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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年05月09日

T1リーグ第8節 堀越×駒澤大学高@大井第二

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0508ooi.jpgT1では今シーズン初となるサースデイナイトゲーム。昇格シーズンを戦う堀越と4年ぶりの東京制覇を狙う駒澤大学高の一戦は大井第二です。
選手の自主性を最大限に尊重するスタンスで臨んだT1・T2入れ替え戦で勝利を収め、今シーズンはトップディビジョンに主戦場を移している堀越。4月から新指揮官に就任した佐藤実監督は、「今までのAチームとかBチームとかCチームとかという括りを全部なくして、考え方、戦い方も全部同じ方向でやって、全員がAチームなんだという意識を持ってもらいたい」という方針から、全99人の部員をフラットな視点でチェックする体制にシフト。リーグ戦は3連敗中とやや苦戦中ですが、週末から始まるインターハイ1次予選に向けても、久々の勝利で弾みを付けたい90分間に挑みます。
開幕から6試合無敗の上、20得点という破壊的な攻撃力を武器に今シーズンのT1を席巻している駒澤大学高。リーグ戦では直近の関東第一戦で初黒星を喫しましたが、関東大会予選でも1試合平均3得点を超える数字を叩き出し、準決勝では成立学園をPK戦の末に下して、見事関東大会出場権を獲得。「とにかくマジメに一生懸命やっているし、ヘタだけどちゃんとやっているので、そういう所で運を戴いている感じですよ」と笑った大野祥司監督は相変わらずのスタンスですが、今年の東京高校サッカー界における主役候補であることは間違いありません。ナイトゲームの大井は5月でもさすがの肌寒さ。それでも少なくない観客に見守られ、ゲームは18時30分にキックオフを迎えました。


開始早々の決意は駒澤。ボランチの鈴木隆作(3年・JACPA東京FC)が右のハイサイドへ落とし、走り込んだ柳澤歩(3年・フッチSC)はシュート気味のクロスを中へ。このボールは堀越のGK横山洋(2年・TACサルヴァトーレ)が何とかキャッチしたものの、キックオフからわずか16秒の電光石火。8分には鈴木の右FKが中央にこぼれ、CBの須藤皓生(3年・北区赤羽岩淵中)が頭で狙ったシュートも横山に阻まれましたが、「関東予選の決勝が終わって2日後なので、だいぶ疲れは来ている」(大野監督)状況でも、駒澤が果敢に仕掛けます。
とはいえ、ゲームの主導権を掴んだのは「内容的にはたぶん自分たちが思い描いた展開にはなっていたと思う」と佐藤監督も話した堀越。「最初は相手が3バックというのがビックリしたし、DFラインも凄く高くて戸惑っちゃう部分があった」と駒澤のストライカー安藤丈(3年・FC駒沢)も振り返ったように、右から小澤颯(2年・FC.GONA)、富樫草太(2年・FC町田ゼルビアJY)、谷野大地(3年・ACフツーロ)で組んだ3バックがきっちり中央を締めながら、ボランチに入ったキャプテンの石上輝(3年・練馬光が丘第二中)を配球役に、右WBの東岡信幸(2年・TACサルヴァトーレ)や右FWの橋本拓巳(3年・FC府中)を使いながら前へ。さらにボールアプローチのスピードでも上回り、手数こそ少ない中で奪ったゲームリズム。
ところが、先にスコアを動かしたのは赤黒軍団。20分、右SHの佐藤瑛磨(2年・立川第四中)を起点に隠地大河(3年・三菱養和調布JY)、柳澤とパスが回り、カバーに入ったDFのクリアを体に当てた安藤はそのままボールを支配下に置くと、果敢に飛び出したGKを左にかわして、無人のゴールへ流し込みます。「結構相手が来ていたので、あのまま打っても入らないかなと思った。あそこは自分でも冷静になれた」というストライカーのリーグ戦10ゴール目は貴重な先制弾。駒澤が1点のアドバンテージを手にしました。
さて、決して流れは悪くないにもかかわらず、ビハインドを追いかける格好となった堀越でしたが、失点直後には続けざまに決定的なチャンスを創出。24分、右CBの小澤颯(2年・FC.GONA)が縦へ付けたボールを、東岡は独力で抜け出しドリブルでエリア内へ。シュートは駒澤GK島崎智成(2年・FC東京U-15むさし)のセーブに遭うもいい形からチームファーストシュートを記録すると、2分後のビッグチャンスも20番に。鈴木脩介(3年・小平第二中)のパスを受けた石上は、右サイドへ浮き球で最高のラストパス。フリーで飛び出した東岡のシュートはクロスバーを超えるも、「ちょっと熱で体調が悪かったんですけど、フルパワーでやり切るということに関しては、ウチの今のサッカーを体現する選手」と指揮官も称えた東岡が2つのシュートシーンに絡みます。
28分も堀越。橋本、吉田碧橙(3年・FC Consorte)、石上と繋ぎ、吉田が左から上げたクロスは島崎がキャッチ。30分は駒澤。右サイドからSBの荒井佑太(3年・VIVAIO船橋)が投げ入れたロングスローがこぼれ、柳沢が左足ボレーで狙ったシュートはクロスバーの上へ。32分は再び堀越。石上のクサビをギャップに潜った橋本は左へはたき、吉田のクロスをニアで合わせた鶴田一真(3年・FC府中)のシュートは枠の左へ。勢いはリードされている側に。
それでも次に歓喜の瞬間を迎えたのも駒澤。34分、左サイドを粘って運んだ吉田一貴(3年・FC習志野)が裏へ短く出すと、DFラインと入れ替わるように飛び出した佐藤に副審のフラッグは上がらず。その直前にやはりラインの裏へ抜け出しながら、持ち出しが大きくなってチャンスを潰した佐藤は、前に出ていたGKの頭上を破る30mループでボールをゴールネットへ送り届けます。「凄くマジメで自分のクラスの教室も最後までキレイにしているようなヤツ」(大野監督)の見事な一撃。点差が広がりました。
35分には堀越に好機。左サイドを田口雄大(3年・TACサルヴァトーレ)が運んで折り返すと、鶴田はシュートまでいけなかったものの、石上が枠に収めたミドルは島崎がしっかりキャッチ。40分には駒澤に決定機。右から鈴木が蹴り込んだクロスを、フリーで合わせた柳澤のヘディングはわずかにゴール右へ。「勢いを止めるような失点の仕方になってしまったのでもったいなかった」と佐藤監督が話せば、「前半は圧倒的にやられたけど、カウンターで事故のような得点ができた」とは大野監督。0-2と駒澤がリードして最初の45分間は終了しました。


