最近のエントリー
カテゴリー
アーカイブ
このブログについて
J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
日本一まではあとわずかに2試合。頂点を巡るファイナルへ王手を懸けた、プレミアEASTに所属する実力者同士の対峙は三ツ沢陸上です。
1次ラウンドでは浦和レッズユースや鹿島アントラーズユースもひしめく激戦のグループを堂々首位通過。迎えたラウンド16では大宮アルディージャユースをPK戦の末に振り切ると、群馬ラストマッチもジュビロ磐田U-18相手に平川元樹(3年・コンサドーレ札幌U-15)のドッピエッタを含む5ゴールを叩き込み、12年ぶりに横浜まで勝ち上がってきたコンサドーレ札幌U-18。「正直ここまで来るとは思っていなかったので、失うものはない」と話す四方田修平監督の下、チームの悲願でもある日本一へ向けて、この"陸上競技場"を突破したい一戦です。
ここまで参加チーム唯一の延長戦、PK戦なしの5連勝。ジュビロ磐田U-18、ファジアーノ岡山U-18、アミーゴス鹿児島U-18と同居したグループステージを3連勝で切り抜け、優勝候補筆頭格の清水エスパルスユースと京都サンガU-18を前に、どちらにも3ゴールをぶち込んで、19年ぶりにベスト4へと駒を進めてきた三菱養和SCユース。「試合していくにつれて、個の能力は相手の方が全然上だと思うんですけど、養和は何が強いかと思うと、チームで団結してやるとか、みんなでいい声掛けてとかそういう所だと思うんです」と話したのは相馬勇紀(3年・三菱養和調布JY)。スタンドも含めたチームの一体感を武器に、"陸上競技場"越えを狙います。舞台は群馬から横浜へ移っても、気温は31.5度と蝉も泣き喚く真夏模様。全国4強の第1試合は札幌のキックオフでスタートしました。
2分のファーストチャンスは養和。2分にディサロ燦シルヴァーノ(3年・三菱養和巣鴨JY)がショートコーナーを蹴り出し、瀬古樹(2年・三菱養和巣鴨JY)のリターンをディサロが中央へクロス。これを札幌のCB泉谷航輝(3年・スプレッド・イーグルFC函館)が跳ね返すと、ここからは札幌の時間帯。7分には鈴木翔(3年・コンサドーレ札幌U-15)のパスから、高嶺朋樹(2年・コンサドーレ札幌U-15)がカットインしながら放ったミドルは、養和のGK斉藤雄太(3年・三菱養和巣鴨JY)がファインセーブ。9分にもエリアに侵入した平川元樹(3年・コンサドーレ札幌U-15)のシュートは、ここも池田樹雷人(3年・三菱養和巣鴨JY)が体でブロック。「立ち上がりの10分までは、凄くうまく主導権が握れてチャンスも創れた」と四方田監督。札幌がゲームリズムを掴んで立ち上がります。
すると、次の先制機もやはり札幌。杉山が左CKを蹴り込み、再び戻ってきたボールを杉山が再び放り込むと、按田頼(2年・アンフィニMAKI.FC)が高い打点で叩いたヘディングはクロスバーにハードヒット。このボールを関野太聖(3年・三菱養和巣鴨JY)が大きく蹴り出し、今度は一転して養和のカウンター。ボールを受けた相馬は「相手のディフェンスがちょっと速さを警戒して間があったので、中に行くとたぶん潰されると思って縦に勝負した」とそのまま左サイドをぶち抜くと、勢いのままにシュート。ボールはGKに当たりながら、ゴールネットへ吸い込まれます。「カウンターで一発仕留めてやろうと思っていた」という7番がこの舞台で大仕事。劣勢の養和が先にリードを奪いました。
さて、「元々養和さんはしっかりとした守備から早く攻めるのが得意なので、ちょっと怖いなという話はベンチでしていた」と四方田監督も話した札幌は、ワンチャンスを生かされて追いかける展開に。14分には左から杉山が蹴ったFKを、ファーにフリーで入った泉谷が頭から飛び込むも、ボールは斉藤の正面。追い付くことはできません。
