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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年08月04日

J2第25節 湘南×千葉@BMWス

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0803hiratsuka.jpg衝撃の"ゼロロク"から4ヶ月。首位の返り討ちか、6位のリベンジか。Jリーグの歴史を彩ってきた両雄のリターンマッチは平塚です。
前節は福岡と今シーズン初となるドローゲームを演じたものの、ここまでの24試合で怒涛の22勝という歴史的な数字を叩き出し、相変わらず首位を独走し続けている湘南。特筆すべきはホームゲームでいまだに1つの引き分けも負けもないこと。平塚でのラインダンスを継続させる意味でも、難敵をきっちりホームで倒して、再び連勝街道に戻りたい一戦です。
4月13日、フクアリ。首位湘南と激突した重要なホームゲームは、誰もが驚く6失点を献上しての完敗を喫し、過去にないほどの屈辱を突き付けられた千葉。ただし、関塚隆監督を指揮官に頂いて以降、天皇杯を含む公式戦は4試合で3勝1敗といまだ負けなし。「セキさんがジェフに対して、本当にサッカーに真摯に取り組まなければという色合いを強めていることは試合を見て感じていた」と話したのは湘南のチョウ・キジェ監督。前回の対戦時とは色々な意味で変化の起きた千葉にとっては、プライドを取り戻すための90分間を迎えます。29.3度の平塚に集まった観衆は、夏休みということもあって子供連れの家族も目立つ8637人。注目の一戦は湘南のキックオフでスタートしました。


3分のセットプレーは湘南。FKをトリック気味に三竿雄斗が中央へ付け、ウェリントンは受けたもののシュートまで持ち込めず。4分も湘南。岩尾憲の積極的なミドルは千葉のGK岡本昌弘がキャッチ。9分も湘南。左サイド、ゴールまで約30mの距離から藤田征也が直接左スミを狙ったFKは、岡本はファインセーブで回避。10分も湘南。三竿の左CKを、下がりながらボレーで合わせたウェリントンのシュートはゴール左へ外れますが、まずはホームチームがいつも通りの勢いで立ち上がります。
さて、難しいアウェイゲームに臨む千葉で目を引いたのは選手の並び。通常は4-4-2か4-2-3-1を採用することが多い中で、この日のシステムは中盤のアンカーに兵働昭弘を置いて、その前には井出遥也と佐藤健太郎が横に並び、右に山中亮輔、左に谷澤達也が張り出す形。「通常の形だと、どうしても3枚目が釣り出されると中央が空く」(関塚監督)ことと「後ろはしっかり4を考えながら」(同)という理由から、4-3-3気味の布陣でスタートします。これに関して「初めてやったし、練習もほとんどやっていない」と話した佐藤健太郎のイメージは、「ヒョウさんと僕とハルヤの3人でうまく中を閉めながら、なるべく外に出させるように、守備を意識して入った」とのこと。14分には藤田の右クロスから、岩尾に左足ボレーを打たれるも、ボールはクロスバーの上へ。16分には亀川諒史のドリブルで与えたFKから、藤田のキックを菊地俊介が合わせたヘディングもクロスバーの上へ。10分以降はある程度落ち着いた守備の対処を披露していきます。
19分は千葉のファーストシュート。井出がFKを右に展開すると、受けた谷澤達也は大外へアーリークロス。ここへ走り込んできたのはFKのスポットに立っていたはずのケンペス。ヘディングは枠の左へ外れたものの、明らかに練習を積んだセットプレーからフィニッシュまで。21分は湘南のCK。右から岩尾が低いボールをマイナス気味に入れると、菊地俊介はスルーでまたぎ、樋口寛規のシュートは枠の左へ外れましたが、こちらも明らかに練習を積んだセットプレーで対抗。お互いに繰り出し合う狙い通りの手数。
湘南の配置でいつもと違ったのはシャドーポジション。1人は移籍後初スタメンとなった樋口で、もう1人は「チョウさんに『久しぶりだけど楽しくやってこいよ』と言われたので、試合前から凄くモチベーションも高まっていた」という菊池大介。特に後者はずっとWBでのプレーが続いていた中でのシャドー起用ということで、「勝負だと思っていたので無心でやりました」という言葉通りに、序盤から受けて捌いて躍動。23分には亀川のパスから一旦はDFに当てたボールを、自ら拾って再シュート。これはわずかにクロスバーの上を越え、思わずチョウ監督も「この前もここでセットプレーのシュートはすごく難しいシュートで、今日の方が簡単だなと思うんですけど」と笑いましたが、「味方が迷わないシンプルなプレーを心がけていた」と自ら話したように、相手の間、間でまさにチームの"潤滑油"として10番が機能していきます。
24分は千葉。佐藤健太郎が左へ振り分け、井出はマーカーを鋭く振り切ってクロスを上げると、兵働のボレーは枠の右へ外れましたが、中盤の3枚できっちりシュートシーンを創出。27分は湘南。自らのミドルで奪った右CKを藤田が蹴り込み、菊地がボレーで当てたボールをウェリントンが頭で狙うも、岡本が丁寧にキャッチ。ここからは「相手も技術があって高い位置でボールを奪えなくて、奪った後に相手が整っているというか、追い越してもなかなか数的優位を創れなかった」と三竿が振り返り、「リズムが良い時はみんなボールを触っていたと思う」と佐藤健太郎も口にしたように、千葉もボールキープ時にはきっちり繋いだために、縦へのスピードアップは少なく、30分以降にシュートシーンは生まれず。最初の45分間はスコアレスでハーフタイムへ入りました。


