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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年02月03日

東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会決勝リーグ FC町田ゼルビアユース×杉並ソシオ@小野路

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onoji0202.jpg今大会初勝利を懸けた決勝リーグ最終戦。町田のJクラブと杉並の街クラブが対峙する舞台は、漆黒の丘に煌々と浮かび上がった小野路グラウンドです。
昨年の大会では東京ヴェルディユースに0-1で惜敗。今年の大会も初戦でFC東京U-18相手に、試合終了間際の決勝点で敗れたものの善戦を見せるなど、2大会連続で存在感を発揮しているFC町田ゼルビアユース。既に西が丘行きの道は絶たれてしまいましたが、「もう18歳でここのクラブを出るまでに時間がないヤツもいるので、もう1ヶ月2ヶ月過ぎていく間に、トップの強化部から『アイツを呼びたい』という選手を作り出さなくてはいけない」と竹中穣監督も言及した方針を掲げつつ、今シーズン最初の公式大会できっちり勝利を挙げておきたい一戦です。
合計34失点という屈辱の3試合から1年。「昨年に関しては大量失点からのスタートだったんですけど、そこの経験が今回生きたかな」と西野泰啓監督が話したように、今年は守備面に重きを置いた「いつものスタイルを少しチェンジした状況」(西野監督)で、東京Vに2-5、FC東京に1-4という2試合を経験してきた杉並ソシオ。このJクラブ相手に奪った3ゴールを自信に変え、決勝リーグのラストゲームに挑みます。試合開始前から小野路のピッチを包んだのは白い霧。町田サポーターのチャントも鳴り響く中、ゲームはホームチームのキックオフでスタートしました。
立ち上がりから押し込んだのは町田。4分にはFC東京戦でも先制ゴールを叩き込んだ大谷昭太(2年・SC相模原)が、枠の左へ外れる果敢なミドル。7分にはボランチのラインから飛び出したキャプテンの橋本拓哉(2年・ヴェルディSS相模原)が枠の右へ外れるミドル。8分にも入澤巧磨(2年・FC町田ゼルビアJY)が上げたクロスを、大谷が強引に飛び付いたバイシクルは枠の左へ。9分にも大谷が右へ流し、宮下峻輔(2年・FC町田ゼルビアJY)がグラウンダーで中に入れると、馬場悠(2年・FC町田ゼルビアJY)のシュートは杉並ソシオのGK保戸塚亮太(1年・練馬FC)がファインセーブで回避したものの、右の宮下、左の馬場と両ワイドも積極的に活用しながら、町田が主導権を完全に握ってみせます。
さて、「相手のシステムと中盤の人数に戸惑ってしまって、受身になったことで後手後手になってしまった」と西野監督も振り返った杉並ソシオ。15分には35m近いミドルを右SHの高瀬壮(2年・大宮ソシオU-15)が枠へ飛ばすも、町田のGK朝日良(2年・FC町田ゼルビアJY)がキャッチ。19分にも再び高瀬が枠内ミドルを放ちましたが、ある程度は「ブロックを創って守備をしましょうと」(西野監督)いう狙いの中でも、攻撃面での連動性は打ち出し切れません。
20分も町田。橋本がスルーパスを繰り出し、大谷がループで狙ったボレーはクロスバーの上へ。21分も町田。橋本が右へ振り分けると、宮下がここも絶妙のグラウンダークロスをファーへ送り届け、走り込んだ入澤のシュートは枠の左へ外れたものの、「あそこは1つチームのストロングだと考えている」と竹中監督も評価した宮下が右サイドを何度も切り裂き、相手をジワジワと自陣へ押し込めます。
歓喜のゼルビア。23分、シャドー的な位置の山田颯(1年・FC町田ゼルビアJY)が短く繋ぐと、橋本はミドルレンジから右足一閃。ゴール右スミを襲った軌道に、保戸塚も必死に飛び付きファインセーブで凌いだかに見えましたが、右ポストに跳ね返ったボールを、詰めた大谷が確実に押し込みます。完全なレギュラーではないというストライカーが、自身の存在を強烈にアピールする今大会2点目。ゲームリズムのままに町田が1点のアドバンテージを手にしました。
