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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年03月23日

J2第4節 横浜FC×山形@ニッパ球

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yokohama0322.jpgトップディビジョンの味を知る者同士の直接対決。3試合を終えて、勝ち点5の9位と勝ち点4の10位という拮抗した両者の一戦は三ツ沢です。
愛媛との開幕戦、続く栃木との第2節と共にドロー。"無敗"と"未勝利"を懸けて臨んだ前節は、富山相手に先制を許しながらも、野上結貴とドウグラスというCBコンビの2ゴールで逆転勝利を挙げ、3戦"無敗"となった横浜FC。南雄太、ドウグラスと守備のセンターラインも確実にチームへフィットし、ボランチは松下年宏と魂の男アン・ヨンハが2節以降はコンビを結成して安定感をもたらすなど、新戦力もうまく融合しつつある状況で、さらなる無敗継続と連勝を目指します。
16年ぶりに雪深き地へ帰ってきた石崎信弘監督に率いられ、株式会社化へ踏み切った年に4年ぶりのJ1復帰を果たすべく、クラブとしても新たな一歩を踏み出した山形。アウェイで湘南に挑んだ開幕戦こそ敗れたものの、続く"石崎ダービー"となった札幌とのアウェイゲームは勝ち点1を奪取。迎えた前節はここまでのJ2で最も話題を振り撒いていた岐阜相手に、3-1と地力を見せ付ける快勝。昇格候補の称号を不動のものにするべく、敵地に乗り込みます。よく晴れた青空とは対照的に冷たい風が吹き付けるピッチとスタンド。まだまだ冬の気配の残る三ツ沢での一戦は、山形のキックオフで幕を開けました。


「最初の15分くらいまではいい形でシュートまで行けていた」とキャプテンマークを巻く宮阪政樹が振り返ったように、好リズムで立ち上がったのは山形。2分に萬代宏樹の落としからディエゴがボレーで叩いたボールは大きく枠の右へ逸れたものの、まずは前線のユニットでフィニッシュまで。7分には横浜も松下のパスから寺田紳一が枠内ミドルを飛ばし、山形のGK清水健太にキャッチを強いるも、8分には再びアウェイチーム。左サイドを上がってきた舩津徹也のアーリークロスへ、逆から入ってきた中島裕希のヘディングは当たらず南がキャッチ。12分にもディエゴの右FKから、こぼれを再びディエゴが中央へクロスを上げるなど、山形が積極的に立ち上がります。
この攻勢の一翼を担っていたのは、3年ぶりにJリーグへと復帰したディエゴ。「攻め残りしていて下がらず、攻撃にとって効果的なポジションに常に残っている」とそのブラジル人アタッカーを評したのはアン・ヨンハ。守備もそこそこに攻め残る分、ボールが入った時にスイッチとして機能する役割は抜群。ここへオーバーラップを繰り返すSBの山田拓巳も効果的に絡み、右サイドを中心に山形が強める攻勢。
さて、なかなかサイドの主導権も取れずに守る時間の長い横浜でしたが、「前節は早い時間帯に失点してしまったので、立ち上がりの10分間は集中して入ろうと言っていた」とアン・ヨンハ。その10分間を凌ぐと、膠着した展開の中で少しずつ攻撃の可能性も見え始めた矢先に、相手のタックルで痛んでしまい、一旦はピッチへ戻ったもののやはりプレー続行が難しくなった松下が26分に負傷退場。「色んな選択肢があった」山口素弘監督は、交替で送り込んだ黒津勝をパク・ソンホと最前線に並べ、右SHの寺田をボランチへ。小野瀬康介を左SHから右SHへ、野崎陽介を1トップ下から左SHへそれぞれスライドさせ、4-4-2への布陣変更を施します。
"ケガの功名"とはまさにこのこと。交替直後の26分、ドウグラスが好フィードを前線に放り込み、黒津がワンタッチで落としたボールへ走り込んだのは小野瀬。エリア内で舩津ともつれて転倒すると、長谷拓主審はペナルティスポットを指差します。絶好の先制機に、キッカーとして名乗り出たのはPK獲得直後からボールを離さなかった小野瀬。下部組織育ちの20歳は冷静にGKの逆を付き、サポーターの目の前のゴールネットを揺らします。「あまりああいう所に行く子ではなかったので、少しビックリした」と笑った指揮官も、「メンタル面もプレー面も逞しくなってきた」と認める小野瀬の先制弾。投入されたばかりのストライカーと逆サイドへスライドしたSHの連携で、苦しんでいた横浜がスコアを動かしました。
悪くない流れの中でビハインドを追う形となった山形。31分には宮阪が左へ捌き、舩津を経由したボールを伊東俊がグラウンダーで入れたクロスは、DFとGKをすり抜けて枠のわずかに右へ。33分にも左サイドでの崩しから秋葉勝が左足で狙ったミドルは枠の左へ。「シュートに早く持って行こうという意識があまりにも強すぎたのかな」とは石崎監督。これに関して「相手が少しボールを持ったりファウルをもらいに来て、ちょっと緩んでしまった部分がある。攻撃というよりは守備が行けなくなってしまったので良い所で奪えなかったし、相手のゴールの近くで奪えなかったことでシュートを遠くからしか打つことができなかった」と宮阪。押し気味ではあるものの、決定機まではなかなか創れません。
45+2分には中島裕希が獲得したFK。中央やや左、ゴールまで約30mの距離から伊東が枠内ギリギリへ収めたボールは、懸命に体を伸ばした南がわずかに触り、左ポストへ痛烈にヒット。直後のCKも宮阪が続けて蹴ったキックは、横浜DFが続けてクリア。「前半はちょっと攻撃の所で攻め急ぎがあった」と石崎監督。山形がペースを握っていた最初の45分間は、横浜が1点をリードしてハーフタイムへ入りました。


