mas o menos

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

最近のエントリー

カテゴリー

アーカイブ

2014/03

S M T W T F S
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年03月20日

ナビスコBグループ第1節 柏×浦和@日立台

mas o menos
  • Line

銀色に輝く聖杯を懸け、聖地で刃を交えてから4ヵ月と少し。一方は連覇を、一方はリベンジを誓い、再びトライするこの舞台。会場は10年ぶりの日立台です。
優勝候補との呼び声も高かった各方面からの下馬評とは裏腹に、迎えたリーグ戦はここまで2分け1敗と未勝利。システムや配置への戸惑いも選手から窺え、やや難しいシーズンの立ち上がりを強いられている柏。ディフェンディングチャンピオンとして臨むこの大会で初勝利を奪い、週末からのリーグ戦に勢いを付けたい一戦です。
リーグ連覇中の広島とアウェイで対峙した難しい90分間を制し、ここまでのリーグ戦は2勝1敗と上々のスタートを切った浦和。昨年からメンバーに大きな変化はなく、最後尾に加わった西川周作も問題なくスタイルにフィット。昨年はファイナルで苦杯を嘗めた柏をオープニングゲームで叩き、11年ぶりの戴冠へ弾みを付けるべくアウェイゲームに挑みます。会場は前述した通り、このカードでは実に10年ぶりの開催となる日立台。黄色に染まったスタンドの一角に、確かな存在感を放つ赤の一団。双方のサポーターが大声で自らのチームを後押しする中、浦和のキックオフでゲームはスタートしました。


ファーストシュートは浦和。3分、中央を原口元気が得意のドリブルで切り裂き、そのままクロスバーの上へ外れるミドル。6分も浦和。柏木陽介の左FKを李忠成が頭で残すと、こぼれを叩いた梅崎司のボレーはDFがブロック。7分も浦和。柏木が右から蹴り込んだCKに、槙野智章が合わせたヘディングは薄く当たってしまい枠の左へ。さらに9分も浦和。柏木の左CKにニアで阿部勇樹が飛び込んだヘディングはクロスバーの上へ。セットプレーも数多く獲得したアウェイチームが勢い良く立ち上がります。
リーグ戦未勝利という状況を受け、ここ3試合で採用していた4バックから3バックへと変更したネルシーニョ監督。「3バックはしばらくやっていなかった部分もあるし、細かい確認はミーティングでしかできなかった」と大谷秀和が話したように、どちらかというと守備面よりも攻撃面で序盤はなかなか感覚を掴めなかった様子。とはいえ、14分にはその大谷が左サイドの裏へ落としたボールを、走り込んだ橋本和はマーカーと入れ替わってカットインから右足でシュート。ここは西川がファインセーブで阻み、こぼれを狙った高山薫のシュートも西川がキャッチしましたが、左サイドから1ついい形を。15分にもやはり左サイドで橋本が縦へ入れたボールを、田中順也が巧みなトラップで縦へ運び、クロスは阿部がクリアしたものの、左サイドから創り出した2回のチャンス。
堂々たる中央突破がもたらした歓喜。沸騰したのは赤。17分、柏木の縦パスを李はワンタッチではたき、受けた宇賀神友弥は短いドリブルから思い切ってミドル。DFに当たったボールは左ポストを直撃しますが、こぼれにいち早く反応した梅崎が押し込んだボールは、菅野孝憲もわずかに及ばず、ゴールラインをゆっくりと越えていきます。古巣対決に燃える李のワンタッチフリックで勝負ありの感も。大サポーターを追い風に浦和がまずはスコアを動かしました。
さて、ビハインドを追い掛ける格好となった柏は「キャンプからずっとやってきたことを、試合をやりながら思い出してやっていた」と工藤壮人。ビルドアップ時は大谷が左SBの位置に落ちて、「4-1-4-1みたいな形」(大谷)で攻める中、システム的に空きがちな2列目に並ぶ"4" のアウトサイドが攻撃のキーマン。事実、20分には大谷を起点にレアンドロが右へ回すと、加速しながらマーカーを振り切った高山薫のフィニッシュは西川の正面を突きましたが、惜しいシーンを右WBが演出します。
とはいえ、大谷も「ああいうレベルの相手にやられることがあるのは仕方ないこと」と認めたように、攻撃のコンビネーションは浦和のスムーズさが上。28分には梅崎、原口、李と細かく繋がり、エリア内へ侵入した原口のドリブルは、近藤直也が決死のタックルで掻き出しましたが、33分にも右サイドで張った関口訓充が絶妙のコースと強さで梅崎へ。えぐった梅崎の折り返しに飛び込んだ原口のシュートは鈴木大輔がブロックしたものの、"らしい"アタックで虎視眈々と狙う追加点。
守備に追われる時間の長い2シャドーと1トップの距離も開いてしまい、なかなか攻撃の手数を繰り出し切れない柏の突破口はやはり"4"のアウトサイド。38分には工藤、田中と繋いで橋本が上げた左クロスへ、ファーで突っ込んだ高山のヘディングはクロスバーを越えるも、両アウトサイドでフィニッシュまで。41分に田中とのワンツーで左サイドを抜け出した橋本のクロスは永田充がクリアするも、イメージはしっかり共有。すると、1分後にデジャヴのようなシーンが。再び左サイドを田中とのワンツーで抜け出した橋本は丁寧に中へ。エリア内でのルーズボールにレアンドロとハン・グギョンが絡み、レアンドロがシュート体勢に入り掛けたタイミングで、柏木が後方からタックルを敢行すると、倒れたレアンドロを確認した岡部拓人主審はPKを宣告します。キッカーは田中。弾丸を籠めた左足を持つ男の選択は、西川を向かって左へ倒した上でのチップキックをど真ん中へ。「真ん中がGKも一番イヤかなと思って」という18番の冷静な同点弾。「前半で追い付けたことは後半の45分に向けても大きかった」と大谷。スコアは振り出しに引き戻されて、最初の45分間は終了しました。


