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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年07月31日

クラ選準々決勝 G大阪ユース×JFAアカデミー福島U18@前橋総合

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0730maebashi2.jpg過去3度の優勝を誇る関西の雄に大会初出場のアカデミー集団がチャレンジする構図。この大会の変遷を象徴するような一戦は、引き続き前橋総合です。
大宮アルディージャユース、横浜F・マリノスユース、モンテディオ山形ユースと厳しい相手を前に、無敗での首位通過を達成。鹿島アントラーズユースと撃ち合ったラウンド16も4-2で制し、今年もここまで順当に勝ち上がってきたガンバ大阪ユース。GKの林瑞輝(3年・ガンバ大阪JY)や市丸瑞希(2年・ガンバ大阪JY)、高木彰人(2年・ガンバ大阪JY)をはじめ、年代別代表の常連でもある5人の2種登録選手を抱えるなど、豊富なタレントを武器に7年ぶりの戴冠を視界に捉えています。
クラブユース連盟への再加盟を受けて、拠点となっている御殿場に準じ、挑んだ東海地域予選は名古屋グランパスU18を倒し、3位通過で全国初切符を掴んだJFAアカデミー福島。1次ラウンドはヴァンフォーレ甲府U-18、アビスパ福岡U-18、センアーノ神戸ユースを3連勝で蹴散らすと、ラウンド16では大分トリニータU-18に延長で競り勝って、全国の8強までサバイブ。「プレミアの再開も負けたら終わりみたいな感じだったので、そこから何となくトーナメント的な、負けたら「アカデミー、サヨナラだな」みたいなね(笑)」と笑うのは中田康人監督ですが、ここまでわずか1失点と守備陣の好調を盾にしながら、一気に横浜進出へ王手を懸けています。気温は35度と群馬ラストマッチにふさわしい真夏日の炎天下。全国4強を巡る重要なゲームはG大阪のキックオフでスタートしました。


わずか47秒の積極性はアカデミー。左から瀬川泰樹(3年・JFAアカデミー福島U-15)が中へ送ったボールを、浜田力(3年・JFAアカデミー福島U-15)はエリア内までゴリゴリ持ち込み、最後はマーカーにシュート目前で潰されたものの、好チャレンジを開始早々に。4分にはキャプテンのCB金城ジャスティン俊樹(3年・JFAアカデミー福島U-15)がやや強引なミドルを枠の左へ。アカデミーがファーストシュートも奪います。
アタッカー陣に世代屈指のタレントを揃え、4試合で10ゴールを奪っているG大阪に対し、アカデミーが選択した対抗策は「守備は『中に鍵を掛ける』と。これが合言葉」(中田監督)。「『外のSBが高いポジションを取ってもそこは逆にいい。そこはやらせろ。その次だ。最終ラインで取るようなつもりでいい』と」中を閉める割り切りを徹底。11分に平尾壮(3年・川上FC)の仕掛けから、こぼれを拾った堂安律(1年・ガンバ大阪JY)のシュートもマーカーが素早く寄せてブロック。12分に堂安が続けて蹴った右CKもきっちり跳ね返すなど、「2人が安定し始めたのは大きな所」と指揮官も認める金城と宇野能功(3年・JFAアカデミー福島U15)のCBコンビを中心に、1つずつ丁寧に潰していくピンチの芽。
その守備のリズムはスムーズな攻撃にも直結。13分には瀬川が左へ振り分け、SBの高森大夢(3年・JFAアカデミー福島U15)がダイレクトで上げた鋭いクロスは中と合わず。17分にも相手の横パスをかっさらった瀬川のスルーパスは、浜田に渡る直前に相手ディフェンスがカット。17分にも右へ開いた浜田のクロスに、ニアへ飛び込んだ加賀山泰毅(3年・JFAアカデミー福島U15)のヘディングは枠の左へ外れましたが、「攻撃する時はアウトサイドを使う」(中田監督)というチームの狙いを体現しつつ、アカデミーが攻守の一体感でゲームリズムを掴みます。
19分にバイタルでボールを受けた、G大阪の左SHを務める岩本和希(2年・ガンバ大阪JY)のミドルが枠の右へ外れて以降、給水タイムを挟んで10分ほど動きの少なくなっていたゲームが突如として動いたのは32分。ここも右に開いた浜田がクロスを上げるとDFにの手にボールが当たり、田中玲匡主審はPKというジャッジを下します。絶好の先制機に迷うことなく最後方から上がってきたのは金城。キャプテンが左を狙ったキックは、G大阪のキャプテンを任された林も飛び付きますが一歩及ばず。アカデミーがリズムそのままにリードを奪いました。
ところが、青黒もすぐさま反撃。37分に右45度から高木がわずかに枠の左へ外れるシュートを放つと、39分にも左サイドを駆け上がったSBの初瀬亮(2年・ガンバ大阪JY)が入れたクロスは、中央でDFにヒット。一瞬間があってホイッスルが聞こえると、田中主審はここもペナルティスポットを指し示します。スタンドからはわかりにくかったものの、おそらくはハンドという判定。キッカーの市丸は冷静にGKの逆を突き、ボールをゴールネットへ送り届けます。お互いにPKでゴールを陥れた前半は、1-1のイーブンでハーフタイムへ入りました。