牙を剥いたストライカー。16分、相手ディフェンスのパス回しに食い付いたディサロは、ボールを奪い切ると、そのまま左サイドを独走。左足で思い切り叩いたシュートは右のポストに当たりますが、このリバウンドに頭から突っ込んだのは伊東駿(3年・三菱養和巣鴨JY)。「抜け目なくフォアチェックを狙っていたりというのは彼の良い所」と山本信夫監督も認めるディサロの献身がきっちり結果に。点差が広がります。
止まらない養和のビッグウェーブ。22分、キャプテンマークを巻く池田のミドルは下田が強引に収め、マーカーを粘り強く払いのけながら左足を振り抜くと、軌道はゴール右スミを力強く射抜きます。「2点目、3点目もすぐに入ったので乗れたと思う」と相馬。養和のリードは早くも3点となりました。
「最初の1点はしょうがないので、切り替えられていたとは思うんですけど」と指揮官も振り返った札幌は、決して小さくないビハインドを背負う展開に。29分に平川が打ったミドルもクロスバーの上へ。33分には椿健太郎(3年・三菱養和巣鴨JY)のフィードをディサロが抜群のトラップで落とし、下田が枠へ飛ばしたシュートは札幌のGK種村優志(3年・泊SC)が何とかセーブ。ボールこそ支配しているものの、エリアの中にはなかなか入っていけません。
38分は札幌。倉持卓史(3年・コンサドーレ札幌U-15)が右へ振り分け、鈴木が蹴り入れたクロスは平川へわずかに合わず。41分も札幌。杉山の左CKがこぼれると、菅大輝(1年・コンサドーレ札幌U-15)が直接狙ったボレーはDFがブロック。直後も札幌。杉山がミドルレンジから放ったシュートは枠の右へ。44分に高嶺、45+1分に杉山が右から蹴ったFKは共にシュートまで至らず。「準決勝は早い時間帯で失点してしまったので、できれば点を取るまでは我慢だよということは言ってスタートした」(山本監督)という養和が、望外とも言えそうな3点のアドバンテージを手にして、最初の45分間は終了しました。
後半はスタートから札幌に勢いが。50分は鈴木のドリブルで獲得したCK。右から高嶺が蹴ったボールは池田がきっちりクリア。52分、杉山のフィードに久保田成悟(2年・コンサドーレ札幌U-15)が抜け出しかけるも、斉藤が一瞬早くパンチングで回避。54分、倉持の展開から按田が上げたボールを平川が何とか当てたヘディングは、斉藤がフィスティングで回避。55分に養和が伊東と松井輝純(2年・尚志高校)をスイッチした交替を挟み、58分も札幌。菅が左から中へ切れ込みながらスルーパスを送るも、平川はマーカーのブロックでボールに触れず。「決定的チャンスの手前ぐらいまでは何度も行けていた」と四方田監督も話したように、持ち込めるのは一歩"手前"。
59分の決断。札幌1枚目の交替カードは鈴木に替わって投入された藤井慎之輔(3年・コンサドーレ札幌U-15)。「ある程度後半はゲーム支配できていたので、前向きの状態で藤井がサイドで仕掛けられる展開になればなと」考えた指揮官が10番を配したのは左SB。按田が右SBへスライドして、ボールは持てる中でサイドに"仕掛け"の装置を解き放ちます。
とはいえ、「受身にならずにボールを動かせる所は動かして、守備は堅くいきましょうという所」(山本監督)を忠実に体現した養和も、再び攻撃へのパワーを。61分には関野のフィードを右のハイサイドで収めた相馬がそのままえぐり、折り返したボールは泉谷が何とかクリア。62分にも瀬古のシンプルなフィードに、「ペンデルボールの練習とかやり始めたら強くなって、今は勝つ自信がある」と胸を張る相馬のヘディングはわずかに枠の左へ。67分にも下田からのパスを受けたディサロは、エリア内で粘って粘ってフィニッシュまで。ここは種村のセーブに阻まれるも、「彼らも自分の体力と相談しながらできたんじゃないかなと思う」と山本監督。杉山耕二(1年・三菱養和巣鴨JY)、関野、池田で構成された3バックを後ろ盾に、養和が落ち着いてゲームを運んでいきます。