後半はスタートから浦和に交替が。ネルシーニョ監督も「前半のワタルは途中から順也と絡みながら、単純なプレーだが相手の脅威になってクロスまで持っていった」と話したように、前半の終盤に同じ形で続けて2度自サイドを破られた関口に替えて、濱田水輝を右CBへ投入。森脇を右WBに上げる配置転換を施します。
「前と後ろが離れないというのは意識している」という大谷の話と共に、「4-4-2で少し距離感が空いたのもあって、3バックにしたことで前と中盤との距離は凄く縮まったかなと思う」と語ったのは渡部博文。ある程度は相手にボールを持たれる中でも、後半は前半よりコンパクトさを何とか堅持する柏。57分には槙野がゴールまで約25mの距離から枠へ飛ばしたFKは菅野がファインセーブで回避。60分にも原口、阿部と繋がったボールを一旦は奪った高山がロスト。阿部が至近距離から放ったシュートは、しかしここも菅野がファインセーブ。「ミラーゲームという五分の戦いをピッチ上で選手たちは見せてくれた」とネルシーニョ監督。保たれる均衡。続く膠着。
63分も浦和。槙野が左サイドを独力でぶっちぎって中へ折り返すと、最初のシュートをDFに当てた梅崎が、リバウンドを再び打ち切ったシュートは菅野がファインセーブで仁王立ち。70分も浦和。細かいパスワークが飛び出し、梅崎を経由したボールを原口がミドルレンジから狙うもわずかにクロスバーの上へ。72分も浦和。柏木の左FKに飛び込んだ濱田は頭に当て切れませんでしたが、手数の多さは浦和。赤一色のサポーターも人数以上に聞こえる国内屈指の大音量を夜空に轟かせ、負けじと黄色いサポーターも大音量で自らの戦士をサポート。会場のグングンと熱気を帯びていきます。
73分に菅野の素早いゴールキックから、田中が右足ミドルを枠内に飛ばし、ようやく後半のファーストシュートが記録されたホームチーム。とはいえ、「1-1だったし、焦ってリスクを負って行く必要もないのかなと個人的には思っていた」と振り返ったのは工藤。続けて「チームとしても行く所と行かない所はチーム全員で意識を統一して、やらなきゃいけないというのは監督もおっしゃっている」とも。"行く所"と"行かない所"のチーム内で共有された機微。
79分、驚異的な運動量で獅子奮迅の活躍を見せていたハン・グギョンが宇賀神と接触しながらボールカット。岡部主審のホイッスルは鳴らずに柏のカウンター。工藤がCKを奪うも、判定に不満の槙野は異議によるイエローカードを受けてしまいます。確かに微妙なジャッジでしたが、当然覆ることはなくCKでゲーム再開。キッカーの田中が左足を振り抜くと、そのボールを高い打点のヘディングで捉えたのは「セットプレーが鍵になると思っていた」渡部。揺れたゴールネットと黄色いサポーター。「今日は狙ってました」という今季公式戦初出場の23番が大仕事。後半2本目のシュートでスコアは引っ繰り返りました。
一転、ビハインドを追い掛ける格好となった浦和は、86分に宇賀神に替えてルーキーの関根貴大を投入。86分にDFに当たってコースの変わったハン・グギョンのミドルを西川がファインセーブで阻止すると、88分には梅崎と矢島慎也も入れ替え、若い力に同点への意欲を託します。
90分は浦和。左から柏木が上げたアーリークロスを関根がフリックすると、走り込んだ永田充のヘディングは枠に収まるも菅野がしっかりキャッチ。90+1分、エリア内右サイドでDFともつれた槙野が転倒すると、岡部主審はPKではなくシミュレーションと判断し、イエローカードを提示。既に1枚もらっていた槙野は退場処分を余儀なくされてしまいます。90+3分に交替出場したばかりの茨田陽生が決定機を逃し、90+5分に原口が枠の右へ逸れるボレーを放ち、程なくしてピッチへ響いたタイムアップのホイッスル。「失点するといつもちょっと良くない雰囲気になる所を、何とか引っ繰り返したという所はチームとしても評価したいなと思うし、この勝ちというのは相当デカいなと思う」と工藤も話した柏が、2014シーズンの初勝利をホームで収める結果となりました。


「私の見解を言わせてもらえば、我々の方がピッチの上ではベターなチームだと思っている」とペトロヴィッチ監督も話した浦和は、確かに強かったと思います。大谷も「相手も本当に力があるし、コンビネーションも2人目3人目と本当にスムーズにやってくる」と認めた通り、梅崎、原口、李の3人が織り成すコンビネーションは十分な完成度。やや判定に泣かされた印象もありましたが、リーグもナビスコカップも間違いなく頂点を狙える力を備えていることを証明する90分間でした。
「攻守のメリハリがハッキリしていたと思うので、3バックの形というのは少しずつまた見えてきたのかなと思う」(渡部)「また1つ3バックの戦い方という所の自信を付けた1試合だったと思う」(工藤)と2人が声を揃えたように、トータルでは劣勢の時間も長かった中、久々のシステムで勝ち切ったことが柏にとってポジティブな成果だったのは間違いありません。「守備の選手は我慢しながら守ってくれていたし、結果的にセットプレーの2点ではあるけど、それ以外でもチャンスは創れていたので、いい場面に目を向けながらやっていければいいのかな」と大谷。太陽王の逆襲はこの日立台からスタートします。          土屋

  • Line