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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年02月23日

FUJI XEROX SUPER CUP 2014 広島×横浜FM@国立

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xerox 0223.jpg球春を告げる2月の一戦は元日のリターンマッチ。今年もやってきたおなじみの"ゼロックス"。舞台は改修前のラスト開催となる国立競技場です。
一旦はその行く末が閉ざされたように見えたものの、最後の2試合を粘り強く戦った先に待っていたのは堂々たるリーグ連覇。今や名実共にJリーグを代表する強豪クラブになりつつあるサンフレッチェ広島。GKには林卓人、中盤には柴崎晃誠、サイドには柏好文と、堅実かつ的確な"らしい"補強はさらなるステップアップへの基礎固め。まずは「シーズンの一つの大きなタイトルだと捉えている」(森保一監督)この大会の連覇で元日のリベンジを果たし、来週開幕のACLへ良い形で繋げていきたい90分間になります。
ほとんど手中に収めかけていたリーグタイトルは逃したものの、天皇杯ではその雪辱を果たす格好で久々にカップを聖地で掲げた横浜F・マリノス。今シーズンの目指すべき頂は、言うまでもなくリーグでの戴冠。中盤のラストピースとして獲得した藤本淳吾も早速スタメン出場を果たしており、2014年の"2勝目"を同じ相手から奪い、こちらも4日後に控えたACLを高いモチベーションで迎えたい一戦です。改修までカウントダウンに入った国立を埋め尽くす、ワールドカップイヤーのJリーグ開幕を待ち切れない観衆はなんと41273人。佐藤隆治主審の笛が鳴り、広島のキックオフで時計の針は動き出しました。


わずか8秒で創った決定機。キックオフで下げたボールを青山敏弘は左へピンポイントフィード。清水航平はダイレクトで落とし、スタメン起用された野津田岳人が中央へ送ると、ここにはフリーで走り込んだ石原直樹が。左足のシュートは枠を外れてしまいましたが、いきなり完璧な形からフィニッシュまで持ち込み、「入りはアグレッシブにいこうと話していた」(森保監督)狙いを広島が早々に体現して見せます。
3分にもミキッチが右のハイサイドで仕掛けて獲得したCK。野津田のキックを石原がニアでフリックすると、DFが何とかクリア。同じく3分にも青山が1本のロングフィードを絶妙のポイントへ落とし、中澤佑二と入れ替わった佐藤寿人のシュートは横浜GK榎本哲也が何とか体に当てたものの、長いボールとサイドアタックを巧みに使いながら一気に引き寄せた主導権。
すると、スタンドを揺さぶる先制点は長いボールとサイドアタックの合わせ技。6分、塩谷司はロングフィードを右サイドへ。受けた石原は対面のドゥトラをあっさり置き去り、そのままグラウンダーでクロス。ニアで佐藤が潰れると、しっかり入ってきていたのは野津田。「後ろからプレッシャーが来ていたのでちょっと焦っちゃった」シュートはやや浮きながらも、しっかりとゴールネットを捕獲します。「寿人さんならしっかり後ろに流してくれるかなと信じて」待っていた19歳の貴重な先制弾。ゴール後には急逝されたクラブスタッフの方に捧げる意味で、喪章を天にかざしたイレブン。ゲームリズムそのままに広島が1点のアドバンテージを手にしました。
勢いは完全に広島。9分、青山がクイックで始めたFKから、石原がシュートまで持ち込むと何とか富澤清太郎が体でブロック。10分、中盤のルーズボールを拾った青山のミドルはゴール右へ。直後にも青山のパスから、野津田が果敢に狙ったミドルは榎本が何とかキャッチしたものの、「相手の嫌がる所をどんどん突いていこうと思ってプレーした」という石原と野津田の2シャドーが躍動し、リーグ王者の時間帯が続きます。
