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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
東京ナンバーワンを決める頂上決戦。シーズン最初の公式戦にして、シーズンで唯一都内での覇権を争う大会となる東京都クラブユースU-17選手権大会。ファイナルの舞台はもちろん西が丘です。
永遠のライバルとも言うべき東京ヴェルディユースとの"ダービー"を、「自分的にも気持ちが入っていて、負けたくなかったので気持ちがこもったゲームができました」と安部柊斗(1年・FC東京U-15)も納得の笑顔を浮かべる快勝で制し、3年ぶりにファイナルまで勝ち上がってきたFC東京U-18。「目標としてプレミア昇格と主要な全国大会は取りたいと言っていたので『頑張れよ』と(笑) 『日本一になるんなら、まずは東京一にならなきゃダメだな』と言いました」と佐藤一樹監督。まずは一冠目の凱歌を西が丘の地で上げるべく、最後の1試合に挑みます。
昨年は屈辱の"西が丘落ち"。とはいえ、高円宮杯プレミアリーグEASTでは3年連続残留を果たすなど、今やこの年代では間違いなく全国最強の街クラブと言っていい三菱養和SCユース。「昨年出ていて悔しい想いをしている子もいると思う」と山本信夫監督も話したように、1-4で敗れた1年前のリベンジをFC東京相手にきっちり果たし、2ヵ月後から始まるリーグ戦へ弾みを付けたい一戦です。第1試合から引き続き襲ってくる寒さの中、漲るのは両者の戴冠に懸ける気合い。注目の決勝戦はFC東京のキックオフでスタートしました。
いきなりスタンドを沸かせたのは養和。6分、左サイドに流れた下田悠哉(2年・三菱養和巣鴨JY)のピンポイントクロスを、ドンピシャで合わせたのは相馬勇紀(2年・三菱養和調布JY)。2シャドーが絡んだ決定的なチャンスは、しかしFC東京が今大会4人目の守護神として送り込んだ山口康平(1年・前橋FC)がファインセーブで回避。早くもハイレベルな攻防が繰り広げられます。
どちらかと言えば養和が瀬古樹(1年・三菱養和巣鴨JY)と伊東駿(2年・三菱養和巣鴨JY)のドイスボランチを中心にボールを動かす時間が長い中、先に歓喜の瞬間を迎えたのは青赤。11分、右サイドでボールを持った渡辺龍(2年・FC東京U-15深川)はそのままカットインすると、シザーズでマーカーを翻弄しながらそのままズドン。ニアサイドを射抜いた球体はゴールネットへ突き刺さります。「今は自分の良さをどんどん出せというような所。渡辺はああいうのが大好きな選手なので、まさに良さを出してくれた」と佐藤監督も認めた22番のゴラッソ。FC東京が1点のリードを奪いました。
均衡が破れてからも、しばらくは養和の流れは続いていましたが、20分過ぎからは「後ろを怖がらないで、とにかく近いヤツがボールに行くという習慣を今は付けている所」と佐藤監督も言及した"習慣"が確実に顔を覗かせ、いい形でボールを奪えるようになったFC東京が左右をきっちり使いながら手繰り寄せたゲームリズム。23分には左サイドを突破した蓮川雄大(2年・FC東京U-15深川)がそのままフィニッシュ。ボールは左ポストに激しくヒットしたものの、漂わせた2点目の香り。25分にも高橋宏季(2年・FC東京U-15むさし)が右から左足で放り込んだアーリークロスのこぼれを、佐々木渉(2年・FC東京U-15むさし)が叩いたボレーは枠の上に外れるも、一気に攻勢を強めます。
決して悪くなかった序盤から一転、なかなか攻撃の時間を創れなくなってきた養和。「スピード感がこっちに比べて攻撃守備両方で速かった」とは山本監督。本来は1つの持ち味である右の高橋瞭斗(2年・三菱養和巣鴨JY)と左の鯨井広夢(2年・三菱養和巣鴨JY)を生かしたサイドアタックも鳴りを潜め、中盤でボールを失う回数も増加。33分には下田が縦に付けたボールを、素早く反転したディサロ燦シルヴァーノ(2年・三菱養和巣鴨JY)がミドルを放つもクロスバーの上へ。同点弾とはいきません。
36分はFC東京。高橋のスルーパスに飛び出した安部が左から折り返し、蓮川のシュートはDFにブロックされるも、ボランチのパスにボランチが飛び出す果敢なアタック。37分もFC東京。高い位置でボールを回収した佐々木はヒールで落とし、蓮川のシュートはここもDFがブロック。40分もFC東京。1トップの長澤皓祐(2年・横河武蔵野FC JY)が狙ったミドルは養和GK畚野直柔(2年・三菱養和調布JY)にキャッチされるも、続けてシュートシーンを創り出します。
