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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
隣接する渋谷区と杉並区の代理戦争が勃発。渋谷を牛耳るFCトリプレッタユースと杉並を代表する杉並アヤックスが対峙するのは三鷹。引き続き横河電機グラウンドです。
年末の大井を熱く彩ったT1・T2入替戦に勝利し、今シーズンからのトップディビジョン昇格を手にしたFCトリプレッタユース。昨年のレギュラーに3年生が多かったこともあり、養和や横河同様に新チームという趣も強い中で、先週行われた今大会初戦は養和に0-5と敗れて黒星スタートに。「みんなこの時期は半信半疑でやれるかやれないか不安な状況でやってくるから、そういう中でどうやって払拭してくれるか」と米原隆幸監督。今シーズンの今後を考えても、このゲームは非常に重要な一戦であることは間違いありません。
1次リーグは3試合を無失点で首位通過。決勝リーグ進出を懸けたプレーオフでは、2点のビハインドを負った状態から同点に追い付き、最後はPK戦を制して堂々とこのステージへ。先週の初戦は横河相手に健闘しながら0-2で敗れたものの、「なかなかJの下部組織だったり、その下に来るチームと公式戦で当たるのは難しいので、ここ数試合は彼ら選手もやりたがっていた」と斎藤元ヘッドコーチ。整列から気合の漲っていた選手たちを見れば、その高いモチベーションは一目瞭然です。雨こそ上がったものの、極寒のグラウンドにはそれでも少なくないギャラリーが。すっかり日の暮れた17時30分にゲームはキックオフを迎えました。
先に前への圧力で上回ったのは「試合を重ねるごとにみんなが自信を持ってやってきている部分はある」と斎藤ヘッドコーチも認めた杉並アヤックス。7分には町井和彦(2年・杉並アヤックスU-15)の右FKがゴール前を襲うと、10分にもFKの流れから辻匠(2年・杉並アヤックスU-15)を経由して、町井が枠の右へ外れるミドルにトライ。直後に町井が蹴った右CKを経て、11分にも高い位置で猛プレッシャーを掛けた右SBの島新太郎(2年・杉並アヤックスU-15)がサイドを駆け上がって中へ。ここはDFにクリアされましたが、「普段の試合では攻撃の起点になってくれることは多い」(斎藤ヘッドコーチ)という右SBがいい形を創出してみせます。
一方のトリプレッタは「アヤックスがオールコートでプレッシングに来るのはわかっていたけど、思いのほかアイツらがイメージしているより来たんだと思う」と米原監督が言及したように、相手の出足の良さに少し出鼻を挫かれた格好に。16分にはキャプテンで10番を背負う宮澤俊太朗(2年・FCトリプレッタJY)が右から入れたFKも、DFがしっかりクリア。続く「奪っても出し所がないし、広げられない」(米原監督)時間。
17分は杉並アヤックス。左から奥野祥太(2年・杉並アヤックスU-15)が蹴り込んだCKはオフェンスファウル。24分はトリプレッタ。宮澤が蹴ったFKはDFがきっちりクリア。27分もトリプレッタ。ここも右から宮澤が入れたFKは中と合わず。セットプレーからチャンスを窺い合うと、30分には町井が30m近い距離のミドルを枠内へ収め、31分にはトリプレッタの左ウイングに入った新選手会長の名幸龍平(2年・杉並アヤックスU-15)が左サイドを運んで杉並アヤックスのGK山本周(2年・杉並アヤックスU-15)へキャッチを強いるシュートを枠内へ。基本的には玉川由(2年・FC PROUD)と氏橋寛(2年・三菱養和調布JY)のCBコンビを中心にトリプレッタがボールを長く持つ中でも、手数はお互い均等に出し合います。
ただ、「奪ったらパスで広げるというのを意識させた」(米原監督)25分過ぎくらいからは、ようやくトリプレッタも本来持ち味であるパスワークが徐々に出始め、なかなかボールを引き出せなかった佐々木龍(1年・FCトリプレッタJY)と坂下由真(1年・FCトリプレッタJY)の1年生ドイスボランチも少しずつ流れに関与。この変化が宮澤とCFを任された廣瀬友紀(1年・FCトリプレッタJY)のポジションを少し押し上げ、相手陣内でボールを動かす回数も増えていきます。35分に名幸が放ったミドルは山本がキャッチ。45+1分に宮澤が右から2本続けて蹴ったCKは、いずれもシュートには繋がらず。「先週もアヤックスを見に来ていたので、こういう試合にはなるかなと思っていた」と米原監督。杉並アヤックスの健闘が光った前半の45分間はスコアレスで終了しました。
後半は開始早々に勝利への意欲を滲ませた10番。48分、名幸からのパスを受けた宮澤は、やや強引にミドル。DFに当たったボールは山本にキャッチされますが、昨年から不動の司令塔としてチームを牽引し、今シーズンは3年生から腕章を託された男が鮮明に打ち出したゴールへ向かう姿勢。