後半はスタートから横浜が追加点への意欲を。46分に中島崇典が左から蹴ったFKへ、ドウグラスが飛び付くもシュートには持ち込めず。同じく46分も横浜。パク・ソンホのパスからゴールに背を向けた状態で黒津がクロスバーを越えるミドル。49分も横浜。相手のミスパスを奪った黒津がDF2人の間をぶち抜き、右足で放ったシュートは清水がファインセーブで回避しましたが、「ああいう選手がサブにいるというのもこのチームの強み」と南も評したレフティの躍動で、ホームチームが手数を繰り出します。
ただ、全体の構図としては膠着状態が続く中でも再度出てきた山形の勢い。52分には宮阪のサイドチェンジを起点に、秋葉が左足で狙ったミドルは枠の左へ。53分にも細かいパスワークから伊東のパスをディエゴが右へ振り分け、山田のクロスはDFのクリアに遭うも流れるようなアタックを。54分にもディエゴが左へ回し、舩津のクロスを萬代は頭に当て切れませんでしたが、「相手も2トップになったので、ウチのCBと自分が下がって回せればいいと思った」という宮阪を中心に、ボールを動かしながら相手ゴールへと迫る黄色のイレブン。
57分に鋭いターンから小野瀬が、60分には右からのカットインで中島裕希が、それぞれ枠外シュートを放って迎えた62分。歓喜のスタンドは青白。萬代が右へ落としたボールを秋葉は素早くクロス。ここに入ってきたのは前半の内に伊東と左右を入れ替えていた中島。頭でしっかりヒットしたボールはゴール右スミへ突き刺さります。同点弾のキッカケはやはり前半から優位に立っていた右サイド。後半は特にボールをよく引き出していた中島の一撃で、スコアは振り出しに引き戻されました。
64分には左から舩津が投げたロングスローが中央へ流れ、中島裕希が丁寧に渡したボールもディエゴのボレーはヒットせず南がキャッチ。「後半もずっと押し込んでいたと思う」と石崎監督も語った通りにゲームリズムは山形。「苦しく我慢しなくてはいけない時間帯」(アン・ヨンハ)を強いられる横浜。
「必ず来ると信じていた数少ないチャンス」(アン・ヨンハ)の到来は70分。相手の縦パスを果敢にインターセプトしたドウグラスはそのままドリブル、ドリブル。右サイドを駆け上がりながら、「最後の力を振り絞って」巻き気味にDFラインの裏へ絶妙なラストパスを送ると、走った黒津は寄せたマーカーを巧みにかわし、利き足とは逆の右足でフィニッシュ。ボールはゴールネットを確実に揺らします。「ここの所のトレーニングゲームでもそういう動きを見せてくれた」と山口監督も振り返った動き出しで勝負あり。「ハーフタイムに『彼は左利きでなので、だいたい左足に切り返すから』という話を与えていた。ただ、黒津が上手かったですね」と、川崎時代の教え子を称えたのは敵将の石崎監督。再び横浜が1点のアドバンテージを手にしました。
残された時間は20分。71分に山口監督がパク・ソンホとホナウドを入れ替えると、ここから一気に動いた両ベンチ。石崎監督も75分に伊東と山﨑雅人を、79分に萬代と川西翔太をそのままの位置に送り出し、81分には両指揮官が共に3人目の交替を決断。山口監督は小野瀬を下げて佐藤謙介を右SHへ投入。石崎監督は秋葉を下げてロメロ・フランクをピッチへ解き放ち、宮阪をワンアンカー気味に残す4-1-4-1気味の布陣で最後の勝負に打って出ます。
83分は山形のビッグチャンス。ロメロ・フランクのパスを山﨑がダイレクトで返すと、角度のない位置からロメロ・フランクが左足アウトで放ったシュートは南がファインセーブ。85分も山形のビッグチャンス。山田が右から最高のクロスを蹴り込み、山﨑がドンピシャで枠へ収めたヘディングは、ここも南がファインセーブ。「守備機会がこのチームは本当に少ない。特に今までの3試合はほとんど自分が止めるシーンはなかった」という守護神が、この大事な局面でゴールマウスに掛けた強固な鉄鍵。同点ゴールは許しません。
「もうちょっとラインを上げたかったけど、どうしても相手もクロスが多くなってきて早めにラインを下げてしまった」(南)状況下でも、「左右に振られていたけど、そこをサボらずにしぶとく何度も何度もスライドして、ポジションチェンジをしながらやろう」(アン・ヨンハ)という意識は徹底されていた横浜。89分のFKも、直後のCKも集中力を切らさず確実にクリア。90分に宮阪が1人外して叩いたミドルも南ががっちりキャッチすると、それがこのゲームのファイナルシュート。ホイッスルの瞬間にベンチも含めて全員が突き上げた拳。「昇格を狙っているようなチームに勝てたので、次に繋がると思うし、繋げていかないといけないと思う」とアン・ヨンハも話した横浜が、開幕からの"無敗"継続と連勝を手にする結果となりました。


