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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
1年後の再会。真夏の群馬へと進撃すべく、11の切符を巡る関東国獲合戦。2次予選の全勝対決は小平です。
クラブユース勢にとってはシーズン上半期の集大成とも捉えられる、夏の日本クラブユースサッカー(U-18)選手権、通称"クラ選"。関東地域でも1次予選に続いて、先月24日から2次予選が行われています。今年は今までの9枠から2枠増えて、11枠の全国大会出場枠が確保された関東。それでもグループ2位以上は自動的に全国出場を決められるため、まずはどのチームもその2位以上を狙ってグループリーグを戦うことになります。
DグループはFC東京U-18、鹿島アントラーズユース、ジェフユナイテッド千葉U-18、FCトリプレッタユース、FC町田ゼルビアユース、浦安SCユースの6チームが同居。ここまでの2試合消化時点では前者の3チームが連勝、後者の3チームが連敗と好対照なスタートに。今日のFC東京と千葉の直接対決は、グループの今後を占う上で重要なゲームになります。会場の小平は強烈な陽射しに見舞われる真夏日。トップのナビスコカップと同時刻キックオフにもかかわらず、少なくないFC東京U-18サポーターがゴール裏で見守る中、ゲームは15時キックオフでスタートしました。
先にチャンスを迎えたのは千葉。2分、岩田尚樹(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)が左へ展開したボールを、上がってきたSBの浦田樹(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)が鋭いクロス。御船翔太(3年・三井千葉SC)がトライしたヘディングは当て切れなかったものの、サイドからの崩しをしっかりと。FC東京も4分には小山拓哉(2年・FC東京U-15むさし)、蓮川雄大(3年・FC東京U-15深川)、小山と繋ぎ、安部柊斗(2年・FC東京U-15むさし)のミドルは枠の右へ外れましたが、8分は再び千葉。右SBに入った角谷拓海(2年・ジェフユナイテッド市原・千葉U-15)が斜めにクサビを入れると御船はスルー。前を向いた岩田のシュートはDFに当たってわずかにゴール左へ逸れるも、「1年後に同じ場所で同じ相手とやるということは当然相手はリベンジに燃えてくるだろうから、そこに負けない気持ちを持って戦わなくてはいけないということは話した」と副島監督も語った千葉が良いリズムで立ち上がります。
ただ、12分にボランチの高橋宏季(3年・FC東京U-15むさし)が縦パスを通し、バイタルに潜った長澤皓祐(3年・横河武蔵野FC JY)がドリブルシュートを枠の左へ外すも、3-4-3のシャドーポジションという特性を生かした流れでFC東京のスイッチ役がフィニッシュを取り切ると、先制点はその1分後。13分、左に展開されたボールをWBの小山は好クロス。逆サイドから走ってきた長澤と右WBの山岸瑠(3年・FC東京U-15深川)が潰れ、最後は大熊健太(2年・FC東京U-15深川)のコースを突いたシュートが、ゴール左スミへゆっくりと吸い込まれます。チームが2試合続けて大量得点を挙げる中で、なかなか一発の出なかった1トップにようやくゴールが。FC東京がスコアを動かしました。
畳み掛けた青赤のラッシュ。15分、千葉の最終ラインで行っていたパス回しの中で1人がスリップ。これをかっさらった蓮川は縦に運んでそのままシュート。千葉のGK岩渕航平(3年・FCラルクヴェール千葉)もファインセーブで応戦しましたが、こぼれを長澤がきっちり詰めて2-0。16分に左右の揺さぶりから高橋がクロスバー直撃のミドルを見舞うと、18分にはさらなる歓喜。3バックの中央を任された高田誠也(3年・FC東京U-15むさし)を起点に、長澤が右からアーリークロスを放り込み、中央に寄っていた蓮川が胸トラップから敢行したボレーは左スミのゴールネットをしっかり捕獲。「このシステムだと色々な所に顔を出せるので、雄大もプレーの幅が少し広がってきている感じはあるんじゃないかな」と佐藤一樹監督も認める蓮川のこちらは3戦連発弾。早くも3点のリードをホームチームが手にしました。