後半もファーストシュートはアカデミー。51分、左から高森が左足で蹴り入れたCKを、ニアで叩いた加賀山のヘディングはクロスバーの上に消えるも、167センチとは思えない打点で次々にヘディングを繰り出す加賀山の惜しいフィニッシュ。52分にはG大阪も堂安が枠を越えるミドルにチャレンジしますが、アカデミーが後半も勢いを持って立ち上がります。
そんな中でG大阪に到来した逆転のチャンスはまたもPK。市丸のパスを左で受けた高木がクロスを送り、外に開きながら落下地点を探った岩本がDFと接触して倒れると、田中主審はここも11メートルのゴールチャンスをG大阪へ与えます。この日3度目のPKにスタンドも騒然とした雰囲気に包まれる中、キッカーは高木。コースは市丸と同じ右。GKも左。とうとうG大阪が逆転に成功しました。
さて、率直に言って判定に泣かされる格好でリードを許したアカデミー。それでも「2点目のPKを取られた後も、『行こう!行こう!』という感じになれていた」と浜田が話せば、「『まあしゃあないな』というような感じだったですね」と中田監督。60分にバイタルに潜った加賀山が枠の右へ外れるミドルを放つと、中田監督も1人目の交替を決断。「サイドを積極的に使いたいので、前に行ける」という指揮官の判断でスタメン起用された1年生の延佑太(1年・JFAアカデミー福島U15)を下げて、10番の草野侑己(3年・JFAアカデミー福島U15)を送り込み、再び活力と技術をアタッカー陣に注入します。
すると、すぐさま輝いたのはやはり10番。63分、バイタルで綺麗にパスが回り、谷口憧人(2年・JFAアカデミー福島U15)、加賀山と経由したボールを、エリア外でもらった草野は迷わず左足一閃。軌道はゴール左スミへ一直線に突き刺さります。「割とシュートを置きに行くタイプだった」(中田監督)草野が、朝練で中田監督の「やっぱりドカンがいいんじゃねえの」というアドバイスを受けてから、大分戦に続いてこの日も"ドカン"で成果を。アカデミーがスコアを振り出しに引き戻しました。
まさに一気呵成。64分の主役は「チームの助けになれればそれでいいと思ってやっている」と語る献身の塊。瀬川のパスから右へ張り出した加賀山が浮き球をフワリと中央へ落とすと、走り込んだ浜田は前に出てきたGKの足元を破るシュートを。ボールはゆっくりとゴールネットへ転がり込みます。「裏に出ることと収めることは常に意識している。個人としては走る量が増えたと思う」と話す浜田の美しい再逆転弾。「ここでこの勢いがあったかと。僕がビックリした」と笑った中田監督。2分間でアカデミーが再び1点のアドバンテージを手にしました。
64分にはアカデミーがよく走ったボランチの浅見貫太(3年・JFAアカデミー福島U15)を下口稚葉(1年・JFAアカデミー福島U15)と入れ替えると、66分にはG大阪も2枚替えの決断。嫁阪翔太(3年・RIP ACE SC)と平尾に替えて、山﨑拓海(3年・ガンバ大阪JY)と妹尾直哉(3年・津ラピドFC)をピッチへ解き放ち、前線は妹尾と堂安を2トップ気味に配す形で勝負に出ると、68分には堂安が岩本とのパス交換からエリアへ侵入してシュート。ボールは左ポストに直撃し、こぼれを狙った高木のシュートも枠の左へ逸れましたが、頂点を知る青黒のアタッカーたちが一気にアクセルを踏み込みます。
70分にアカデミーは瀬川と飛鷹啓介(1年・ソレッソ熊本)を、71分にG大阪は右SBの山中海斗(2年・愛媛新居浜北中)と吉岡裕貴(2年・ガンバ大阪JY)をそれぞれスイッチすると、この交替策がピタリと当たったのは後者。74分に山﨑の左CKからCBの前谷崇博(3年・グランセナ新潟FC JY)が当て切ったヘディングは、アカデミーのGK似鳥康太(3年・JFAアカデミー福島U15)がキャッチしましたが、その1分後に轟いた3度目の咆哮。75分、右CBに入っていた吉岡のピンポイントフィードは、最高の放物線を描いて妹尾の元へ。最初のシュートはDFに当たったものの、再び蹴り込んだボールはここもGKに当たりながら、チームの執念が乗り移ったかのようにコロコロとゴールネットへ到達します。3-3。両者にまたも均衡状態がもたらされました。
80分には高森が、82分には山﨑が枠外ミドルを撃ち合い、さらにG大阪は中村文哉(3年・岐阜VAMOS)を、アカデミーは清水颯人(1年・JFAアカデミー福島U15)と堀大貴(3年・JFAアカデミー福島U15)を送り込み、ゲームは最終盤へ突入。90+2分にはアカデミーに決定機。右から牧野潤(2年・JFAアカデミー福島U15)が上げ切ったクロスを、加賀山がヘディングで叩いたボールはわずかにクロスバーの上へ。90+3分はG大阪。左から初瀬がスローインを投げ入れ、高木のクロスに岩本が難しいボレーで応えるも、ボールはわずかに枠の左へ。両雄相譲らず。勝敗の行方は前後半10分ずつの延長戦へもつれ込むことになりました。