さて、15分に相手のクリアを奪った齋藤学が枠の左へ外れるミドルを放ち、ようやくファーストシュートが記録された横浜。天皇杯では1トップで好パフォーマンスを披露した端戸仁も、「自分の所で孤立してしまった」と言及。「決して前からガンガン奪いに行くという形ではないが、これまでよりボールホルダーに対してプレッシャーを掛けて、周りが連動するというのは今日の試合でできたかなと思う」と森保監督も振り返った広島の組織的なプレスに苦しみ、18分には左サイドで齋藤が鋭い突破から上げたクロスは、ゴールまで完全にフリーとなった藤本まで届くも、「手前でバウンドして難しかった」ボレーはわずかにゴール右へ。数少ない決定的なシーンもモノにできません。
樋口監督が話した「特に前半の20分はウチが戸惑って失点して、ピンチが連続した」という展開に結び付いた、いくつかある要因の中で興味深かったのは"残像の副作用"。「広島が昨年より全体として前で守備をするという印象を今日は持った。これが今シーズンの広島のスタイル」とは樋口靖洋監督。これに対して「おそらく樋口さんの印象では元日と今日がまったく違う印象だったと思うけど、メディアの皆さんに訴えて欲しいのはあのスケジュールがどうだったのかという所」と森保監督。広島は天皇杯で準々決勝、準決勝とただでさえ過密日程の中で、共に延長戦とPK戦を経験。「そこを言い訳には選手もしていなかった」と前置きした森保監督も、「元日の試合も前から行こうとしていたけど、行きたくてももう動けないという状況だった」と振り返っています。
2ヶ月後の国立。横浜は雪の影響で「練習試合が中止になり、先週末に1人90分やらせたいと思っていたがそれができず、フィジカル面を上げられなかったことに繋がったかもしれない」と樋口監督。対照的にしっかりトレーニングを積み、トレーニングマッチも経験してきた広島は、「天皇杯も今日も入りはアグレッシブにいこうと話していたし、それは変わりなかった」(森保監督)にもかかわらず、コンディション面の違いが元日とのギャップを生み出す格好に。それが広島の攻守両面における前への推進力となり、2ヶ月前に体感した"残像"との相違で横浜を後手に回らせたのかなという印象を受けました。
さらに2ヶ月前ともう1つの相違となった、野津田の存在はその後もピカイチ。22分には水本裕貴のパスを引き出すと、佐藤へ鋭いパスを。1人外して放ったエースのミドルは榎本がキャッチしましたが、24分にも千葉和彦の強いクサビを野津田はダイレクトの左足アウトでラストパス。石原はシュートまで持ち込めなかったものの、19歳のレフティが国立の空間を我が物顔で支配してみせます。
横浜も27分には久しぶりのチャンス。中村が右から蹴ったFKが中央にこぼれ、最後は栗原のボレーが枠の右へ大きく外れましたが、このワンプレーで広島サイドにアクシデント。清水が接触で脇腹を痛め、プレー続行が不可能に。早くも1枚目のカードとして山岸智の投入を余儀なくされてしまいます。
ここからわずかに変わった流れ。32分は横浜。左から中村が30m弱の距離を直接狙ったFKはカベに阻まれるも、その流れから中澤が粘って頭で右へ。巧みに縦へ持ち出した藤本の折り返しを栗原が狙うと、ここは塩谷と千葉が体を投げ出してブロック。34分には中村の左FK、37分には中村の左CK、40分には中村の右FKと、いずれもシュートには繋がりませんでしたが、セットプレーを連続して獲得し、相手ゴール前を脅かします。