以降も続く町田のラッシュ。26分に左サイドを馬場がえぐり、蹴り込んだ折り返しは大谷へわずかに届かず。35分、橋本の右CKを飛田裕大(2年・FC厚木)が頭で押し込むも、ここはゴールライン上でDFが何とかクリア。39分にも山田を起点に馬場が左からマイナスへ戻すと、飛田のミドルは枠の右へ。「ウチがボールを奪いに行くという所で相手の顔が上がらなくなって、結果的にボールを持った時に相手の隙間が広くあったので、そんなに苦労せずにボールを動かせた」と竹中監督。本来の"町田スタイル"が小野路のピッチで解き放たれます。
すると、次に輝いたのは「トレーニングで良かったので使った」(竹中監督)という初スタメンの1年生。40分、飛田の鋭いスルーパスから抜け出した馬場はフィニッシュを取り切ると、ここも保戸塚が懸命に弾き出したものの、リバウンドに反応した山田は難しい高さのボールをボレーでゴール右スミへ流し込みます。「うまいこと間に入ったし、うまいことランニングしたし、彼がうまいことチームの中に入ってきて、できるというのが見えた」と指揮官も認めた山田のファインゴール。点差が開きました。
止まらない町田の歌声。44分、中盤から繰り出された1本のスルーパスに、抜群の飛び出しで反応したのは入澤。GKの位置を見極めたレフティの選択は、インフロント気味に打ち上げたループ。ゆっくりとゴールネットへ弾み込んだ球体。竹中監督も「"止める、蹴る"がチームの中で一番きっちりできるので、ここの所はずっといいですね」と言及した入澤の大きな大きな追加点。「前半はこれぐらいはやってくれるだろうなというものを今日は見せてくれた」と竹中監督も納得の45分間。町田が3点をリードして、ゲームはハーフタイムに入りました。
「どんどん相手が前に出てきて押し込まれてしまう悪循環になってしまった」(西野監督)杉並ソシオの反撃は後半開始早々。47分、藤田昇平(1年・大宮ソシオU-15)を経由してキャプテンの田村楓(2年・大宮ソシオU-15)はエリア内へ侵入。目の前にはGK1人という状況で、田村は後方からのタックルで倒されましたが、意外にも主審はノーホイッスル。これには杉並ソシオベンチも色めき立ったものの、判定は当然変わらず。ただ、このワンプレーが劣勢の彼らに火を付けます。
52分も杉並ソシオ。ピッチ左、ゴールまで約30mの距離から1トップの菊地直人(2年・成立学園高)が直接狙ったFKは、高速で枠を捉えるも朝日がキャッチ。54分も杉並ソシオ。ケガから帰ってきた高橋将太(2年・国学院久我山高)が左へ展開し、SBの内藤優太(1年・大宮ソシオU-15)は丁寧にクロス。高瀬のボレーは枠の右へ外れましたが、にわかにアウェイチームが攻勢を強めます。
「後半は相手が凄く高い位置からプレスに行って、非常にコンパクトに来た」と感じた竹中監督は55分に1人目の交替を決断。ボランチの飛田に替えて、三好亮輔(2年・ARTE八王子FC)をピッチへ送り出し、中盤での主導権奪還に着手。56分には宮下が右からカットインを敢行し、枠へ収めたミドルを保戸塚が丁寧にキャッチしたシーンが、後半のファーストチャンス。押し戻せない流れ。
61分には杉並ソシオの流れるアタック。ドイスボランチの一角を占める鈴木雄介(1年・大宮ソシオU-15)が右サイドへ流し、開いた菊地はグラウンダーの高速クロス。全力で走り込んだ田村より一瞬早く朝日がキャッチしたものの、一気に漂い出したゴールの予感。「後半は前に出たと思うが、あれが我々の本来のスタイルで、あっちの方が戦い慣れている」とその好リズムを説明したのは西野監督。小さい応援団長の声にも篭もった熱量。混戦の1次リーグを抜け出してきた理由を、少しずつ見る者に証明し始めます。