アカデミーはCBで奮闘していた宇野が後半終了間際に足を攣り、以降はボランチで投入された下口がCBへ1枚下がって対応。宇野が"効きまくっていた"だけに、やや不安要素かなと思いましたが、その下口も「吉武さんの代表でもセンターディフェンスをやっているので、場数的には慣れてきている」(中田監督)こともあって、CBでも問題なくプレー。延長前半も相手のシュートを、94分にショートコーナーから山﨑が放った枠越えミドル1本に抑えるなど、「本当に総力戦で戦って、そこにみんなが応えてくれている」という中田監督の言葉を待つまでもなく、個々が自らの役割をきっちり理解して体現していきます。
G大阪が最後の交替カードの園部凌平(3年・ガンバ大阪JY)を投入して始まった延長後半は、お互いに出し合う手数。106分はアカデミー。ゴール右寄り、約20mの距離で草野が獲得したFKを高森が直接狙ったボールは、カベに入っていた前谷が決死のブロック。108分はG大阪。初瀬のフィードをGKが飛び出してクリアすると、そのボールを無人のゴールへ向けてダイレクトで狙った妹尾のシュートは、しかし枠の左へ。109分はアカデミー。牧野のスローインを清水が繋ぎ、牧野が鋭く入れたクロスを加賀山が頭で狙うも枠の左へ。110+1分はG大阪。左から山﨑が蹴ったCKはそのままゴールラインを割り、結果的にこれが110分間のラストチャンス。延長でも決着は付かず。横浜への扉を開ける鍵は、PK戦で奪い合うことになりました。


