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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年06月08日

インターハイ東京1回戦 東海大高輪台×都立野津田@駒沢第2

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0607koma2 3.jpg東京に新たな歴史を吹き込まんとする新鋭同士の邂逅。支部予選から勝ち上がってきた両チームの対峙はこの日3試合目の駒沢第2です。
躍進の1年となった昨年から一転、関東大会予選では初戦で都立葛飾野に1-2で苦杯を嘗め、T2リーグでも序盤戦はなかなかエンジンが掛からなかった東海大高輪台。とはいえ、4月の時点で「時間が掛かるというのは選手本人たちも自覚しているし、確かにチームは良くなってきている。彼らも実感があると思うので楽しみ」と話した川島純一監督の言葉通り、尻上がりに結果が出始めるとチームも好サイクルへ。支部予選から登場した今大会も1次予選決勝では正則学園戦を延長の末に下し、公式戦8戦無敗でこのステージへ殴り込みます。
昨年の選手権予選ではベスト8進出。リーグ戦でも新設のT4へ参加するなど、着々と力を付けてきた感のある都立野津田。そのT4では開幕からの3試合をいずれも激しく撃ち合っての3連勝。今大会は支部予選の2試合を共に1点差で粘り強くモノにすると、1次予選も保善、都立東大和南、都立東大和を相次いで倒し、「自分たちのスタイルを貫いて勝とうと思っている」とキャプテンの荒川絢太(3年・日野大坂上中)も語った、その"Nozuta Style"のさらなる進化を加速させるための重要な試合に挑みます。もはや降り続く雨は自然の一部という境地に。何かが起こりそうな1回戦ラストゲームは14時20分にキックオフを迎えました。


静かに動き出したゲームに鞭が入ったのは9分。畠中一樹(3年・FC PROUD)のパスから武市健太(2年・インテリオールFC)が枠内へシュートを収め、野津田のGK神尾篤(3年・FC府中)がファインセーブで掻き出したものの決定機を創出。10分は野津田。西田拓郎(3年・CYD FC)が思い切って狙ったミドルは高輪台のGK安斎優太(3年・川崎チャンプ)にキャッチされましたが、お互いに1つ手数を繰り出し合います。
すると、先に絶好の先制機を掴んだのは黄色と黒の縦縞。12分、左SBを務める飯野克憲(3年・インテリオールFC)が中央へ付けると、畠中はGKをかわしかけた所でもつれて転倒。この一連に主審はPKというジャッジを下します。キッカーは渡邊夢大(3年・FCトリプレッタJY)。左スミを狙ったキックは神尾も完璧な反応でボールに触りましたが、しっかり揺れたゴールネット。まずは高輪台が先にアドバンテージを握りました。
早々のビハインド。それでも、「正直点を取る自信はあったので、生徒自身が一番これからだという感じはあったと思う」と横山鮎夢監督が話した言葉の証明は1分経たず。13分、左サイドでボールを持った荒川は「先生にシュートを打っていけと言われていたので、初めに一発かましてやろうと思って思い切り打った」という25m近いミドルにチャレンジすると、ボールは雨を切り裂いてゴールネットへ突き刺さります。自ら「ミラクルシュート」と笑うキャプテンの同点弾。野津田があっという間にスコアを振り出しへ揺り戻しました。
1点ずつを取り合った以降はお互いに攻撃性を打ち出す中で、野津田のアイデアがよりシュートシーンに直結。21分にはSBの藤井大紀(3年・ヴェルディSS AJUNT)とパス交換した阿部剣真(2年・FCトッカーノ)が好クロスを上げるも、西田は止め切れずにフィニッシュまでは至らず。26分には右サイドで細かいパスワークを披露すると、木本堅也(3年・明光サッカースクール)のパスでラインの裏へ潜った阿部剣真はグラウンダーで中へ。走り込んだ八木拓(2年・FC Branco八王子)のシュートは枠の左へ外れましたが、ラスト以外は完璧な崩し。「ゴール前の繋ぎとかは毎日のように同じことを繰り返しているので、自信を持っている」と荒川も胸を張るストロングを堂々とピッチ上で打ち出します。
27分は高輪台にビッグチャンス。右サイドで土屋諒太郎(3年・FC目黒)が当てたボールを、畠中は粘って粘ってヒール。渡邊が放ったシュートはわずかに枠の右へ外れたものの、3トップが全員絡んでのフィニッシュは迫力十分。少し押し込まれる時間にあっても、隠し持った鋭利な切れ味をチラつかせます。
野津田のラッシュ3連発。34分、八木がミドルレンジから打ったシュートは安斎が弾き、詰めた阿部に当たってボールはゴールキックに。35分、左から荒川が丁寧に折り返したボールはフリーの木本へ届くも、フィニッシュはDFが決死のブロックで凌ぎ、リバウンドを拾った八木のシュートもゴール右へ。38分、荒川、木本、安保一希(2年・FC府中)を経由したボールは中央にこぼれ、阿部剣真が頭で繋ぐと、八木が打ち切ったボレーはクロスバーにヒット。終盤は野津田が押し込む格好で、タイスコアのゲームはハーフタイムへ入りました。


