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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年08月02日

クラ選準決勝 JFAアカデミー福島U18×FC東京U-18@三ツ沢陸上

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0801mitsuzawa2.jpg32の精鋭が目指した"球技場"へのラストチケットを懸けて、激突する2つの個性派集団。初出場のJFAアカデミー福島U18と、6年ぶりの頂点を狙うFC東京U-18の対峙は引き続き三ツ沢陸上です。
2009年にユース部門が開設されて以来、初めて挑んだ今大会は東海予選を見事に通過。勢いそのままに本大会でも1次ラウンドを突破すると、ラウンド16では大分トリニータU-18相手に延長戦で競り勝ち、一昨日の準々決勝では優勝候補のガンバ大阪ユースに3-3と撃ち合った末に、PK戦を制してこの横浜の舞台まで駆け上がってきたJFAアカデミー福島U18。「この大会であったり、厳しい相手が彼らを成長させてくれているのは間違いない」と話す中田康人監督に率いられ、初出場初優勝を現実的な目標として視界へ捉え始めています。
1次ラウンドでは昨シーズンのプレミアWESTを制したヴィッセル神戸U-18に3-0で圧勝。一転、ノックアウトラウンドに入ってからは、ベガルタ仙台ユースとジェフユナイテッド千葉U-18を共にPK戦で下して、粘り強くここまで生き残ってきたFC東京U-18。「今年は1-0だったり、2-1だったり、1点差のゲームを勝ち切れる粘り強さやしぶとさというのが最近出てきた」と話すのはスピードスターの蓮川雄大(3年・FC東京U-15深川)。今年のシーズンを立ち上げた時に、チーム全体で掲げた"目標"はすぐそこまで迫っています。19時キックオフということもあって、気温も27.7度と絶好のコンディション。三菱養和SCユースへの挑戦権を巡るセミファイナルは、FC東京のキックオフで幕が上がりました。


スタートからフルスロットルだったのは、「今大会に入る前も得点王というのは1つの目標として持っていた」と語った、ここまで5得点を挙げている蓮川。3分に長澤皓祐(3年・横河武蔵野FC JY)がDFラインの背後へ落としたボールに、抜け出してダイレクトで合わせたボレーはクロスバーを越えましたが、その6分後には会場を驚愕させたゴラッソを。9分、左サイドで安部柊斗(2年・FC東京U-15むさし)のパスを受けた蓮川は、「一発目は行って相手をビビらすというか、自分はこういう選手だというのを見せておいた方が良いなと思って、毎回1本目は行こうと思っている」という"一発目"で加速、加速。懸命に追い掛けたマーカーを凄まじいスピードで振り切ると、そのまま左足でGKの左下を撃ち抜き、ボールをゴールネットへ送り届けます。それは、まさに本人が目標としている「バルサやインテル時代のロナウド」を髣髴とさせる圧倒的な一撃。東京が早くも1点のリードを奪いました。
以降もペースは東京。10分にはGKに蓮川が激しく寄せてルーズボールを生み出し、最後は高橋宏季(3年・FC東京U-15むさし)が枠内ミドルまで。11分にも「ちょっと僕の中ではグレードの違う選手」と佐藤一樹監督も認める、帰ってきた10番の佐々木渉(3年・FC東京U-15むさし)がバイタルで収めて枠内ミドル。14分には中央から安部が馬力のあるドリブルで左へ流れ、ここもアカデミーのGK似鳥康太(3年・JFAアカデミー福島U15)にキャッチを強いるミドルにトライ。連続ミドルで手数を繰り出し続けます。
さて、15分にはボランチの浅見寛太(3年・JFAアカデミー福島U15)が枠を越えるミドルを放ち、ようやくファーストシュートが記録されたアカデミー。「前半は9番、10番、7番の3人の関係に27番が絡んできたりすると、どうしたらいいんだろうかと随分戸惑っていた所があったと思う」と中田監督が振り返ったように、相手の1トップ2シャドーへの対応に苦しむ中で、結果として両SBの攻め上がりも抑え込まれ、得意のサイドアタックを打ち出せず。22分には左SBの高森大夢(3年・JFAアカデミー福島U15)が強引に狙ったミドルも、東京のGK伊東倖希(3年・FC東京U-15深川)が確実にキャッチ。瀬川泰樹(3年・JFAアカデミー福島U15)と浅見のドイスボランチを中心にボールはある程度回せるものの、前への思い切ったパワーを出し切れません。
23分は東京。バイタルに潜った長澤が前を向いて放った強烈なミドルは、似鳥が何とかワンハンドでキャッチ。25分も東京。1本のフィードを受けて、蓮川がここも巧みなトラップから縦へ加速してフィニッシュまで持ち込むも、似鳥が今度は左足1本でファインセーブ。26分には長澤のクロスに、右CBの渡辺拓也(2年・FC東京U-15深川)が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。「あの9番の子の速さは予想以上でしたね。ビックリしました」と中田監督も驚いた蓮川は、佐藤監督も「拠り所としてあそこを持っているというのは今年のウチの強み」と話したように東京の大きな武器。この「予想以上のインパクト」(中田監督)を巡る両者の駆け引きも、前半の大きなポイントだったように感じました。
36分は東京。ゴール左、約25mの距離から佐々木が直接狙ったFKは右スミを襲うも、読んでいた似鳥は正面でキャッチ。45+2分はアカデミー。右からSBの牧野潤(2年・JFAアカデミー福島U15)が入れたスローインは、うまく味方と入れ替わった浜田力(3年・JFAアカデミー福島U15)へわずかに収まらず。45+3分もアカデミー。ようやく高森のドリブルで獲得した、前半1本目のCK。左から高森が蹴ったキックはいったん跳ね返されますが、再び左へ帰ってきたボールを高森がクロスに変えると、こぼれを叩いた牧野のミドルは枠の左へ。3対9というシュート数が現わすように、東京がリードも含めた優位性を保って、最初の45分間は終了しました。