「前橋公園で共に闘う!我らは歌うのさ、福島のために!」とスタンドから仲間を鼓舞し続けたアカデミーのチームメイトと、わずか1人で110分間チャントを奏で続けたG大阪ユースサポーターも見つめる中、スタートした11メートルのロシアンルーレット。先攻のアカデミー1人目を託された加賀山は完璧なキックで左スミへ成功させましたが、G大阪1人目の市丸が試合中と同様に右を狙ったキックを弾き出したのは似鳥。ファーストキッカーは大きく明暗が分かれてしまいます。
アカデミー2人目の金城は林の逆、G大阪2人目の山﨑は似鳥と同方向にそれぞれ成功。アカデミー3人目の高森は高技術のレフティらしくど真ん中に蹴り込み、G大阪3人目の妹尾も確実にGKの逆を突いて左スミへ。アカデミー4人目の堀は左スミの本当にギリギリの所へぶち込み、外せば終わるG大阪4人目の中村は事も無げに左スミへ成功。そしてアカデミーの5人目としてスポットへ向かったのは草野。本来のキャプテンが短い助走から左スミを狙ったキックは、林もきっちり反応していましたが、激しく揺れたゴールネット。「こういうゲームのような経験が、彼らを育てて逞しくしてくれているのは間違いない」と中田監督も笑顔を見せたアカデミーが、初挑戦で群馬ラウンドを勝ち抜け、セミファイナルへの進出権を逞しく勝ち取る結果となりました。


110分間に加えられたPK戦まで、一時も目の離せない壮絶なゲームでした。その中で際立ったのは、1つ前の試合でも延長を戦い抜きながら、この日も最後まで運動量も含めて微塵も衰えなかったアカデミーの闘う気持ち。とにかくその部分は印象的でもあり、感動的ですらありました。「何となくアカデミーって子供たちもそうですけど、ちょっと個の部分がなんて思いがちですけど、結局良くなってきているのはチーム力というか、もう結束しようよという部分」だと話す中田監督は、「今年のチーム自体はもともとテクニックが高い選手がそれほど多くないから、自分たちは守って堅守して、攻撃の回数を増やすというか、それがだんだんチームとしてのスタイルになってきたというのはありますね」と今のスタイルを説明。その中で「今回で言えば全力のプレーは褒めてやれと。その代わり要求ははっきりしろと。例えばポジションが甘かったり、ファーストディフェンダーが行かないんだったら必ずそこは言えと。もし辛そうな顔をしていても、戻らなくてはいけない場合には絶対に要求しろと。そういう所を今回のクラブユースの中で徹底しよう」と話してきたそうです。これに関しては浜田も「この大会に入ってからみんなで自然に言い合えるようになっている。それまでは文句の言い合いだけだったけど、今大会はそうじゃない」と自覚を口に。それは「人に嫌われたくないから文句言わないとか、そういうのがこの世代ってあるのかなと思ったんですけど、でも『そうじゃないよね、サッカーは』と。そういうことを言えることが仲が良いというか、チームのことを思ってやるということなんじゃないの」という指揮官の考えが、選手たちにも浸透した結果だと言えるのではないでしょうか。日本一まで2つに迫った現状を受けても、「謙虚に1つずつ。三ツ沢陸上は決まったので、まずは球技場に行けるように頑張ります」と笑う中田監督。この大会中ですら日々成長を続ける彼らが、土曜日に"球技場"で凱歌を上げていたとしても、何の不思議もありません。        土屋

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