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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年04月06日

J2第6節 湘南×岡山@BMWス

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怒涛の5連勝は春の"突風"か、それとも当事者にとっては当然の"凪"か。圧倒的な数字でシーズンを滑り出した湘南と岡山の一戦はBMWです。
その明確に掲げたスタイルに共感する人が続出し、多くの人に惜しまれながら昨シーズンは無念の降格を経験した湘南。クラブの決断は4年前と同様に指揮官の継続。チョウ・キジェ監督に率いられ、三竿雄斗や菊地俊介などルーキーも早々に出場機会を獲得したチームは、ここまで1つの黒星もない5戦5勝と最高のスタートを。「スタイルの継続と言われているけど、実際は色々変えてるんだよ」と笑う指揮官の下、ホームでこの連勝を伸ばして、さらなる勢いに緑のサポーターと乗りたい所です。
2年連続で昇格プレーオフ圏内争いには絡んだものの、結果的にその目標へは手の届かなかった岡山。こちらも監督は就任5年目となる影山雅永が今シーズンも続投。継続性を武器に開幕を迎えましたが、富山に引き分けるとそこから悪夢の2連敗。ここまで勝ち点5の18位と、少し苦しい序盤戦を強いられています。会場は一気に冬の雰囲気が帰ってきたBMWスタジアム。気温14.6度という発表以上の寒さが会場を包む中、ゲームは湘南のキックオフで幕を開けました。


4分には永木亮太の左FKがゴール前を襲い、5分には永木と菊池大介を経由したボールから武富孝介が岡山のGK中林洋次にキャッチを強いるミドルを放つなど、手数は繰り出した湘南でしたが、その立ち上がりは少し慎重なもの。「今日は岡山さんがどういう出方をするかということを、ピッチの中で選手に判断してくれという話をしていた」とチョウ監督が言及したように、ケガ人などで相手の戦い方がやや不透明だったこともあって、まずはその判断を。時間にして約10分前後は見極める出方。
システムは一緒のミラーゲーム。相手の軸足はある程度守備に。見極め完了の狼煙は14分。丸山祐市が右からショートコーナーを繰り出し、受けた永木のパスを三竿がクロスに変えて放り込み、ここは中林にキャッチされるも、おそらくは練習通りのアタックが。直後も湘南。右のハイサイドへ潜ったウェリントンが落とし、永木が左へ送ったサイドチェンジを菊池が直接叩いたボレーは近藤徹志が体でブロックするも、流れの中からもチャンス創出。さらに、そのCKを左から丸山が蹴ると、ウェリントンの叩き付けたヘディングはワンバウンドしてわずかにクロスバーを越えましたが、明らかに湘南のギアが一段階上がります。
17分も湘南。シーズン開幕後に加入した藤田征也が右FKを入れると、DFのクリアを菊池が打ったシュートはDFがブロック。18分も湘南。右サイドのスローインから遠藤航と菊地俊介が粘り、最後は岡田翔平が至近距離から狙ったシュートは中林がファインセーブ。20分も湘南。菊地が左へ展開したボールを、菊池は右足でクロス。岡田のヘディングは枠の上に消えるも、「個でボールを運べる選手が揃っている所を止められなかった」と影山監督も話したように、個での前進をチームでの前進に昇華させていくスタイルで、さらに押し込む緑と青。
さて、シュートを打つこともままならず、忍んで耐える時間が続く岡山。「我々が攻撃に出る時にボランチを経由させてもらえなかった」とは影山監督で、実際にチームの生命線とも言える千明聖典と島田譲のレフティドイスボランチがボールを配るシーンはほとんどなく、入り掛けても湘南の3トップが果敢なプレスバックを遂行。これには遠藤も「3トップが切り替えて追って、またボールを奪い返してくれるとか、そういう所が今日も出ていたので、そういう所が失点が減っている要因でもあるのかなと思う」と明言。ウェリントンも積極的なチェイスでボールを奪うなど、守備意識は満点に近い出来。23分にはようやく掴んだCKのチャンスに、左から島田が打ち込んだボールを、林容平がうまく当てたヘディングもわずかに枠の右へ。得点の香りを漂わせることはできません。
29分にはDFの積極的な攻撃参加。左CBの三竿が菊池とのワンツーから左サイドを抜け出し、上げたクロスはGKにキャッチされたものの、「今日なんかは結構三竿君が上がっていたので、正直もうちょっと下がってくれよと思ってた」と遠藤も笑うほどの積極性をルーキーが披露。36分には右WBの藤田が岡田とのパス交換から中央へ切れ込み、エリア内まで上がってきていた菊地のシュートは中林が何とかキャッチしましたが、3列目の菊地も機を見て危険なエリアまで。39分にも永木のパスを引き出した菊池が、ドリブルからそのままクロスバーを越えるミドルにトライ。
41分には湘南乃風の真骨頂。岡田がハーフウェーライン付近で左へ振り分け、三竿がサイドを駆け上がると、一気にスイッチの入った黄緑の戦士。矢印をすべてゴール方向へ向け、相手陣内に殺到した湘南の選手は三竿も含めて8人。クロスはDFのクリアに遭いましたが、あの瞬間の迫力と勢いはまさに"湘南スタイル"と言っていいものだったと思います。
42分も湘南。菊池が左へ展開すると、三竿のクロスをウェリントンがヘディングで合わせたシュートはクロスバーの上へ。43分も湘南。三竿を起点に菊池は潰されるも、武富が中へ落としたボールを永木が狙ったミドルは枠の左へ。45+1分も湘南。ルーズボールを収めた岡田のドリブルシュートは中林がしっかりキャッチ。「三竿君とも話していたんですけど『上がったもん勝ちだ』と。それくらい後ろの3人も攻撃に対する意識があるので、そこはいい意味で続けていければいいと思う」と遠藤。シュート数は11対1。湘南が一方的に押し込んだ前半は、それでも「チャンスも創れてなくはないけど、決定的なチャンスがないような」(遠藤)45分間。スコアレスのままでハーフタイムに入りました。