後半はお互いがストロングを見せ合う立ち上がり。48分はアカデミー。オーバーラップを敢行した高森がクロスを上げ切り、こぼれに反応した谷口憧斗(2年・JFAアカデミー福島U15)のシュートは東京の3バックを束ねる高田誠司(3年・FC東京U-15むさし)がブロックしましたが、サイドアタックからフィニッシュまで。49分は東京。佐々木が左へスルーパスを通すと、抜け出した蓮川が左へかわそうとしたドリブルは似鳥が伸ばした手でブロックしたものの、両者が一番活かしたいポイントを突き合って、ゲームに再びエンジンが掛かります。
51分の決断は中田監督。延祐太(1年・JFAアカデミー福島U15)に替えて、ピッチへ解き放つのは10番を背負った草野侑己(3年・JFAアカデミー福島U15)。切り札的に起用された本来のキャプテンは、交替から1分後に加賀山泰毅(3年・JFAアカデミー福島U15)の短いパスを受けると、いきなり強烈なミドルをゴール右へ。同点への意欲を全身から発散してみせます。
52分はアカデミー。瀬川が左へ展開し、谷口がカットインしながら枠へ収めたシュートは伊東がファインセーブで何とか回避。53分は東京。蓮川が超速で左サイドを抜け出し、折り返したボールにスライディングで合わせた佐々木のシュートはクロスバーの上へ。59分はアカデミー。高森の左CKをファーに回り、ボレーで当てた金城ジャスティン俊樹(3年・JFAアカデミー福島U15)のシュートは伊東がキャッチ。60分は東京。安部を起点に長澤が中央を丁寧に通すと、この日のキーマンとも言うべき小山拓哉(2年・FC東京U-15むさし)が放ったシュートは似鳥が体でブロックしましたが、両者が創り合う決定的なシーンに、スタンドのボルテージもグングン上昇していきます。
ところが、ここで前半から三ツ沢の上空を騒がせていた雷の勢いが増し、大会運営側は一時中断を決断。両チームの選手が一旦ロッカーに引き上げ、63分で時計の針はストップします。このビッグマッチを一目見ようと平日の三ツ沢へ詰め掛けた2000人近い観衆も軒下へ避難する中、最終的に下された判断は約65分間の中断を経て、21時30分からの再開。ただ、この時点で両チームには「延長戦とPK戦は行わない。同点の場合は抽選」ということが伝えられていました。
東京は1次ラウンドの愛媛戦でも中断を経験しており、「その試合は中断明けに3点取られたんですよ」と佐藤監督。ターンオーバーで臨んだゲームだったこともあり、この日のスタメンは1人も出ていなかったそうですが、「それを今日の選手も見ているので、同じになるなよという所で彼らもしっかりとネジを巻き直して入った」(佐藤監督)とのこと。同じ轍を踏むつもりは毛頭ありません。
一方のアカデミーは「中断した時に、その前のプレーの所を自分たちで言い合ってました。『ああ、これが出るんだったら問題ないだろうな』というのはアイツらの話を聞いてて思いました」と中田監督。「延長とPKはないと聞いていたので、『じゃあ絶対追い付いて逆転しよう』と言ったんですけど、それで『絶対行くぞ』というような雰囲気になったのは良かったですよね」と中田監督は続けて。高いモチベーションを取り戻して、ピッチへ再び駆け出します。
