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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

ワールドカップ 2014年06月25日

【13】"楽しむ"ための日常。4年後、8年後、そしてその先へ。

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"楽しむ"ための日常。4年後、8年後、そしてその先へ。


クイアバの夕闇に最後のホイッスルが響く。
その瞬間、サムライブルーの"ブラジル"は終わりを告げた。
1-4という数字がスコアボードに浮かぶ。
どの試合よりも攻めて、どの試合よりも攻められた。
どの試合よりも熱くなり、どの試合よりも悔しかった。
ただ、大久保嘉人のボレーが入っていれば、
本田圭佑のFKが入っていれば、
1-4という数字は書き換えられていたかもしれない。
「そんなことはない」と言われるだろう。
「そうだったね」と言われるだろう。
なぜなら、それがサッカーだからだ。
おそらく、"僕ら"にはその事実を
"楽しむ"気持ちが欠けていたのだと思う。


4年間の集大成と人は言う。
ワールドカップのために積み上げてきた
この4年間のすべてをぶつけろと。
では、4年間の1日前はどうだ?
4年間の1ヶ月前はどうだ?
4年間の1年前はどうだ?
積み上げてきたものは決して"4年間"で収まるはずもない。
"彼ら"は、その前からすべてを捧げてきたはずだ。
"僕ら"は、それをその前から見てきたはずだ。
これは"4年間"だけで論じる問題では、決してない。


日本は敗退した。
スペインも敗退した。
イングランドも敗退した。
敗退の理由は、当然あるだろう。
尤もらしい理由は、山ほどあるだろう。
それでも、きっとスペインのリーガ・エスパニョーラには、
イングランドのプレミアリーグには、
来たるシーズンもサッカージャンキーが
変わりなく押し寄せる。
自国の代表が世界最高峰の舞台で惨敗したにもかかわらず。
なぜなら、それがサッカーだからだ。


イングランドはサッカーの母国として知られる。
その歴史は優に150年を超える。
ワールドカップにはその誇りからあえて出場を拒み、
1950年大会に初参戦したが、
かの国が世界からの敬意を集めていることは間違いない。
そんな彼らでも、王国で開催された祭典では
1つの勝利も得ることなく姿を消した。
グループステージでの敗退を探せば、
半世紀に数年を加えた時点まで遡る。
それでも、きっと彼らがその1度の失望で
数え切れない勝利と、数え切れない敗北を経験してきた
150年もの歴史を否定することはない。
なぜなら、それがサッカーだからだ。


忘れられない光景がある。
2002年6月5日。神戸。
チュニジア人は笑っていた。
これから幕を開ける同胞の幸運を祈念して。
チュニジア人は怒っていた。
不甲斐なく失点を喫した同胞の消極に憤慨して。
そして、チュニジア人は笑っていた。
負けてはしまったものの、
祝祭をもたらしてくれた同胞の奮闘に感謝して。
偶然彼らのど真ん中で試合を見つめていた私は、
サッカーを"楽しむ"という意味を初めて理解した気がした。
12年前のあの日。
試合に敗れたチュニジア人たちは、
確かにワールドカップを、サッカーを楽しんでいた。


4年間の最後の3試合だ。
必然、気持ちは昂ぶる。
勝って欲しい。間違いなく勝って欲しい。
対峙する国の人々も
当然勝って欲しい。間違いなく勝って欲しい。
それでも、引き分けは双方が同時に味わうことができるが、
勝利を味わうことのできるのはどちらか一方だ。
そんなことは判り切っているはずなのに、
おそらく、僕ら"にはその事実を
"楽しむ"気持ちが欠けていたのだと思う。


ただ、"僕ら"の中には
その"楽しむ"気持ちを知っている人々がいる。
勝利と敗北の中に"日常"を置く人々だ。
勝ち続けるチームもあるだろう。
負け続けるチームもあるだろう。
たまに勝つチームもあれば、
たまに負けるチームもある。
それでも、"僕ら"はスタジアムに向かう
それでも、"僕ら"はボールを蹴る。
その日常の隙間からこぼれる、
勝敗だけでは測れない"楽しみ"を知っているからだ。
勝っても、負けても、スタジアムに向かう。
勝っても、負けても、ボールを蹴る。
サッカーがもたらしてくれる日常を"楽しむ"ために。


サッカーを見に行こう。
我々の傍らには多くのそれがある。
カテゴリーも関係ない。性別も関係ない。
それが日常になれば、"楽しむ"気持ちはきっと変わる。
サッカーをしに行こう。
我々の傍らには多くのそれがある。
年齢も関係ない。性別も関係ない。
それが日常になれば、"楽しむ"気持ちはきっと変わる。


4年後、8年後、12年後。
予選を勝ち抜いた"僕ら"に、"3試合"はきっとやって来る。
その時に、4年間なんて短い月日だけではなく、
そのすべての時間を費やしてきた"彼ら"が
"楽しむ"気持ちを持って
世界のピッチに立っていることを願ってやまない。
ただ、それにはこれから"僕ら"が
"楽しむ"気持ちを持って
日常のピッチを見つめていく必要がある。
なぜなら"彼ら"は"僕ら"の代表だからだ。


土屋

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