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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
共に複数回の優勝経験を誇る名門同士の直接対決。国士舘大と駒澤大が3年ぶりにリーグ戦で対峙する一戦は三ツ沢陸上のナイトゲームです。
降格危機からの大逆襲。昨シーズンのリーグでは絶不調だった前半戦を経て、夏以降の驚異的な復調で一気にインカレ出場権を獲得。殴り込んだその全国の舞台でも1試合ごとに強さを増し、終わってみれば堂々たる準優勝に輝いた国士舘大。「レギュラーが何人か残っているので、『負けたくない』というか、『あっさり諦めずに最後まで90分間戦うんだ』ということは感じていると思う」と細田三二監督。13年ぶりの戴冠に向けて、ここまで1勝1分けと上々のスタートを切っています。
まさかの降格は3年前。2シーズンの2部生活を経て、今シーズンからトップディビジョンへと復帰してきたのは駒澤大。「色々なチームがあるけど、駒澤というのは他とは違う」と敵将も話したように、秋田イズムは当然不変であり普遍。ここまでの2試合は9失点を喫しての連敗と結果こそ出ていませんが、自らのスタイルで久々となる1部リーグ戦での勝ち点3を狙います。会場は三ツ沢のトラックがある方。両チームの応援団が大声を張り上げる中、駒澤のキックオフでゲームはスタートしました。
いきなりお互いに迎え合った決定機。先にゴールへ迫ったのは5分の国士舘。最終ラインからCBの端駿介(4年・札幌第一)が1本のフィードを送ると、今シーズン初出場でスタメンに抜擢された木下ロベルト(4年・益子芳星)が左サイドを独走。少し中に切れ込みながら放ったシュートはサイドネットの外側に当たりますが、最上級生でチャンス創出。11分に応酬したのは駒澤。中盤でボールを奪った板倉直紀(4年・ジェフユナイテッド千葉U-18)がそのままスルーパスを送ると、左に開いた小牟田洋佑(4年・前橋育英)のシュートは国士舘のGK大谷友之祐(4年・瀬戸内)が足でファインセーブ。序盤から勝利への意欲を両者が打ち出し合います。
すると、先に歓喜の瞬間を享受したのは秋田軍団。12分、左サイドから板倉が蹴ったCKは中央をすり抜けてファーまで届き、しっかり反応していたCBの川岸祐輔(4年・前橋育英)は難しいバウンドにもダイレクトボレーを敢行。押し出された低空の弾道はゴールネットへ到達します。1部に帰ってきた"駒澤のセットプレー"が炸裂。早くもスコアが動きました。
以降も「凄くシンプルにトップに放り込んで、セカンドを狙ってくる」(細田監督)駒澤が大きく上回った圧力。14分には国士舘の最終ラインで連携が乱れ、奪った平野篤志(3年・大宮アルディージャユース)のパスから小牟田のシュートは、果敢に飛び出した大谷がブロック。拾った小牧成亘(4年・ルーテル学院)のシュートはDFに当たってわずかに枠の左へ外れるも、ビッグチャンスを創出。18分には右サイドのスローインから小牟田を経由し、平野が上げた好クロスは中央を通過。20分にもボランチの伊藤槙人(4年・浜名)がシンプルに縦へ付けると、フリーで放った小牟田のシュートは「前半からかなり集中していた」と指揮官も言及した大谷がここも好キャッチで回避しましたが、前への力強さが際立ち、駒澤の攻勢が続きます。
さて、最終ラインからボールを繋ぐ意識は窺えるものの、「『大きいのが来るぞ』と身構えちゃって、弾いても一時凌ぎで大きく蹴っちゃう」と細田監督も振り返ったように、なかなか攻撃の形が出てこない国士舘。21分には右からのアタックをキャプテンマークを巻いた海野智之(4年・藤枝東)が残し、田中智也(2年・横浜F・マリノスユース)が叩いたボレーは枠の右へ。24分にも海野が左へ振り分け、片山紳(3年・東海大翔洋)のクロスをニアで木下が合わせるも、駒澤のGK秋山瑠偉(4年・清水商業)がしっかりキャッチ。同点とはいきません。
再び始まる駒澤のラッシュ。24分、板倉が縦に入れると中村駿(3年・習志野)がワンタッチで捌き、小牧が狙ったシュートはDFがブロック。26分、左サイドを小牧が鋭いターンで抜け出し、折り返しを枠へ飛ばした板倉のシュートは大谷がファインセーブで応酬。27分、板倉の左CKは一旦クリアされるも、拾ったボールを平野がシュート。DFへの跳ね返りは板倉が狙い、わずかに枠の左へ。30分、小牟田が巧みにDFラインの裏へ落とし、中村のボレーはヒットせずに大谷がキャッチしたものの、漂う追加点の気配。
ところが、次に生まれたのは同点弾。35分、左サイドで獲得したスローインをSBの藤嵜智貴(2年・清水エスパルスユース)が投げると、ストライカーの平松宗(4年・アルビレックス新潟ユース)は頭でフリック。その背後に潜っていた木下は、ワントラップで反転すると左足一閃。バウンドしたボールはゴール右スミへ飛び込みます。指揮官の起用に応える貴重な一撃。たちまちスコアは振り出しに戻りました。
決してリズムも悪くない中で、まさかの同点ゴールを許した駒澤。前半終了間際の45+1分には左CKのこぼれを小牧が拾い、板倉がハイサイドへ落とした先には中村。思い切り打ったシュートは、ここも大谷がビッグセーブで弾き出し、リバウンドに飛び付いた小牟田のオーバーヘッドは枠の右へ外れたものの、セットプレーから際どいシーンまで。それでもスコアは1-1のままで、最初の45分間は終了しました。