町田は64分に馬場と池本よしき(1年・エスペランサ)をスイッチするも、「怖がらずにボールを自分たちで持つようになってくれた」と西野監督も言及した相手のアタックに対して、逆に後手を踏む格好に。時折山田や入澤をスイッチにカウンターの萌芽は見えかけるものの、右から高野隼生(1年・大宮ソシオU-15)、高橋隆太(1年・杉並学院高)、小栗健介(2年・九段高)、内藤で組んだ杉並ソシオの4バックも、"攻撃のための守備"がより明確に見えてきた展開の中で、一層研ぎ澄まされた集中力。74分には町田も山田が左へ振り分け、池本が縦にフリーで抜け出すも、勇敢に飛び出した保戸塚がビッグセーブで阻止。もはやピッチの半分以上を覆った幻想的な霧のカーテンが、残された15分間をより印象深いものにしようと雰囲気を演出します。
76分に竹中監督が着手したのはシステムチェンジ。「単純にウチの3バックに相手の3枚が出てきたので、立ち位置で整理させちゃおうかなと思って」、3バックの左を務めていた石田仁志(2年・FC町田ゼルビアJY)に替えて、小池万次郎(1年・FC町田ゼルビアJY)を最終ラインへ送り込み、スタメンの宇田川輝(2年・帝京中)に岡村安浩(2年・FC GIUSTI世田谷)と4バックを形成し、終盤に向けて守備面の整備に取り掛かります。
77分は杉並ソシオ。田村がボレー気味に打ち切ったミドルはクロスバーの上へ。81分は町田。三好のシュートは枠内を襲うも、保戸塚がキャッチ。83分は1枚目の交替カードとして小林宏樹(2年・大宮ソシオU-15)を投入した杉並ソシオ。高い位置で田村がボールを奪い切り、ラストパスは菊地へ届くも、フィニッシュは朝日の正面。スコアは3-0のままで、いよいよゲームは最終盤へ。
諦めない杉並の雄。90分、おそらくは最も諦めていなかった田村が、左サイドでボールを持つと挑んだドリブル勝負。1人抜き、2人抜き、3人目に突入すると、田村の足をDFが引っ掛け、今度は主審もペナルティスポットを指し示します。キッカーはもちろん田村。霧にけぶるゴールを見定め、力強い助走から右スミを狙って蹴ったキックは、しかし朝日が完璧に読み切ってキャッチ。守護神の堂々たるプレーで、最後まで自らのゴールに鍵を掛け切ったホームチームに軍配。「やってきていることを、選手たちが自発的にやってくれているというのが一番の収穫」と竹中監督も話した町田が、最終戦の勝利で来年のシード権も獲得する結果となりました。
結果として決勝リーグは3戦全敗に終わった杉並ソシオ。それでも、昨年の3試合から失点は3分の1近くに減少し、東京VにFC東京とJクラブ勢からゴールを奪うなど、傍から見れば大きな成果を手にしたように見えました。ところが、西野監督は「守備に関しては選手たちが良く考えて頑張った」と認めながら、「攻撃面で自分たちの良さをもっと出せたと思う」とやや不満顔。いつもは攻撃に重きを置く中で守備の意識も持たせて戦った今大会は、「守備の考え方は変えたけど、攻撃の考え方は全然変えていないので、相手のフィジカルが高くなったり、相手が強くなったりするとその攻撃が出せないのは厳しい。そこはもっとチャレンジさせてあげたかった」のだそうです。なるほどなと。指揮官が納得し切れていない理由に、その言葉を聞いて私は納得しました。
「もちろん細かいことを言えば要求しなくてはいけないことがたくさんあるが、全体像としては前半はまあまあだった」(竹中監督)にも関わらず、一転して後半は押し込まれる展開を強いられた町田。それでも朝日や岡村を中心にゼロで凌ぎ切ったことは、十分評価していいポイントだったのではないでしょうか。「育成のクラブという所を確立していくためにも、この子たちと来年上がってくる中学3年の子たちが、かなり重要な今後のクラブの方向性を決めてくる人間たちだと思うので、毎日真剣に向き合っていきたいなと思います」と決意を口にしてくれた竹中監督。この日は濃霧に包まれた彼らの視界が、これからどう開けていくのかは要注目ですね。         土屋

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