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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年02月16日

第20回ちばぎんカップ 千葉×柏@フクアリ

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chibagin0216.jpg4年に1度の"世界三大カップ"揃い踏み。1年間に渡って「リアルちば」の称号を掲げ続けるのは果たして。記念すべき20回目を迎えたちばぎんカップ。今年の舞台はフクダ電子アリーナです。
今年こそはとクラブの命運を懸けて臨んだシーズン終焉の地は徳島。2年連続となる昇格プレーオフ敗退を余儀なくされ、5年目のJ2へと突入することになった千葉。以前から抱えているリーグ屈指の陣容から絶対的な主力に成長した米倉恒貴こそ移籍したものの、天野貴史や中村太亮といった即戦力をピンポイント補強。昨年同様に柏を返り討って、シーズンへの弾みにしたいゲームです。
ACLではJリーグ勢としても久々となるベスト4進出。ナビスコカップはエース工藤壮人の決勝ゴールで14年ぶりに国立の地で戴冠を果たしたものの、リーグ戦は11位とやや奮わない結果に終わった柏。今シーズンは昇格、即優勝を成し遂げた2011年以来となるリーグタイトルが最大の目標。レアンドロ、ハン・グギョン、高山薫など、計算できる実力者を迎え入れ、まずは今シーズン初タイトル獲得をアウェイの地で目指します。試合前には柏サポーターが相手仕様の"ダービーチャント"を歌うも、千葉サポーターからリアクションを戴けず。それでも諦めない柏サポーターがなりふり構わず"おもちゃのチャチャチャ"や"野球拳"を繰り出すと、とうとう千葉サポーターも"野球拳"で満点回答、といった心温まる交流も生まれる中、12254人の大観衆を集めるなど、プレシーズン以上の熱さを誇る一戦は柏のキックオフでスタートしました。
先にいい形を披露したのは柏。4分、大谷秀和を起点に工藤が絡み、大谷は左へ鋭いスルーパス。橋本和のクロスは千葉のGK高木駿にキャッチされたものの、大谷の攻撃参加がフィニッシュの一歩手前まで。7分にも中央やや左、ゴールまで20m強の位置からレアンドロ・ドミンゲスが直接狙ったFKは、カベに当たってわずかにゴール右へ外れましたが、このFKを獲得したのも積極的にエリア付近まで上がってきた栗澤僚一。「相手のボランチを1枚剥がせばチャンスになるし、セカンドの奪い合いで勝てばより相手の陣地でプレーできるので、そこは意識して入った」(栗澤)というドイスボランチの積極性で、まずは2つのチャンスを生み出します。
14分の好機も柏。橋本のパスをレアンドロ・ドミンゲスは右へサイドチェンジ。受けた工藤は右にはたき、上がってきた高山のクロスはDFのクリアに遭うも、幅を使って絡んだ2シャドーに高山も関与するアタックを。直後の右CKをレアンドロ・ドミンゲスが蹴り込むと、こぼれを高山が果敢にシュート。最後は工藤がオフサイドを取られましたが、高山が続けてチャンスに顔を。16分には相手のビルドアップに猛然と向かった橋本が高い位置でカットすると、そのまま左クロス。ファーで収めたレアンドロ・ドミンゲスのシュートは山口智にブロックされるも、高山に負けじと橋本も意欲を前面に押し出し、柏の時間が続きます。
さて、「立ち上がりから柏のスピードとパワー、奪ってからの速い攻撃に構えることが多く、切り替えの所が遅くて押し込まれるシーンが多かった」と鈴木淳監督も振り返った千葉は、1トップのケンペスやその下に入る町田也真人、兵働昭弘にもボールが入らず。時折SBの中村太亮と古巣対決となるSHの山中亮輔で組んだ左サイドは可能性を感じさせるものの、中村は「もうちょっと前に行って欲しいなという印象はあった」と鈴木監督も言及したように、ボールはある程度引き出す中で、その受ける位置自体はやや低く、サイドをえぐり切るようなシーンまでは到達せず。20分にはルーズボールを拾った天野が30m近いミドルでファーストシュートを記録するも、柏のGK菅野孝憲がしっかりキャッチ。なかなかフィニッシュの形を創り切れません。
22分には柏の"らしい"高速カウンター発動。3バックの中央を務める近藤直也がさすがのクサビを縦へ。収めたレアンドロ・ドミンゲスのパスを、レアンドロがダイレクトで好リターン。前を向いたレアンドロ・ドミンゲスが短いドリブルから繰り出した浮き球ループは、絶妙の軌道を描きながらクロスバーにヒットしましたが、"Wレアンドロ"の競演であわやというシーンを創出します。
