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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年04月02日

T2リーグ第5節 都立駒場×東海大高輪台@大井第二

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ooi0401②.jpgトップディビジョン復帰を掲げる"降格組"の直接対決。都立駒場と東海大高輪台という実力者同士の激突も引き続き大井第二です。
開幕戦は多摩大目黒に6ゴールを叩き込まれて完敗を喫するも、「ここから『こんなもんじゃねえよ』というのを見せなきゃいけないし、目標ができていいんじゃない?」と笑い飛ばしたのは百戦錬磨の山下正人監督。すると、以降の3試合は2勝1分けときっちり結果をまとめてきているのは都立駒場。夏以降の急成長には定評のある都立の雄も、「例年よりは全然良いよ」と指揮官も認めた通り、今年は早めのエンジンが掛かり始めています。
こだわりの4-3-3を前面に押し出し、インターハイや選手権などトーナメントコンペティションでも一定以上の結果を残すなど、昨年の東京高校サッカー界に旋風を巻き起こしたのは、黄色と黒の縦縞を纏う東海大高輪台。連敗で迎えた前節のホームゲームは、新エースの渡邊夢大(3年・FCトリプレッタJY)が2ゴールをぶち込み、3試合目にして今シーズン初勝利。「確かにチームは良くなってきているから、彼らも実感があると思うので楽しみ」とは川島純一監督。今日は曲者相手に星を五分へと戻しておきたい90分間です。15時の大井には海沿いという影響もあってか、少しずつ冷たい潮風が。注目の好カードは駒場のキックオフでスタートしました。


いきなり"らしさ"を発揮したのは高輪台。5分、畠中一樹(3年・FC PROUD)、須田大翔(2年・足立六月中)、武市健太(2年・インテリオールFC)とスムーズにボールが回り、最後は10番を背負う野村浩輔(2年・FC東京U-15深川)がフィニッシュ。ボールはDFに当たって枠の右へ外れましたが、いきなり昨年のデジャヴを見るかのような流れるアタックで、いいシーンを創り出します。
ところが、「アップがダメだったので、試合前に『今日が最後じゃないから』と怒ったんですよ。『おまえら絶対見てろよ』って言って。で、やっぱり前半はあんな感じでした」と川島監督。このシュートが実は前半最初にして最後のシュート。以降はまったくと言っていいほど、攻撃の形を生み出せません。
一方の駒場は9分、2トップの一角に入った松本匠平(2年・世田谷砧中)のパスから、同じく2トップを務める片岡勇介(2年・FCトリプレッタJY)がミドル。DFに当たった跳ね返りを、篠原力(3年・FC東京U-15深川)が枠へ飛ばしたシュートは高輪台GK関根康大(2年・GRANDE FC)がキャッチするも、厚みのある攻撃を。13分にもゴール右寄り、約25mの距離から篠原が直接狙ったFKはここも関根がキャッチしましたが、ボランチの篠原がうまくボールを捌きながら、前へのパワーで高輪台を圧倒していきます。
すると、先にアドバンテージを握ったのもやはり駒場。23分は篠原と右SBの内藤聡(3年・FC PROUD)で奪ったCK。キッカーの篠原が選択した軌道は高速ストレート。これをファーサイドで待ち受けていた吉澤泰成(3年・横河武蔵野FC JY)は頭で確実にミートすると、スローモーションのようにゆっくりと、そして鮮やかにボールはサイドネットへ飛び込みます。「ウチは決して背が高いわけではないから、フワッと上げても負けちゃう。ゴール前は点で合わせるしかないからね」と山下監督も納得の一撃。練習通りのセットプレーが飛び出し、駒場が先制点を奪ってみせました。
以降もゲームリズムは変わらず。33分は駒場。右サイドのスローインから秋葉遼太(3年・練馬開進第一中)がエリア内で粘って繋ぎ、朝比奈賢伸(3年・目黒第十中)のシュートは枠の右へ。35分も駒場。秋葉からのリターンを受けた内藤が右サイドを駆け上がり、上げたクロスはわずかに片岡が打ち切れず。42分も駒場。相手のミスパスを引っ掛けた片岡は、松本へのパスを選択するも呼吸が合わず。45分も駒場。右から篠原がショートコーナーを試み、最後は秋葉が左足で狙ったシュートは関根がキャッチ。「2-0にしなくてはいけない所でできなかった」とは山下監督ですが、ほぼパーフェクトに近いスコアと内容で45分間を進めた駒場が、1点をリードしてハーフタイムに入りました。