後半はお互いにチャンスを創り合う立ち上がり。48分は湘南。藤田の右CKに飛び込んだ菊地のヘディングは、中林が丁寧にキャッチ。49分は岡山。左サイドから染矢が上げ切ったクロスを林が叩いたヘディングはわずかに枠の左へ。50分は再び湘南。武富、ウェリントンとボールが回り、藤田が放り込んだクロスを菊池がヘディングで狙うも枠の上へ。ミラーゲームの様相はアグレッシブに。
先に動いたのはチョウ監督。51分、岡田に替えて送り込んだのは大槻周平。好調をキープしているレフティの投入で、前線のパワーアップに着手。52分にはピッチ左、ゴールまで約25mの距離から永木が直接狙ったFKはカベに阻まれ、最後は中林がキャッチしたものの、ボルテージが自然と高まるホームのサポータースタンド。
「ちょっと愚直な感じ」とチョウ監督が評した、その"愚直"さが揺り動かしたスコア。53分、藤田の右CKは高精度。ニアでウェリントンが枠へ飛ばしたヘディングは中林もよく反応しましたが、このボールをきっちり押し込んだのは遠藤。平塚沸騰。「自分の中では相手がゾーンだったので狙っていた」とは殊勲の3番。「征也のボールに信じて入っていこうという話を昨日ずっとしていた」とは指揮官。色々な狙いが交錯し、結実。湘南が1点のリードを手にしました。
以降も攻め続ける湘南。54分、永木のリターンを受けた武富の左足シュートはクロスバーの上へ。56分、菊地を起点にここは"上がったもん勝ち"でオーバーラップした遠藤がクロスを送り、DFのクリアをそのままかぶせた菊池のボレーはクロスバーの上へ。58分、大槻のドリブルミドルはクロスバーの上へ。60分にも武富が、61分と62分にはウェリントンがいずれも枠外シュートへトライするなど、増え続けるシュート数。
「湘南が1点取った後に、我々が1点を返すパワーより、湘南のもっともっと出ていくというパワーが大きくなった」と判断した影山監督は、64分に最初の交替を決断。左WBの染矢に替えて、前節ゴールも決めているルーキーの片山瑛一を前線へ投入。石原を左WBへスライドさせて、「中盤付近でボールを拾えなくなってしまった」(影山監督)状況の打開策として、右から林、千明、島田とトレスボランチ気味に配した5-3-2にシステムを移行させ、バランスを再び整えながら同点機の到来を窺います。
すると、直後のFKを島田が際どい所へバウンドさせたボールは湘南のGK秋元陽太がキャッチしましたが、「ちょっと相手にボールを動かされる時間帯もあった」と遠藤が振り返ったように、少しずつ岡山も地上でパスが回るように。71分に島田が蹴った右CKはDFにクリアされるも好トライ。直後には片山がロングスローを続けて投げ入れ、2本目は島田が枠の左へ外すボレーまで。ようやく垣間見えた岡山の"形"。
75分には湘南も藤田の右クロスをウェリントンが撃ち下ろし、さらにそのボールへ反応した武富が頭に当てたボールは中林が抜群の反射神経でキャッチ。逆に76分には岡山にビッグチャンス。右サイドを駆け上がった久木田紳吾のクロスへ3人が殺到すると、抜けてきたボールに押谷祐樹が反応するもシュートは打ち切れず。ただ、流れの中から決定機の一歩手前まで創った岡山は、このタイミングで2枚替え。押谷と島田を下げて、三村真と加入後2試合目の登場となる上田康太を送り込み、一気に引き寄せたい流れ。
79分は湘南に2人目の交替。奮闘した藤田と宇佐美宏和を入れ替え、サイドにフタをしながら守備の安定にも着手。82分には宇佐美のクロスを菊池が頭で返し、武富はシュートを打ち切れず。88分には武富と帰ってきた中村祐也をスイッチさせ、最後まで攻め切る覚悟も鮮明に。
「あの時間帯でも走れるのは練習の成果」と胸を張る10番がもたらした熱狂。88分、右サイドでボールを持ったウェリントンが中央へ入ってくると、大外に開いた中村の内側へ全速力で突っ込んできたのは菊池。ウェリントンが最高のタイミングで出したラストパスを、ワンタッチで飛び出したGKの脇へ流し込むと揺れたゴールネット。「しっかり2点目を取りに行けて取れたというのは、1つ成長に繋がると思う」と遠藤。さらなるゴールへの渇望感をきっちり結果へ。湘南が決定的な2点目を奪い切ります。
「グループとして、チームとして同じ方向を向いて、最後2点目3点目を取りに行くという姿勢を貫けた」という指揮官の言葉に偽りなし。90+5分のラストプレー。菊池が左サイドから右足でクロスを放り込むと、ファーサイドで宇佐美が狙ったヘディングは枠の右へ外れるも、最後の最後まで目指した3点目。「我々こそが最初に土を付けようという意気込みで1週間トレーニングし、対策も練ったつもりでしたが、湘南さんが見事な戦いだったと思います」と影山監督も認めた湘南が、クラブ記録となる開幕6連勝をホームで達成する結果となりました。