後半に入って先にチャンスを創ったのは千葉。46分、谷澤が中へ戻したボールは「いつもよりゴールに近いので、シュートのチャンスがあれば打とうと思っていた」という佐藤健太郎が右足で枠の右へ。48分は湘南。樋口のリターンを受けたウェリントンのシュートは枠の右へ。53分は千葉の決定機。カウンターから中央をケンペスが運んで左へ。膨らんだ谷澤が縦に持ち出して放ったシュートは、しかしクロスバーの上へ。55分は湘南の決定機。藤田の右クロスから、収めたウェリントンのシュートはわずかに枠の左へ。お互いに先制への意欲を隠しません。
ほとんど同時に動いた両指揮官。55分はチョウ監督。なかなか流れの中に顔を出せなかった樋口を下げて、岡田翔平をそのままシャドーへ投入。56分は関塚監督。WBの守備対応に追われるシーンの多かった山中に替えて、佐藤勇人を攻撃的な中盤へ送り込み、井出が右ウイングへスライドして全体のバランスを整えると、当たったのは前者の交替策。
57分に岩尾、岡田とボールが回り、菊地が枠へ飛ばしたシュートは岡本がファインセーブで応酬しましたが、次のチャンスをモノにしたのは湘南。61分、右サイドでのアタックから遠藤航が蹴ったクロスはDFに当たったものの、拾った藤田が低いクロスをニアへ放り込むと、突っ込んだ岡田が左足の面で当てたボールはニアを破ってゴールネットへ到達します。10試合ぶりにベンチスタートとなった22番が、先制弾で指揮官へ猛アピール。湘南がスコアを動かしました。
63分にはケンペスとのワンツーで抜け出し掛けた谷澤のチャンスを、丸山祐市が完璧なカバーリングで潰すと、2人目の交替カードを切ったのは関塚監督。アンカーを務めた兵働と森本貴幸を入れ替え、中盤は佐藤勇人と佐藤健太郎がドイスボランチに、右が井出、左が谷澤とサイドハーフを配し、前線は森本とケンペスの2トップにシフト。「昨日立ち位置でやっただけなので、その意味ではよく選手たちは対応してくれた」(関塚監督)という4-3-3から、通常仕様の4-4-2に戻して、残りの25分あまりで同点、そして逆転を狙います。
67分は千葉。カウンターから右サイドで森本のリターンを受けたケンペスは強引にクロスを上げ切り、森本のシュートモーション直前で藤田が辛うじてクリアするも、拾ったボールを中村太亮が再びクロスに変えると、ここは佐藤勇人も打ち切れず、菊池が何とかクリア。68分も千葉。ケンペス、森本とボールが回り、井出が左足で枠へ収めたミドルは湘南のGK秋元陽太がファインセーブで回避。「回す所だったり、最後はクロスで終わる所だったり、ジェフの強みがさらに増したなという雰囲気が強かった」と菊池も認めた千葉の怒涛。千葉の執念。
72分の閃光。DFラインでのボール回しから左サイドでスピードアップすると、森本のパスを受けた中村太亮は切り返して、利き足とは逆の右足でクロス。中央にフリーで潜った井出が頭で叩いたボールは、バウンドしながらゴール右スミへ吸い込まれます。「井出もゴール前によく入って行ったなと思う」と指揮官も認めた20歳の貴重な同点弾。スコアは振り出しに引き戻されました。
最後の10分間は「1-0でキレないで1点返して、さらに逆転しようという気持ちが相手に凄くあったし、それを我々は受けないで跳ね返してカウンターを狙うというような、お互いに勝点3を狙いに行く」というチョウ監督の表現がしっくり来るような、勝利だけを目指した殴り合いが。
80分は湘南。菊池が中央を独力で運んで運んで、そのまま打ち切ったミドルは岡本が気迫のワンハンドセーブ。81分にはチョウ監督が亀川に替えて島村毅を左CBに送り込み、三竿を左WBに上げる采配を。84分は千葉。森本のパスからケンペスが左サイドをドリブルしながら、強引に放ったシュートは枠の右へ。85分は関塚監督が井出に替えて田中佑昌を送り込み、サイドの推進力向上に着手。87分は湘南。ウェリントンが右へ展開し、藤田が上げ切ったクロスを菊池がボレーで狙うも、入ったばかりの田中が体を投げ出してブロック。88分は湘南に最後の交替。藤田を下げて送り込むラストカードは中村祐也。菊池が右WBへスライドして、いよいよゲームは最終盤へ。
90分は湘南。三竿が右から蹴り込んだFKを、ウェリントンが頭に当てたボールはゴール右へ。90+2分は千葉。中村太亮の右CKは丸山がきっちりクリア。90+2分は湘南のカウンター。三竿が運ぶと一気に駆け上がった緑と青の戦士は7枚。7対5のシチュエーションで、しかしウェリントンはトラップが大きくボールロスト。一転、千葉のカウンター。山口智が前に蹴り出すと、こちらは4対2のシチュエーションも丸山がきっちりカットして前へ。一転、湘南のカウンター。遠藤が持ち込んで持ち込んで、繰り出したスルーパスはウェリントンに合わず。一転、千葉のカウンター。岡本のスローインを田中が繋ぎ、ケンペスのドリブルは島村が水際で対応してオフェンスファウル。そして、死闘に終止符を打つ西村雄一主審のホイッスル。「見ている人には、今日は面白い試合になったんじゃないかなと思います」とチョウ監督。真夏の好バウトは両者が勝ち点1ずつを積み上げる結果となりました。


