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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年06月09日

J3第15節 町田×相模原@野津田

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0608machida.jpg今シーズン2度目の"武相決戦"は首位と4位の上位対決。地域のライバルが激突する上へ行くか、下に落ちるかのキーゲームは町田サッカー界の聖地・野津田がその舞台です。
1年でのJリーグ復帰を掲げた昨シーズンは、監督交代などもあって結局4位と、最大にして唯一の目標には手が届かなかったFC町田ゼルビア。創設メンバーに名前を連ねたJ3を主戦場に置く今シーズンは、4年ぶりに相馬直樹監督がチームに帰還を果たすと、開幕から10戦無敗と開幕ダッシュに成功して、現在も堂々首位をキープ。「自分たちが目指しているのは、J2でどれだけ戦えるかだと思う」(リ・ハンジェ)「J2で勝てるチームになるためには、もっともっと個人個人がやらなきゃいけない」(鈴木崇文)と2人が声を揃えたように、目の前の結果と"この先"への投資を同時に手にするための1年間を戦っています。
怒涛のリーグ"5連覇"を達成し、駆け上がったJFLのステージでもいきなりの3位。J3へと参入した今シーズンは開幕直後の3月こそ苦しんだものの、元日本代表の高原直泰が試合に出場し始めた4月以降は6勝2分け2敗と大きく星を伸ばして、ここまで4位と上々の成績を残しているSC相模原。木村哲昌監督体制も3年目を迎え、さらなるステップアップを目指す上で今年が重要な1年になることは間違いありません。「ダービーということで注目をして頂いたゲーム」と相馬監督も言及した一戦には、悪天候にもかかわらず3519人のサッカージャンキーが。注目のダービーは相模原のキックオフでスタートしました。


「前半はしっかり守備から入ろう」(木村監督)と立ち上がった相模原を尻目に、まずは町田が手数。3分に鈴木崇文が蹴った左CKは高原のクリアに遭いましたが、同じく3分には右SBの三鬼海が送ったフィードを木島徹也が頭で落とし、鈴木崇文が右足で狙ったシュートは枠の左へ。5分にも鈴木崇文の右CKを深津康太が頭で繋ぐと、戸高弘貴のワントラップ反転ボレーはわずかにゴール右へ。セットプレーを中心に攻撃のペースを掴みます。
12分は相模原。左サイドを曽我部慶太とのワンツーで切り崩した高原の折り返しに、ニアへ突っ込んだ服部康平はダイレクトシュートで応えましたが、ここは町田のGK修行智仁がきっちりセーブ。21分も相模原。曽我部が左から蹴ったCKは中央にこぼれ、これに反応した天野恒太とウェズレイが重なってしまい、シュートは打ち切れなかったものの、相模原にもチャンスの芽が生まれ始めます。
基本的にはボールを後ろで動かしながら、チャレンジする局面では2トップへと長いボールを入れる回数も多かった町田に対し、高い集中力を発揮したのはキャプテンマークを巻いた工藤祐生とウェズレイで組む相模原のCBコンビ。特にウェズレイは184センチの体格を生かして跳ね返したかと思えば、地上戦でも「自分はスピードが持ち味」と言い切るだけあって、大抵の突破や抜け出しは確実にストップ。町田も23分には鈴木崇文がゴールまで25m近い距離から枠内FKを打ち込みましたが、相模原のGK佐藤健が勇気あるセーブで最後はオフェンスファウル。流れの中からはなかなかチャンスを創れません。
29分は相模原。曽我部が自ら獲得した左CKをショートで始め、天野のリターンをそのまま流し込んだクロスは、突っ込んだ高原と工藤にはわずかに合わずも好トライ。「前半の初めの方はずっとボールに触れていて、今日は感じいいなと思っていた。仕掛けとかターンとか、ボールを落ち着かせるとかは首位相手でも問題なくやれたなと思う」と話した左SHの曽我部をスイッチに、少しずつ相模原にも反撃の香りが。
牙を剥いたのは161センチの牛若丸。33分、庄司悦大が右サイドへ入れたフィードは相模原の左SB大森啓生が先に触ったものの、ウェズレイとお見合いした瞬間にボールをかっさらったのは戸高。そのまま右へ流れながら逆サイドを狙ったシュートは、ゆっくりとゴールネットへ吸い込まれます。小さなルーキーが堂々たる大仕事。「いらないミスからの失点」と木村監督も嘆く相模原に生まれた一瞬の隙を見逃さず、ホームチームが先制点を手にしました。
ところが、このリードは10分間で霧散。失点の前後から三幸秀稔と鈴木健太のドイスボランチがボールに触り出したことで、中盤でのパス回しにスムーズさが出てきた相模原は43分、曽我部のパスを引き出した三幸が右へピンポイントでサイドチェンジを付けると、ここでフリーになっていたのは高原。世界を知る男がこの状況に容赦するはずもなく、供給したパーフェクトクロス。全身を投げ出した服部のダイビングヘッドが豪快に揺らしたゴールネット。「フリーにしたら決定的な仕事をされるのも当然」とは、現役時代に高原との対戦経験もある相馬監督。千両役者がルーキーの今シーズン初ゴールをアシストして、スコアは振り出しに引き戻されました。
追い付かれた町田は45+1分、鈴木孝司を起点にリ・ハンジェが右へ回し、鈴木崇文がカットインから打ったシュートは枠の右へ。45+2分にもリ・ハンジェ、三鬼と回ったボールを、鈴木崇文がミドルレンジからチャレンジしたシュートはわずかに枠の右へ。「僕のポジションはゴールに絡まなくてはいけない」と話す鈴木崇文の高いシュート意識も同点とはいかず。最初の45分間は1-1のタイスコアで終了しました。


