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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年06月23日

インターハイ群馬決勝 前橋育英×常磐@前橋総合

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maebashi sogo.jpg上州のタイガー軍団か、東毛の紅き勇者か。たった1つの全国切符を巡り、両者が激突する舞台は前橋総合運動公園です。
鈴木徳真(3年・FC古河JY)と渡邊凌磨(3年・クラブレジェンド熊谷)という、2人の世界を知る男を擁し、プリンス関東でもここまで4位に付けるなど、今年もそのポテンシャルは全国の強豪が警戒している前橋育英。ベスト16からの登場となった今大会は、まず高崎経済大附属を4-0で一蹴すると、"群馬クラシコ"となったクォーターファイナルも1-0で前橋商業を撃破。勢いそのままに共愛学園を2-0で下して、連覇へ王手を懸けています。
対するは、関東大会予選で準優勝を果たすなど、群馬県内の各種コンペティションにおいて存在感を発揮している常磐。初戦の桐生商業戦こそ3-2と苦しみながらも勝ち上がりましたが、以降は高崎商業を3-1、新島学園を4-0と蹴散らし、堂々たるファイナル進出。今月頭には関東大会でも1勝を挙げており、「それは子供たちにも自信にはなったかなと思う」と話したのは間野健彦監督。その経験を後ろ盾に、"育英超え"を真剣に狙います。会場の前橋総合に降り続いていた雨は、キックオフの前後から小康状態に。屋根のないスタンドに少なくない観衆を集めたファイナルは、育英のキックオフでスタートしました。


いきなり牙を剥くタイガー軍団の勢い。2分、鈴木の右FKに菊地匡亮(3年・エルマーノ那須)が合わせたヘディングは、常磐のGK和田進馬(2年・FC杉野)にキャッチされましたが、5分にも2トップの一角を占める青柳燎汰(3年・クマガヤSSC)が、左足で枠の左へ外れるミドルにトライ。7分にもフィードをしっかり収めた渡邊凌磨がフィニッシュまで持ち込み、最後は和田が正面でキャッチしたものの、まずは積極的に手数を繰り出します。
構図は序盤で明確に。「育英高校の方が力はあるチームなので、しっかり守備をしてカウンター」(間野監督)を徹底させた常磐は、右から石原範之(3年・館林第一中)、佐藤樹生(2年・ザスパ草津U-15)、吉澤宏晃(2年)と最後尾に配した3枚に加え、右の栗田大輔(3年・足利協和中)、左の五十畑凌(2年)も守備に軸足を置く5バック気味の布陣を採用。時にはアンカーの大島瞬生(3年・伊勢崎宮郷中)も最終ラインのヘルプに入りながら、危険な芽を潰すための態勢を1つずつ整えます。
とはいえ、「県内の色々なチームが本当に研究してやってくる」(山田耕介監督)のは王者の常。12分も育英。右サイドからSBの下山峻登(3年・クマガヤSSC)がロングスローを投げ込み、帰ってきたボールを再び下山がクロス。ニアに飛び込んだ青柳のヘディングは枠の右へ。13分には関戸裕希(3年・ヴェルディSS小山)が左へ振り分け、SBの渡辺星夢(3年・クマガヤSSC)が中央へ折り返すと、青柳のスルーを経て吉永大志(3年・JFAアカデミー福島)が打ち切ったシュートは枠の左へ。19分には決定機。長いボールを菊池が落とし、右スミギリギリを狙った渡邊凌磨のシュートは和田がファインセーブで弾き出すも、比較的シンプルなボールを菊地と青柳へ放り込む黄色と黒の続くラッシュ。
21分に佐藤の右ロングスロー、澤口和輝(3年・太田北中)の右CKと相次いでセットプレーのチャンスを掴んだ常磐が、23分に迎えた"千載一遇"。中盤でルーズボールをモノにした澤口は、左サイドをグイグイ運ぶと、そのままミドルにチャレンジ。枠を襲ったシュートは育英のGK吉田舜(3年・クマガヤSSC)が横っ飛びで掻き出したものの、澤口のカウンターという"刃"が隠し持つ脅威を王者に突き付けます。
ただ、セットプレーも育英が続けて。27分、渡邊凌磨が入れた左CKは和田がパンチングで回避。右サイドで拾った菊地のクロスは中央をすり抜け、関戸のシュートは枠の右へ。31分、渡邊凌磨の左FKはゴール方向へ蹴り込まれると、ここも和田がファインセーブで応酬。34分には常磐も佐藤の右ロングスローから、こぼれを叩いた大島のシュートが枠の左へ外れるシーンを創出。35分はまたも育英。中央から渡邊凌磨が入れたFKを、CBの岩浩平(3年・横浜F・マリノスJY追浜)が頭で合わせるも、ボールはゴール左へ。黄色と黒が一方的に押し込んだ40分間はスコア動かず。0-0でハーフタイムへ入りました。


