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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

ワールドカップ 2014年06月28日

【15】64分の48。90分間で区切られる"リアル"。

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64分の48。90分間で区切られる"リアル"。


王国での祭典も90分間のみで区切られるフェーズは
48試合目で終了した。
ここから先は、90分か、120分か、
あるいは"11メートル"かのバリエーションをもって
必ずその勝負は決着を見る。
ただ、90分のみで区切られるフェーズだからこそ、
64分の48には"リアル"が潜んでいる。
今回は心に残った90分間の"リアル"を振り返りたい。


6月12日。リオ・デ・ジャネイロ。
王国のネットが揺れる。
揺らしたのは王国のラテラウ。
ただし、自らの。
オープニングゲームでのアップセットは歴史が証明している。
嫌な空気が漂った。
18分後。突如、流れが破調する。
運ぶ。運ぶ。前に運ぶ。
技巧を駆使せず、ただ力強く。
放った球体は、右のポストを叩いて、
泥臭くゴールネットへ流れ込む。
64年の時を経て、眠れるマラカナンが目を覚ます。
その首謀者こそカナリア色の10番。
"曲線"ではなく、"直線"で奪ったそれに
母国を牽引する覚悟を見た気がした。


6月14日。サルバドール。
5人の守備者は戸惑っていた。
そのいずれもが初めて世界に飛び出す。
時計のリズムでパスを刻む王者を前に、
危険な失策も1つや2つではなかった。
5人の1人が"ブラジル人"を倒す。
相手の数字が"0"から"1"に変わる。
熱望した世界が暗転する。
そして、その男は跳んだ。
腕章を巻いた、その男は確かに跳んだ。
オレンジのDNAに刻み込まれた"飛翔"。
5人の守備者に安堵と確信がもたらされる。
残された45分間で、喫した"1"は変わらない。
奪った"1"は"5"に伸びる。
人呼んで「フライング・ダッチマン」。
オレンジのDNAには、やはりその香りが刻み込まれていた。


6月15日。フォルタレーザ。
王者。王者。王者。例外は1つのみ。
称された"死の組"は3つと"その他"に分けられた。
この日も第1回の王者が一歩前へ出る。
ここまでは誰もがそのシナリオに
何一つ疑いを持たなかった。
一変。
1つ目は強烈なダイレクトボレー。
2つ目は全身を投げ出したダイビングヘッド。
"その他"が勝利へと続く扉の側へ体を入れ替える。
焦る王者。いなす"その他"。
最後のゴールは後者に記録された。
王者は恥ずべき赤き退場までも晒し、
"その他"の軍門に降る。
10日後、審判は下った。
"死の組"の王者は、例外なく"その他"にひれ伏す。
史上に残る痛快な裏切りに、世界が改めて世界を知った。


6月17日。再びサルバドール。
愚行は繰り返された。
既に2つの果実を奪われる。
"世界最高"の7番も躍動しない。
イベリアの男たちは焦れ始めていた。
無論、あの男も。
37分。その時は来た。
接触。1つ目の果実を奪った13番が倒れる。
静かに近付いたあの男は、
自らの頭を当てるべき対象を球体から13番に捻じ曲げた。
セルビア人の裁判官がポケットに手を入れる。
赤。すなわち、舞台からの退場。
過去にもその理性の喪失で
世界を驚愕させてきたあの男は、変われなかった。
結果、13番は1人で3つの果実を手に入れる。
愚行は繰り返された。


6月19日。リオ・デ・ジャネイロ。
追い込まれた指揮者は、決断を下す。
赤き舞踊団を支えてきた"頭脳"はいない。
ただ、それすらも劇薬にはなり得なかった。
20分。
冷徹な南米の狙撃主は、
氷の落ち着きで守護神を外し、
狙うべき"的"にきっちり当てた。
さらに43分。
"22試合2得点"の男にボールが向かう。
押し出した爪先で守護神を外し、
狙うべき"的"にきっちり当てた。
2つの、あるいは3つの"的"に当て返す余力も、
絶対王者には残っていない。
規定の時間に付け加えられた6分間も
何かを起こすために十分なそれではなかった。
ラ・ロハとラ・ロハの激突は、
白を纏った側が歓喜に身を置く。
落日。連覇を狙ったラ・ロハはわずか180分間で、
頂へと続く進路からの離脱を余儀なくされた。


6月22日。ベロオリゾンテ。
ペルシアの末裔、奮戦す。
南米の水色と白をねじ伏せれば、
さらなる世界は目の前に拓ける。
オランダ育ちのレザが、ドイツ育ちのアシュカンが、
生まれし母国への忠誠を両の足に籠めた。
それぞれが一度ずつ、
相手の胸元に鋭い刃を突き付ける。
その先の"色彩"は明らかに視界へ広がっていた。
一瞬で世界は褪せる。
背中に10と刻印された小柄な男が
魔法の左足を振るう。
レザの目の前を過ぎ去ったボールは、
彼らの"色彩"を瞬時に強奪した。
世界との距離。"色彩"との距離。
近付いたかに見えたそれは、まだ幻だった。


6月25日。クイアバ。
おそらくは最も戦えた。
おそらくは最も勇敢だった。
それでも、届かない。
"1"と"4"の数字が滲む。
先へと続く扉の鍵は、堅く閉ざされた。
何が足りない?何が?
きっとその答えは少なくない。
ただ、きっとその答えは多くない。
関わる人がそれを真剣に考えるなら、自然と答えは絞られる。
今はまだ判らなくても、いつか判る日が来るはずだ。
その時、きっと世界は思ったより近くに広がっている。
そう信じて、僕らは真剣に考えよう。
その時はきっと遠くて、きっと近い。


土屋

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