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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年07月07日

高円宮杯プレミアEAST第7節 市立船橋×柏U-18@グラスポ

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0706graspo.jpgステージはプリンスからプレミアへ。新たに勃発した3チームによる"千葉ダービー"。1巡目のファイナルバトルは昇格組同士の対峙。おなじみグラスポがその舞台です。
昨年末の広島で大阪桐蔭とアルビレックス新潟ユースを下し、プレミアへの昇格を見事に決めた市立船橋。挑んだ全国リーグは2勝2分け2敗と悪くない滑り出し。インターハイ予選でも永遠のライバルとも言うべき流通経済大柏が倒れたベスト4で、暁星国際相手に苦しみながらもきっちり勝ち切り、24回目の全国切符を獲得。このプレミア4連戦で勢いを付けて、山梨へ向かいたい所です。
一昨年は日本一に輝いたクラ選でしたが、今年は無念の関東予選敗退。天皇杯の県予選も決勝で敗れるなど、やや厳しい時を過ごしている感のある柏レイソルU-18。「僕自身もそうだし、チームにも『俺ら全国行って勝つぞ』みたいな、凄く慢心した雰囲気があって、本当に苦しいことを選べないというか、汚い仕事ができないというか、そういう雰囲気になっちゃった」と振り返った下平隆宏監督は、「やっぱり土台というか、地道にやることが凄く大事なんだよということを改めて再認識させられたし、俺もそう思った」とも。リスタートとなった先週の東京ヴェルディユース戦はしっかり勝利を収め、連勝を懸けて船橋へ乗り込みます。グラスポは気温31.0度と、もはや真夏の装い。灼熱と言っていい太陽の下、柏のキックオフで"ダービー"はスタートしました。


先にチャンスを掴んだのはアウェイチーム。4分、攻撃的な中盤で起用されている麦倉捺木(3年・柏レイソルU-15)が右から蹴ったCKを、ファーでCBの上島拓巳(3年・柏レイソルU-15)がヘディング。ボールはわずかに枠の左へ逸れたものの、セットプレーからまずは惜しいシーンを創出します。
ところが、先制点はもう1つのファーストシュートから。9分、市船が右サイドで獲得したCK。レフティの下村司(2年・東京ヴェルディJY)が得意の左足から繰り出したキックは鋭い弧を描いてゴール方向へ。ボールは左ポストの内側を叩くと、そのままゴールネットへ収まります。一瞬間があって、沸き立つ市船応援席。下村が直接CKをねじ込んだ格好で、ホームチームがスコアを動かしました。
さて、早くもビハインドを追いかける展開となった柏。「単純に今一番いいヤツを選んだつもり」と指揮官が話したメンバーは、もちろんボールを動かすスタイルは一定以上体現するものの、なかなかフィニッシュへと直結せず。12分に白川恵士朗(2年・柏レイソルU-15)の狙ったミドルが、市船不動の守護神・志村滉(3年・ヴィヴァイオ船橋)にキャッチされると、以降はシュートまで持ち込めない展開に。スイッチのポイントを探る時間が続きます。
一方の市船は、ある程度1トップの磯野隆明(3年・柏イーグルスTOR'82)へ長いボールを入れながら、シャドー的に構える永藤歩(2年・順蹴FA)と斉間隆希(3年・柏レイソル野田)がフォローするアタックに可能性が。21分には磯野の落としから、斉間が枠を越えるミドルにトライ。25分にも永藤の短いパスから、今度は磯野が枠越えミドル。29分にも磯野、永藤と細かく繋ぎ、斉間がゴール右へ外れるシュートを放つなど、3人の関係性でチャンスを生み出していきます。
32分にはセットプレーから柏に同点機。右から麦倉が入れたCKを、今度は上島がドンピシャヘッドで枠内へ。しかし、志村は素晴らしい反応でファインセーブ。拾った白川がすかさず左スミを狙うと、ここも志村が的確なセーブで弾き出します。36分には市船のボランチを務める椎橋慧也(2年・船橋八木が谷中)が、クロスバーの上に消えるミドル。38分には麦倉が志村にキャッチを強いるミドル。40分には市船の左WBを託された矢村健(2年・横河武蔵野FC JY)が、枠の右へ外れるミドル。44分には斉間が、柏のGK滝本晴彦(2年・柏レイソルU-15)にキャッチを強いるミドル。45分には柏のCF大島康樹(3年・柏レイソルU-15)と左FWの伊藤達哉(2年・柏レイソルU-15)が細かい連携でエリアへ入るも、シュートまでは至らず。市船が1点をリードしたまま、ゲームはハーフタイムを迎えました。


