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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
ウエンズデイナイトのお楽しみ。高尾の夜を彩る90分間は実践学園とFCトリプレッタユースの対峙。実践学園高尾グラウンドがそのステージです。
開幕から7試合を消化しても依然負けなし。1週間前に行われた都立三鷹戦でも2-1できっちり勝ち切るなど、現在5連勝中とT1首位を快走しているのは実践学園。関東大会予選では東久留米総合にPK戦で屈したものの、1次予選からの登場となったインターハイでは、3日前に東京農業大第一を4-0で撃破。日曜日に実現した成立学園とのビッグマッチを目前に控え、良い形で勝利を収めて弾みを付けたい一戦です。
初めて挑んだトップディビジョンは茨の道。リーグ開幕6連敗と厳しい現実を突き付けられる格好になったFCトリプレッタユース。ただ、前節の横河武蔵野FCユース戦では3点のビハインドを跳ね返し、一時は逆転にまで持ち込む執念を披露。結果的に追い付かれて勝ち点1を分け合う格好になったものの、ようやく黒星以外の結果を手に。また、クラ選1次予選も「ここ2試合は結構良かった」と米原隆幸監督が話したように、日曜には湘南ベルマーレユースから約3ヶ月ぶりの公式戦勝利をゲット。「判断することとか見ることとかをもう1回やり直して、徹底して練習した」(米原監督)成果が形になりつつある状況で、さらなる自信を結果で加速させたい所です。高尾の夜はやや肌寒いくらいの好コンディション。実践のキックオフでゲームは動き出しました。
2分のチャンスはトリプレッタ。右SBの金子甲弥(3年・芝中)が右のハイサイドへ落としたボールへ、走り込んだ廣瀬友紀(2年・FCトリプレッタJY)はトラップで収めるもシュートは打てず。4分は実践。石村晴貴(2年・JACPA東京FC)が30m近い距離から直接狙ったFKはクロスバーの上へ。5分も実践。右サイドを抜け出した勝田勇気(2年・東急SレイエスFC)が枠へ飛ばしたシュートは、トリプレッタGK片岡竜雅(1年・調布FC)がきっちりセーブ。9分はトリプレッタに決定機。CFの原田游(2年・FCトリプレッタJY)が浮き球でラインの裏へ入れると、飛び出した泉黎(2年・FCトリプレッタJY)のループはわずかに枠の右へ。まずはお互いに手数を出し合い、活発に立ち上がります。
ただ、徐々にリズムを掴んだのは「入りがパススピードとかバランスとか良くて、クサビがパンパン入った」と米原監督も言及したトリプレッタ。特に攻撃的な中盤に位置するキャプテンの宮澤俊太朗(3年・FCトリプレッタJY)がボールを引き出し、チームの重要なアクセントに。12分にはその宮澤俊太朗が30m級のミドルにチャレンジすると、ここは実践のGK柿崎陸(3年・FC.GONA)が何とかキャッチ。16分には原田がスルーパスを通し、左へ運んだ宮澤俊太朗は右足アウトでコースを狙うもわずかにクロスバーの上へ。19分にも左FWの小野澤直樹(2年・東京ベイFC U-15)がカットインから枠内シュート。さらに23分にも左サイドでSBの氏橋寛(3年・三菱養和調布JY)、小野澤とボールを繋ぎ、宮澤俊太朗が縦に加速して中へ。最後はオフェンスファウルを取られましたが、「キャプテンシーを持って、守備もやっとやるようになった」と指揮官も笑う10番の躍動で、押し込むのはトリプレッタ。
ところが、先制点を手にしたのはホームチーム。28分、右サイドでボールを持った谷本薫(2年・文京クラッキ)が縦へ送ると、勝田のドリブルはマーカーに潰されたものの、拾った山下浩二(3年・FC VIDA)は左へラストパス。フリーで待っていた石井幸太(2年・Forza'02)の左足から振り抜かれたボールは、ゴール右スミへ飛び込みます。最初の決定機を見事成果に。実践が1点をリードしました。
さて、「全体でボールを運んで、人数を掛けて数的優位を作って、その中で距離感を保ちながらやる形」(米原監督)という狙いはある程度体現しながらも、ワンチャンスでビハインドを負うことになったトリプレッタは、失点後からやや中央でのハーフカウンターや崩しが停滞。37分には原田とのワンツーから廣瀬が裏へ蹴り込んだボールも、素早く飛び出した柿崎がクリア。38分には中盤でアンカーの宮澤亮太朗(1年・FCトリプレッタJY)がボールを奪い、宮澤俊太朗がトライしたミドルも柿崎がキャッチ。40分にも相手の縦パスを鋭い出足でかっさらった金子が、そのまま上がって打ち切った左足ミドルは枠の左へ。積極性を打ち出す反面、フィニッシュの位置が遠く、実践ゴールに迫り切れません。