すると、チームに追加点をもたらしたのは頼れるキャプテン。41分、右サイドで獲得したCK。長澤が丁寧に蹴ったキックがファーサイドまで届くと、高い打点でヘディングを打ち下ろしたのはCBの大西拓真(2年・FC東京U-15深川)。ボールはバウンドしながら、ゴール左スミへ転がり込みます。先週はトップの香港遠征にも佐々木と共に帯同し、「表情が凄く良くなったというか、メリハリが多少付けられるような雰囲気にはなったと思う」と指揮官も評した大西の豪快な一撃。「前半帰って来た時点では、そこまで修正する所はなかった」と佐藤監督が手応えを口にした45分間は、FC東京の2点リードで終了しました。
後半のファーストシュートは養和。48分にディサロが右サイドへ振り分け、高橋が鋭いクロス。飛び込んだ下田のヘディングは枠の左へ外れましたが、前線の選手が有機的に絡み、サイドアタックからのフィニッシュという、本来やりたかったであろう攻撃の一端を立ち上がりのチャンスで披露します。
ただ、そのワンプレーも流れを大きく変えるまでには至らず。50分はFC東京。渡辺龍が右からクロスを上げると、佐々木のアイデア溢れるシュート性ラストパスは味方と合わず。同じく50分もFC東京。安部が左サイドで粘って粘って持ち込んだシュートは、DFが何とかブロック。54分もFC東京。左サイドで山岸瑠(2年・FC東京U-15深川)のパスを受け、巧みなワンタッチでマーカーと入れ替わった佐々木がそのままカットインしながら放ったシュートは畚野がキャッチ。55分には養和も右CBに入った小原拓磨(1年・三菱養和調布JY)のフィードから、相馬が粘り強く収めてシュートを打ち切るも山口がしっかりキャッチ。縮まらない点差。
3度目の咆哮は62分。最後尾でボールを持った大西はルックアップすると、ピンポイントのレーザービームを縦へ。ここに走り込んだのは3分前に投入されたばかりの佐藤亮(1年・FC東京U-15むさし)。浮き球を完璧なトラップで支配下に置くと、中へ持ち出しながら左足一閃。ボールは右のポスト内側を叩いて、ゴールの中に転がり込みます。「そんなに細かいことは口うるさく言っていないですし、ハーフタイムも選手同士で喋っている時間の方が俺より長いので、それを聞いて『ああ、ちゃんと俺よりお前らのほうがわかっているな』と思った」という指揮官の信頼に応える大きなゴール。点差は3点に広がりました。
64分にも大西の縦パスをスイッチに渡辺龍、佐々木と繋ぎ、長澤のスルーを経て、最後は枠を超えるも佐藤がフィニッシュを取り切る綺麗なパスワークまで披露された養和は68分、高橋のクロスに飛び込んだ伊東のヘディングもDFのブロックに遭うと、1人目の選手交替を決断。鯨井に替えて木脇次郎(2年・三菱養和巣鴨JY)を右WBに送り込み、高橋を左にスライドさせて小さくないビハインドを追い掛けます。
69分にはFC東京も1人目の選手交替に着手。貴重な先制弾を挙げた渡辺龍と大熊健太(1年・FC東京U-15深川)をスイッチ。大熊が1トップに入り、長澤が右SHへスライドすると、73分にも左から山岸の高速グラウンダークロスを引き出した佐々木のシュートはDFに阻まれるも、チーム全体で共有する4点目への強い意欲を隠しません。
突如として西が丘に吹き荒れた養和の嵐。75分、伊東を起点に後半はボールによく触っていた下田が左へ展開。1分前にピッチへ入ったばかりの宮島遼太(2年・三菱養和調布JY)がクロスを上げると、ボールはファーへ流れ、ディサロは再び中央へ。ニアで1人潰れた後ろで待っていたのは宮島。冷静に流し込んだシュートは、確実にゴールネットへ到達します。山本采配ズバリ。3-1。点差は2点に。
一気に畳み掛けたい養和。78分には伊東と多田大河(1年・三菱養和調布JY)をスイッチさせると、80分には瀬古が左から放り込んだFKがこぼれ、反応した木脇のヘディングはわずかにクロスバーの上へ外れるも、あわやというシーンにどよめくスタンド。「ちょっとスペースが空いてきた時には、攻撃も自分たちがいつもやっているような、外の選手と中の選手と両方うまく連動してという形が多少できてきた」と山本監督。午前中にU-13の東京王者に輝いた三菱養和巣鴨JYの選手たちが、先輩たちを応援する声にも一層篭もって来た熱量。残されたのは10分間とアディショナルタイム。
青赤を飲み込む養和の突風。87分、木脇が右サイドからフィードを送り、多田が丁寧に落とすと、ここに飛び込んできたのはディサロ。右足で打ち抜いたボールは力強くゴールネットを揺らします。「彼も去年は頑張っていても、なかなかチームの事情で交替でも出るチャンスがなかったので、今年は期するものがあると思うし、あれぐらいはやれる選手だと思う」と山本監督も言及したストライカーの追撃弾。すぐさまボールを拾いに行ったディサロ。3-2。点差はあっという間に1点に。
