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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
近年の大阪では屈指のタレント集団であり、常にどのコンペティションでも上位の常連となっている興国が目指す大阪獲りの初陣は、続けてJ-GREEN堺です。
昨年は北谷史孝(横浜FM)にキン・ヨンボ(神戸)、一昨年は和田達也(松本)、山本祥輝(富山→ヴェルスパ大分に期限付き移籍中)と、ここ数年はコンスタントに選手をJクラブへ送り込むなど、各方面から注目を集めている興国。「基本はリーグ戦と選手権。インターハイはコパ・デル・レイですよ(笑) じゃないと、選手のメンタルも難しいし」と毎年スペイン遠征を行っているチームらしい話題で笑わせてくれたのは内野智章監督ですが、それでも当然狙うのは大阪の頂点。1次予選から勝ち上がってきた、元J1主審の奥谷彰男先生が教鞭を執っている槻の木を相手に、まずはノックアウト形式の腕試しといきたい一戦です。堺に照り付けるのは灼熱の太陽。同じ緑をモチーフにした松本山雅FCの"勝利の街"を槻の木応援団が熱唱する中、ゲームは11時10分にキックオフされました。
ファーストシュートは開始13秒。キックオフから左へ展開された流れを受けて、花田佳惟斗(2年・セレッソ大阪和歌山U-15)は左足ミドル。ボールは枠の右へ外れましたが、いきなり積極的なチャレンジを見せると、電光石火の先制弾もこの男から。5分、左SBの井上杏汰(2年・セレッソ大阪和歌山U-15)を起点にして、エリアのすぐ外でボールを持った花田は縦に加速すると、中央へ速いクロス。これにCFの古川愛基(3年・ヴィッセル神戸・伊丹U-15)が体ごとねじ込んだボールはゴールネットへ到達します。「去年からチョイチョイ出ていた。アイツはスーパー」と内野監督も認める花田の突破で、興国が早くも1点のリードを手にしました。
緑の反撃は2分後。右サイドでボールを持ったのは槻の木の10番を背負う市丸大弥(3年)。ここを起点にCBの粟田華典(3年)が左サイドへ素早く付けると、待っていたSHの大橋亮太(3年)はまったくのフリー。丁寧に右足でコースを狙ったボールは、綺麗な軌道でゴール右スミへ吸い込まれます。どよめくグラウンド。槻の木が振り出しに揺り戻したスコア。
ところが、この同点が火を付けたのは赤青のゴールへと繋がる導火線。11分、古川が右へ振り分けたボールを、オーバーラップしたSBの柏木恵介(2年・ヴィッセル神戸・伊丹U-15)がラインギリギリで粘ってクロスを上げると、ニアサイドで巧みに古川が合わせたボールは、ファーのサイドネットへ飛び込みます。再び点差が開くと、一気呵成の興国台風。
17分、古川が左サイドへ送ったボールを花田はカットインしながらミドルにチャレンジすると、ファーサイドへ向かった軌道は、クロスバーを叩いてそのままゴールネットへ突き刺さるゴラッソ。「アレは凄かったですね」と指揮官も言及した一撃で3-1。19分、古川がドリブルでエリア内へ突っ掛け、こぼれを拾った田中優一(3年・セレッソ大阪和歌山U-15)の左足から振り抜かれたボールはゴール右スミを捕獲。10番の豪快な一発で4-1。あっという間に興国のリードは3点に広がりました。
同点弾から一転、悪夢のような8分間で痛過ぎるビハインドを背負った槻の木は、ベンチが早々に決断。20分には右SHの國眼隼(3年)を杉山直人(3年)と、21分には先制ゴールを奪った大橋を泉谷拓海(3年)と相次いで入れ替え、ショック療法とも言うべき采配でゲームを立て直しに掛かります。
25分は槻の木。市丸が得意のドリブルで前へ運び、DFともつれたこぼれ球を泉谷が狙ったシュートはわずかに枠の右へ外れるも、交替選手が決定機に早速関与。28分には興国も古川、田中と回ったボールを武村萌生(2年・FC TIAMO JY)が右からクロスを放り込むと、こぼれを枠へ飛ばした花田のシュートは、槻の木GK加藤暢人(3年)がファインセーブで回避。31分は槻の木。相手の横パスを高い位置でかっさらった市丸はそのまま独走。飛び出したGKを右に外した決定機の帰結は、懸命に戻った興国ディフェンスに潰されましたが、3点差にも折れなかった緑のメンタルタフネス。
すると、34分に奏でたゴールは追撃の調べ。右サイドでボールを持った泉谷が中央へ付け、ボランチの中村駿平(3年)はそのまま左へ送ると、またもこちらのサイドで杉山がフリーに。確信を持って打ち込んだシュートは、クロスバーをかすめながらゴールネットを揺さ振ります。狂喜する緑の応援団。4-2。槻の木が1点を返し、試合の興味を後半に繋いだ格好で最初の35分間は終了しました。