逆に44分は実践得意のセットプレー。右から石井が蹴ったボールはファーサイドまで届き、フリーで合わせた海老名優作(2年・JACPA東京FC)のボレーは枠の左へ外れましたが、あわやというシーンにどよめくグラウンド。45分にはトリプレッタも原田が右へ流したボールを、泉が対角線に打ち込むも柿崎がキャッチ。45+3分にも宮澤俊太朗のCKから、最後は宮澤亮太朗が叩いたミドルも枠の上へ。攻勢はアウェイチームもリードはホームチーム。実践が1点のアドバンテージを持って、最初の45分間は終了しました。
この日のスタメンには9人の2年生を起用した実践。そのことを問うと、「決してトリプが最下位だからということで組んだ構成ではない」と切り出した野口幸司コーチは、続けて「関東大会予選の時も、ミッドウィークにやったT1の堀越との試合前に『今日は次の関東予選がどうのこうので考えて、中途半端に動いて欲しくない』って言ったのに、もう切り替えも運動量も全然緩かったから今日はメンバーを変えた」とのこと。インターハイ予選を日曜に控えたレギュラーを出して中途半端になるよりも、「今日の彼らが本当に明日から取り組みとか態度とか姿勢が変わってくれれば、本当に後悔のない1試合になると思う」(野口コーチ)という狙いから、2年生中心のメンバー構成で臨んだ一戦でしたが、野口コーチは前半のプレーにかなりの不満顔。後半はスタートから渡辺東史也(3年・八王子由井中)、小池将司(3年・赤羽岩淵中)、須田皓太(3年・JACPA東京FC)と3人の3年生を送り込み、ネジをきつく巻き直して残りの45分間に向かわせます。
早く追い付きたいトリプレッタは50分、小野澤が左へ振り分けたボールから「ウチにとって大きなオプションになっている」と米原監督も認めるSBの金子がドリブルシュート。これが柿崎のファインセーブに阻まれると、以降は「相手が後半もう1個ギアを上げてきたね」と指揮官も苦笑したように、出足が良くなった実践を前になかなか中央を崩せず。59分には菊地恭平(2年・青山SC)との交替で投入されたばかりで、古巣対決となる天下谷真太郎(3年・FCトリプレッタJY)にスルーパスを通され、右SBへスライドした菅野涼太(2年・AZ'86東京青梅)のシュート気味クロスがバーを直撃する一幕も。63分に宮澤俊太朗のパスから原田が抜け出し掛けましたが、柿崎が果敢に飛び出してキャッチ。スコアボードの数字を動かせません。
「ピッチの中での監督みたいなもの。彼の理解度は去年からある程度できているし、何の問題もない」と野口コーチも信頼を寄せる渡辺が最終ラインに入ったことで、相棒の玉井亮(2年・コンフィアーレ町田)のパフォーマンスも向上し、全体に落ち着きの出てきた実践は68分にチャンス。天下谷のパスから石井がDFと入れ替わってエリア内へ。最後はカバーに戻った金子にクリアされたものの、「今日はウチから実践に行ったヤツも出ていたけど、やっぱりうまいね」と米原監督も話した天下谷の機転も攻撃のポイントに。「普段やっていること」(野口コーチ)を少しずつ取り戻し、守備のリズムも安定感を増して行きます。
69分にはトリプレッタに1人目の交替が。原田に替えてピッチへ送り出されたのはピーダーセン世隠(2年・FCトリプレッタJY)。最前線の駒を入れ替えると、71分には好機到来。廣瀬が左へ回すと、短いドリブルから打ち切った宮澤俊太朗のシュートは柿崎が的確なセーブ。こぼれを再び狙った宮澤俊太朗の2発目も中央でDFが何とかクリア。「普段だったら決まっていると思うけど、実践も最後のゴール前は本当に死に体で体を投げ出してくるから」と米原監督。残された時間は20分あまり。
72分は実践。左からのクロスを一呼吸溜めた須田のシュートは片岡がキャッチ。73分には右SBに横溝聖太郎(3年・FC杉野)を投入し、ドイスボランチを菅野と和氣貴也(2年・横河武蔵野FC JY)に組ませ、その少し前に配した天下谷にも守備を意識させる、実質トレスボランチ気味の布陣で中盤の引き締めにも着手。75分には海老名の左クロスから、こぼれを打った和氣のシュートはDFがブロック。76分にも渡辺の左CKから、横溝が舞ったボレーは片岡が何とかキャッチ。「いい流れになっていた」と野口コーチも言及した通り、次のゴールの可能性は実践サイドに漂い始めます。
