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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
T2とT1。置かれたカテゴリーは違えども、ここまでのリーグ戦5試合を開幕から無敗で駆け抜けて来た実力派同士が一発勝負で激突する一戦。会場は東京高校サッカー界の殿堂とも言うべき駒沢第2球技場です。
5戦5勝。その内訳は21得点5失点。ここまでT2リーグで驚異的な強さを発揮して首位に立つなど、素晴らしいシーズンの立ち上がりを迎えている都立東久留米総合。昨年のこの大会は駒澤大学高や今回の対戦相手でもある実践学園、帝京など難敵を相次いで撃破し、見事優勝を達成。今季最初のノックアウトコンペティションで連覇を成し遂げ、全国への切符を懸けた夏と冬に繋げていきたい所です。
5戦4勝1分け。その内訳は12得点4失点。試合数の関係で首位こそ譲っているものの、トップディビジョンで無敗という堂々たる成績を叩き出し、周囲の評価も急上昇中の実践学園。「今年のチームは己を知っているから、みんなが120パーセント出せないと勝てないとわかっている」と話すのは深町公一監督。まずはこの大会で結果を残し、"120パーセント"への信頼を高めることで、2年ぶりの夏冬全国を狙います。日曜正午ともあってスタンドはほぼ満員。全国を知る両者の対峙は、実践のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートは開始わずかに23秒の実践。エリア外から1.5列目に入った新井直人(3年・FC渋谷)が左足ミドル。枠を捉えたボールは久留総のGK井上大地(2年・杉並西宮中)にキャッチされましたが、5分にも左からレフティのサイドハーフ橋本康平(3年・東急SレイエスFC)がグラウンダークロス。ニアへ飛び込んだ小池将史(3年・赤羽岩淵中)のスライディングシュートは枠の左へ外れたものの、実践が勢い良くゲームに入ります。
やや押し込まれた久留総に訪れた決定機は7分。高い位置で相手にプレッシャーを掛けた2番を背負うFWの今村優太(3年・三菱養和巣鴨JY)がボールを奪い切り、そのまま独走。完全な1対1は実践のGK飯島太貴(3年・FC駒沢)にキャッチされてしまいましたが、ボール奪取からフィニッシュまで1人でやり切った好トライ。続く13分にも、左からSBの勝又勇祐(3年・東京久留米FC U-15)が蹴ったCKがこぼれ、反応した保池瑶(3年・三菱養和調布JY)のシュートはわずかに枠の左へ。こちらも2度の惜しいチャンスを続けて創出してみせました。
ただ、ゲームリズムを掴んでいるのは実践。「相手がビルドアップをしてくるし、相手のボランチは1回戦で結構ボールを触っていたので、あえてそこにボールを入れさせて、そこを狙っていこうというイメージ」(深町監督)で、久留総のボランチも含め、中盤の選手がボールを持った時には、CFに入った小池のプレスバックも合わせて、一気に果敢なプレスを遂行。これもあって、久留総は柴田寛生(3年・三菱養和調布JY)と野田竜太(3年・杉並アヤックス)のCBコンビではボールが回るものの、そこから縦へと付けるボールはことごとく潰される流れに。逆に実践は奪ってから「相手のサイドバックの裏を取ってシンプルにクロス」(深町監督)という狙いを徹底し、クロスは上げ切れないまでも、ハイサイドでのポイント創出には成功。25分にはボランチの和気貴也(2年・横河武蔵野FC JY)が中盤でボールを奪い切り、橋本康平のミドルは井上が何とかキャッチ。29分にも新井が中盤のルーズボールを頭で確保し、そのまま放ったミドルは野田のブロックに遭うも、出足や球際の強さで引き寄せる流れ。
