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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年06月29日

J2第20節 湘南×北九州@BMWス

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0628hiratsuka.jpg再び始まった"15"へ、さらにその先への挑戦。歴史を変え得る緑と青の勇者が、好調の黄色いカモメを迎え撃つ舞台は当然平塚です。
開幕14連勝。1つあって、また4連勝。記録的なハイペースで勝ち点を積み重ね、首位を快走している湘南。もはや、そのスタイルは"サッカー"のスタンダードとして頻繁に言及されるレベルまで到達した感もありますが、冷静と情熱の指揮官チョウ・キジェの辞書に"油断"の文字はなし。「今日の試合は"アライブ・オア・デッド"。"生きるか死ぬか"のどっちかしか内容はない」と送り出したこの試合も、目の前の90分間を揺らぐことなく勝ち切るのみです。
15位でフィニッシュした1年目を受け、迎えた柱谷体制2年目は茨のスタートとなった北九州。京都と大分に続けて敗れ、早くも行く先に暗雲が垂れ込めます。ところが、7節でJ2屈指のタレント集団・磐田に3-2で競り勝つと、10節の福岡ダービーを制して以降は2ヶ月近く昇格プレーオフ圏内をがっちりキープ。前々節は松本、前節は千葉をいずれもウノセロで粘り強く振り切り、意気揚々と首位の根城に乗り込みます。あいにくの雨にもかかわらず、平塚には6,217人の大観衆が。祝祭の続くブラジルの裏側で、我々の日常にはJリーグが。19時4分、湘南のキックオフでゲームはスタートしました。


4分に菊地俊介が枠内へ収めたオープニングシュートを皮切りに、今日も湘南の意識は縦へ。9分には右から藤田征也がクサビを当てると、3トップの中央に入った岡田翔平がうまく落とし、遠藤航のシュートは枠の右へ。10分にもルーズボールを拾った吉濱遼平がクロスバーを越えるミドルにトライ。13分にもやはりルーズボールをものにした岩尾憲がクロスバーを越えるミドル。果敢にフィニッシュを取り続けます。
この日の湘南は絶対的な存在と言っていいキャプテンの永木亮太を負傷で、9ゴールを挙げてチーム得点王のウェリントンを出場停止で欠くことに。ボランチには岩尾を菊地と並べ、3トップは吉濱、岡田、武富孝介をチョイス。さらに、ここまで全試合でスタメン起用されてきた三竿雄斗ではなく、亀川諒史が3バックの左に入るなど、見慣れない形でゲームに入りますが、吉濱も岩尾もまずはフィニッシュを取り切るなど、ピッチで繰り広げられたのはいつも通りのスタイル。
すると、躍動したのは29番のレフティ。16分には鋭いターンから惜しいミドルを放ち、その2分後にも高い位置でボールを奪い、岡田のミドルに繋げるなど、積極性の目立った吉濱が大仕事。20分、菊地から横パスを受け取った吉濱は、そのまま密集に自ら切り込んでいくと、やや対応の遅れたディフェンスが寄せる寸前にラストパス。これを武富は丁寧にゴール右スミへ流し込みます。気持ち良いくらいの仕掛ける姿勢が堂々と得点に直結。「あれが今日のメンバーの醸し出す一番良い形。強気にやってくれた」とチョウ監督も手放しで褒める一撃で、ホームチームが1点のリードを手にしました。
さて、「前半はゼロに抑えて、後半相手の足が止まった所から勝負」という指揮官の目論見が、儚くも霧散した北九州。23分に右サイドから冨士祐樹が蹴ったCKはDFのクリアに遭いますが、26分にも風間宏希が右へ展開したボールを小手川宏基が鋭いクロス。飛び込んだ原一樹の目前でカットされるも好トライ。29分にも右から入れた小手川のアーリークロスに、池元友樹が合わせたヘディングは枠の右へ外れたものの、小手川と星原健太の縦関係で組む右サイドが活性化し始め、徐々に攻撃の形が見え始めます。
それでも、ゲームリズムはやはり湘南。32分、吉濱の右CKはショートで始まり、完結を見なかったものの狙いははっきり。35分、岩尾の鋭いクサビを岡田がダイレクトで落とし、吉濱のシュートはDFにブロックされるも、スムーズな連携を。36分、吉濱の右CKは一旦クリアされましたが、最後は遠藤がシュートまで。北九州同様に、活性化したのは"右"。
追加点は、やはり"右"。39分、菊地がサイドへ振り分けたボールを、藤田は縦へ持ち出すと強引にクロス。少しマーカーをかすめ、マイナス気味に入ったボールをダイレクトで叩いたのは岡田。球体は水滴を纏ったゴールネットを力強く揺らします。「2点とも自分が狙っていたような形で点が取れたので、ちょっとビックリしちゃった」と思わず笑顔を見せたのはチョウ監督。湘南が2点のアドバンテージを手にして、最初の45分間は終了しました。