前述したように離脱中の選手もいる状況を受け、「今我々が組める中で、チームとして湘南と戦っていけるだけのものを今週1週間見た中で決めたつもり」(影山監督)という布陣で臨んだ岡山でしたが、このゲームに関しては完敗と言わざるを得ない現実を突き付けられる格好となりました。ただ、逆にどの部分で屈したかは明確。「このまま湘南にやられたという思いを持ったままでいるのは悔しいですから、今度はホームの岡山の時には、ここまで走る湘南に対してもっと走って、"走る湘南"よりも"もっと走る岡山"を見せられるように努力していければ」という指揮官の決意に期待したいですね。
「新記録が掛かっている所で1つ壁を超えられたことは、『"過去最強の湘南"を創る』という意味でも大きな一歩かなという風に思う」と遠藤も話した湘南は、これで無傷の6連勝。今やどこが湘南を止めるのかが、J2最大の関心事になりつつあります。とはいえ、当事者たちは「彼らは肌感覚でJ1で通用した部分と通用しなかった部分が、脳裏に鮮明に残っていると思う」とチョウ監督も言及したように、見据えるのは昨年届かなかった部分への上積みと成長。それ故に「去年より僕らの質も上げられているなという実感はある」という遠藤の言葉も説得力と重みを増してくるわけです。6連勝の要因を問われ、「選手が自分たちの去年の悔しさを絶対に晴らそうという気持ちを年末からずっと持ち続けていますし、我々のクラブに加入した選手もいますし、全部選手の力だと思います。選手がそう思わないとそうはならないし、監督やコーチが何を言っても彼らがそう思わないと絶対にそうならないと思うので、100%選手の力だと思います」と言い切ったチョウ監督。湘南の6連勝は"突風"などではなく、あくまでも"凪"の中で淡々と、しかし確実に積み上げられたものだという印象を受けました。        土屋

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