68分に四方田監督が平川を下げて切った2枚目のカードは、粟飯原尚平(3年・SSS JY)。その粟飯原は左SBに入り、藤井は最前列へスライド。「あれだけ固めた相手に対して、しっかりとボールを受けて捌いた中で、またボールを受けてというようなタイプというのはなかなかいない」という状況の中、指揮官も強いられる難しい交替を含めた采配で何とか図る打開策。
灼熱の群馬を勝ち抜けてきた赤黒の意地。72分、菅がドリブルで中央へ持ち込みながら左へ送り、久保田が打ち切ったシュートは斉藤がファインセーブで応酬。73分、杉山の左CKはDFがクリア。77分、ここも菅が思い切り良く狙ったシュートはDFのブロックに遭い、左から粟飯原が放り込んだクロスはわずかに藤井と合わず。78分、高嶺の右FKがこぼれると、倉持が左から運んで運んで放ったシュートはわずかにクロスバーの上へ。後半に記録されたシュートの大半をこの5分間に集中させましたが、「最後の所で粘り強くできたのは全員の力」と山本監督も話す養和の堅陣は崩れず。
79分に高橋瞭斗(3年・三菱養和巣鴨JY)を2人目の交替選手として送り込んだ養和が、最後まで狙うのはさらなるゴール。81分、下田が左へ流したボールを高橋がアーリーで中へ送り、ディサロのアウトサイドボレーは枠の右へ。87分に養和は木脇次郎(3年・三菱養和巣鴨JY)が、札幌は工藤竜平(3年・プログレッソ十勝FC U-15)がそれぞれピッチに入り、88分は再び養和。池田の鋭い左FKに、またもや高い打点で当てた相馬のヘディングは斉藤がキャッチ。90+1分にもボランチで奮闘した齋藤一(1年・三菱養和巣鴨JY)のミドルボレーは枠の上へ外れましたが、最後は平山駿(1年・三菱養和巣鴨JY)と根上鉄平(2年・三菱養和巣鴨JY)もベスト4のピッチに立ち、迎えたタイムアップのホイッスル。「失点のピンチもあったし、あそこで入れられていたらガラッと流れも変わるので、そこはウチのうまく粘れた所と運もあったと思います」とは山本監督ですが、養和が狙い通りと表現して差し支えない磐石の90分間をデザイン。31年ぶりの戴冠へ向けて"陸上競技場"を突破する結果となりました。
「もったいないと言えばもったいないんですけど、しょうがないのかな」と前半の3失点を振り返ったのは四方田監督。勝負にたらればは禁物ですが、確かに按田のヘディングが入って"いれば"、さらにクロスバーに跳ね返らな"ければ"、あるいはスコアは逆のものだったかもしれません。それでも灼熱の群馬を抜け出し、四方田体制としては11年目で初めてクラ選の4強まで勝ち上がってきたという結果は見事の一言。「去年まで経験のなかった選手が、だいぶこういうトップレベルの中で自分の良さを出せるようになってきた。1回リセットして体を休めて、残りのプレミアを戦いたいと思います」と締め括った四方田監督。赤黒の若梟は一層の逞しさを纏って、大会を後にしていきました。
「群馬でやってきた試合から比べてもちょっとミスがあったり、攻撃もちょっと大味になってしまったので、実際にはすごく苦しい試合だったと思っています」と試合を総括した山本監督。それでも、厳しい時間帯を凌いで得意のカウンターを見舞い、畳み掛けて点差を広げ、あとはきっちり時間を潰すという展開は、まさに勝負強さの証明だったのではないでしょうか。「今日もジュニアからいる選手が6人先発でベンチにも3人いて、僕らも小さいころから本当に良く知っている子ですし、僕らだけの力じゃなくてジュニアやジュニアユースの頃に携わってくれたスタッフたちの力が結集できた成果が今回だと思っています」と山本監督が話せば、「スクールで始めて12年目で、サッカーをずっとやってきた養和の最後の年で迎える最高の舞台。色々な監督やコーチにサッカーを教えてもらっているので、優勝という形で恩返ししたいと思います」と力強く言い切ったのは相馬。続けて「街クラブもJクラブに勝てるんだぞというのを証明したい」と口にした相馬の言葉を本当の意味で証明するために必要な勝利は、あとわずかに1つだけです。 土屋
J SPORTS フットボール公式Twitterをフォローしてフットボールの最新情報をチェック!