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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年08月13日

総理大臣杯準々決勝 阪南大×流通経済大@J-GREEN堺

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0813sakai.jpg大学日本一を決める大阪・夏の陣。前々回王者と前回王者が激突する、全国4強決めのクォーターファイナルはJ-GREEN堺です。
初戦となった1回戦は札幌大相手に7ゴールを叩き出しての圧勝。一昨日の2回戦では駒澤大に先制を許しながら、エースの河田篤秀(4年・阪南大高)が2ゴールをマークして逆転勝利を収め、ベスト8まで勝ち上がってきた阪南大。昨年は5人のJリーガーを輩出しながら、この総理大臣杯では関西予選敗退の憂き目を見ており、2年ぶりの舞台で狙うのはもちろんその2年前に続く3度目の頂点です。
昨年は1つのPK戦以外、3試合すべてを1点差で制し、夏の全国王者に輝いた流通経済大。関東第5代表のディフェンディングチャンピオンとして臨む今大会は、一昨日の初戦でも1年前の準決勝でPK戦の末に下した福岡大の挑戦を田上大地(3年・流通経済大柏)の1点で退け、今年も早速勝負強さを披露。関東1部では8位と苦戦が続きますが、「関東の代表になった以上、関東のプライドを懸けて、出られなかったチームの分も戦わなくてはいけないというのを学生がみんな感じてくれている」と中野雄二監督。史上4校目の連覇に向けて、メンタル面でも準備は万端です。平日とはいえ、夏休みのJ-GREEN堺には小学生の姿も。注目の実力校対決は流経のキックオフでスタートしました。


開始10秒のファーストチャンスは流経。キックオフのボールを中村慶太(3年・流通経済大柏)が運んで右へはたき、SBの湯澤聖人(3年・流通経済大柏)が上げたクロスに江坂任(4年・神戸弘陵学園)が合わせたヘディングはヒットせず、阪南のGK黒木優佑(2年・奈良育英)にキャッチされましたが、「相手は3試合目で僕らは2試合目なんだし、最初の所で運動量で上回って、まずは相手の裏に走ろう」という指揮官の指示をわずか数秒で体現すると、歓喜の瞬間はその直後。
2分、自陣でボールを持ったGKの吉田一也(4年・奈良育英)が大きくボールを前方に蹴り込むと、弾んだボールの処理に阪南ディフェンスが一瞬戸惑った隙を見逃さず、かっさらった渡辺直輝(3年・成立学園)が左足のボレーで叩いたシュートは、ゆっくりとゴールネットへ到達します。「素晴らしいシュートじゃないボテボテのシュートですけど、あそこに行けるのが渡辺」と中野監督も評価した渡辺直輝の泥臭い先制弾。流経が早くも1点のリードを奪いました。
3分にはまたも渡辺直輝がDFラインの裏へ抜け出し、ここは飛び出した黒木にシュートブロックされましたが、13分にもルーズボールを拾ったジャーメイン良(1年・流通経済大柏)が右へ振り分け、エリアのやや外から江坂が狙ったシュートはわずかにゴール左へ。15分にも江坂が小さく出したショートコーナーから、中村がきっちり枠内を捉えるミドルまで。「運動量や攻守の切り替えの所では負けるわけには行かないというのは、学生もよくそこを意識してくれた」と中野監督。流経の勢いが序盤のゲームを支配していきます。
さて、「とにかくルーズボールが全然取れていないのと、前から下げられた時にプレスに行っていない」と須佐徹太郎監督も振り返ったように、単純な出足の速さや球際の部分で上回られた阪南。中盤でボールが落ち着かない流れもあって、考えられないようなイージーミスも散見。16分には右サイド、ゴールまで約30mの位置から河田が狙ったFKもあっさりかべを直撃。流れの中からはなかなかフィニッシュまで至りません。
23分にはようやく阪南にチャンス。右SBの田渕大貴(2年・大阪桐蔭)を起点に脇坂泰斗(1年・川崎フロンターレU-18)が裏へ配球し、八久保颯(3年・秀岳館)のグラウンダークロスはDFにカットされたものの、ようやくサイドアタックの雰囲気が。30分にはやはり田渕と八久保の連携でCKを獲得し、右から入れた河田のボールは江坂のクリアに遭いましたが、「右からは何回か崩して、左からは崩しかかった状況」(須佐監督)を創り出した阪南にようやく生まれたリズム。36分には須佐監督も早めの決断。ドイスボランチの一角を務める堀川雄平(3年・津工業)を下げて、山口一真(1年・山梨学院大附属)を1トップ下に送り込み、脇坂を1列下げて前へのパワーを高めにかかります。
38分には流経も1人目の交替。「ちょっと腰痛があった」(中野監督)という中村に替えて、渡邊新太(1年・アルビレックス新潟Y)をそのまま左SHへ投入する、ややアクシデント的な交替を。40分は阪南。河田が左足で狙ったミドルは吉田がキャッチ。42分は流経。渡辺直輝は右へ回し、受けた江坂がキックフェイントで1人剥がして、そのまま打ったシュートはクロスバーの上へ。ようやく阪南にも攻撃の形が出始めます。
44分にはビッグチャンスの連続。松下佳貴(3年・松山工業)が短く付け、山口が30m近いゴールまでの距離を一瞬で縮める無回転ミドルを枠に収め、ここは吉田のファインセーブに阻まれるも、直後のCKはさらに迫力を。右サイドでショートを選択した山口は、田渕からのリターンを受けると、切り返しから縦へ持ち出してクロス。ファーで甲斐健太郎(2年・立正大淞南)が折り返し、中央に戻されたボールは流経ディフェンスが間一髪でクリア。「あのシーンは同点に追い付かれてもしょうがない場面」と中野監督も認めたシーンもスコアは変わらず。流経が1点のアドバンテージを握ったまま、最初の45分間は終了しました。