ただ、ゲームは30分前後から膠着状態に。「お互いが守備をちょっと前目から行っていたので、ロングボールが増えたかなという印象はある」と栗澤が話せば、「ビルドアップの時には安定性をちょっと欠いてしまった」とネルシーニョ監督。リズムを掴んでいたように見えた柏も、1トップに入ったレアンドロの生かし方にまだ迷いが見られ、相手のプレスを前にややアバウトなボールを放り込んでは跳ね返されるシーンも。一方の千葉は「ビルドアップの時にボランチの選手が下がり過ぎて、なかなか効果的なボールの動かしができなかった」と鈴木監督。
31分は柏。大谷、橋本と回し、左へ開いた工藤のクロスはレアンドロと合わず。37分も柏。高山が右のハイサイドへ落とし、流れたレアンドロのクロスもDFがクリア。41分は千葉。ようやく高い位置までオーバーラップしてきた中村の左クロスを兵働が丁寧に落とすも、わずかにボールがズレてケンペスはシュートまで持ち込めず。43分も千葉。中村の左FKをケンペスが頭で合わせるも、菅野が確実にキャッチ。千葉も少しずつチャンスを創ります。
先制弾は意外な形から。45分、相手からプレスを掛けられた鈴木大輔はクリア気味に右からフィード。ボールは千葉のCB大岩一貴がトラップしたものの、このボールをかっさらったのは逆サイドから絞っていた工藤。予期せぬ略奪者の来襲に、大岩も粘ってリカバーしようと体を寄せ、一端は「ゴールから距離が離れてしまった所」に追い込まれた9番でしたが、角度のない位置から絶妙のタイミングでシュートを放つと、フワリと揺れたゴールネット。「DFの足を出すタイミングや、GKの予測するタイミングをうまく外して決められた」と自ら振り返るゴラッソ。「ああいうのは絶対になくさなきゃいけないかなと。時間帯を考えても絶対にやっちゃいけないこと」と敵将も嘆いたエースの一撃で柏が1点のリードを奪い、最初の45分間は終了しました。
後半のファーストシュートは千葉。開始早々の46分、左へ展開したボールを山中が放り込み、こぼれを叩いた山口慶のボレーはクロスバーの上へ外れましたが、同点への意欲を発露。48分は柏。大谷とのワンツーからレアンドロ・ドミンゲスは、狭いスペースを通す極上スルーパス。高山の折り返しは弱く、シュートには繋がらなかったとはいえ、こちらも追加点への意欲をきっちりと滲ませます。
57分には千葉に決定機。左サイドでボールを持った中村は、最高の強さと軌道でDFラインの裏へ。潜った町田の反転ラストパスからケンペスが枠へ飛ばしたシュートは菅野が何とかキャッチしましたが、新加入の中村が「左足からトップの所へのクサビや、背後へ落とすのは絶妙なボールを蹴れる」と指揮官も評価した部分を、フクアリデビュー戦でサポーターにアピールして見せると、58分に動いたのは鈴木監督。右SHの兵働を下げて、背番号も11に変わった森本貴幸を投入。4-2-3-1からケンペスと森本の2トップを頂く4-4-2にシフトして、ゴールへフォーカスした采配を振るいます。
「後半になって改善はできた」とネルシーニョ監督も言及したように、前半途中からバタついた感もあったビルドアップに関しては、最終ラインからもWBやボランチにボールが付き始めた柏。右サイドは「ドミンゲスが疲れてくるとなかなか付けない」(栗澤)こともあって、中村と山中に崩されかける場面も出てきましたが、「逆にそこから奪った方がチャンスはあるという感じ」と栗澤。実際にその逆サイドに当たる左サイドは相変わらず優勢。59分には橋本が工藤との連携から左サイドを崩し、マイナスの折り返しはレアンドロ・ドミンゲスが打ち上げるもフィニッシュまで。66分もやはり工藤とのワンツーで左サイドを抜け出した橋本がクロスを上げると、高山がワンタッチで落とし、レアンドロ・ドミンゲスのシュートは山口智がブロック。こぼれに飛び付いた工藤のヘディングは枠を越えるも、「ワタルのサイドから最後まで行くシーンが多かった」と栗澤も話したように、左の優位性が漂わせる追加点の気配。
ところが、次に決定的なチャンスを手に入れたのはホームチーム。67分に森本の枠内シュート、68分に町田と田中佑昌の交替を挟んだ73分、左から山口慶がクロスを入れると、ケンペスが工藤ともつれて転倒。ボールはそのポイントまで届いていなかったものの、福島孝一郎主審はPKを宣告します。納得のいかない柏の選手たちでしたが、当然判定は覆らず。キッカーは昨シーズンのJ2得点王。左スミを狙ったキックに、菅野の読みは逆サイド。目の前のネットを揺らしたゴールに沸騰するサポーター。ケンペスの同点弾でスコアは振り出しに引き戻されました。
ネルシーニョ監督も74分に決断。やや足を痛めた橋本とスイッチするのは、今シーズンから柏に"帰還"した輪湖直樹。「(監督に)『わからないことはあるか』と言われたが、ミーティングも何回もやっているので頭は整理されていた」という頼もしい33番が、「久しぶりで最初はちょっと違和感があった」というレイソルのエンブレムを付けて、ピッチへ解き放たれます。