今大会からトライしている3-4-3について問われ、「これにまったく固執しているわけではなくて、基本は4バックが育成では良いと思うんですけど」と前置きした佐藤監督は、「今はピッチに立たせたいなという11人を並べた時に、個性が一番出るのが今のシステム」と説明。「ボールを蹴れる選手が後ろの方にいるので、1本のフィードで引っ繰り返せるし幅も凄く使える。あとは守備に入った時の枚数を掛けられる」という特徴は、1点目に左右のWBがゴールに絡み、3点目の起点がCBだったことからも結果で証明済み。23分には長澤、小山と繋いだボールを受け、強烈なシュートを左ポストにぶつけたのは、キャプテンマークを巻く左CBの大西拓真(3年・FC東京U-15深川)。3点で打ち止めにするつもりは毛頭ありません。
「今日の人工芝のピッチで非常に滑っていたが、ウォーミングアップの時点でそういう状況は把握していたので、どういう風に守備しなくてはいけないというのも当然指示していたけど、ああいう形で失点してしまう」と副島監督も嘆いた千葉でしたが、ワンプレーでゲームのペースに波風を。33分、相手のミスパスを奪った岩田はすぐさま右へラストパス。GKと1対1になった御船は、冷静にゴール左スミへボールを流し込みます。昨日のゲームを欠場したストライカーが躍動。縮まった点差。喜ぶゴール裏の千葉応援団。
40分の衝撃。「ボールの出所に対してプレッシャーが掛からなくなった」(佐藤監督)FC東京を尻目に、角谷が中央に入れたボールは1.5列目でボールを再三引き出していた岩田へ。通したスルーパスからまたもGKと1対1になった御船は、右に流れながらここも氷の冷徹さで左スミへ球体をぶちこみます。9番を託されたストライカーは百発百中の決定力でドッピエッタ。たちまち点差は1点に。
止まらない千葉の"あわや"は45分。相手FKのクリアボールを大塚一輝(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)が完璧なトラップで収め、左サイドへショートパス。後方から走り込んできた氣田亮真(2年・カナリーニョFC)が枠へ飛ばしたシュートは、FC東京のGK松嶋克哉(2年・FC東京U-15深川)がファインセーブで回避したものの、決まっていれば同点というシーンに自然と声のボリュームも大きくなる千葉応援席。ゲームリズムが激しく入れ替わった前半は、FC東京がリードを保つ格好で45分間が終了しました。
後半のファーストチャンスも千葉。47分、右から浦田が得意の左足でニアへ放り込んだボールは、右ポストを叩いてゴールキックになりますが、FC東京を飲み込みかけた千葉の荒波は継続傾向。「ハーフタイムに次の1点が大事だよという話はもちろんしていた」という佐藤監督が口にした"次の1点"は果たしてどちらへ。
51分に飛び出した"次の1点"は「ハーフタイムも選手が色々話をして、自分たちで修正していた。そういう意味では立ち上げた当初よりは少し逞しさも出てきていると思う」と指揮官も言及したホームチームに。左サイドをぶち抜いたのはやはり蓮川。縦に運んで運んで、カットインしながら柔らかく放ったシュートが誘発したのは相手のオウンゴール。結果的に自身のゴールとはなりませんでしたが、9番の"らしい"ドリブルから追加点。再び点差は2点に広がりました。
「この立ち位置にしてからの方が攻撃に行ける回数が増えた」と佐藤監督も認める韋駄天アタッカーの躍動。53分、またも左サイドに開いていた蓮川は加速、加速。中央を確認して丁寧に折り返したボールを、受けた大熊はトラップでマーカーを外して左足一閃。ボールはサポーターの目の前にあるゴールネットを揺らします。強烈過ぎる蓮川の突破から、悩めるストライカーのドッピエッタ。「親父もインターネットを見て安心するんじゃない?」と笑ったのは福井哲育成部長。「ハーフタイムに言っていたことをちゃんと形にできるようになったというのはいいことだと思う」と佐藤監督も話したFC東京が一気に突き放しました。
「立ち上がりで3失点、後半も立ち上がりで2失点。5点も取られるとモチベーションを維持するのも難しい」と厳しい顔は副島監督。56分には氣田に替えて、中上貴博(2年・カナリーニョFC)をそのまま左SHへ投入すると、58分にはその左サイドで獲得したCKを浦田が蹴るも、飛び込んだ岩田のヘディングはクロスバーの上へ。60分にもやはり左サイドから浦田が上げたクロスに、岩田が飛び付くもヒットせず。変わらないスコアボードの数字。