後半はスタートから阪南に2人目の交替が。「たぶん後半になっても流れは変わらないだろうなと思った」須佐監督は、八久保を下げて山﨑康太(2年・東福岡)を右SHへ投入し、「プレーが後ろ向きだし、遅いから捕まる」(須佐監督)というポイントに対して、中盤の選手と配置変更で改善を図ります。
50分は流経。右サイド、ゴールまで約25mの距離から江坂が直接狙ったFKはカベにヒット。51分も流経。江坂の左ショートコーナーを渡邊が戻し、江坂のクロスはDFがクリア。52分も流経。渡邊新太のパスからキャプテンの鈴木翔登(4年・流通経済大柏)がグラウンダーで中央へ送り、江坂のシュートはクロスバーの上へ。55分も流経。江坂の左CKはDFがクリア。57分も流経。江坂の左FKをジャーメインが頭で残し、シュートには至らなかったものの、後半も手数を続けて繰り出すのは流経。
すると、58分に飛び出した最高の追加点。CBの今津佑太(1年・流通経済大柏)が当てたクサビを渡邊新太はシンプルに右へ。「精神力を持ってハードに行った」と指揮官も賞賛した湯澤がマーカーを振り切って縦へ持ち出し、ピンポイントでファーサイドへクロスを送り届けると、ここに3列目から走り込んだ富田湧也(4年・流通経済大柏)のダイビングヘッドが豪快にゴールネットを揺らします。大応援団も一気に沸点へ。「ボランチもあそこまで来ていたというのは素晴らしいと思うし、狙い通りのプレーができたと思う」と中野監督。大きな追加点が流経に記録されました。
そこまでリズムが悪くない中で手痛い2点目を献上してしまった阪南。60分には田渕のFKから、多木理音(4年・ヴィッセル神戸Y)が頭で触るもシュートには結び付かず。61分にも外山が左から折り返し、松下が中央を運びながら浮かせたラストパスを送ると、山﨑が飛び込むもオフェンスファウルの判定。「もっとコレクティブにやれる所がやれないまま、攻撃に時間がかかるなという状況」(須佐監督)は変わりません。
64分は流経。右から渡邊が上げたクロスを、DFが懸命にクリアしたボールは右ポストに直撃し、あわやオウンゴールという場面に。66分は流経。江坂の左CKはクリアに遭うも、ハードなプレスで中盤を引き締め続けた古波津辰希(3年・流通経済大柏)のボレーはクロスバーの上へ。67分も流経。渡辺直輝が粘って繋ぎ、渡邊新太のボレーは黒木がファインセーブで何とか回避。直後にもショートコーナーから江坂のクロスを、鈴木が合わせたヘディングはゴール左へ。70分も流経。ジャーメインが中央を独力でグイグイ運び、DFともつれながら放ったシュートは枠の右へ逸れましたが、さらなるゴールへの欲求をプレーに反映させてみせます。
74分には阪南も山﨑を起点に田渕、河田と繋ぎ、山﨑がシュート気味に入れたクロスも中央と合わずに流れると、次にスコアボードの数字を動かしたのも流経。76分は左サイド、ゴールまで30m近い距離から江坂が蹴ったFKに渡辺直輝が走り込むと、ボールはそのまま誰にも触れずにゴールネットへ飛び込みます。3-0。流経強し。大勢は決しました。
このままでは終われない阪南も83分に一矢。右サイドの展開から山口がクロスを上げ切り、ファーへ流れたボールを外山が何とか残してDFの門を通すと、6分前に左SBへ投入されていた大本祐槻(2年・野洲)がカットインしながら打ち切ったシュートは、DFに当たりながらゴール右スミへ吸い込まれます。「交替選手が点に絡んだには絡んだけど、もうイチかバチかの手段」とは須佐監督。一昨年の王者が終盤に意地を見せましたが、反撃もここまで。最後は野口翼(1年・サンフレッチェ広島Y)、石田和希(1年・流通経済大柏)、藤原雅斗(2年・セレッソ大阪U-18)と出場機会をもらった若い選手たちがゲームをクローズするなど、「応援している中でもJリーグに行くような能力のある子はいますけど、そういう競争が常にあるチームですし、試合に出ている選手もちょっとでもそれを出せないと自分がいつ外れるかわからないですから、そういう意味では良い競争ができる組織になったかなと思います」と中野監督も胸を張った流経が、力強くベスト4へと駒を進める結果となりました。