一方、チャンス総数の割には惜しいシーンを生み出す久留総。34分には昨年から主力を務めるボランチの小島樹(3年・あきる野FC U-15)がスルーパスを繰り出し、今村は少しタイミングがずれて前を向けなかったものの、決定機の一歩手前まで。直後にもやはり小島がラストパスを送り、抜け出しかけた白井穂(3年・Forza'02)には、よく戻った実践の左SB百瀬隆平(3年・JACPA東京FC)がカバーに入ってボールを掻き出しましたが、少ないながらも好機を窺い続ける姿勢は明確に。牙をちらつかせる都立の雄。
36分は実践の決定機。新井が蹴ったFKから、左サイドで橋本康平が縦に付け、小池が潰されたルーズを新井が枠へ飛ばすミドルは井上がファインセーブで回避。直後の左CKを右SBの黒石川瑛(2年・AZ'86 tokyo-ome)が入れると、ファーで渡辺東史也(3年・八王子由井中)が丁寧に頭で折り返し、橋本康平のミドルはDFのブロックに阻まれましたが、明らかに練習通りの形に深町監督も「ここが勝負だぞ。迫力持って飛び込め」と檄を。37分の左CKも再び黒石川がファーへ送り届け、再び渡辺が折り返したボールを天下谷真太郎(3年・FCトリプレッタ)が合わせたシュートは、ここもDFがブロック。セットプレー攻勢もゴールは陥れられず。実践ペースで進んだ前半は、スコアレスでハーフタイムに入りました。
後半のファーストチャンスは久留総。44分、勝又とのワンツーでエリア内へボランチの後藤勇也(3年・クリアージュFC)が侵入。最後は渡辺のカバーでゴールキックになりましたが、3列目からの飛び出しがチャンスの芽を。47分には実践も右から橋本康平が蹴り込んだFKを、ファーで野崎智寛(2年)がヘディングで枠へ収め、井上にキャッチされるシーンを生み出すも、51分は再び久留総。白井穂が右サイドから折り返し、右SBの工藤勝哉(3年・ジェファFC)が狙ったシュートはヒットしなかったものの、後方からの積極的な飛び出しが呼び込むフィニッシュへの形。
57分の交替は実践。橋本康平を下げて谷本薫(2年・文京クラッキ)を投入し、一層高めたいサイドの推進力。57分には左から百瀬が、61分には右から黒石川が「駒大じゃないですけど」と深町監督も評したロングスローを連投。フィフティに近いラインまで押し戻されたゲームリズムを奪還しに掛かります。
すると、駒沢のピッチにこだましたゴールの雄叫び。その主は久留総。61分、右サイドに開いた白井と工藤を経由したボールを、途中出場の白井薫(3年・Forza'02)が左足でクロス。マーカーの裏へ潜った今村は流れた体で懸命にヘッド。飯島も執念でボールに触ったものの、ここは今村の執念に軍配。ピッチに広がった白い歓喜の輪。2番のストライカーが大仕事。前半は押され気味だった久留総がスコアを動かしました。
「こちらがやろうとしていた所はある程度作戦通り」(深町監督)の中でビハインドを背負った実践。失点直後の63分には2枚目の交替カードに着手。野崎に替えて横溝聖太郎(3年・FC杉野)をボランチに投入し、天下谷を最前線へとスライドさせて、まずは1点を追い掛ける態勢を整えますが、65分に新井が蹴った左FKを天下谷が落とすも、ここはDFがクリア。67分には黒石川がDF2人の間をぶち抜いて中央へ送るも、天下谷のシュートは柴田がしっかりブロック。70分には3枚目のカードとして、「メンタルが強いのでみんなを前向きにできるパワーがある」と指揮官も評価する、10番のキャプテン山下浩二(3年・FC.VIDA)をピッチへと解き放ち、1トップへと配置して残り10分の勝負に出ます。
