今まで連続で失点してこなかったことどうこうじゃなく、今日を無失点に抑えられなかったことが悔しい。1失点目は何回かどうにかできる場面があった失点だったので、そこが悔しい」と短いフレーズに何度も悔しさを滲ませており、ベテラン勢にこの勝利で満足する様子は微塵も感じられませんでした。それも、前述した山口監督の「魂を込めたプレー、魂を込めた戦いをしようという所を強調している」という、ある意味で"らしくない"働きかけの表れかなと。前述の2人やアン・ヨンハ、松下年宏といった30代のベテランがチームを引き締め、シーズン初出場を果たしたカズという大ベテランまで加わった横浜FCの遅れてきた反攻が止まる気配はまだまだありません。          土屋

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