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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
初出場か、4年ぶりか。関東大会予選で覇権を懸けて激突したファイナルのリターンマッチ。勝ったら全国の第2試合は、引き続き駒沢第2です。
T1でもここまでわずか1敗の2位。関東大会予選は暁星や成立学園を倒しての準優勝。勇躍、乗り込んだ関東でも矢板中央と柏日体に競り勝つなど、「自信とかも付いたし、良い経験になったと思う」とボランチの鈴木隆作(3年・JACPA東京FC)も話したように、貴重な日々を積み重ねてきた駒澤大学高。先週の準々決勝では好チームとの呼び声も高かった関東第一をウノセロで下し、インターハイでは初めてとなる全国へあと1勝まで迫っています。
一方、その関東大会予選では多摩大目黒と帝京をそれぞれ延長とPK戦で振り切り、準決勝でも都立東久留米総合を延長で沈め、最後は駒澤大学高も撃破して東京王者に輝いた都立駒場。神奈川の地でもその勢いは止まらず、ファイナルでは栃木最強とも称されていた佐野日大を3-0で粉砕して、堂々関東王者に。「偶然ってあるんだねえと思って」と嘯くのは名将・山下正人監督ですが、偶然ならざる勝負強さを盾に、4年ぶりの全国を確実にその視野へ捉えています。天候は1試合目以上の灼熱。待ったなしの大勝負は、駒澤のキックオフでスタートしました。
3分に駒場の2トップ下を務める高橋康太(3年・横河武蔵野FC JY)が左CKを放り込み、DFのクリアに遭ってから、12分に駒場のCB北澤燎平(3年・インテリオールFC)が蹴った長いFKを秋葉遼太(3年・練馬開進第一中)が頭で合わせ、駒澤のGK江口達也(2年・名古屋グランパス三好FC)にキャッチされるまで、お互いにチャンスらしいチャンスは生まれず。17分に高橋のパスから、吉澤泰成(3年・横河武蔵野FC JY)が放ったミドルがこのゲームのファーストシュート。勝つか負けるかが天地ほど違う一戦は、かなり慎重にお互いが立ち上がります。
駒澤は1トップの安藤丈(3年・FC駒沢)とその下に位置する野本克啓(2年・FC多摩)を基点に、右の佐藤瑛磨(2年・立川第四中)、左の山口将広(3年・八王子千寿桜堤中)をハイサイドに走らせ、クロスで勝負したいスタイル。時間の経過と共に、山口とSBの吉田一貴(3年・FC習志野)で組んだ左サイドが活性化し始め、23分には山口がCKを、24分には鈴木がロングスローを、いずれも左から繰り出しますが、シュートには至らず。少し我慢の時間を強いられます。
対する駒場はCBの北澤と末永直輝(3年・FCトリプレッタJY)が堅陣を支え、アンカーの篠原力(3年・FC東京U-15深川)が相手のアタックをスイープしながら、切れ味鋭いカウンターやセットプレーで勝負したいスタイル。25分には末永の長いFKが秋葉に届き、左をえぐってクロス。ここは駒澤のボランチ柳澤歩(3年・フッチSC)がよく戻ってクリアしたものの、狙いを体現させたフィニッシュの"一歩手前"。
ただ、徐々に前へのパワーで上回ったのは「とにかく内容云々より結果を出さないと、全国で戦える切符も取れない」と大野監督も激を飛ばした駒澤。33分には山口の左クロスを、DFと競り合いながら佐藤が頭に当てたボールはクロスバーの上へ。33分に駒場の最前線を任された吉澤のシュートをCBの竹上有祥(2年・ヴェルディSSレスチ)が体で弾くと、36分にもチャンス到来。野本が左へ振り分け、吉田のクロスから佐藤が狙ったシュートは駒場の左SB山口将弥(3年・北区赤羽岩淵中)がブロック。38分にも左に流れた安藤がクロスを上げ切り、ファーに走り込んだ佐藤のシュートは、ここも山口将弥がブロック。佐藤対山口将弥は2回続けて後者の執念が上回りますが、やはり左サイドから続けて好機を演出します。
すると、やや差し込まれた駒場にカードアクシデント。バックスタンドサイドを抜け出そうとした駒澤の選手に、駒場の選手の足が掛かります。駆け寄った主審が掲げたのはイエローカード。その8分前にも同じ色のカードをもらっていたため、再び掲げられたのは新たな色のカード。前半終了間際に生まれた数的不均衡。スコアは動かず。ただ、終盤に双方の人数が動き、最初の40分間は終了しました。