すると中断明けから顕著になっていったのは、アカデミーが左サイドで握った優位性。まずは守備面で小山が浮いていた理由を「本来あの27番は牧野が見る約束で、シャドーはうまくCBで見てと言っていたんですけど、9番の最初のインパクトで牧野が気にし過ぎちゃった」と判断した中田監督は、「後半は9番をCBに任せて牧野を27番に行かせて、延をもっとインサイドに取らせていいぞと。その代わり、後ろは4対3で数的優位になっていると。怖いんだったらボランチ1枚を少しそばへ寄らせるようなことだけは考えてよ」と指示。これで60分には確かにチャンスを創られたものの、ある程度前の3枚への対応が明確になって、「そこで少し変わりましたね」と。
一方の攻撃は「左の方が行けそうだねと。左で2対1を創れそうじゃない?という話はしていた」(中田監督)とのこと。64分にはやはり左から谷口が中へ折り返すと、浅見が放った渾身のシュートはクロスバーに激しくヒット。67分にも草野が左へ流れてクロスを送り、ここはDFのクリアに遭ったものの、左の推進力は圧倒的。68分にも素早いパスワークから加賀山が落とし、谷口が左から枠へ飛ばしたシュートは伊東がファインセーブ。70分にも高森とのパス交換から、谷口が上げた左クロスは伊東がフィスティングで逃れるも、「10番が入ってから相手も勢いがどんどん出てきた」と蓮川も振り返ったように、左サイドの優位性に加え、中断明けからポジションを1トップ下に移した草野のボールタッチも目立ち、アカデミーが完全にゲームリズムを掌握してしまいます。
71分には佐藤監督も1人目の交替を。佐々木を下げて、渡辺龍(3年・FC東京U-15深川)を投入。今大会も2ゴールを叩き出している、バイタル攻略に長けたレフティを送り込み、もう1度前線のパワーアップに着手すると、76分には山岸瑠(3年・FC東京U-15深川)が粘って右から折り返すと、渡辺のシュートはヒットせずにクリアされるも早速好トライ。78分にも高橋が粘って右から繋いだボールを、渡辺はクロスバーを越えるフィニッシュまで。11番がジョーカーとしての可能性をバイタルへ漂わせます。
それでも衰えないアカデミーの執念。80分には瀬川に替えて、飛鷹啓介(1年・JFAアカデミー福島U15)を中盤へ送り込むと、82分には高森の左FKから、ファーサイドへ飛び込んだ草野のヘディングはクロスバーを越えますが、170センチの10番が食らい付いたワンプレーからも窺えるアカデミーの執念。
結実の時は84分。左サイドで浅見を起点に、飛鷹が中へ付けたボールを浜田が落とすと、中央から谷口が打ち切ったシュートはGKもわずかに触り、右のポストを直撃しましたが、誰よりも早くリバウンドに反応した加賀山が詰めると、ボールは右のポストを掠めてゴールの中へ転がり込みます。「残り30分爆発しようと。それだけだった」と中田監督も笑顔を見せた、アカデミーの執念実る。土壇場で再びスコアは振り出しに引き戻されました。
「ああいう展開になってしまうともう打つ手がなかったというか、流れもあるのでそのまま自分たちで解決するのを待っていた」という佐藤監督は、87分に2枚目のカードを。長澤と大熊健太(2年・FC東京U-15深川)をスイッチすると、90分の決定機は封じ込められていた"左"。小山との連携から蓮川が放ったシュートは、しかし似鳥がファインセーブで仁王立ち。90+2分の決定機はアカデミー。右サイドから浜田が全身のパワーを乗せて打ち込んだシュートは、しかし伊東がファインセーブで仁王立ち。そして、小雨が降りしきる三ツ沢の夜空に吸い込まれたタイムアップのホイッスル。決勝戦へのチケットは、抽選に委ねられることになりました。