後半も攻め立てる育英に、凌ぐ常磐。42分は育英。渡辺星夢の左アーリーに菊地が反応するも、一瞬早く飛び出した和田が何とかクリア。45分も育英。右へ開いた青柳のクロスを、ニアへ入った菊地がボレーで合わせるも、和田がキャッチ。46分は常磐。右から澤口が大きく蹴り出したFKを、片岡雅(3年・大泉西中)が当てたヘディングは枠の左へ。育英、育英、時々常磐。ただ、スコアボードの数字に変化は訪れません。
52分に渡邊凌磨の右FKから、岩のヘディングがDFに当たりながらいいコースに飛ぶも、和田のファインセーブに回避されるのを見て、山田監督は1人目の交替を決断。前線で奮闘した青柳を下げて、坂元達裕(3年・FC東京U-15むさし)をそのまま2トップの位置に送り込み、前線の顔触れに変化を施すと、躍動したのは替わったその11番。
55分に菊地が競ったこぼれを坂元は拾って関戸へ。シュートは和田がしっかりキャッチしましたが、いきなり坂元が好機を演出。56分にも渡辺星夢は坂元とのワンツーで抜け出し、枠の右へ外れるミドルを。58分にも鈴木が極上のスルーパスを右サイドへ通し、下山のクロスへニアに突っ込んだ坂元のダイビングヘッドはゴール右へ外れましたが、早速坂元が3つのチャンスに連続して絡みます。
60分のチャンスは常磐。小林彩都(2年)を起点に右サイドで澤口が粘って繋ぐと、栗田の距離のあるボレーは吉田がキャッチ。直後は育英。渡辺星夢がスルーパスを繰り出し、渡邊凌磨の折り返しに坂元がスライディングしながら当て切るも、ボールは枠の左へ。63分も育英。左から渡辺星夢がロングスローを放り、最後は渡邊凌磨が右スミ目掛けて打ったミドルはわずかに枠の右へ。69分も育英。渡邊凌磨の右CKは一旦DFがクリアするも、戻ってきたボールを再び渡邊凌磨が中央へ。岩がヘディングで枠へ飛ばした軌道は、しかしクロスバーにヒット。「単調になり過ぎると相手も慣れてきちゃう」と話した山田監督の指示もあって、斜めのクサビが効果的に入り始めた育英が続けて生み出したビッグチャンス。それでも残り10分を切っても、動かないスコア。
常磐がこの日最大の決定的な場面を創ったのは71分。澤口が右からFKを蹴り込むと、ボールはエリア内でバウンド。いち早く反応した副田健一郎(2年)は至近距離からフィニッシュ。誰もが先制ゴールかと思った直後。しかし、ゆっくりと枠の右へ逸れた白黒の球体。「決定機でしたね」とは間野監督。リードを手にすることはできません。
80分間で勝負を付けたい育英は再び勢いを。75分、菊地が溜めて左へ返すと、渡辺星夢の強烈なシュートは和田が抜群の反応で回避。78分、渡邊凌磨の右CKは和田がパンチングで掻き出し、関戸が打ち切ったミドルはクロスバーの上へ。80+1分、ゴールまで約25mの位置から、渡邊凌磨が直接狙ったFKはわずかにクロスバーの上へ。常磐が奥山徳弘(2年)を1枚目の交替カードとして送り込み、迎えた80+2分のラストチャンス。関戸のスルーパスから、下山がグラウンダーで中央へ通し、ゴール前に混戦が生まれるも、何とかDFがクリア。「1試合通じて延長になるまでは無失点だったので、そこは非常に頑張ったんじゃないかなと思う」とは間野監督。0-0。両者譲らず。王座を巡るファイナルに前後半10分間ずつのエクストラタイムが加えられることになりました。


山田監督が"2枚目"を決断したのは延長開始から。菊地に替えて、「ものすごくスピードがある子なので、そこから相手が疲れているので縦に突破できればチャンスが出てくるかなと思って」佐藤誠司(2年・FC東京U-15むさし)を最前線に解き放ち、"20分間"で勝ち切る覚悟を。キックオフの笛が吹かれて、わずかに25秒。ゴールまで約35mの距離から下山が放った弾丸ミドルはクロスバーにヒット。最高の幕開け。勝ち切る覚悟を。
結実の時は86分。波状攻撃から鈴木が右へ素晴らしい展開。受けた下山はアーリー気味に中央へ流し込むと、ここに体を投げ出したのは、延長スタートからそのポジションを2トップの一角へ移していた渡邊凌磨。頭で捉えたボールは、とうとうゴールネットまで到達します。沸騰の黄色と黒の応援団。「やっぱり最後はGKとDFの間なんでしょうけどね」と指揮官も納得の表情。続いてきた均衡が、10番によって打ち破られました。
「育英さんもサイド攻撃を徹底してきたので、そのへんの指示もしながら頑張っていたんですけど、最後に飛び込まれてしまったなという所ですね」と間野監督も振り返った常磐は、このゲームで初めて追いかける展開に。それでも、守備に使っていた脚力はなかなか戻らず。経過していく時間。最終ラインの佐藤を前線に上げましたが、上原大雅(3年・FC厚木)と岩の育英CBコンビは鉄壁。ボールが届きません。
98分に渡邊凌磨が迎えたトドメの決定機も、ゴールマウスに立ちはだかり続けた和田が超ビッグセーブで阻むと、100分に迎えたラストチャンス。和田が後方から蹴った渾身のフィードを、佐藤が競り勝ってマイボールに。延長後半開始から投入されていた、最も"脚の残っている"相子晃儀(2年)のボレーがクロスバーの上へ消えると、それはこの100分間で最後のシュート。タイムアップ。狂喜と落胆のコントラスト。「焦れたら負けだと。10本打って1本決まればいいんだからと。そういうことですよ」ときっぱり言い切った指揮官。上州の虎が甲斐路への切符を執念でもぎ取る結果となりました。


さすが前橋育英という勝負強さだったと思います。昨年の選手権予選は、やはり似たような展開の中で最終盤に決勝ゴールを奪われ、無念の決勝敗退。その"半年前"が頭をよぎるような展開の中で、「PK戦はキッカーの11人も試合前から決めている。今までの反省を生かして全部決めているから」と明かした山田監督の"ディテール"にまでこだわる姿勢は、確実にピッチのイレブンへ浸透していたようです。全国への豊富を問われ、「去年ほど力はないと思うけど、チームとして戦いたいですね」と話した指揮官。タイガー軍団が全国のステージで唯一見据えるのは、間違いなくその頂に他なりません。        土屋

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