「ワントップが結構流れるから、人数を掛けながら少しずつ進んでいくのがベスト」という藤本の言葉通り、齋藤という飛び道具を生かしながら、徐々に中村のボールタッチも増えた横浜のリズム。41分には広島も相変わらずキック精度が冴え渡る青山のフィードに、栗原と競った佐藤はあわやという抜け出しを見せましたが、44分には齋藤の突破から横浜にFK。右サイド、ゴールまで約25mの距離から藤本が蹴ったボールはわずかにクロスバーの上へ。45+1分には端戸のチェイスで右FK、そのこぼれから右CKとここも中村が連続してセットプレーを。スコアこそ変わりませんでしたが、終盤は横浜が少し意地を見せる格好で最初の45分間が終了しました。


ハーフタイムを挟むと、「前半の流れは良かった。後半もあわてずに続けていこう」と森保監督に送り出された広島の勢い再び。47分には青山が左へ展開し、山岸がショートドリブルからクロス。石原はオフサイドになりましたが、いきなりサイドアタックからチャンスの芽を。50分にはミキッチのパスを受け、絶妙のフェイクで反転した石原が右サイドを独走。これまた絶妙の折り返しは佐藤へ届くも、右足のシュートは榎本がビッグセーブで回避。52分にも石原を起点にミキッチが右サイドを切り裂いて中へ。最後は青山の枠へ収めたミドルがゴールネットを揺らし、新キャプテンのバースデーゴールかと思われた直後、越智新次副審はシュートをよけた佐藤がオフサイドという判定。やや微妙な判定で追加点とはいきませんでしたが、「うまく周りも見えていた」という石原がことごとくチャンスに顔を出し、広島がゲームリズムを完全に奪還します。
59分には横浜に好機。齋藤の横パスを藤本はダイレクトで裏へ。走り込んだ端戸の左足ダイレクトボレーはよく戻った塩谷のブロックに遭ったものの、「淳吾さんとも絶対フィーリングは合うと思っている」という自らの言葉を証明するようなワンプレー。天皇杯に続いて1トップに起用された23歳が演出した惜しいシーン。
ほとんど同時に動いた両ベンチ。59分は森保監督。佐藤に替わって送り出されたのは、「1年間チームに慣れることを優先してコツコツやってきたが、やっぱりそのままじゃダメなので1年間培ってきたものを爆発させるのが2年目」と今シーズンへの覚悟を口にした浅野拓磨。60分は樋口監督。序盤から苦しい守備対応を強いられていたドゥトラと端戸を下げて、下平匠と矢島卓郎の2枚替えを敢行。新加入選手にペースチェンジの役割を託します。
60分は横浜。中村の左CKを中澤が頭で狙ったシュートは広島のGK林卓人がキャッチ。63分も横浜。中村の左FKは相手のクリアに遭うも、そのこぼれを小林祐三はDFラインの裏へ好フィード。潜った中町のヘディングは枠を越えるも、ダイナミックなチャレンジ。65分も横浜。齋藤と矢島が相次いでエリア内で仕掛け、こぼれたボールを富澤が叩いたミドルは枠を大きく外れるも、着々と上がるトリコロールのボルテージ。
10代の煌き、再び。ミキッチとファン・ソッコが交替した直後の66分。右サイドで青山からボールを引き出した野津田は「拓磨が走っているのが見えたし、彼が裏に抜ける動きはいつも見逃さないように意識していた」と右足で最高のスルーパス。「非常にシュートを打ちやすいボールを出してくれた」と振り返った浅野は、中澤の背後をパーフェクトに取ると、そのまま右足一閃。完璧なスルーパスと完璧な抜け出しと完璧なフィニッシュ。「オフ・ザ・ピッチでも凄く仲良くしていて、ピッチの中ではいいライバルでいいコンビ」(浅野)という2人の19歳で取り切った大きな追加点。点差は2点に広がりました。