衝撃の"ゼロロク"から4ヶ月。千葉の変化が顕著に現れたゲームだったと思います。チームが無敗で来ている理由を問われた関塚監督は「彼らがやらなきゃという所が現れてきたんじゃないかと。ピッチに立ったら選手たちに躍動してもらう、そして一体感を持って、良い内容で勝つということを追求していくと。彼らがしっかりと答えを出していくという所で、クラブの決断に対しての変化が少しずつ出てきたのかなと思います」と手応えを口に。チョウ監督も「自分たちでボールを動かせる良さに、相手の裏をシンプルに取ったり、戦う気持ちを前面に出したりという所は、さすが関塚さんだなと思って試合をさせてもらっていました」とのこと。もちろん、ほとんどぶっつけ本番で4-3-3をしっかり機能させた個々の戦術理解度も賞賛されるべきですが、最も印象的だったのは「アウェイで先制されながら諦めずにやった」(佐藤健太郎)、その折れないメンタルや最後まで走り切る執念のようなものだったことは多くの人の一致する所でしょう。試合後、チョウ監督は囲み取材の中で「こういう試合をやりたいよね。今日90分間戦った選手は絶対に成長できると思うよ」と話しました。その言葉の感想を2人の選手に聞くと、三竿は「どちらが勝つかわからないような展開がずっと続いたので、やっていて凄く楽しかったし、勝ち切れれば良かったですけど、こういう雰囲気の中でやれたのは凄く良かったです」と。また、菊池は「楽しかったですね。シャドーが久しぶりだったというのもあるし、新鮮な気持ちでできたので楽しかったです」と言いながら、続けて「でも、楽しいだけじゃダメですし、シュートチャンスが3回、4回あった中で、それを決められない自分というのがまだいるので、このままではJ1では通用しないなと思うし、これを改善しない限りはもう1個上の自分には行けないなと思っているので、練習からやるしかないなと思います」とキッパリ。充実感とさらなる欲求と。見る側にもそれを与えてくれるような空間が、この日の平塚にはありました。      土屋

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