ハーフタイムに石上と佐藤監督が決断したのは怒涛の3枚替え。「ちょっと前に行く推進力が足りないと石上と話をして、スピードや勢いのある選手をポイントに入れようと」(佐藤監督)いう狙いの下に、新井真汰(2年・TACサルヴァトーレ)、小磯雄大(1年・FCヴォセラーゴ津久井)、秋葉龍星(3年・FC Branco八王子)を一挙に投入。「より前に出ていくという所をハッキリさせる」(佐藤監督)采配で、逆転勝利を目指す姿勢を鮮明に打ち出します。
すると、早くも当たったベンチワーク。49分、橋本からのリターンを受けた石上は左サイドへスルーパス。右から左へ持ち場を変えていた東岡が受けてエリア内まで侵入すると、たまらずマーカーが倒してしまい、堀越にPKが与えられます。キッカーはファウルの瞬間からボールを抱えていた石上。左スミを狙ったキックはGKもわずかに及ばず。「ちゃんとトレーニングの中で積み上げがあったので、そういうのを見て抜擢された」(佐藤監督)という東岡の想いに、抜擢したキャプテンが結果で呼応。たちまち点差は1点に縮まりました。
にわかに動き出したゲーム。54分は駒澤。鈴木の左FKを山口将広(3年・足立千寿桜堤中)が粘って残すと、柳澤のボレーは横山がファインセーブで阻止。55分は堀越。CFに入った小磯がドリブルで突っかけ、こぼれたボールを石上は左から放り込み、最後に橋本がトライしたワントラップボレーはクロスバーの上へ。58分も堀越。右WBの秋葉が短く出したボールを、小磯が狙ったシュートは枠の左へ。58分は駒澤。吉田が裏へ落とし、佐藤は前半のゴールより距離のある35m近いループを狙うと、ボールは右のポストに当たってピッチへ跳ね返り、何とか横山がキャッチ。「春の遠征でも点を取っていた」(大野監督)という佐藤のシュートセンスにどよめくスタンド。
ゴールの予感が漂う中、ピッチにできた祝福の輪は紫。59分、エリア内で仕掛けた橋本にGKの足が掛かると、主審がホイッスルを鳴らした後に指し示したのはペナルティスポット。やや微妙なジャッジではありましたが、再び堀越がPKを獲得します。2本目のキッカーは橋本自ら。10番の選択は堂々のど真ん中。「彼らの中のプランニングというのが出来上がっているので、交替策が機能しないということはあまりない」と佐藤監督。15分間で堀越がスコアを振り出しに引き戻してみせました。
2点のリードを吐き出してしまった駒澤。「崩れるか、追い越せるか、同点なのかをちょっと見ていた」大野監督は、65分を回ったタイミングで配置換えに着手。柳澤をボランチに、隠地を左SHに、山口を1.5列目にそれぞれスライドさせると、勝ち越し弾はすぐさま。67分、中央でボールを浮かせた安藤のパスを山口はすかさずリターン。完全に1人で抜け出した安藤は「色々考えちゃった」ものの、GKの左脇を抜くシュート。横山もよく触りましたが、ボールはゴールへ吸い込まれます。「1対1は得意だと思っているので、結構落ち着いて決められた」という9番のドッピエッタ。赤黒軍団がまたも一歩前に出ました。
流れは掴みかけていたものの、「勢いを止めるような失点の仕方になってしまった」と佐藤監督も悔しがった堀越は、69分に橋本のパスから秋葉が積極的な枠内シュートを放つも、島崎にキャッチされると、以降は「2列目もかなり遅れて間延びもしていたし、前半やれていたセカンドが拾えなくなってきた」(佐藤監督)こともあって、須藤と東方陸真(2年・FC東京U-15むさし)の駒澤CBコンビを前にチャンス自体が減少。71分に橋本が続けて蹴ったFKとCKも駒澤ディフェンスのクリアに遭い、3点目へのムードを引き寄せ切れません。
74分は駒澤。荒井のフィードに山口が抜け出すと、シュートは飛び出した横山が果敢にセーブ。再びルーズを拾った山口のリトライも、今度は小澤が体を張ってブロック。78分には堀越も石上、橋本と繋いで小澤が右クロスを上げるも島崎がキャッチ。80分には奮闘した東岡を下げて、北田大祐(2年)を投入するも流れは押しとどめられず。
81分は駒澤。後方からのフィードを安藤が落とし、山口のシュートは横山がセーブ。こぼれを拾った山口が右サイドを巧みなターンで抜け出し、中へ戻したボールを隠地が狙うと、ここも横山が丁寧にキャッチ。82分も駒澤。鈴木が右へ浮き球で流し、安藤のワントラップボレーは枠の右へ。84分と87分には共に須藤のFKから、安藤と途中出場の野本克啓(2年・FC多摩)がそれぞれフィニッシュまで。さらに89分にはここも須藤の左FKから、野本が綺麗なボレーを放ち、横山がここもファインセーブで回避しますが、最後まで追加点への意欲を前面に押し出します。
試合を終わらせたのは「自分が決めていれば勝てたというような試合をなくしたい」と話すストライカー。90+3分、野本が裏へ蹴ったボールで独走状態に入った安藤はGKを冷静に右へかわすと、ゴールカバーに入ったDFは認識しながらも「GKがいなかったので、高いボールを蹴れば入るかなと」的確な判断で的確なコースへ一振り。ボールはDFの頭上を破ります。これで何と自身リーグ戦3度目のハットトリック達成。「緊迫した試合でも自分が決めて勝つというのは凄く意識している」と語る安藤の一撃がファイナルゴール。駒澤が公式戦の"連敗"を2でストップする結果となりました。