後半開始から動いたのは川島監督。土屋に替えて投入されたのは、スーパールーキーの本藤悟(1年・横浜FC JY)。リーグ戦でも今大会でも既にゴールを叩き出している1年生が3トップの中央に入り、畠中が右サイドへ、渡邊が左サイドへそれぞれスライド。前線の顔触れに変化を加え、残された40分間に向かいます。
後半のファーストシュートは野津田。43分にまたも細かいパスワークから、木本のパスを西田がミドルで枠へ飛ばし、ここは安斎がキャッチしたものの、特徴の一端をきっちり発揮しましたが、50分に訪れたのは高輪台の勝ち越し機。エリア内へドリブルで侵入した畠中がマーカーと絡んで倒れると、主審はこの日2本目のPKを宣告します。やや厳しい判定にも思えましたが、当然覆るはずもなし。キッカーは畠中自ら。右スミを狙ったキックはコース、スピード共に十分でしたが、またも読み切った神尾が今度は完璧なセーブ。「あの子はPKに絶対の自信を持っている」と指揮官も認めた神尾がチームを救うビッグセーブ。スコアの均衡は崩れません。
守護神の奮闘に応える一太刀は60分。発動されたカウンター。安保が左サイドへ流し込んだボールから、荒川は縦へ独走。2対1と数的優位の局面で重心を寄せたDFを見て、「自分でもビックリするくらい落ち着いていた」10番は絶妙のタイミングで中へ。「絢太くんからボールが来る前にしっかり周りを見ていたので、横とか後ろに相手がいないなと確認していて、あとはGKとの駆け引き」となった阿部剣真。1対1。「自分が得意なコースなので思い切って打った」シュートは高輪台ゴールを貫きます。お手本のようなカウンターの帰結は最高の成果。野津田が逆転に成功しました。
ゲームリズムを掴み掛けながら、スコアを引っ繰り返された高輪台。62分には飯野のスローインから、こぼれを拾った畠中のシュートは枠の左へ。70分には飯野が左サイドで縦へ付け、武市がドリブルから持ち込んだ左足シュートは神尾が丁寧にキャッチ。73分には右SBの吉永怜央(3年・FC駒沢)を下げて、左SBへ宮原孝輔(3年・GRANDE FC)を送り込み、飯野を本来のボランチに上げて最後の勝負に。野津田も65分に木本と鈴木硬(2年・杉並FC)、74分に西田と花形聖和(2年・Vida SCいさま)を入れ替えて整えたバランス。ゲームはいよいよラスト5分間へ。
高輪台は死なず。76分、CBの池野勇人(3年・JACPA東京FC)が短く出したパスを畠中は裏へ。GK、DF、本藤と3人がほとんど同時に到達し、もつれたボールの行方は、本藤の足元。目の前に広がった無人のゴール。流し込む球体。揺れる白網。土壇場でゴールを嗅ぎ分けたのは1年生ストライカー。2-2。アディショナルタイムに武市のパスから飯野が掴んだ決定機は生かせなかったものの、終わり掛けていた試合にもう10分間ずつの前半と後半が追加されて、規定の80分間は終了しました。