流経が持つ色々な面での強さが際立った90分間だったと思います。1つ目は中盤での強度という意味での"強さ"。「ああやって相手がイエローカード覚悟でガツンガツン来た時に、冷静にやらなきゃいけないけど、こっちも激しくやれないと。そういう戦いの面で前半は負けていた」と敵将の須佐監督も口にしたように、古波津と富田のドイスボランチを中心に、1度食い付いたらファウルでも止め切る気迫はイレブン全員に浸透。ここでの優位性が終盤まで衰えなかったのは特筆すべき点だと思います。2つ目は選手層という意味での"強さ"。中野監督曰く、この日のゴールマウスを任された吉田は「2日前の試合が今年初めての出場で、4年間でもレギュラーの試合に出たのは今日が3試合目」とのこと。ただ、その情報がにわかには信じられないほどの安定感を纏っていた吉田に対しては「トップチームに入れない悔しさというのはずっと持っていたと思うんですよ。その中でも自分がどうしたらいいかというのをずっと我慢してやってきたから、こうやってポンと起用されても冷静にプレーできるんだと思うんですよね」と中野監督も高評価。こういう選手がまだまだ控えている所が、彼らの底力を支えていることは間違いありません。そして3つ目の強さは大応援団を含めた絶対的な一体感が醸し出す"強さ"。この日も90分間歌い続けた大応援団に対し、「あれだけ試合前から応援してくれた学生がいるので、選手もやらざるを得ない雰囲気というか、あれだけ応援してもらって"まったり"した試合というのは考えにくいですよね」と中野監督。試合後には松本山雅FCと同じチャントで、勝利のダンスをピッチとスタンドが共有。あの一体感は短期間で創り出せるものでは決してなく、スタンドの選手は試合に出られない悔しさは持ちながらも、自らに課せられた役割をまっとうしようとしていた姿勢が、あの真似できないような一体感に繋がっているのだろうなと。「もちろん理想的なサッカーをやって勝つのが一番良いけど、理想的なことができなくても勝ち上がるのがトーナメントなんだと。そういう面では学生もそれを徹底していますね」と言い切った指揮官。流経の連覇へ向けた行進は、まだまだ止まる気配がありません。       土屋

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