ハーフタイムで1枚目のカード投入を決断したのは木村監督。「中盤でのハードワークが多くなる中で、コンディション的にもスリッピーな状況で数的不利で後半を戦うのは非常に厳しい」という判断から、ゴールの起点になりながらイエローカードを1枚もらっていた三幸を下げて、佐野裕哉をピッチへ解き放ち、勝ち点3への意欲をチームへ注ぎ込みます。
すると、後半はスタートから相模原がゲームリズムを掌握。48分に曽我部のパスから服部が上げた左クロスはDFに当たってゴール方向へ向かい、修行が懸命のフィスティングで回避したものの、そのCKもチャンスに。曽我部のキックがこぼれると、佐野のボレーはDFが体で防ぎ、さらに曽我部が枠内へ収めたミドルは修行が何とかキャッチ。「うまくショートパスで打開できたりだとか、サイドに振れたりとか、あの時間帯はすごく効果的に繋げていた」とは曽我部。50分にも菅野哲也のドリブルから、曽我部のラストパスを菅野が打ち切ったシュートは平のブロックに阻まれるも、意気上がるのは緑で彩られたアウェイゴール裏。
54分も相模原。大森のドリブルで獲得したFK。左から曽我部が浮かせたキックへ、ニアへ飛び込んだフリーの服部は頭で叩くもボールはゴール左へ。56分も相模原。この日5本目となるCKを曽我部が左から入れると、ファーサイドで拾った菅野のクロスはラインを割ってしまいますが、「少しずつペースを掴めてきていた」と木村監督も振り返った通り、相模原の勢いが町田を飲み込み始めます。
ただ、「誰かがさぼっていたとか、誰かが動いてないわけじゃないけど、全体として後半の立ち上がりはフワッと入っている部分があって、そこで相手に勢いを持たれたなという部分はある」と話すリ・ハンジェは、「そこから盛り返せるのが自分たちの強み」とも。61分の木島と齋藤翔太の交替を挟んだ6分間あまりに右サイドで3度のセットプレーを集中させると、65分には鈴木崇文の左CKから、佐藤が弾いたこぼれをリ・ハンジェはそのままミドルを放ち、数人のDFをかすめたボールは左のポストに当たって、DFが何とかクリア。「アレは入ってましたよ」と苦笑いを浮かべたのは当のリ・ハンジェでしたが、一気に引き寄せたゲームリズム。
69分も町田。右サイド、ゴールまで約25mの距離から今度は曲げた鈴木崇文のFKはクロスバーの上へ。73分も町田。左から鈴木崇文が放り込んだFKを、フリーで合わせた平のヘディングは枠の右へ。76分も町田。庄司の縦パスを鈴木孝司が丁寧に落とし、星野悟がトライしたミドルはウェズレイが間一髪でブロック。青い矛は緑の盾を貫き通せるか。