煌いたのは太陽王子の"左"。後半開始早々の47分、左サイドでボールを受けた伊藤はシンプルに縦へ。後方から上がってきたSBの古賀太陽(1年・柏レイソルU-15)は、中央をしっかり確認してマイナス気味のクロス。ワントラップした大島が間髪入れずに左足を振り抜くと、ボールはゴール右スミへ綺麗に飛び込みます。「前半はなかなか動きが硬かった」(下平監督)伊藤と、「本来は右利きだけど、身体能力も高いし面白い」(同)古賀のコンビネーションから、最後は伝統の9番を受け継ぐストライカーが一刺し。柏がスコアを振り出しに引き戻しました。
畳み掛けた王子。50分に伊藤の突破から奪った右CKはオフェンスファウルになりましたが、53分には白川、伊藤、大島とスムーズにボールが回り、伊藤が枠を越えるシュートまで。54分にも伊藤が独力で左サイドを切り裂き、折り返したボールは市船のキャプテン藤井拓(3年・Wings U-15)が間一髪でクリア。56分にも麦倉のパスから、大島が枠へ収めたミドルは志村がキャッチ。「後半は持ち味を出し始めた」と指揮官も認める伊藤の躍動もあって、柏が隠さない逆転への強い意欲。
一瞬の集中力は彼らの十八番。57分は市船の決定機。右サイドから下村が蹴り込んだフィードをDFがこぼすと、かっさらった永藤は独走。1対1は飛び出した滝本に軍配が上がるも、"瞬間"を見逃さない嗅覚はさすが。61分にも斉間が高い位置でボールを奪い、磯野はエリア内でシュートモーションに。ここはそれまでも体を張った守備が目立っていた、柏のCB中島玲央(3年・柏レイソルU-15)が決死のタックルで回避しましたが、"瞬間"を見逃さない嗅覚はさすが。市船もしっかりと刃先をちらつかせます。
先に動いたのは下平監督。62分に伊藤を下げて、昨年のU-17ワールドカップにも出場している会津雄生(3年・柏レイソルU-15)を投入。さらに、68分には中盤で奮闘したデン・ヘイジャー・マイケル・ジェームス(3年・Onehunga Sports)と山本健司(3年・柏レイソルU-15)も入れ替え、勝利への舵取りを鮮明に。朝岡隆蔵監督も69分には下村に替えて、小林瑞知(3年・ジェフユナイテッドU-15)を送り込み、こちらもラスト20分間で奪いたい勝ち越しの一撃。
70分のビッグチャンスは切られた"カード"から。中盤アンカーの安西海斗(2年・柏レイソルU-15)を経由したパスワークを受け、中央でボールを持った山本は右へ必殺スルーパス。オーバーラップしてきたSBの熊川翔(2年・柏レイソルU-15)が好クロスを繰り出すと、そこへ飛び込んだのは会津。シュートは志村が懸命に弾き出しましたが、2枚の"カード"が柏へ早速可能性を。72分の好機も切られた"カード"から。右サイドを縦に運んだ小林がクロスを放り込み、ニアで当てた磯野のヘディングはゴール右へ逸れるも、市船も"カード"がしっかりチャンスを演出。78分には朝岡監督が押尾大貴(2年・柏レイソルA.A.TOR'82)を、80分には下平監督が浮田健誠(2年・ミナトSC)を、それぞれピッチへ解き放ち、いよいよダービーは最後の10分間へ。
81分は市船。斉間の右CKに、喜岡佳太(2年・FCトッカーノ)がダイビングヘッドで応えるも、滝本がしっかりキャッチ。86分は柏。麦倉の右CKはこぼれ、再び麦倉が上げたクロスを、ファーへ走り込んだ古賀が頭で叩くも、ボールはクロスバーの上へ。90+1分は市船。斉間の左CKから、ファーで杉岡大暉(1年・FC東京U-15深川)が振り下ろしたヘディングは枠の右へ。90+2分は柏。山本のミドルが枠を襲うも、志村が丁寧かつ力強くキャッチ。90+5分は市船。斉間の左FKがクリアされると、主審が吹いたのはファイナルホイッスル。「勝ち点3を取りたかったなというゲーム」という下平監督の言葉は、おそらく両者の偽らざる気持ち。ダービーはお互いが勝ち点1ずつを分け合う結果となりました。


市船からはそう簡単に負けないであろう、チームとしての強度を感じました。最後尾の中央に藤井という大きな核を置いていることも大事なポイントですが、個人的に唸ったのは3バックの左に入った杉岡とドイスボランチの一角を占める高宇洋(1年・川崎フロンターレU-15)の1年生コンビ。ルーキーでいきなりチームの骨格とも称されるセンターラインに抜擢されたのも納得のプレーぶりで、柏のややこしいボール回しにもしっかり食らい付いていました。山梨の地では彼らがどれくらいやり切れるかが、躍進の鍵を握ってくるかもしれません。
「今日もフレッシュな、頑張れる選手をベースに使っているから」と下平監督が話した柏は、どうやら"底"は脱しているように見えました。「本当に頑張れるヤツだけがプロで生き延びていくと思うし、ちょっと下手でもそういう方が俺は魅力的だと思うから、そういう風にこっちも選んでるとか、そういう風になっていなかくちゃいけないよというメッセージも込めて、こういうメンバーでやってます」という指揮官のメッセージは、確実に選手へ伝わっているのかなと。例えばその指揮官が「昨日寝る前に閃いた」というCB起用となった中島は必死に体を張り続けていましたし、この春からチームの一員となったマイケルも特殊なスタイルを懸命に消化すべく戦っており、そういう根幹の部分を見直すことは、間違いなくチームの良化へ繋がっていくはずです。「いい機会なので、夏は2部練のオンパレードで鍛えていこうかなと。柏キャンプで(笑)」と笑った下平監督。"柏キャンプ"後を潜り抜けた彼らがどう変化していくのか、楽しみがまた1つ増えてしまいました。     土屋

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