まったくうまく行かない前半を見届けた川島監督は、既に前半の内に須田と田中千寛(2年・杉並FC)を入れ替えていましたが、さらにこの後半開始のタイミングで2枚替えを敢行。中盤アンカーの池野勇人(3年・JACPA東京FC)とCBの榎園玄己(3年・FCトリプレッタJY)に替えて、渋谷雄隆(2年・GRANDE FC)と宮原考輔(2年・GRANDE FC)の"グランデコンビ"を送り込み、システムも4-1-2-3から、ボランチラインに武市と渋谷を並べる4-2-1-3にシフトして、後半の45分間へと臨みます。
ようやく回り出した黄色と黒の歯車。51分には細かいパスワークから右SBの岡田侑也(3年・GRANDE FC)が奪ったFKを、武市が直接狙ったボールはクロスバーを越えましたが、いきなりいい形が結果的にフィニッシュまで。53分にも畠中が切れ味鋭いドリブルでFKを獲得し、武市のキックはDFが何とかクリア。58分にも武市がクリア気味に蹴り出したボールに田中が反応。トラップが大きくなって駒場GK芹澤遼太(3年・目黒中央中)にキャッチされてしまいますが、「後半はだいぶボールを落ち着いて付けられるようになった」と川島監督も話した通り、ゲームリズムは一気に反転します。
この理由の1つは「後半相手がドリブルし始めたでしょ。前を向かせちゃいけない所で向かせてドリブルされたから、バックラインが下がっちゃうんだよね」と山下監督が言及した"ドリブル"の効用。高輪台は中盤が逆三角形から正三角形に変わったことで、その頂点に入った野村が前を向いて仕掛けるシーンが急増。さらにドイスボランチの一角に落ちた武市も「後ろから出ていく方が迫力がある」と指揮官も評価したように、後方から持ち出すシーンがやはり増加し、そこからそのままバイタル侵入やサイドへ散らすなど、攻撃のバリエーションも豊富に。これは高輪台の伝統になりつつある"強み"だと言えると思います。
61分には駒場に絶好の追加点機。高い位置でボールを取り切った片岡は独走。GKもかなり前に出ていたため、シュートコースは数ある中で、やや力んだのかボールは結局関根の腕の中へ収まってしまいます。これには山下監督も「決めなきゃいけないでしょ」と渋い顔。突き放せません。
命拾いした高輪台の攻勢再び。62分、武市を起点に野村は右へ振り分け、渡邊のクロスをファーで合わせた田中のヘディングはクロスバーにヒット。65分、畠中、渡邊とボールが経由し、野村が残すと渡邊のミドルはゴール左へ外れるも、狙い通りのチャンスメイク。68分には1人目の交替として真﨑康平(3年・POMBA立川FC)を投入した駒場も、その3分後にはエリア内へ潜った吉澤がシュートを狙うも関根の正面。ゲームはいよいよラスト20分の攻防へ。
72分に畠中が芹澤にキャッチされるミドルを放ったのを見て、川島監督は4人目の交替に着手。73分にCFの畠中を下げて、佐藤草太(3年・川崎チャンプ)を右ウイングへ投入し、渡邊をCFの位置へスライドさせると、采配ズバリ。74分、中盤で相手ボールを奪った武市はそのまま中央を切り裂くスルーパス。走った渡邊はそのままラインの裏へ抜け出し、グラウンダーのシュートでボールをゴール左スミギリギリへ送り届けます。2月の『NIKE CHANCE』関東ラウンドでも高評価を得たアタッカーが、貴重な同点弾をその右足で。スコアは振り出しに引き戻されました。
失点シーンに関して、「アレで引っ掛けられたのは3回目だったからね」と嘆いた山下監督は77分に2人目の選手交替。吉澤と奥谷康平(2年・FC町田ゼルビアU-15)を入れ替え、中盤にてこ入れを。80分にはカウンターから朝比奈が運び、篠原の30mミドルは枠の左へ。85分にも中央をドリブルで運んだ秋葉がそのままミドルを放つも、関根が丁寧にキャッチ。残された時間は5分とアディショナルタイム。4月の幕開けを飾る一戦にドラマは待っているのか。
大井を駆け抜けた疾風は腕章を巻いたサイドバック。88分、CBの飯野克憲(3年・インテリオールFC)がこの日初めてトライした、中央から裏へのチャレンジボールは絶妙のコースと強さ。ここに全速力で突っ込んできたのは、キャプテンマークを巻いた左SBの後藤優一(3年・品川大崎中)。マーカーの裏へググッと潜り、そのままボールを支配下に置くと、飛び出したGKの頭上をフワリと浮かす技ありシュートは、ゴールネットへ確実に転がり込みます。「チームでも両SBをどんどん高い位置に出そうと言っている」(川島監督)プランが、この土壇場でゴールという最高の形で結実。とうとう高輪台がゲームを引っ繰り返しました。
前半を考えれば信じられない逆転劇を食らった駒場も、同点への執念を最後の最後まで発揮。90+1分、左から篠原がこの日4本目となるCKを蹴り入れると、秋葉のヘディングはジャストミートで枠内へ。スタンドの耳目が一身に注がれたシーンの帰結は、関根がファインセーブで大きなピンチを回避。鳴らされたタイムアップのホイッスル。「『失敗は前半だけで十分だ』と言って送り出してあげたら、なんかうまく行きましたね」と笑った川島監督。高輪台が劇的な逆転勝利で、リーグ連勝を手にする結果となりました。


「ディフェンスで勝てないチームは勝てないよ。今日は1-0で勝たなきゃいけない試合だった」と厳しい顔でゲームを振り返った山下監督。確かに前半の45分間を見る限りは、ほとんど負ける要素のないような試合でしたが、後半は相手の勢いに飲み込まれるような格好に。悔しい黒星となってしまいました。それでも篠原や吉澤、秋葉などフィジカルに自信を持つ中盤の選手たちがハマッた時の推進力は強烈。名将がこのチームをどう仕上げていくのかは、今後も注目する必要がありそうです。
「最初に2敗した時なんて全然チームが噛み合っていなかったから、徐々に前進するしかないと思っていた」と川島監督が話した高輪台は、今後へ向けてポジティブな要素満載の逆転勝利に、試合後は選手たちも笑顔の花。「チーム創りを1から10までの段階で考えると、去年のチームはベースがあったから"1"から"4"の約束事は練習でも省いちゃって、"5"くらいから始めてるんですよ。でも、今年はまだ"1"や"2"をやっている段階なので」と明かしてくれた指揮官。ただ、「また違った色のチームになるし、最近はうまくできてきていますから」と手応えも口に。今年も見る者を楽しませてくれそうな予感に溢れた、新生・高輪台の鮮やかな逆転劇でした。       土屋

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