77分はトリプレッタ。久々のカウンターからピーダーセンが左へ回し、右に流れながら小野澤が放ったシュートはDFに当たってゴール左へ。直後に小野澤と高野路万(1年・FCトリプレッタJY)の交替を経て、宮澤俊太朗が左から入れたCKはオフェンスファウル。「もうちょっとのらりくらり行けばいいのに、相手のプレッシャーに完全に負けていたね」と米原監督。「今日のメンバーが本当に変わって、逆に今のスタメンを脅かすくらいになったらたぶんTリーグも優勝できると思う」とは野口コーチ。変化のキッカケを手に入れるために、必要な勝ち点3まではあと10分あまり。
84分は実践。ルーズボールを拾った和氣の左足ミドルはクロスバーの上へ。直後も実践。須田が後方に戻したボールを、再度和氣がチャレンジしたミドルはわずかにゴール右へ。86分から88分の間には4本のCKを集めるなど、勢いは実践に。ディサロ峻ヴァレンティノ(1年・FCトリプレッタJY)と玉川由(3年・FC PROUD)のCBコンビを中心に、何とかピンチを押しとどめるトリプレッタ。ゲームはいよいよ最終局面へ。
89分は宮澤俊太朗を最前線に上げたトリプレッタ。泉、ピーダーセンと丁寧に繋ぎ、高野が狙ったシュートはヒットせずゴール右へ。90+1分もトリプレッタ。ピーダーセンのパスから、ターンして前を向いた宮澤俊太朗のシュートはわずかに枠の左へ。90+3分もトリプレッタ。氏橋のFKがこぼれ、替わったばかりの坂下由真(2年・FCトリプレッタJY)が枠へ飛ばしたミドルは柿崎が大事にキャッチ。前述の坂下に加えて、林岳生(2年・FCトリプレッタJY)と木村友輔(3年・エスポルチ藤沢)も相次いでピッチへ解き放ち、勝ち点獲得に燃やす執念を前面に。
ドラマのシナリオを強引に書き換えたのは意外な伏兵。90+6分のラストプレーはトリプレッタのFK。ベンチからは「全員上がれ」という指示が叫ばれ、21人の選手が実践ゴール前に集結すると、ハーフウェーライン付近からGKの片岡が全身で放り込んだ軌道は密集を飛び越え、混戦をすり抜けたボールが辿り着いたのはゴールネット。狂気乱舞の中心にいたのは1年生守護神。GKが50m級のFKを直接叩き込むという、誰もが予想し得なかった同点弾が土壇場で飛び出し、両者が等しく勝ち点1を手にする結果となりました。
最後の最後で勝ち点2がスルリとその手からこぼれていった実践学園。「トレーニングでもそうなんだけど、100パーセントを出す感じじゃない学年なので、これをキッカケに変わってくれればという1つのチャンス」(野口コーチ)と指導陣が捉えて臨んだ一戦は、結果という意味では悔しいものになったかもしれません。「結局ああいう雰囲気で追い付かれるというのは気持ちや日頃のトレーニング態度という所の取り組みが甘い。そういう所に気付いてくれればなと思うんだよね」と話した野口コーチが選手に提示したのは、「これをただの試合で終わらせるのか、何かに気付いて『こんなんじゃダメだ』と思って大きく変わってくれるか」の二択。前者か後者か。それはこの日の悔しさを味わった1人1人に託されています。
「1点取られてバタついたけど、そこで踏ん張れるようになったのは、たぶんやってきたもののベクトルが合っている証拠。そこで崩れなかったのが最後の勝ち点を拾ったことに繋がったと思う」と米原監督も話したトリプレッタは、いわゆる"らしさ"がここに来て確立され始めている印象を受けました。今シーズンはリーグ戦が2月から開始されたこともあり、「最初はトレーニングできないし、『公式戦入らないでくれ』という感じで憂鬱だった」(米原監督)という状況から、「今は公式戦もトレーニングになっていく」(同)と指導陣が感じる確かな変化も。それは「『GW明けまでは我慢だ』とずっと選手にも言い続けていたし、その代わりにそこで勝負できなかったらダメだから、それに合わせてみんなでやっていこうということで1個1個片付けてやってきた」(米原監督)積み重ねがこのタイミングで成果として現れてきたことによる、指導陣と選手間に醸成された信頼関係が大きく影響しているようです。「Tリーグは後期に向けて、選手たちも十分自信を持ってウチらしくやれるようになってくるのかな」と前を向いた指揮官。トリプレッタの反攻は高尾の夜から始まったのかもしれません。 土屋
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