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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年04月10日

T1リーグ第6節 関東第一×帝京@私学事業団G

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shigaku0409.jpg首都における"リアルイエロー"を懸けた大一番。ここ数年は選手権の西が丘やT1の優勝争いなどで鎬を削ってきた関東第一と帝京の再会は新小岩です。
リーグ戦では「内容は決して下を向くようなものではなかった」(小野貴裕監督)にも関わらず、実践学園、成立学園と強豪相手に相次いで1点差で屈し、連敗を強いられた関東第一。関東大会も出場権を逃しているため、インターハイ予選までは公式戦が常に平日開催という難しいスケジュールが続きますが、「とにかく負けられない相手」と指揮官も対抗意識を明確に見せる難敵をホームに迎え、今後に向けた上昇へのキッカケにしたい90分間へ臨みます。
開幕戦こそ実践学園に敗れて黒星スタートとなったものの、以降は勝ち点を確実に積み重ね、前節は昨年王者の横河武蔵野FCユースにも2-1で競り勝つなど、勝負強さを取り戻してきた感のある高校サッカー界の超名門とも言うべき帝京。今シーズンからは最後の全国制覇に輝いたチームでキャプテンを務めていた日比威氏が、満を持して監督へと就任。「今のウチは何も失うものはないので、1つずつチャレンジ精神でやるだけ」という青年監督の下、カナリア軍団は復権へ着々と歩みを進めています。会場は私学事業団グラウンド。両校の下級生や仕事帰りの保護者の皆さんで埋まったスタンド。平日ナイトゲームは関東第一のキックオフでスタートしました。


いきなりのアタックは1分経たず。右サイドを音泉翔眞(3年・VIVAIO船橋)とのワンツーで抜け出したのは、「みんなに『コイツがいれば大丈夫だ』とちゃんと信用されたい」というキャプテンの菊池優生(3年・三菱養和調布JY)。エリア内へ運んだボールはシュートまで繋がらなかったものの、関東第一が早々に見せた前への意識。5分にもSHの堀内学(3年・FC杉野)が右から中央を縦断するグラウンダークロスにトライ。直後にも右サイドできっちり溜めた窪田アルファサワネ(3年・ヴェルディSS AJUNT)がクロスを上げ切ると、ニアへ飛び込んだ岡崎仁太朗(2年・大宮ソシオ)のシュートは枠の右へ外れましたが、まずはホームチームが積極的に立ち上がります。
序盤のゲームリズム奪取に貢献したのは、小野監督も「メッチャ隠し球です」と笑った最前線の窪田。左右に流れたかと思えば、中央できっちり1タッチのポストプレーを遂行するなど、その基点の創出ぶりは指揮官も「『こんなに収まるの?今日はそういう日なの?』とビックリした」と言及するほど。13分にもその窪田が確実に収めてヒールで左へ。岡崎がサイドをぶっちぎって送った折り返しに、走り込んだ音泉のシュートはDFのブロックに遭うも、いわゆる"9番"のピースがハマッた関東第一の勝る勢い。
一方、日曜の関東大会予選から中2日。「その試合から5人くらいメンバーが替わっている」(日比監督)中でこの日を迎えた帝京は、少し押し込まれる展開もある程度は織り込み済み。「先週の横河同様に俺たちよりはるかにボールを動かすチーム」(日比監督)を前に、ドイスボランチの尾田雄一(3年・帝京FC)と古市拓巳(3年・岐阜VAMOS)も軸足は守備に。窪田のポストプレーとスペースメイクにも、CBの平井寛大(2年・帝京FC)と橋本希望(3年・帝京FC)を中心に粘り強く食らい付き、決定機の一歩手前で1つずつチャンスの芽を摘み取っていきます。
20分には帝京にファーストシュート。古市の左CKは関東第一のGK岸将太(3年・FCクラッキス松戸)がパンチングで回避するも、こぼれを再び拾った古市は大きく枠を越えるボレーにトライ。25分にも左から宮崎智成(3年・帝京FC)が蹴り込んだFKへ、右SBの笹沼和紀(3年・帝京FC)が飛び付いたへディングは枠へ飛びませんでしたが、ようやく出始めた攻撃の手数。26分には関東第一も左サイドを切り裂いた岡崎の折り返しを音泉が繋ぎ、松本蓮(3年・川崎フロンターレU-15)が枠へ収めるミドルを放つも、28分は再び帝京。長いフィードを受けた青野紘季(3年・波崎第一中)は、ワントラップからクロスバーを越えるボレーまで。わずかに変わり始めたゲームリズム。
この前後から帝京はサイドへと素早く展開し、右に長倉昂哉(2年・さいたま木崎中)、左に鈴木啓太郎(2年・ジュビロSS浜松)を配したサイドハーフが積極的に縦へ仕掛ければ、そこに右は笹沼、左は宮崎とサイドバックも果敢に援護射撃。32分には高橋優人(3年・横河武蔵野FC JY)、長倉と回して、最後は尾田が枠内ミドルにチャレンジ。さらに以降はファウルを多く獲得し、FKからチャンスを連発。
38分、左から宮崎が蹴ったFKは一旦クリアされたものの、平井がフィードで差し戻し、笹沼が何とか当てたヘディングは枠の左へ。39分は関東第一。音泉が巧みに裏へ落とし、窪田も勘良く抜け出すもここはオフサイドの判定。40分は帝京のFK。古市が左から蹴ったボールを、鈴木が拾って上げたクロスはDFがクリア。44分も帝京のFK。今度は右から古市が狙うと、ニアで合わせた鈴木のボレーはクロスバーの上へ。45分も帝京のFK。またも古市の右足がボールを押し出し、岸が懸命にパンチングで掻き出すと判定はオフェンスファウル。「相手のボールを回すという部分はいつも以上に消せた」と日比監督。攻撃時間の増加が呼んだ守備負担の軽減も含め、帝京が押し戻した格好の前半はスコアレスで終了しました。