71分は実践。百瀬の右CKは井上がパンチングで弾き出しますが、谷本と橋本亜蘭(3年・杉並FC)が頭で残し、山下の"範囲"へ届いたボールはシュートまで持ち込めず。74分も実践。和気、黒石川とボールを回し、谷本が右サイドからカットインしながら放ったシュートは、久留総のDF2人がスライディングでブロック。76分も実践。新井の左CKを渡辺が折り返し、橋本亜蘭が枠へ飛ばしたヘディングは井上が丁寧にキャッチ。78分は久留総。勝又のFKを白井薫が繋ぎ、白井穂が打ち切ったシュートはDFがブロック。79分も久留総。勝又の右CKがこぼれ、拾った後藤が左へ持ち出しながら放ったシュートはわずかにクロスバーの上へ。同点も追加点もその匂いは十分に。
終了間際のドラマ。80分、急ぐ実践は自陣でのFKも素早く始めて左へ展開。百瀬が前に入れたボールを、わずかに溜めた天下谷はリターン。走り込んだ百瀬がマーカーのタックルを受けて転倒すると、そこはエリアの中。ホイッスルを鳴り響かせた主審が指し示したのはペナルティスポット。土壇場で実践にPKが与えられます。キッカーはキャプテンの山下。決めれば同点、負ければ終わりのこの場面で、山下が思い切り左へ蹴ったボールは、読んでいた井上もわずかに及ばず。その時間、80分30秒。バックスタンドの応援団へ駆け寄ったキャプテンの咆哮。1-1。熱戦は前後半10分ずつの延長戦へもつれ込むことになりました。
保池のキックオフシュートで始まった延長は、85分に久留総が迎えたビッグチャンス。相手の横パスをかっさらった勝又が素早く中へ戻し、今村が狙った枠内ミドルは、しかし飯島がしっかりキャッチ。このあわや勝ち越し弾というシーンを経ると、以降は実践に勢い。90+1分は実践。新井の左FKを渡辺が折り返す"黄金パターン"もシュートは打てず。91分も実践。新井の左CKはDFがクリア。94分も実践。黒石川の右ロングスローを山下が戻り、再び黒石川が放ったクロスへ新井が飛び込んだものの、勇気を持って対応した柴田へのオフェンスファウルというジャッジ。98分には左から百瀬、右から黒石川が相次いでロングスローを投げ入れるも、シュートには届かず。100+1分のラストチャンスも実践。黒石川の左CKは逆サイドへ流れ、拾った谷本のクロスは中央でオフェンスファウルの判定。両者譲らず。3回戦へと進出するための切符はPK戦に委ねられます。
野田、山下両キャプテンの堅い握手を経て、開始された11mのロシアンルーレット。先攻の久留総1人目は後藤がきっちり成功。後攻の実践1人目は試合中のキッカーも務めた山下でしたが、その時とは逆サイドへ流し込む冷静さを披露。ところが2人目で明暗。保池がきっちり沈めた久留総に対して、実践は枠を外してしまい、ここで点差が付いてしまいます。3人目の今村、4人目の小島ときっちりGKの逆を突いて成功させた久留総に対して、実践は3人目、4人目と共に井上に触られながらも何とかゴールへねじ込み、いよいよキッカーは5人目へ。決めれば勝利となる久留総の重要な1本を託されたのは工藤。短い助走から蹴り込んだキックは、飯島も抜群の反応でボールを弾いたものの、わずかに工藤のパワーが優って静かに揺れたゴールネット。勝者は純白のセカンドユニフォーム。久留総が激戦をモノにして、連覇へとまた1つ歩みを進める結果となりました。
好調同士の対戦という肩書きにふさわしい好ゲームだったと思います。攻める時間は実践の方が長く、「ずっと新チームになってからやってきた」(深町監督)というクロスに関しても、そこへ繋げるハイサイドのスペース奪取や、SBのオーバーラップも意図が明確。加えて中盤でのプレスはかなり強烈なモノがあったと思います。対する久留総は左サイドの勝又と保池のアタックに勢いがあり、それほど手数自体は多くなかったにも関わらず、決定機に近いチャンスを創り出す割合を考えれば、T2での破壊的な得点数にも頷けるかなと。いい意味でお互いの良さが噛み合った好バウト。この対戦がそのまま冬の西が丘ファイナルでもおかしくないと感じさせてくれるような、濃密な100分間プラスアルファでした。 土屋
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