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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
ここまで開幕6連勝で首位に立つ阪南大と、5勝1分けでピッタリとその首位を追走している2位の関西学院大が、このタイミングで対峙。無敗同士の頂上決戦はJ-GREEN堺のメインフィールドです。
ここ6年間で3度の関西制覇を達成。昨年はJクラブへ5人の卒業生を送り込むなど、全国屈指の強豪として確実にその名声を高め続けている阪南大。2年ぶりの覇権奪還を狙うリーグ戦では、前述したように開幕6連勝と最高のロケットスタート。特に最高学年となったストライカーの河田篤秀(4年・阪南大学高)は、2試合の4ゴールを含む6戦連発で通算13ゴールと大爆発。須佐徹太郎監督もエースに対して「そりゃ4年だからやらなきゃいけないでしょ」と言いながら、「トレーニングからうまくいっているね」と確かな評価も。34得点5失点という驚異的な数字を盾に、更なる独走態勢を築くべくこの一戦に臨みます。
昨シーズンは混戦の関西でリーグ戦3位という好成績を叩き出し、冬のインカレでもディフェンディングチャンピオンの早稲田大を撃破。最後は死闘の末に鹿屋体育大に屈したものの、全国でも大きな存在感を示した関西学院大。こちらは5年ぶりとなる王座復権に向けて、6戦無敗と開幕ダッシュに成功。試合数を上回る24ゴールを挙げて昨シーズンの得点王に輝いた呉屋大翔(3年・流通経済大柏)は、今シーズンもここまで6戦連発の12ゴールと量産態勢に。前節の桃山学院大戦では1試合5ゴールを記録するなど、河田とハイレベルな得点王争いを繰り広げています。実力者同士の首位攻防戦に加えて、注目のストライカー対決という意味合いもあってか、スタンドには各Jクラブのスカウト陣も集結。1000人を超える観衆をスタンドに飲み込んだビッグマッチは、関学のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートは関学。2分、左サイドから小幡元輝(4年・名古屋グランパスU-18)が積極的なミドルを枠内へ収め、阪南のGK黒木優祐(2年・奈良育英)にキャッチされたものの好トライを見せましたが、ここからは阪南にリズム。4分に右から松下佳貴(3年・松山工業)が入れたFKはゴールラインを割ったものの、8分にはルーズボールを収めた河田が果敢なミドルを枠の左へ。ジワジワと攻勢を強めます。
すると、先にスタンドの青い応援団を沸かせたのも阪南。11分、右サイドでボールを持った河田は、一気に2段階アクセルを踏み込んで縦へ突破。えぐって中央へ折り返したボールに、3列目から突っ込んできたのはボランチの重廣卓也(1年・広島皆実)。「重廣は点が入った時もよく入っていっていた。河田がさらに縦に行ったのに付いていったからね」と須佐監督も納得の一撃。ルーキーの貴重な先制弾が飛び出し、阪南がまずは1点のリードを手にしました。
以降も手数は阪南。15分には左SHに入った外山凌(2年・前橋育英)のパスを脇坂泰斗(1年・川崎フロンターレU-18)が戻し、外山が枠内シュートを放つもここはオフサイドの判定。18分にもCBの甲斐健太郎(2年・立正大淞南)が鋭いクサビを通すと、反転してDFラインと入れ替わった河田がそのまま運んでシュートを放ち、ボールは枠の左へ外れましたが、2点目への強い意欲を隠しません。
ところが、ワンチャンスを活かし切ったのはやはりあのストライカー。20分、中盤でボールを持った徳永裕大(2年・ガンバ大阪ユース)が裏へ落とすと、トラップで何とか収めた呉屋はボールの浮き上がり端をハーフボレーで一閃。低空で空気を切り裂いた軌道は迷いなくゴールネットへ飛び込みます。トップストライカーの証明。関学が早くも同点に追い付きました。
一番ケアしていた男に手痛い一発を食らった阪南は、24分と29分にどちらも脇坂のパスから、どちらも河田がフィニッシュを取り切りましたが、前者は枠の右へ外れ、後者は関学のGK村下将梧(3年・東海大仰星)がファインセーブで阻止。「全然中盤の3枚でルーズボールが拾えない。競り合いは7割くらい相手ボールになったんじゃないですか」とは須佐監督。確かに関学のドイスボランチを務める徳永と宮村哲朗(2年・ヴィッセル神戸U-18)の存在感が強く、阪南も中盤を支配するという所までは持ち込めません。
35分は阪南のセットプレー。キャプテンの成田恭輔(4年・清水エスパルスユース)が右FKを蹴り込むと、こぼれに反応した甲斐のヘディングは村下がキャッチ。37分も阪南のセットプレー。ここも右からレフティの成田がCKを放り込み、DFのクリアを拾った脇坂のミドルはDFに当たって村下がキャッチ。40分は関学。右サイドでの展開から、宮村が狙ったミドルはクロスバーの上へ。「"サッカーをする"という意味で前半は全然だった」と厳しい言葉を口にしたのは須佐監督。1-1のタイスコアで前半の45分間は終了しました。