一方のFC東京は58分に2ゴールの大熊を下げて、佐々木渉(3年・FC東京U-15むさし)をそのまま最前線に投入すると、良い意味での落ち着き所ができたことで、バタバタした展開はしっかり回避。大西、高田、渡辺拓也(2年・FC東京U-15深川)の3バックできっちりボールを回しながら、3点のリードを意識した試合運びで時計の針を着々と進めていきます。
71分に2ゴールと奮闘した御船と伊藤大将(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)を、76分には安藤一哉(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)と10番の仲村京雅(3年・VIVAIO船橋)をそれぞれスイッチして攻撃のギアチェンジを図った千葉は、79分に伊藤が左サイドを切り裂いて折り返したボールを、岩田が合わせたシュートもDFに当たってわずかにゴール右へ。ゲームはいよいよ最後の10分間へ。
82分はFC東京。相手のCKから発動されたカウンターは、替わったばかりの佐藤亮(2年・FC東京U-15むさし)が見せたエンジェルタッチから。最後は佐々木がカットインシュートを枠内に飛ばし、岩渕にキャッチされるも確実にフィニッシュまで。86分は千葉。相手のミスパスをかっさらった岩田が右へ流し、伊藤のシュートは懸命に戻ったDFがブロック。90分は千葉。左サイド、ゴールまで約30mの位置から浦田が直接狙ったFKは松嶋が丁寧にキャッチ。佐藤監督は相原克哉(2年・FC東京U-15むさし)、渡辺龍(3年・FC東京U-15深川)、生地慶充(1年・FC東京U-15むさし)と各ポジションにフレッシュな選手を送り込み、着手したゲームクローズ。
アディショナルタイムの輝きは10番のレフティ。90+3分、左サイドでのボールカットから岩田がボールを持つと、後ろから追い越して縦へ持ち出したのは仲村。左足から振り抜かれたボールは、GKを破ってゴール右スミへ飛び込みます。「ケガで今週はトレーニングしていなかったので、コンディション的には未知数だった」(副島監督)という仲村が最後にさすがの一発で意地を見せたものの、直後に響いたのはタイムアップのホイッスル。「今回は返り討ちに遭いましたね」とは苦笑いの副島監督。FC東京が1年前のリベンジを達成し、全国への扉を一気にこじ開ける結果となりました。
「レベルが上がると許してくれないシーンが非常に多かったなと。今まではそれをルーズと感じないままにやってきたことが、このゲームではハッキリ露呈した」と副島監督も振り返った千葉。プリンス降格を経て、「県リーグでやっているサッカーと相手がどうしても今日のような感じではないので、色々と"許してくれる"相手であるし、厳しい所は突いてこない」(副島監督)という中で、今日のような実戦経験は非常に大きなものであったことは間違いありません。一時はFC東京を慌てさせる程の実力は持ち合わせているだけに、「はっきりとモノサシができた」と指揮官も語ったその"モノサシ"が、ここからどう生かされていくかに注目したいと思います。
3点リードからの2失点を経ても、後半の立ち上がりに試合を決め切るなど、タフさを感じさせての勝ち点3を獲得したFC東京。「選手が自分たちでメンタルコントロールできたり、『あ、今ちょっとマズいな』というような感じるアンテナが増えたというか、自立してきたという部分もあると思う」と佐藤監督も触れた通り、自分たちで立て直したり、自分たちでギアを上げ切ることのできるメンタルは、この90分間の中でも随所に見られたように感じました。「去年は那須にも行けなかったので、とりあえず那須には行かなくてはいけないと。ここはもうとりあえずクリアできそうなので、あとは全国大会にしっかり出場したいということですね」と笑顔を見せた佐藤監督。ただ、選手たちがシーズン当初に掲げた目標は言うまでもなく"日本一"。小平から始まる青赤の進撃は果たしてどのステージまで。 土屋
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