手の付けられない"三本の矢"。69分、中盤のルーズボールを浅野はダイレクトで裏へ。中澤に競り勝った石原はGKと1対1になるも、榎本は仁王立ちでビッグセーブ。こぼれを押し込みたかった野津田のシュートもクロスバーの上に外れ、思わず森保監督もテクニカルエリアで後ろ向きに倒れてしまいますが、前線の3人で披露した綺麗なフィニッシュワーク。72分、塩谷が右へ送り、ファン・ソッコのクロスに走り込んだ浅野のヘディングは枠の左へ。75分、カウンターから石原が右へ付けると、野津田が思い切りよく狙ったミドルは右のポストにハードヒット。「あの2人からはゴールに向かう気持ちだったり、点を取りたいという貪欲さは凄く伝わってくるので、それがチームにいい影響を与えていると思う」と19歳コンビを称したのは、佐藤の交替後からその2人を最前線で牽引した石原。"新・三本の矢"が聖地に詰め掛けた観衆を唸らせ続けます。
76分には横浜も途中出場となった兵藤慎剛のパスから、中村がミドルを狙うもクロスバーの上へ。逆に80分は広島の流れるようなアタック。青山、石原、野津田とパスが繋がり、青山が右へ付けると、1人外して左足で打ち切ったファン・ソッコのシュートは枠を越えるも、見事な崩しでフィニッシュまで。82分にも青山が裏へ落としたボールを、浅野は枠の左へ外れる左足ダイレクトボレーにトライ。攻守に渡って持ち味を存分に発揮し続ける広島。見せ付ける磐石の態勢。
85分に中澤が左のハイサイドにフィードを送り届け、うまく裏を取った下平がフリーで放ったループ気味のボレーが枠の上へ外れると、それが横浜の放ったラストシュート。「これまでの4週間の練習の中でやってきたことが、今日の試合の中で出せたかなと思う。幸先のいい今シーズンのスタートを切れた」と森保監督も納得の表情を浮かべた広島が、完勝に近い内容で元日のリベンジを達成。大会連覇に輝く結果となりました。


「ゲームについては、正直スコア通りの内容だったかなと思っています」と樋口監督も素直に認めた横浜は、なかなかいい所を出し切れないままに90分間が経過してしまった印象です。特に「球際の所の強さと、セカンドボールの所でほとんど取られていた」と兵藤が指摘したベーシックな部分での差が、顕著に現れてしまったように見えました。ただ、懸念材料だった1トップに関しては、前述したチーム全体のパフォーマンスと関連付けて考える必要が。「自分のプレースタイルとして周りの選手との関係が凄く大事になってくる」と話す端戸も、天皇杯決勝のパフォーマンスを振り返れば状況によって十分機能するはず。「FWの軸というのは、点を取ればいいのではなく、ゲーム全体の流れを創る意味で前で収まるとか起点になれるとか、そういう面が必要となる」とは樋口監督。誰を起用するのか、そこにどう周囲が連動するのかは、伸びしろとして今後注目していきたいポイントです。
19歳の2人が揃ってゴールを記録し、新時代の到来すら予感させる勝利を手に入れた広島。森保監督も「他の頑張っている若手にも良い刺激になったと思いますし、『やれば必ずうまくなるんだ』『結果を出せるんだ』ということを信じてやってもらえるいい道標になるような結果を2人が出してくれたことが、僕としては非常に嬉しい」とその波及効果にまで言及。シーズン全体で考えても、非常にポジティブな1勝だったと言っていいでしょう。ただ、個人的にこのゲームのMVPを挙げるなら、迷うことなく石原。先制のアシストはもちろんのこと、あらゆるチャンスに顔を出しながら、守備面での貢献度も高いというスーパーな働きは圧巻の一言。巧みなターンから前を向くシーンが目立ったことを問われると、「もともと自分が得意なプレーというのはそういう部分。今まで広島らしいワンタッチで崩したりというのに囚われていた部分もあったが、自分の中で選択肢が増えたので良い状況判断ができればああいうプレーができると思う」と話しつつ、「また自分も良くなっているなと思います」と手応えも掴んでいる様子でした。残された時間は3ヶ月ですが、是非ザックジャパンでも試してみて欲しい選手の筆頭だと私は思っています。          土屋

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