後半にまず魅せたのは関学の13番。48分、右サイドから宮村がアーリークロスを送り込むと、DFラインとの駆け引きからバックステップで抜け出した呉屋がヘディングシュート。ボールはわずかにゴールの右へ外れましたが、敵将もその動きに言及したようなストライカーらしい技術で、阪南ゴールを脅かします。
ただ、やはり後半もある程度ペースを握ったのは阪南。53分には右SBの田渕大貴(2年・大阪桐蔭)が縦へ付け、SHの山﨑康太(2年・東福岡)がアーリー気味に上げたクロスは、外山が残すもシュートまで持ち込めず。59分には脇坂、重廣と繋いだボールを、松下が右に持ち出しながら狙ったシュートは枠の左へ。65分には決定機。田渕が右クロスを良いコースに落とし、外山が合わせたヘディングは、しかし味方に当たって村下が何とかキャッチ。直後にもやはり田渕の右クロスから、飛び込んだ外山のボレーは枠の左へ。9番を背負う2年生は再三訪れた好機をモノにできません。
こうなると、流れは少しずつ関学へ。66分、左SBの井筒陸也(3年・初芝橋本)が好クロスを蹴り込み、呉屋が潰れたこぼれを小幡が叩いたシュートはDFが何とかブロック。72分、キャプテンマークを巻くCBの福森直也(4年・金光大阪)がクサビをぶつけ、呉屋がワンタッチで捌いたボールは小幡が反応し切れず。直後にも徳永の左アーリーに呉屋が突っ込み、最後は飛び出した黒木が体でブロックしてゴールとはいきませんでしたが、「CBが行った瞬間にギャップを呉屋に突かれる怖さがあった」とは須佐監督。一瞬の怖さを阪南ディフェンスに突き付けます。
どちらに勝ち越しゴールが生まれてもおかしくないような状況で、75分に脇坂の素晴らしいスルーパスから、抜け出した外山がフィニッシュをわずかに枠の右へ外すと、須佐監督は決断。まず78分に成田と康翔貴(2年・大阪朝鮮)を入れ替え、81分には外山と永松達郎(1年・作陽)もスイッチ。「ガチャガチャの試合展開」(須佐監督)を制すべく、2人の交替に着手。関学も83分には1人目の交替として、72分のチャンスでGKと激突していた呉屋を下げて、池田優真(3年・作陽)を投入。勝敗の行方はラスト5分間とアディショナルタイムへと委ねられます。
86分は関学。左サイド、ゴールまで約30mの距離から出岡大輝(2年・ガンバ大阪ユース)が直接枠内へ収めたFKは、黒木が丁寧にキャッチ。87分は阪南。永松のドリブルで獲得したFKを、左から脇坂が蹴り込むも村下がパンチングで回避。直後の右CKは松下が放り込むも、シュートまで行けず。87分には関学も泉宗太郎(4年・桐蔭学園)と浅香健太郎(4年・サンフレッチェ広島ユース)を入れ替え、いよいよ試合はクライマックスへ。
4分が掲示されたアディショナルタイムに待っていたドラマ。90+1分、阪南は左のハイサイドでFKを獲得します。ポイントに立ったのは、そこまでキッカーを務めていた脇坂ではなく河田。「一番強いボールを蹴れる」(須佐監督)というストライカーが、高速でファーサイドへ送り込んだボールに、頭から飛び込んだのは香川勇気(4年・滝川第二)。激しく揺れたゴールネット。土壇場で大仕事を成し遂げたのは、176センチのCB。沸騰した応援団。阪南が勝ち越しに成功しました。
終わらない堺劇場。主役の座を奪い取ったのは三日月魂を体現する闘将。90+3分、関学が必死に獲得した右CK。10番を託されたレフティの小幡が右足を振るうと、飛び出したGKもDFも触れずにファーへ抜けたボールを、とんでもなく高い打点で打ち下ろしたのは福森。その直前に投入された阪南の選手が監督の指示を伝え切れず、やや混乱した状況も手伝ったものの、それでもこの瀬戸際での執念は圧巻。最終盤に激しくスコアが動いた注目の首位攻防戦は決着付かず。両者に勝ち点1ずつが振り分けられる結果となりました。
非常にレベルの高い90分間プラスアルファだったと思います。どちらも前線に13番の強烈なストライカーを頂きながら、それだけに頼らない周囲の個と組織も共存。全員が攻守に渡ってハードワークし続けられるだけの体力と気力も持ち合わせており、やはり全国トップクラスの2チームであることを再認識させられました。そうなると勝敗は運に左右される部分も大きいと思いますが、その要素ですらもお互いがアディショナルタイムに引き寄せあった上でのドロー。この両者が今年の関西を牽引していくのは間違いなさそうです。 土屋
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