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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

ワールドカップ 2014年06月26日

【14】翼を失った"大鷲"。16年の成長と回帰。

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翼を失った"大鷲"。16年の成長と回帰。


頂まで羽ばたけると思っていた。
事実、若き"鷲"たちは、若き"頂"に辿り着いた。
大陸が世界を席巻する。
世界は大陸の時代を予感する。
しかし、大陸は席巻しない。
大陸の時代は到来しない。
やがて、彼らは静かに
その頂へと続いていたはずの航路から消える。
かつて大陸の筆頭だと思われた"大鷲"は、
既にその翼を失っていた。


時代を司る者の登場は、常にセンセーショナルだ。
ナイジェリア代表。人呼んで"スーパーイーグルス"。
"フットボール"が初めて訪れたアメリカの地で、
世界は彼らを知った。
自らが揺らしたゴールネットを掴み、激しく上下する。
一度は倒れた身を驚異的に復元し、成果を奪い取る。
目を疑うような跳躍力を発揮し、頭で球体をねじ込む。
異空間に現れた異次元。
誰もが新世界の到来を悟った。


その到来は"確信"に変わる。
2年後。再び、舞台はアメリカ。
若き"鷲"たちは、さらなる脅威を世界に突き付ける。
メキシコの歓喜を最後に遠ざかっていた世界と、
28年ぶりに邂逅した日の丸は手もなく捻られる。
圧巻はセミファイナル。
ロナウド。リバウド。ロベルト・カルロス。
アウダイール。ベベット。
その2年後のフランスで
覇権を懸けて開催国と対峙することになる5人を含んだ
こちらも若きカナリア軍団と、真っ向から殴り合う。


1分は失点。20分は得点。
28分は失点。38分も失点。
78分に取り返しても、まだわずかに及ばない。
90分。
194センチの怪鳥で追い付く。
94分。
194センチの怪鳥で終止符を打つ。
王国の誇りを胸に、頂点のみを義務付けられた
彼らを"死のゴール"で葬り去ると、
最後に立ち向かうはその王国が最も忌み嫌う
隣国のセレステ・イ・ブランコ。
3分は失点。28分は得点。
50分は失点。74分は得点。
2度追い付き、90分にトドメを刺す。
辿り着いた若き"頂"。
規律なき大陸に、突如として現れた規律正しき"自由"。
誰もが新世界の到来を悟った。


フランスの地で、もはや彼らを知らない者はいない。
"無敵"だった無敵艦隊との激突。
20分は失点。24分は得点。
46分は失点。73分は得点。
もはや追い付くのが日常になっていた
スーパーイーグルスは如何なる状況にも動じない。
77分。
2年前のアメリカでカップを掲げた15番が
右足を躊躇なく振り抜くと、衝撃の弾道が突き刺さる。
ただ、もはやその衝撃ですら"衝撃"ではない。
戴冠はごく自然のものに思えた。


その航路は呆気なく幕を閉じる。
ラウドルップとラウドルップ。
同じ姓を持つミカエルとブライアンが
大陸の旗手を粉砕した。
それでも、世界の評価は変わらない。
4年後か。8年後か。
掌握の時は必ず来ると、誰よりも自らが信じていた。
しかし、その時は訪れない。
彼らより長い年月を積み重ねてきた世界は、
彼らの"それ以上"を許さなかった。


2002年の日本では
たった1つの勝利ですら挙げられない。
2006年のドイツでは、
その地を訪れることすら許されない。
2010年の南アフリカでは、
やはりたった1つの勝利ですら挙げられない。
国を代表する"非日常"のモチベーションは
富を欲求する"日常"のモチベーションに駆逐される。
もはや、世界は彼らに興味を失った。
他方、彼らも世界に興味を失った。
"大鷲"の翼はもはや、
羽ばたくだけの力を残していなかった。


2011年。
世界が彼らを初めて知ったあの時、
その腕に腕章を託されていた男が帰ってくる。
トーゴ。マリ。
2つの国を率いた指揮官は、満を持して母国に帰る。
ステファン・ケシ。
1994年ワールドカップ、ナイジェリア代表主将。
情熱と正義の男。
断行すべきは"国"への忠誠。
"富"への忠誠に傾倒した老兵は、姿を消した。
リストの代表キャップには一桁が並ぶ。
それで良かった。それが良かった。
世界を希求する"スーパーイーグルス"が帰ってきた。


2013年。
ヨハネスブルグでナイジェリアはアフリカを制す。
19年ぶりの戴冠。大陸を再び手中に収める。
19年前。世界が彼らを初めて知ったアメリカの2ヶ月前。
チュニスでナイジェリアはアフリカを制す。
その日、誰よりも先にカップを空へ突き上げたのは
他ならぬ主将ステファン・ケシ。
頂への航路に漕ぎ出した男が、再び頂への航路に漕ぎ出す。
世界を希求する"スーパーイーグルス"が帰ってきた。


2014年6月21日。クイアバ。
あの日の彼らのように、
世界へ初めて飛び出したバルカンの新鋭を叩く。
あの頃の異次元はない。
ただ、あの頃になかった"狡猾さ"はあった。
16年ぶり。10試合ぶりの勝利。
追い付いて、追い付いてを繰り返す姿もない。
ただ、追い付かないが、追い付かれない。
1-0という数字が、彼らの辿って来た"16年"を現している。


4日後。
まるであの日のファイナルで敗れた呪いかのように、
以降3度に渡ってグループに同居したアルゼンチンと対す。
3分は失点。4分は得点。
45+1分は失点。47分は得点。
いつか見た景色。
かつて追い付くのが日常になっていた
スーパーイーグルスの姿がそこにはあった。


50分は失点。
2-3。そのまま試合は終わる
あの頃のように追い越すことはできなかった。
しかし、あの頃のように追い付くことはできた。
かつて大陸の筆頭だと思われた"大鷲"。
当時を知る指揮官に導かれた彼らの背中をふと見ると、
まるで世界を知ったあの頃の彼らがそうだったように、
その翼には再び力が漲っていた。


土屋

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