後半もスタートからゲームリズムを掴んだのは赤い怒涛。50分に板倉が蹴った左FKはDFにクリアされましたが、53分にも左からSBの柳川剛輝(3年・サンフレッチェ広島ユース)がロングスローを放り込み、小牟田が競ったこぼれを板倉が打ち切ったボレーは大谷が懸命にキャッチ。54分にも右からこちらもSBの大木暁(4年・東京ヴェルディユース)がロングスローを投げ入れ、小牟田のヘディングから中村が狙ったシュートはDFがブロック。伝統のロングスローも活用しながら、押し込む秋田軍団。
56分は2度目の絶叫。高い位置まで差し込み、左サイドから柳川が入れたボールをここも小牟田が体の強さを生かしてきっちり繋ぐと、小牧の左足シュートは地面を這いながらゴールネットへ飛び込みます。「相手はこういうことをやってくるだろうと、端からみんなわかっていた」(細田監督)中でも貫き通す"意志"のゴール。再び駒澤が1点のリードを奪いました。
どうしても高さと強さの圧力に長いボールが増えてしまう国士舘は、またもビハインドを追い掛ける展開に。59分には右から海野が精度の高いFKを入れましたが、フリーで合わせた藤嵜のボレーはヒットせず。64分には海野が右へ振ったボールを、田中は素晴らしいトラップで収めてターン。サイドを独力で切り崩し、クロスを上げるも秋山がパンチングで阻止。フィニッシュまでなかなか至りません。
同時に動いた両ベンチ。68分は駒澤。平野に替わって投入されたのはキム・デセン(2年・東京朝鮮)。やはり68分は国士舘。片山に変わって投入されたのは渡辺隆斗(2年・実践学園)。「去年1年間はずっと下でやってきて、ピッチに立つ難しさを感じてきた」という、これがデビュー戦の2年生に細田監督は現状打破を託します。
それでも流れは大きく変わらず。71分には柳川が安定のロングスローを繰り出し、こぼれを直接叩いた板倉のボレーはわずかにゴール左へ。73分に板倉が左から蹴ったCKは、DFが何とかクリア。74分に秋田監督が中村を下げて切った2枚目のカードは、立石忠之(3年・海星)。プレーメイカーの板倉を1列上げて、狙い続けるさらなる追加点。
74分に木下と林祥太(2年・久御山)もスイッチしたものの、もはや攻めるしかない国士舘は「もう全部突っ込んでやりましょうと」(細田監督)77分に最後の交替を決断。田中を下げて高見啓太(3年・ヴィッセル神戸U-18)をそのまま右サイドへ解き放ち、最後の勝負に打って出ます。
それでも強固な壁を築く川岸とキャプテンの平尾優頼(4年・市立船橋)で組んだ駒澤CBコンビは微動だに。後半は1本のシュートも記録できず、国士舘の敗色濃厚となってきた86分の衝撃。奮闘していた海野が左へ付けた先には渡辺。「1対1になって相手はカバーに入ってきたので、縦に行くより中に切れ込んだ方がいいな」と少し中央へ持ち出し、ルックアップすると「中に宗さんとか高い選手がいたので、勝ってくれると思って」上げたクロスはグングン伸びてゴール方向へ。一瞬スタジアム中の時間が止まり、直後に視界へ飛び込んだのは狂喜する大沢軍団。「蹴ったらGKが下がって『コレ、入るんじゃないか?』みたいな(笑) 自分でもよくわからなかった」というラッキーボーイのデビュー戦初ゴールは貴重な同点弾。土壇場でスコアは振り出しに引き戻されました。
一気呵成。87分には国士舘に絶好の逆転機。海野を起点に平松が中央へラストパスを送ると、ここに走り込んだ林はフリー。GKとの1対1に応援団も息を呑みますが、無情にもシュートはクロスバーを大きく越えてしまいます。後半2本目のシュートで大逆転までは届きませんでしたが、「全体からすると勝ち点1を拾えて気持ちよく終われたから、次に繋がるんじゃないですか」と細田監督。伏兵の活躍で国士舘が勝ち点1を強奪する結果となりました。
同点弾を叩き出した渡辺は東京の実践学園出身。高校3年時にはインターハイと選手権の両方で全国の舞台まで勝ち上がり、その独特のドリブルを武器にスーパーサブ的な役割を担っていましたが、そんな彼でも昨年の1年間は周囲のレベルに圧倒され、「練習に行きたくないと思う日もあった」という状況だったようです。ただ、「なかなかピッチの中でも先輩に言えなかったり、自分が萎縮しちゃう部分もあったんですけど、それじゃダメだなと気付けた」ことで事態は好転。前節で初めてベンチ入りを果たすと、この日は見事に結果を出してみせました。
元々彼は中学時代に2人しか正規の部員がいないサッカー部でも、自らの技術をひたすら磨き続けたという根性の持ち主。細田監督も「結構物怖じしないんですよね」とそのメンタル部分に言及しています。「今まではピッチに立つことが目標だったんですけど、もう今日で立ったし、ここからはチームに貢献するためにやっていかないといけないと思うので、これからは試合に出たら自分のやるべきことをしっかりやって、勝利に貢献できたらいいと思います」と語った渡辺。牛込のサッカー小僧が三ツ沢に輝く星空の下、新たな第一歩を踏み出しました。 土屋
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