同点ゴールの前後から「相手の運動量が落ちたこともあって、だいぶ自分たちでボールを動かせる所もあった」と流れを見ていた鈴木監督は、78分に2人目の交替に着手。ボランチを佐藤健太郎から田代真一にスイッチ。中盤の強度を整えつつ、流れを一層引き寄せたい采配を。ネルシーニョ監督も同じタイミングで2枚替え。レアンドロと栗澤を下げて、同じ位置に田中順也と茨田陽生を投入。落ち掛けていた運動量の向上と、レフティが忍ばせる一発で勝負に出ます。
84分に発生したアクシデント。中盤でボールを奪い合ったレアンドロ・ドミンゲスと田代がもつれると、前者が報復気味にエルボー。福島主審は迷わず赤いカードを提示します。ややフラストレーションが溜まるような展開ではあったものの、これは言い訳できない残念な行為。柏は残り5分とアディショナルタイムを10人で戦うことになりました。
千葉は山中と谷澤を、柏は高山と太田を入れ替え、突入した最終盤。この苦境に柏は「しっかりとチーム全員で話し合って、どうやって試合を終わらせるかの声が出たという所は非常に良かった」と工藤が振り返ったように、工藤と田中も両サイドに開いた5-4-0気味で凌ぐ姿勢を明確に。89分には中村に枠を越えるミドルを見舞われるも、「クロスボールを上げられるのはしょうがないという形で、中央は非常に集中していた」と栗澤も言及する集中力を堅持。90+4分のラストプレー。中村の左CKを田代がヘディングで枠へ飛ばすも、菅野はしっかりとキャッチ。ファイナルスコアは1-1。タイトルの行方はPK戦へと委ねられることになりました。
千葉サポーターサイドのゴールで行われた11mの"1対1"。千葉1人目の山口智はさすがの冷静さで右スミへ成功。柏1人目の田中もGKの逆を突いて左スミへグサリ。お互いにファーストキッカーが沈めて迎えた2人目。おそらくこの日の千葉で最もプレースキックを蹴っていた中村が左を狙うと、決して簡単なコースではありませんでしたが、菅野が「タイミングだけ合わせよう」という完璧なセーブでボールを弾き出します。男を見せた金髪の守護神。柏は増嶋がここもGKの逆に打ち込み、1-2。アウェイチームが一歩前へ出ます。
3人目は千葉が天野、柏が大谷、4人目は千葉がケンペス、柏が近藤といずれも成功して迎えたラストキッカー。千葉5人目の森本はユースの先輩を前に、堂々たるキックで右スミへ打ち込みます。決めれば勝利の柏5人目は工藤。9番がベンチコートを脱ぎ捨てると、期せずして柏サポーターから巻き起こった大歓声。右スミを狙ったシュートはゴールに吸い込まれ、熱戦に終止符。「全体的に見ても、この時期にしては内容的にまとまったゲームができたと思っている」とネルシーニョ監督も一定の評価を口にした柏が、4度目にして初めてこの大会でPK戦を制し、2年ぶりに"ちば"の覇権を奪還する結果となりました。
千葉で明らかに目立っていたのは、やはり左SBで起用された中村。指揮官も「非常に攻撃のいいアクセントになったかな」と語った通り、プレースキッカーにも任命される左足の精度は大きな魅力。神戸に移籍した高橋峻希の穴を補って余りある活躍を、今日は見せていました。それ以外にもPKキッカーを務め上げた天野や山中、高木のスタメン組に加え、田代も短時間である程度は持ち味を発揮するなど、収穫も少なくない90分間に。6年ぶりのJ1へ。千葉の新たなチャレンジがいよいよ幕を開けます。
「サイドから仕掛ける所や、ゴール前のフィニッシュの所など、この時期にしてはボリュームと対応は良かったと思う」とネルシーニョ監督も話した柏は、昨年のこの大会と比較すればかなり順調なプレシーズンかなと。期待のレアンドロに関してはなかなかシュートが打てず、栗澤も「今日で言えば工藤とドミンゲスがもうちょっと受けて、前向きでターンできるような状況を増やしていければ、モンちゃんも前に抜けられる。もうちょっと2シャドーがフリーで持てるような状況を、ボールを回しながら考えていきたい」と的確に指摘したものの、レアンドロ本人も「レアンドロ・ドミンゲスとのコンビネーションもまだ2試合目なので、時間が経てばフィットしていくはず」と、これからの連携向上に意欲的な発言を。シーズンが進むにつれて、前線3枚のアタックがリーグを席巻していく可能性を十分に感じさせるゲームだったと思います。
優勝候補にも挙げられる今シーズンについて問われ、「1試合1試合に懸かる責任や重要さはACLがない方が逆に気持ちの面で難しいんじゃないかなと。本当に高い所で意識を持たないと、1試合を落とすことによってガラッとチーム状況が変わってしまう。プレシーズンマッチから、開幕戦から、1試合に懸ける想いを大切にしていきたいなと思います」と話したのは栗澤。太陽王が"ちば"の覇権と共に、新たな戦いへとその一歩を力強く踏み出しました。      土屋

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