延長はスタートから野津田に交替が。奮闘していたCBの有馬春希(2年・FC町田ゼルビアJY)に替えて、そのままの位置に磯野毅己(3年・HIBAPRI FC)を投入。ここまで良く守っていた右の藤井、CBの平塚賢也(3年・FC VIDA)、磯野、左SBの加藤鉄也(3年・八王子松が谷中)で組む最上級生だけの4バックに託された最後の砦。84分には磯野が右へ展開したボールを阿部剣真が中へ戻し、ニアへ走り込んだ鈴木のシュートは枠の左へ外れたものの、サイドをしっかり使ってフィニッシュを取り切ります。
ただ、ここから息を吹き返した高輪台。85分に本藤が神尾にキャッチを強いる枠内ミドルを打ち込むと、87分に中盤で走り続けた渋谷雄隆(2年・GRANDE FC)と須田大翔(2年・足立六月中)の交替を経て、90分にも飯野を起点に野村が左へ回し、榎園玄己(3年・FCトリプレッタJY)の左足ミドルは枠の右へ外れるも、2つのフィニッシュで取り戻した勇気。94分には飯野の負傷退場で、田中千寛(2年・杉並FC)がピッチへ駆け出すも、掴んだ流れを手離すはずもなく。
3度目の咆哮は黄色と黒。97分、中央でボールを持った本藤は縦へ鋭く。受けた渡邊はワンテンポ置いて短く。走り込んだ野村が左足を振り抜くと、弾道の到着点は雨にけぶるゴールネット。3-2。3-2。狂喜と狂喜。絶叫と絶叫。1年生のパスを3年生が落とし、2年生が決め切った世代を繋ぐ再逆転弾。高輪台が大きな大きなリードを手にしました。
野津田は死なず。100+4分、神尾が蹴り出した渾身のFKは高輪台ゴール前へ飛び込み、お互いの想いが絡まり合ったボールが落下点に選んだのは、「自分は足を攣っていたけど、周りの仲間たちが『立て、最後だぞ』と言ってくれたので、やるしかないなと思った」という阿部剣真。「しっかりミートさせた」弾道の到着点は雨に濡れたゴールネット。3-3。3-3。狂喜と狂喜。絶叫と絶叫。「自分にできることはゴールを決めること」という2年生ストライカーの再同点弾。野津田がラストプレーで奇跡的に生還し、勝敗の行方はPK戦へともつれ込むことになりました。


先攻は高輪台。1人目の渡邊は試合中と同じ左へ蹴って成功。後攻の野津田1人目は、しかし安斎がきっちりセーブ。高輪台2人目の宮原、野津田2人目の荒川は確実に沈め、スコアは2-1。一歩前に出た高輪台。
PKマスターの面目躍如。高輪台3人目のキックをまたも弾き出したのは神尾。それまでの2本もコースは当てていた守護神が、今日2度目のビッグセーブ。野津田3人目の磯野は左スミへ決めると、連鎖した流れ。高輪台4人目のキックは枠外へ。野津田4人目の安保はクロスバーに当てながらねじ込み、これで2-3。野津田が一歩前に体を乗り出します。
外せば終わりの高輪台5人目は武市。2年生ミッドフィルダーの選択は左。GKは右。跳ね除けたプレッシャー。3-3で運命の野津田5人目として登場したのは、後半からピッチへ解き放たれた花形。短い助走から左足で狙ったボールは、GKの逆を突いてゴール右スミへゆっくりと転がり込みます。駆け出した赤。崩れ落ちた黄色と黒。激闘のフィナーレは残酷なまでのコントラスト。「不甲斐ないんですけど僕が一番泣いてしまいました。子供の勝利は何物にも変え難いですよね」と横山監督も笑顔を見せた野津田が、東京8強へと駆け上がる結果となりました。


掛け値なしの名勝負だったなと。攻撃的なサッカーを掲げる両チームが真っ向からぶつかり合い、2度の逆転弾を含んだ6ゴールを飛び交わせ、最後はPK戦での決着。おそらくはこの日の3試合で最も強く降っていた雨も気にならないような、ピッチへの集中力を観客にも共有させてくれた100分間プラスアルファだったと思います。延長後半の勝ち越されたシーンを振り返って、「正直今までのウチのチームの状態だと諦めちゃっていたと思うが、今年は例年になく本当にメンタルが強いかなと思う」と話したのは横山監督。折れない心で引き寄せた勝利が、チームにとってかけがえのない1勝になったことは間違いありません。「1個上の先輩たちがベスト8まで行っていたので、正直負けられないというのはみんなが思っていた」と語ったのは荒川。並んだ先輩たちの"その上"へ。野津田が視界に捉えたその航路の先には、関東王者が待ち受けています。       土屋

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