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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
新たなる歴史への誘い。12月13日。日産スタジアムへの挑戦状。その首都の代表へ名乗りを挙げるセミファイナルは西が丘です。
現在連覇中。いわゆる"アマチュア"カテゴリー最上位のJFLに、東京では唯一属している横河武蔵野FC。過去2大会は、いわゆる日本サッカー界最上位カテゴリーのJ1に、東京で唯一属しているFC東京と続けて対戦して、1勝1敗とまったくのイーブン。今回もJクラブと対峙するために、まずは都内制覇を目指します。
2月の東京制覇を経て、臨んだ学生王座決定戦では「意外とフィジカルで負けなかったし、質の所で思ったよりも通用していた」(佐藤一樹監督)結果、早稲田大と国士舘大を相次いで撃破し、このセミファイナルまで堂々と勝ち進んできたFC東京U-18。「トップが去年、一昨年とやっている相手に、今年我々がやらせてもらえるというのは非常に名誉なこと」とは佐藤監督。トップの"イーブン"に決着を付けるべく、本気でディフェンディングチャンピオンを倒しに掛かります。ゴール裏には大挙して押し寄せた赤青のサポーターが。「FC東京というクラブを背負って今日は試合をするんだぞ」と指揮官に送り出された"高校生"と"大人"の一戦は、FC東京U-18のキックオフでスタートしました。
最初の決定機は"高校生"。9分、高い位置でボールを奪った大熊健太(17・FC東京U-15深川)は、そのまま少し運ぶとミドルにトライ。右スミを襲ったボールは横河のGK飯塚渉(28・流通経済大)がファインセーブで応酬しますが、「胸を借りるつもりでやれているので、今日なんかはやられて当たり前みたいな感じ」(渡辺拓也・17・FC東京U-15深川)というメンタルも奏功したのか、高橋宏季(18・FC東京U-15むさし)と安部柊斗(16・FC東京U-15むさし)のドイスボランチを中心にボールを握っていたFC東京が、ますはスタンドを沸かせます。
すると、先にスコアボードの数字を動かしたのはFC東京。12分、3バックの中央に入った高田誠也(17・FC東京U-15むさし)のパスを引き出した高橋は、そのまま裏へ高精度のフィード。ここへ走り込んだ蓮川雄大(18・FC東京U-15深川)が放ったシュートは、飯塚も必死に触りましたが、そのままゴールネットへ到達します。堂々たる正面突破。FC東京が1点のリードを手にしました。
さて、いきなり追いかける展開を強いられた横河。システム的には3-4-3のミラーゲームで推移する中、後方からのフィードを放り込みながらリズム創出を狙いますが、「試合の入りで長く蹴ってきたけど、繋ぎで僕らもハメに行くことはできた」と渡辺拓也が話したように、その放り込む前段階ではなかなかうまく繋げず。16分に遠藤真仁(28・ロッソ熊本)の右CKを、ファーで本田圭佑(23・平成国際大)が合わせたヘディングはゴール左へ。24分に都丸昌弘(26・明治大)の左クロスから、岩田啓佑(27・早稲田大)が狙ったミドルはわずかにゴール左へ。枠の中へシュートを飛ばせません。
"大人"の意地。25分、長尾林太郎(22・東京大)が右サイドへ付け、開いていたCFの角田陸哉(21・拓殖大)が粘ってマイナスに折り返すと、狭いスペースに潜った都丸は右足一閃。軌道はゴール左スミを一直線に貫きます。さらに29分、林俊介(28・東京学芸大)がエリア内へ入れたボールに、角田は鋭く反応。粘って粘って一瞬の隙を見出し、放ったシュートはこれまたゴール左スミへ飛び込みます。「流れは良かったですけど、やっぱりさすがに隙を見せるとトントンと来ますね」と佐藤監督。わずか4分間でスコアは引っ繰り返りました。
「時間があるので全然落ち着いてプレーしようとは言っていた」(渡辺拓也)FC東京もセットプレーに活路。36分に古巣対決となる長澤皓祐(18・横河武蔵野FC JY)が左から蹴ったFKは密集を抜けてゴールへ向かうも、ここは飯塚が好セーブ。37分にも長澤の右CKを渡辺拓也が当てたヘディングはクロスバーの上へ。41分にはこれまた長澤が入れた左CKはこぼれ、再び長澤が放ったクロスに、キャプテンの大西拓真(18・FC東京U-15深川)が飛び込むも、ボールは枠の右へ。同点への意欲を隠しません。