「ある時はカウンター、ある時はボールを動かして崩していく後半のようなサッカーをしていく。それが選手の中で判断できるようになっていかなければいけない」と石崎監督も言及したように、特に後半は主導権を持ってゲームを進めながら、持ち帰れる勝ち点はゼロに終わった山形でしたが、「拮抗しているのはわかっているので、勝ち負けの部分は紙一重」という南の言葉を持ち出すまでもなく、上位を狙える力を十分に有していることを証明する90分間だったと思います。あとは「ゴール前でのアイディアや精度はもっともっと上げていかないと」と指揮官も触れた最後の局面。今後の積み上げに要注目ですね。
ホームで勝ち点3をもぎ取った横浜で印象的だったのは2人のベテランの言葉。「山形が強いのはわかっていたから逆に楽しみだった。それぐらいこのチームがやれるなという手応えもあったから」と南が話せば、「ディエゴ選手は非常にクオリティの高い選手だし、そういう選手とマッチアップできるというのは喜ばしいこと」とはアン・ヨンハ。2人のプレーや発言からはこのレベルでの戦いに身を置ける喜びがヒシヒシと伝わってきました。とはいえ、最後に「2勝2分けと良い形で序盤のスタートを切れていると思うので、継続と少しずつ上乗せをしていかないと」と気を引き締めた南。『サッカーを楽しむ』ベテランが支える"ヨコハマ"が、今シーズンのJ2の中心部分へ着々と侵食し始めています。        土屋

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