後半も勢いよく飛び出したのは緑と青の勇者。48分に藤田の突破から獲得したのは右CK。吉濱が入れたボールはDFにクリアされましたが、まずは"右"からチャンスを創出すると、51分の好機もやはり右サイドで手にしたCK。ここは藤田が蹴り込むと、丸山祐市のヘディングはドンピシャでしたが、何とボールは武富の方向を襲い、頭に当たったボールはクロスバーの上へ。少しアンラッキーな部分はあったものの、残された45分間でさらなる歓喜を狙います。
ただ、ここからはビハインドを追い掛ける北九州の時間帯。53分、左サイドで良い展開からクロスまで持ち込むと、クリアを奪った波状。風間が右へ付け、上がってきた星原のクロスを原がダイレクトボレー。ボールは枠の右へ外れましたが、ようやく崩した形からフィニッシュまで。54分にも池元が左サイドで懸命に残し、マイナスのグラウンダークロスを送ると、トラップで1つ持ち出した小手川のシュートはクロスバーの上へ。「ウチはテクニカルな選手を集めている」と指揮官も認めた、その"テクニカル"が効き始め、黄色いカモメにも飛び立つチャンスが。
怒涛の"6連続"。60分、パスカットからそのままオーバーラップしたCBの前田和哉が獲得したのは左CK。井上翔太が蹴り込んだキックはDFが何とかクリア。61分、井上の左CKが混戦を生むと、小手川のシュートはDFがブロック。61分、冨士が右CKをショートで始め、再びボールを受けた冨士のクロスはDFがクリア。62分、井上の左CKはニアでDFがクリア。62分、井上の左CKはここもニアでDFがクリア。63分、井上の左CKはこぼれ、すぐさまトライした井上のミドルは湘南のGK秋元陽太に阻まれましたが、わずか3分間で集めたCKは6本。「ショートコーナーも準備してやってきた」と柱谷監督も話したように、確かにその工夫は見られたものの、ここは凌ぎ切ったホームチーム。そして、この一連が1つの大きな分岐点に。「あそこでやられなかったのがポイント」とチョウ監督が話せば、「アレが決められなかったのは残念だった」と柱谷監督。スコアボードの数字は変わりません。
64分に1枚目のカードを切ったのは湘南。亀川に替えて、三竿をそのままの位置へ。「良いコンディションの選手がピッチに立って、後に繋ぐことはずっとやってきた。それ以上でもそれ以下でもない」とチョウ監督。あくまでそこにも指揮官の促す競争原理が見え隠れします。とはいえ、ゲームリズムはまだわずかに北九州。70分、風間が右へスルーパスを通し、星原のクロスに足を出した丸山のクリアはゴール方向へ向かうも、秋元が何とかキャッチ。72分、冨士の右ショートコーナーを替わったばかりの渡大生が戻し、シュート気味に放り込んだ冨士のクロスは枠を捉えるも、秋元が懸命のフィスティングで回避。直後の右CKも冨士のキックをニアで渡がすらし、小手川がダイレクトボレー。最後はDFのブロックに阻まれましたが、畳み掛けたい流れの中で、77分にはベテランの大島秀夫もピッチへ送り込み、まずは1点を狙います。
78分は北九州。井上が左CKをショートで出し、渡のリターンを井上が上げたクロスはDFがブロック。80分も北九州。大島の巧みなポストを起点に、渡が右へ展開。小手川の好クロスに飛び込んだ渡のヘディングはゴール右へ外れるも、替わった2トップがフィニッシュに絡む好機を創出。82分には両者に交替。湘南は岡田と中川寛斗を、北九州は井上と鈴木修人をそれぞれ入れ替え、いよいよゲームは最終盤へ。
力を振り絞ったのはホームチーム。84分、三竿の左CKに丸山が合わせたヘディングは枠の右へ。85分、中川が捌いたボールは菊池を経由し、吉濱がゴール右スミギリギリへ飛ばしたミドルは、北九州のGK大谷幸輝がファインセーブで応酬。87分、中川が思い切ってトライしたミドルはクロスバーの上へ。結果、後半に記録された3本すべてのシュートはこの3分間に。3点目への執念を、これまで出場機会の少なかった若手が貪欲に打ち出します。
90+2分、キャプテンマークを巻いた前田和哉が華麗なルーレットで前へ持ち上がり、星原が右から上げたクロスが大島の頭上を越えると、程なくして飯田淳平主審が吹いたファイナルホイッスル。「『誰と誰が組み合わさったらこうなるんだ』ということを、選手たち自身で感じてプレーすることがやはり強いチームだと思う」とチョウ監督も話した湘南が、その言葉を象徴するような"逞しさ"で、再び開始した連勝を"5"へ伸ばす結果となりました。


「後半は点を取られなかったし、自分たちらしいゲーム運びができたんじゃないかなと思う」と柱谷監督も振り返った北九州は、確かに最後の45分間はシュート数でも湘南を上回っていただけに、前半の特に受けてしまった先制点の前後までが悔やまれるゲームだったと思います。ただ、「粘り強く相手を抑えながら、何とかどこかで1点取るという流れで来ている」という指揮官の言葉にも頷けるような、守備面でのディシプリンはしっかり披露。今後も大崩れすることは考えにくく、終盤まで昇格プレーオフ圏内争いを賑わせてくれそうな印象を受けました。
永木、ウェリントンとここまで続けてきた躍進の中心にいた2人を欠きながら、まさに"しぶとく"勝ち点3をもぎ取った湘南。「吉濱と岩尾という名前を、サッカー関係者が10人いたらたぶん1人か2人しか知らなかったのが、今日で3人か4人ぐらいになったかなと思うので、彼ら2人の勇気あるプレーは監督としてすごく嬉しかった」と話した指揮官は続けて、「今日出られなかった選手、ベンチにいた選手、ケガで出られなかった選手も、彼らのプレーに励まされたんじゃないかなと思う」とも。"アライブ・オア・デッド"のスピリッツで臨んだ一戦は、あるいは誰よりも"アライブ・オア・デッド"を意識したであろう出場"一桁"のスタメン3人が、勝ち点3に加えて決して小さくないモノを、確かにチームへもたらした90分間だったようです。           土屋

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