「やっぱり日本とギリシャのこともあったし、相手も山下先生なので、耐えて耐えてカウンターとかセットプレーを必ず狙ってくると。ハーフタイムはちょっと浮ついている感じがあったので締めて落とした」と大野監督。シチュエーション的には言葉通りにワールドカップのそれと酷似。ある意味でまったく新たな40分間が幕を開けました。
42分は駒澤。鈴木の右FKから、山口将広が繋ぎ、キャプテンのCB須藤皓生(3年・北区赤羽岩淵中)が狙ったミドルはヒットせず。49分も駒澤。本来はボランチながら右SBをきっちりこなした平井康介(3年・Forza'02)を起点に、鈴木がマーカーを外して、カットインしながら繰り出したミドルはDFとクロスバーに続けて直撃。49分も駒澤。鈴木の右CKをDFがクリアすると、拾った吉田のミドルはクロスバーの上へ。まずは11人の勢いが10人を押し込みます。
中盤の形はそのままにFWの片岡勇介(2年・FCトリプレッタJY)を右SHへ落とし、吉澤を最前線に置いた4-4-1で後半に臨んだ駒場。53分の左CK、56分の左FK、57分の左ロングスローを相次いで凌ぐと、58分には片岡と真崎康平(3年・POMBA立川FC)を入れ替え、崩されることの多かった右サイドの守備面を増強。手数は出せないまでも、11人の相手に手数も出させない覚悟を明確に。
「持たされている感があった」と大野監督が話せば、「自分たちはパス回しはあまりうまくないので、自分たちで持っていたらあまり相手も怖くないかなとは思っていた」と鈴木。守られ、持たされた中ではなかなか形が見えません。64分に右から鈴木が投げたロングスロー、67分に吉田が小さく出したFKから鈴木が入れた左クロス、69分に左右から続けて鈴木が蹴ったCKは、いずれもシュートに結び付かず。70分に安藤、野本、佐藤と細かく繋ぎ、山口将広に訪れた決定的なチャンスも、シュートはわずかにクロスバーの上へ。「相手はとにかく守備も鍛えられているし粘る」と駒澤の指揮官も唸る集中力で、駒場が凌ぎ続けます。
74分も駒澤。野本を起点に、山口将広のクサビを安藤は左へ。吉田のクロスがこぼれると、佐藤が押し込んでとうとう先制ゴールかと思われた1秒後、下された判定はオフェンスファウル。75分も駒澤。左のハイサイドから吉田が戻し、山口将広のアーリークロスに佐藤がダイレクトボレーを敢行するも、ボールは枠の右へ。77分も駒澤。鈴木、山口将広とスムーズにボールが動き、野本のグラウンダークロスを柳澤がまたぐも、後方に味方は不在。数字の変わらないスコアボード。
78分、鈴木が蹴ったこの日6本目のCKから、こぼれを収めた野本が倒され、エリアのすぐ外で駒澤がFKを獲得します。最終盤に訪れた大きな大きな先制のチャンス。スポットに立ったのは右利きの鈴木と左利きの安藤。それでも、「あそこの位置は自分が蹴るって前から決めていた」と話したのは前者。腹は決まりました。
後ろへ一歩、また後ろへ一歩。「最後までボールを見て蹴れとは言っている」(大野監督)「大野先生に最後までボールを見ろと言われていた」(鈴木)。日常の反芻。短い助走からまさに蹴る直前、「いつもはニアに打っているけど、助走した時にGKがニアに寄っていたので、ファーに蹴れば入るかなと思って」選択した、そのファーサイドのゴールネットへ吸い込まれたのは、最後までよく見て蹴り込んだ球体。絶叫の赤。絶叫の赤。「チャンスが来たら絶対に決めてやろうと思っていた」という鈴木のスーパーな一撃は、すなわち決勝点。「内容も決して良くはなかったですけど、よく頑張ったと思う」と大野監督も認めた駒澤が、劇的なサヨナラ勝ちで初めての全国切符を獲得する結果となりました。
「コイツらより強いチームはいっぱいありました。何でコイツらが勝つのかもわからないんですよね」と首を傾げて笑った大野監督。ただ、もう一度勝因を問うと、「1つ言えるのは、普段の姿勢はどこのチームにも負けないくらい、覚悟を決めて、想いを込めて、サッカー部員としてのプライドを持って、やってくれてるとは思うんですけどね」と答えてくれました。つまり、その要因は積み重ねた"日常"だと。そして、その積み重ねは今、ピッチに立っている選手たちだけにあらず。「準決勝や決勝は守備やセットプレーが大事だと教えてくれたのも、今まで散々ここで負けてきた先輩方のおかげなので、それを伝えてきて彼らがやってくれて、何とか切符を勝ち取れたんだと思います」と指揮官。まさに"オール駒大高"の勝利。少しずつ、確実にノックし続けた全国への扉が、ようやく開かれました。 土屋
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