後半も立ち上がりから攻勢に出たのは槻の木。37分、中村が放り込んだ右クロスを、前田秀(3年)がワントラップから叩いたシュートはクロスバーを越えるも、サイドを崩した形から後半ファーストシュート。38分には相手GKのミスキックを拾った市丸がドリブルで持ち込み、焦ったGKに倒されるとホイッスルを吹いた主審はポケットに手を。赤でもおかしくなかったカードの色は黄色。数的均衡は保たれたものの、勢いは完全に槻の木。
ゴールまで約25mの距離から、そのFKを直接狙った中村のシュートは壁に阻まれましたが、42分には右CKのチャンス。中村の蹴ったボールへ、CBの藤岡知弥(3年)が飛び込んで打ち切ったヘディングはクロスバーの上へ消えるも、「前半4点入るまではイメージ通りの展開やった」と内野監督も振り返った興国を尻目に、槻の木を取り巻くテンションはグングンと上昇していきます。
さて、43分には古川がようやくチームの後半ファーストシュートとなるミドルをゴール左へ外すなど、一気にリズムを明け渡してしまった興国。この状況を内野監督は「今年の槻の木は丁寧なサッカーをしているんですけど、失点して3点差になってからちょっと繋いだら蹴る、ちょっと繋いだら蹴るという感じになった。あの処理はウチのDFラインは得意じゃないので、逆に槻の木が繋がなくなってからやられた感じ」と分析。前半はセカンドを丁寧に回収していた、16番を背負う長身アンカーで"興国のブスケツ"こと戸根一誓(3年・長坂FC)もなかなかボールを取り切れず、相手の二次攻撃にさらされる回数が増えていってしまいます。
衝撃の瞬間は50分。ボランチの阿久根龍(3年)が執念を見せて獲得したCKを右から中村が蹴り入れると、ファーサイドで完全にフリーになっていた藤岡は高い打点からヘディング。このボールがゴールラインを越えたという判定で、槻の木にこの日3度目となる歓喜の瞬間がもたらされます。4-3。たちまち点差はわずか1点にまで縮まりました。
「相手に前から来られてゴールキックを繋がなかったことで蹴り合いになって、相手が蹴ってくるボールが結果的に全部相手ボールになっているのでさらに繋げない」(内野監督)という興国の悪循環。54分にはインテリオールの宮城和也(2年・T・フジタSC枚方U-15)を淵上友貴(3年・YF NARATESORO)と入れ替え、ディフェンスのバランス向上に着手。59分、中村のFKに突っ込んだ粟田のヘディングが枠の上へ逸れたのを見ると、60分には戸根に替えて大脇涼(2年・セレッソ大阪和歌山U-15)を投入し、新名春樹(3年・RIP ACE SC)、キャプテンの桶谷拓人(3年・ガンバ大阪JY)とのトライアングルでクローズしたいラスト10分間。
追い付きたい槻の木は、時折繰り出される興国のアタックにも、右から井山翔聖(2年)、藤岡、粟野、祐安勇次(3年)で組んだ4バックが的確に対応。さらに、64分に田辺柾登(3年)、67分に山内鎌聡(3年)を相次いでピッチへ解き放ち、唯一の狙いを明確に。興国も67分に花田と神崎康誠(3年・セレッソ大阪西U-15)をスイッチさせて、潰したい残り時間。69分には左サイドを切り裂いた淵上のドリブルを、飛び出した加藤が何とか防ぎ切り、繋いだ最終盤への興味。いよいよゲームはクライマックスへ。
70分は槻の木。右サイドで獲得したCKを中村が丁寧に蹴り込みましたが、中央でのオフェンスファウルを主審はジャッジ。90+3分は槻の木のラストプレー。加藤が大きく蹴り込んだFKは中央で混戦を生み出したものの、興国のGK小久保勝広(3年・ガンバ大阪JY)がゴールラインを割ったボールを見送ると、ほどなくして堺の空へ響いたファイナルホイッスル。4-3。壮絶な撃ち合いは前半の貯金を最後は守り切った格好で、興国に軍配が上がる結果となりました。
開始20分までの興国は同じ赤と青のユニフォームを纏うバルサさながらの躍動感を見せてくれましたが、このゲームに関しては槻の木の健闘を称えないわけにいきません。一時は前半だけで3点という絶望的な点差を付けられながら、一瞬たりともメンタルが折れることなく堂々と戦い抜き、最後は1点差にまで迫った諦めない気持ちが、見る者の心を強く揺さ振ったことは間違いないでしょう。勝ってみんなで"勝利の街"を歌うことはできなかったものの、ひょっとすると彼らには遥かなる頂がわずかではありながらも、ハッキリと見えた70分間だったのかもしれません。 土屋
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