両キャプテンが中央の本部に。息を呑んで見つめるスタンドと両チームの選手やスタッフ。結果、歓声が上がったのは青と赤のユニフォーム。「自分が決めるべきチャンスがいっぱいあって、1点取っただけで他には何もできなかったので、負けたら自分のせいだと思って泣いちゃいました」と蓮川が笑えば、「普段からサッカーにちゃんと取り組んでいるから、こういう結果もあるのかなって思います。ただでは死なないというか、しぶといというかね。たいしたもんです」と話したのは佐藤監督。「『6戦やって負けないで帰れるんだよ』と。『もう胸を張って帰ろう』という話をしました」と中田監督。敗者なきセミファイナルは、抽選という過酷な決着方法で、東京が"球技場"へと駒を進める結果となりました。


"勇戦"とはまさにこのことと言わんばかりの気持ちを前面に押し出し、終盤の同点ゴールでドローにまで持ち込んだアカデミー。「僕らが感じているのは、ハーフタイムやピッチの脇での短いこっちの指示に対して、コンセプトが刷り込まれてきているから、何となく僕らから言われたことに、彼らが『そうなんだ、そうなんだ』とプレーに移していけるという所と、実際に僕が言わなくてもミーティングで確認したことをピッチの中で言えるようになったのは非常に大きいですよね」と中田監督もチームの成長に手応えを感じている様子でした。今回初めてクラ選を経験する中で、「この大会というのは出なくてもいいのかなと思っていたんですけど、出て初めてこの良さがわかりました。メダルをもらえるとか、トロフィーをもらえるとか、そういうのって良いんだなって(笑) でも、結局そういうことがチーム力を上げる1つのモチベーションになるんですよね」とは指揮官の率直な感想。「クラブユースの方がとか、高体連の方がとか、皆さんが差を付けて語ったりしますけど、結局雰囲気は一緒だなって。質とかそういったものは色々あるのかもしれないですけど、大会に臨む選手の気持ちだったり、僕らのドキドキ感だったりは、本当に一緒だなと思いますね」と中田監督も新たな発見を感じたとのこと。良い意味で"部活感"を纏ったアカデミーの躍進に心から拍手を送りたいと思います。
とうとう日本一を決めるファイナルまで辿り付いた東京。実はこのチームで初めて臨んだ1月の公式戦を取材した際に、佐藤監督から「今年のチームの目標は、プレミア昇格と主要な全国大会で日本一になることだと、選手は言っています(笑)」という話をお聞きしていました。実際にあと1つで、その年初に立てた目標に手が届く所まで来たことについて問われた指揮官は「彼らが立てた目標なので、日々の積み重ねが継続できた成果。僕がどうこうというよりは、選手がよく本当にここまで努力してきたなというのは、リスペクトしなきゃいけないなという所だと思います」ときっぱり。今大会も2度のPK戦に抽選というギリギリの戦いを制して勝ち上がる勝負強さも身に付けてきており、蓮川も「勝ち切れるチームになってきているのかなというのは、手応えとしてチームとしても監督も思っていると思う」と語ってくれました。最後の1試合は2月の東京一を決める"新人戦"の決勝で対戦し、勝利を収めた三菱養和SCユース。「2月の時点では『日本一になるには養和を破って、まずは東京一にならなきゃな』と言っていたんですけど、俺の言っていたことは説得力がなくなってきたなと」と笑った佐藤監督。返り討ちか、リベンジか。三ツ沢のピッチは日本一を巡る東京決戦が決着を見る瞬間を、静かに待っています。        土屋

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