ところが、次の得点も横河に。前半終了間際の44分、角田が3たびエリア内へ侵入すると、マーカーと接触して転倒。これを見た飯田淳平主審はPKを指示します。キッカーは岩田。左スミを狙ったキックは、FC東京のGK伊東倖希(18・FC東京U-15深川)も一歩及ばず。「集中していなかった訳じゃないんですけど、プロの人の個が強かった」と渡辺拓也。横河が2点のリードを奪って、最初の45分間は終了しました。
後半もファーストチャンスは横河。47分、右から林が送り込んだアーリークロスに、きっちり合わせた角田のヘディングは、伊東がファインセーブで回避しますが、ハーフタイムを挟んでも勢いは変わらず。これを見た佐藤監督は1枚目の交替を決断。大熊を下げて、「ちょっと動きが欲しかったというか、前の3人が流動的になることを狙って」渡辺龍(17・FC東京U-15深川)を投入。「ゴール前の仕掛けが僕のストロングポイント」と自ら語る11番に、ペースチェンジを託します。
58分は横河。本田の短いパスから、都丸がゴールまで30m近い位置からチャレンジしたミドルは枠の左へ。60分も横河。左から岩田が蹴ったCKはFC東京ディフェンスが何とかクリア。65分には池上寿之ヘッドコーチも最初の交替策を。全ゴールに絡んだ角田に替えて、FC東京の選手と同世代に当たる渡辺悠雅(18・横河武蔵野FC JY)をピッチへ送り込み、4点目へのパワーを最前線に注入します。
67分はFC東京。安部がドリブルから右へ展開すると、渡辺悠雅とはジュニアユース時代の同級生に当たる長澤が、右からカットインしながらシュートを放つも、DFが何とかブロック。71分は横河。遠藤のパスから、巧みにターンした渡辺悠雅のミドルはDFが体でブロック。75分はFC東京。渡辺龍が左へスルーパスを通し、裏へ強引に抜け出した蓮川のシュートは弱く、飯塚がキャッチ。76分は横河。ここも遠藤のパスを受けた渡辺悠雅は強引にミドルを放ち、DFのブロックに遭ったものの、横河も相手と同じ"10代"が躍動しながら、着々と潰していく時間。
煌いたのは「入った時に決めることしか考えていなかった。流れを変えたかったし、結果を出したかった」という17歳。77分、小山拓哉(17・FC東京U-15むさし)が何とか残したボールは渡辺龍へ。「あそこでもらったら仕掛けることしか考えていない」11番は、迫り来るマーカーを股抜きで翻弄すると、そのままフィニッシュ。思い切り良く叩いたボールは、横河ゴールへ突き刺さります。「一生懸命やってくれたし、要求にしっかり応えてくれたんじゃないかな」と指揮官も認めた渡辺龍の追撃弾。点差は1点に縮まりました。
78分に横河は都丸を下げて、古巣対決となる永露大輔(26・法政大)をピッチへ。81分にFC東京は積極性の目立った右WBの山岸瑠(18・FC東京U-15深川)に替えて、柳貴博(16・FC東京U-15深川)を投入して、高めたい前への推進力。「下手したら引っ繰り返してやろうというエネルギーは非常に感じた」と佐藤監督。いよいよゲームは最後の5分間へ。
86分に到来した同点機。丁寧に右サイドへボールを繋いだ展開から、パスをもらったのは渡辺拓也。「クロスとか上げるのは得意じゃないんですけど、だいたいあそこらへんかなと適当な感じで」蹴ったボールは、意外にも絶妙。ファーで待っていた小山のシュートに、ゴール裏のサポーターも息を飲みますが、球体の行方はそのサポーターが待つクロスバーの上へ。そして、これがFC東京にとっては最後のシュート。「思ったよりは最後の方も多少自分たちのサッカーができた部分もあったので、負けはしましたけど、今後に繋がっていく最高の強化になったんじゃないかと思います」と佐藤監督。奮闘及ばず。横河が3連覇へ王手を懸ける結果となりました。
印象的だったのは、試合後に最終ラインで体を張った渡辺拓也が泣いていたこと。本人は「本当は泣くつもりはなかったですけど、『もう負けたんだ』と思うと凄い悲しくて。悔しさもあったんですけど、もっともっと上のカテゴリーの人とやりたかったので、悲しさの方が多かったです」と振り返っています。これを受けて「泣いているヤツもいましたけど」と笑った佐藤監督は続けて、「それぐらい"懸けて"やれるピュアな高校生というのは、僕も胸を打たれました」と。涙は間違いなく上を目指した"本気"の裏返し。彼らが"本気"で東京制覇を目指していたことが凝縮されたワンシーンだったと思います。「僕は負けはしても、本当に泥臭くハードワークしている姿勢を見ているお客さんに見せろと話をするんですけど、今日はそういう風に思ってもらえたんじゃないかな」と佐藤監督。"大人"に立ち向かった"高校生"の90分間。西が丘のピッチには22人の"本気"が満ち溢れていました。 土屋
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