後半はスタートから関東第一にチャンス。46分、左サイドを運んだ岡崎は、窪田がヒールで返したボールをさらに持ち出し、えぐった流れはシュートまで繋がりませんでしたが、らしいアタックに滲ませる後半への意欲。47分は帝京。相手のパスミスを奪った高橋が左へ付けると、青野のミドルは枠の右へ。51分も帝京。古市の左CKを高い打点で叩いた橋本のヘディングは、わずかにゴール左へ。直後も帝京。右サイドのスローインから笹沼が放り込み、拾った鈴木が左へ流れながら放ったシュートは枠の上へ。アウェイチームの照準はいよいよ唯一の標的へ。
しかし、53分に歓喜の瞬間を迎えたイエローは関東第一。中央で菊池が残したボールを堀内は受け取ると、左へボール1つ分持ち出して角度を創り、そのまま左足一閃。糸を引くような球体は右のポスト内側を叩いた1秒後に、ゴールネットへ力強く飛び込みます。「やられるポイントが明確だった分、ゲームの中で慣れていくことはできていた」と小野監督も話したように、状況を見極め、受け入れ、繰り出した反撃の一手はクリーンヒット。ついにスコアが動きました。
さて、「どっちが先に点を取るのかでどうなるかわからない展開」(日比監督)の中でビハインドを負う格好となった帝京。それでも、腰が引けるつもりなど毛頭なし。56分には笹沼、高橋、長倉、青野と複数人が絡んでCKを獲得すると、ここからの6分間で4度のCKと1度のFKを奪うなど、ハイサイドまできっちり攻略。61分は波状攻撃。何度もエリア付近で奪い奪われを繰り返し、最後に笹沼が打ち切ったシュートは関東第一のCB森俊太(3年・FCトッカーノ)が体でブロックしましたが、「1点取られた後もセットプレーを取れたし、点を取れるチャンスはあった」と日比監督。61分には鈴木に替えて磯野拓也(3年・川崎フロンターレU-15)を1.5列目に送り込み、高橋を左に出してさらなる推進力を生み出しに掛かります。
この帝京の積極性がゲームを面白くした最大の要因。「良くも悪くも相手がああやって広げてくれた分、ウチの前のヤツの良さも出ちゃった」とは小野監督。帝京はサイドアタックを中心にどんどん前へと出て行ったことで迫力のある攻撃を繰り出すも、その分だけ全体のラインは間延び気味に。実際、"ボール回し"という意味で関東第一の持ち味は封じられたものの、「逆に向こうも切り替えて、それを逆手に取って縦に早く仕掛けてきた」という認識は日比監督。小野監督も「ウチの良い部分が出ていたので、そこだけは消さないようにして、ゲームの中で合わせて行った方がいいのかなという判断」で、あえて"ボール回し"にはこだわらない姿勢を打ち出したために、構図としては関東第一がカウンター気味に攻めるという見え方になりましたが、ある意味で両者が攻撃の良さを出し合うような、スリリングな時間が続くことになります。
そして、この展開の鍵を握っていたのはやはり関東第一の19番。「彼は外すタイミングも良かったし、休む時間も少なく動いていましたね」と敵将も言及したように、窪田の前線でのスペースメイクと基点創出が速い攻撃への後押しに。70分には堀内が裏へ落としたボールに窪田が走り、ループ気味に狙ったミドルはよく戻った帝京のGK渡辺聖也(2年・FC多摩)がキャッチしましたが、73分には圧巻の一撃。音泉が左から右足で高く上げたクロスの落下点に入った窪田は、吸い付く胸トラップで右へ持ち出すと、そのまま縦に踏み込みながらフィニッシュ。対角線に打ち込まれたボールは、左のサイドネットへ吸い込まれます。思わず小野監督も渾身のガッツポーズ。やはり窪田。点差が広がりました。
2点を追いかける格好となった日比監督の決断。74分に青野と安部心葵(3年・北区十条富士見中)、森にブロックされた尾田のミドルを挟み、76分に笹沼と神宮未来人(3年・浦和レッズJY)を相次いで入れ替え、78分には安部がミドル、79分には高橋がトラップで1人外してボレーを放つなど、ゴールへの渇望感を前面に押し出すと、84分には決定機。エリア内で左へ流れた長倉が、飛び出したGKの上を抜いて枠へ収まるシュートを。反撃弾かと思われた瞬間、カバーに入ってボールを蹴り出したのはここも森。「イニシアチブを取られちゃっても、"場所"を守っておけば何とかなるかなと思っていた」と小野監督が話したように、CBのパートナーを組んだ戸室公輔(3年・クリアージュ)と"場所"を遵守した森のビッグプレー。縮まらないスコア。
帝京は85分、尾田を下げてCBに大庭健人(2年・文京クラッキ)を投入し、橋本を最前線へとスライドさせ、長倉、神宮、磯野と4人はそのまま前へ攻め残り。88分は関東第一も右から堀内が強烈なシュートを放つも、ボールはクロスバーにヒット。90分は帝京。長倉のパスからマーカーを1人外した神宮が左足で狙ったシュートは、しかし枠の右へ。思わず仰け反る帝京ベンチ。
90+4分のラストチャンス。チーム8本目のCKを右から古市が放り込み、この日の先制弾を挙げた堀内が大きく蹴り出すと、新小岩の寒空を切り裂いたのはタイムアップのホイッスル。「どこかで勝ち星が欲しいなと思ってやっている中で、今日は勝った時に得るものが大きい相手だったと思う」と小野監督。リアルイエローを巡る好カードの第1弾は、関東第一に軍配が上がる結果となりました。