88分も養和。多田のパスをディサロが左へ回し、下田のシュートはDFが間一髪で飛び込み、こぼれを懸命に山口がキャッチしましたが、十分過ぎるほどに感じさせた得点の匂いに、西が丘を包んだのは何か起こってもおかしくない異様な雰囲気。佐藤監督は90分に高橋と柳貴博(1年・FC東京U-15深川)を交替させると、左SBとして途中投入した小山拓哉(1年・FC東京U-15むさし)をボランチへ送り込み、86分に投入した城ヶ瀧友輝(1年・FC東京U-15深川)と共に中盤を補強。最終ラインも相原克哉(1年・FC東京U-15むさし)と渡辺拓也(1年・FC東京U-15深川)の国体優勝メンバーに、大西、山岸で組む4枚が、何とかこのまま乗り切る覚悟をワンプレーワンプレーに滲ませます。
90+4分に交錯した悲鳴と歓声。右サイドでFKを獲得したのは養和。キッカーの瀬古が十分な助走から蹴り入れたボールは、美しい放物線を描いて中央へ。舞った多田は完璧なヘディングを枠内へ飛ばし、場内の誰もが同点ゴールを予感した瞬間、このボールをワンハンドで弾き出したのは今大会初出場の山口。試合中はややキックに安定感を欠き、ハーフタイムに「ボール蹴る時には"オマエシフト"になってるぞ」と佐藤監督からイジられたという守護神が、この土壇場で堂々たるビッグセーブ。そのCKと直後のロングスローも凌ぎ切ると、主審が吹き鳴らしたホイッスルは東京一への祝笛。FC東京が"We are Tokyo"を高らかに歌い上げる結果となりました。
最後は一歩及ばなかったものの、敵将も「養和さんにまた勉強させて頂いたなと思う」と言及するなど、終盤に"らしさ"は発揮した養和。山本監督も「最後まで諦めないことは、リーグ戦を戦う上で絶対に必要なこと」と話した通り、ここぞという場面での集中力と爆発力はさすがでした。山本監督によると、この日のスタメン11人中9人がジュニアからの選手とのこと。「ウチはジュニアのセレクションもスクールの子から採っているので、スクールも経験して、ジュニアも経験して、ジュニアユース、ユースということで、ウチで7年目や8年目の選手ばっかり」という積み上げは、確かにチームの雰囲気にも反映されています。「下から育てていく養和の良さ」(山本監督)と結果の共存は、常に強者へと義務付けられる宿命。今年の養和も非常に楽しみです。
「ハーフタイムにこういう試合展開にならないように気を付けろといったのに、その通りになっちゃって。僕の指導力不足かもしれないけど」と佐藤監督も苦笑したように、終盤は相手の追い上げに苦しんだものの、何とか逃げ切って一冠目を手にしたFC東京。「チームの一体感みたいなものは、勝つことで得られるものが大きいと思う。"勝った"という前提があれば、ブレずに次に色々なことにトライしていける」という指揮官の思惑通り、シーズン最初の公式戦で4つの勝利を積み重ねたことは、現在取り組んでいることへの自信にも大いに繋がったことでしょう。あとは「選手もこれでグッと次に向かっていけるような雰囲気に今はなっていました」という言葉に続けて、「だから選手に『まっすぐ家に帰れよ』とは言いましたけど」と笑う佐藤監督の明るさが、チームに与える好影響も無視できない所。"カズさん"と選手たちの大航海は、まだ始まったばかりです。
試合後の西が丘には青と赤があしらわれた2つの横断幕が踊っていました。1つは「俺たちのゆうこ」。FC東京のアンダーカテゴリーを担当されていたチーム広報の宮本裕子さんは、異動に伴って実はこの日が自身ラストマッチ。試合直後、ノートパソコン片手にピッチ脇で情報の更新作業に勤しむ姿からは、"子供たち"への大きな愛情が常に溢れていました。そんな彼女に贈られたサポーターからの感謝のシルシ。何とも青赤ユースサポーターらしい一幕だったと思います。
そしてもう1つは「常勝FC東京ユース カズさんと共にタイトルを」。これはこの4月から大学へと進学する3年生の"OB"、矢島輝一と鴨池陽希、そしてベンチに入っていた田宮碧人(2年・FC東京U-15むさし)の3人で作成したとのこと。先輩から後輩への贈り物として、こういうチョイスができるというのは何とも部活っぽくもあり、私は純粋に「いいなあ」と感じました。「今年は"FC東京U-18ファミリー"だという風に言い続けている」と佐藤監督が話したそのファミリー感は、当然サポーターやOBをも巻き込んで然るべきもの。"カズさん"を頂いた"ファミリー"としての大航海も、やはりまだスタートしたばかりです。 土屋
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