終盤になかなかチャンスを創れなかった状況を受けて、「体力レベルやゲームの展開も含めてもう1個上げないといけないかな」としながらも、「ただ、このやり方を変える必要はまったくないと思う」と続けた佐藤監督。確かにゲーム自体の内容は決して悪くなく、堀越にとっては今後に十分期待の持てる90分間だったのかなと。実は1週間前にプレミアEAST所属の三菱養和SCユースと行ったトレーニングマッチは「ウチのやろうとしている所がハマって」(佐藤監督)、2-2のドローと大健闘。実際にその試合を経験したことで、「『こういうサッカーをするとこういう風になるんだ』という道筋はみんなの中で見えてきたのかなという感じはします」と指揮官も効果に言及していました。「今までは22人しか出られなかった所が、99人出れるチャンスがどこにでもある」(佐藤監督)というボトムアップ集団の改革は着々と進行しているようです。
「強いチームは連敗しないんだということを散々言っていた」(大野監督)中で、T1の関東第一戦、関東予選決勝の都立駒場戦で喫した連敗をしっかり食い止めた駒澤。内容は必ずしも良かった訳ではないと思いますが、「ウチの場合は練習試合だろうが公式戦だろうが、AチームだろうがBチームだろうがCチームだろうが、とにかく勝負にこだわるモチベーションでやっている」という大野監督の言葉を体現する、力強い勝利だったと思います。12月の新チーム立ち上げ時にはまったく結果が出ず、指揮官も「史上最弱だと散々言ってきた」チームは、「自分たちもそういう部分に気付けた」(安藤)ことで少しずつ勝利の味を覚え、春の九州遠征は神村学園や鹿児島実業、長崎海星、久御山といった強豪を相手にして全勝で帰還。関東予選も準優勝を果たすなど、徐々に結果と自信が比例してきた様子。「今後はとにかく個のレベル、1対1の所を強化していきたい」と話す大野監督に率いられた駒澤の進撃は、まだまだ止まりそうにありません。        土屋

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