本当に面白いゲームだったと思います。「戦い方としては本当に良くミーティングでやったことをやった結果だった。自分たちのやろうとしていることは今日はできていたので、評価したいなと思います」と日比監督が語った帝京は、「相手が出てくるから逆にウチの攻撃が良かったというのもあった」と小野監督も話したように、結果的に相手の良さを引き出す格好にはなりましたが、積極的なサイドアタックは迫力満点。展開次第では勝ち点3を獲得していた可能性も十分にあったかなと。「この負けが本当に次に繋がる負けにならないとこのままズルズルと行ってしまうので、そこはみんなで修正して頑張ってやっていこうと思っています」という日比監督が、笑いながら続けたのは「これが高校年代の楽しさでもあると思いますけどね」という言葉。今年のカナリア軍団には例年と一味違う雰囲気が漂っています。
ボールを回し切れない状況を見て、「駒を変えるというチョイスか、ウチが完全にイニシアチブを取りに行っちゃうかという所だと思うんですけど、ウチの良い部分が出ていたので、追い付かれたら変えようと思っていたけど、そのままだったら引っ張っていこうかなという判断でした」と振り返ったのは小野監督。ただ、逆にボールがそこまで回らなかったことで、ある意味での関東第一らしさが出ていたように個人的には思いました。その"らしさ"とは、すなわち個での推進力。個で運ぶ力が良い形で連動し、次から次へと人が沸いて出てくるのが、例えば選手権予選で躍進した時や、T1を制した時のスタイルだったのかなと。そういう良さを窪田というピースを得て、この日は一定以上押し出せていたような印象を受けました。ここ最近はなかなか結果に恵まれていませんが、「とにかく絶対全国に出るというのが目標で、みんなも絶対にそう思っているはず。周りを見返してやりたい気持ちはマジであります」と言い切ったのは菊池。今後に大きな期待の持てる新小岩の夜だったのではないでしょうか。          土屋

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