「『こういう状況の中であれば、なおさらリスタートが大事になる』と言って送り出した」指揮官のメッセージを証明したのは、"1度目"のJFL時代を知るCB。76分、鈴木崇文がゴール前を狙うセットプレーで数えれば10本目となる左FKを放り込むと、ストーンの高原を越えたボールを高い打点で打ち下ろしたのは深津。濡れた芝生に叩き付けられたボールは、勢い良くゴールネットへ飛び込みます。「こういう拮抗した試合でセットプレーで取れたのは大きい」と鈴木崇文。再び町田が1点のリードを強奪しました。
「結構イケイケなムードだったが、相手にロングボールを蹴られた時に、向こうのFWやSHに基点を創られて逆に押し込まれる時間になった。あそこで1人アタックして潰すとか、明確な所をしっかりできなかった」と押し込まれた要因を話したのは曽我部。木村監督も77分には服部と鈴木健太を下げて、松本将也とフェア・モービーを同時に送り込む2枚替えで勝負に出ますが、80分に佐野と高原の連携から大森が上げた左クロスは修行がパンチングで回避。82分に中央、ゴールまで約20mの位置から曽我部が直接狙ったFKはカベにヒット。84分にも佐野が右へ展開したボールを菅野が繋ぎ、曽我部のラストパスに高原が飛び込むもオフェンスファウルの判定。1点のビハインドが重く圧し掛かります。
86分に三鬼とペ・デウォン、89分に戸高が放った惜しいミドルを経て、90+1分に鈴木崇文と藤田泰成を相次いで入れ替え、ゲームクローズに着手した相馬監督。提示された5分のアディショナルタイムも尽きかけた90+5分、高原が執念で奪ったFKを佐野が町田ゴール前に放り込んだボールはDFがクリアで凌ぎ、野津田の青いサポーターが聞いたのはタイムアップのホイッスル。「選手は本当に力強くやってくれた」と相馬監督も認めた町田が"武相決戦"を制して、今シーズン2度目のリーグ戦3連勝を達成する結果となりました。


「最低でも勝ち点1は取れた状況」と木村監督が話し、「全体を通してどっちに転んでもおかしくないゲーム」と曽我部が振り返った通り、双方に勝ち点を獲得する可能性が十分あったゲームだった印象です。そんな中で勝敗を分けたのは「我慢して90分通して最後に勝っていればいいんだという気持ち」とリ・ハンジェが語った、いい意味での割り切りと90分間のデザイン。例えばそのリ・ハンジェや、例えば深津のような経験豊富な選手が、慌てず騒がずセンターラインにどっしりと構えていることはチームにとって非常に大きなポイントだと個人的には感じました。「選手1人1人のモチベーションというのは、いくらチームで『やろうやろう』と言っていても、個人で上げていかないと。人に言われて上げていくモチベーションなんてたかが知れているので、そういう部分をもうちょっと僕も含めて自覚を持って挑まなくちゃいけない」と気を引き締めたリ・ハンジェ。物言うベテランに支えられた町田の"超戦"は、まだまだこれからが本番です。          土屋

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