52分は杉並アヤックス。右SHの河田滉太(1年・杉並アヤックスU-15)が絡んだ流れから、バイタルでルーズボールを拾った佐藤陸(中学3年・杉並アヤックスU-15在籍中)はそのままシュートに持ち込むも、トリプレッタGK清水優乃介(1年・和光高)がキャッチ。53分はトリプレッタ。ここも宮澤が前向きに仕掛けると、エリア内でルーズを拾った名幸は至近距離からシュートを放つも、ボールはクロスバーの上へ。後半は序盤からお互いにフィニッシュを取り合います。
「後半の入りは俊(宮澤)を1.5列目より高い位置に上げて、ボランチも1人は出て行っていいよという形にしたから、そこはちょっとうまく機能したかなと思う」と米原監督も話した通り、攻撃のキーマンである宮澤が高い位置を取ることで、後半は全体のボールの回りもスムーズに。右に永谷孔明(1年・FCトリプレッタJY)、左に高見幸樹(1年・三鷹FA)を配した両サイドバックもオーバーラップを繰り返して押し込むものの、杉並アヤックスも「縦に、後ろに、横にとここ数試合で思っていたよりも凄く動けているので、僕も驚かされています」と斎藤ヘッドコーチも評価した奥野と帯刀紘(2年・杉並アヤックスU-15)のドイスボランチを中心にミドルゾーンでも懸命に相手へ食らい付き、決定的なチャンスは創らせません。
70分に宮澤が中央やや左、ゴールまで約30mの距離からわずかに枠の右へ外れるFKを打ち込むと、とうとう動いた両ベンチ。75分には杉並アヤックスに1人目の交替。前線で奮闘した辻に替わって、山口拓斗(中学3年・杉並アヤックスU-15在籍中)をそのままの位置に投入。77分はトリプレッタが敢行した2枚替え。3トップの右に位置した木村友輔(2年・esporte藤沢)と坂下を下げて、金子甲弥(2年・芝中)とピーダーセン世隠(1年・FCトリプレッタJY)を送り込み、廣瀬とピーダーセンの2トップをその下の宮澤が支える形で1点を、そして勝ち点3を奪うための勝負に出ます。
78分はトリプレッタ。佐々木、宮澤、名幸と細かく繋いだボールを、最後は廣瀬がシュートまで持ち込むもDFがクリア。82分は杉並アヤックス。奥野の左FKからゴールを揺らすも、副審はオフサイドをジャッジ。85分はトリプレッタ。永谷が右からカットインで切れ込み、こぼれを宮澤が右へ持ち出し持ち出し、打ち切ったシュートは杉並アヤックスの闘将・佐藤優太(2年・杉並アヤックスU-15)が体でブロック。
87分は杉並アヤックス。帯刀、佐藤陸と繋いだボールを、思い切って上がってきたCBの村上真樹(2年・杉並アヤックスU-15)はシュートまで。DFに跳ね返ったこぼれを、左SBの山田隆一郎(1年・杉並アヤックスU-15)が狙ったミドルは清水にキャッチされるも、この時間帯でDFが繰り出した連続シュートに滲み出る勝利への執念。89分はトリプレッタ。永谷のフィードをピーダーセンが落とし、宮澤が打ったシュートも佐藤優太が全身でブロック。「最後は自分で取りに行こうとしていた。アレは今までにない形」と米原監督が評価した宮澤と、「ガツガツ行く割にはまったくケガをしない強靭な男。彼と一緒にウチのチームはやっているので、その部分でも体とかは強くなっているかなと思う」と斎藤ヘッドコーチも賞賛する佐藤優太。キャプテンマークを巻く両者のワン・オン・ワンは迫力十分。果たしてこの熱戦に決着は付けられるのか。
その時は90分。「CK崩れの3次攻撃」(米原監督)から左サイドでボールを持ったのはCBの氏橋。昨日も練習していたというクロスはピンポイントで中央に刺さると、このボールに飛び付いたのは「アイツは前回スタメンだったけど、トレーニングの時に周りを見て準備とかしなくて、それが気に入らなかったから奮起させるのに今回は干した」(米原監督)という金子。頭に当てたボールはゴールネットを確実に揺らします。「悔しい想いをぶつけてくれたので良い形で終わったかな」と指揮官も笑った、金子の強烈なアピール弾はサヨナラゴール。苦しみながらもトリプレッタが何とか土壇場で今シーズン初勝利をもぎ取る結果となりました。
「みんなで意識して声を掛け合ってやろうというのはこの間の試合もそうですけど今日もできたので、だいぶ成長したかなと思います」という斎藤ヘッドコーチの言葉を待つまでもなく、杉並アヤックスは素晴らしいゲームを披露してくれたと思います。「リトリートして戦う試合は、僕たちが参加しているリーグではなかなかないんですね。前から行けて、取れて、点も取れちゃうんです。ただ、それをやったことがないのに、ここまで集中してみんながやれるというのはなかなかないことだと思います」という斎藤ヘッドコーチのお話を聞いて「なるほどな」と。普段とは違う戦い方でもここまでやってみせたということが特筆すべきことだったんですね。緑と青という鮮やかなユニフォームとともに、鮮烈な印象を杉並アヤックスは見る者に残してくれたのではないでしょうか。
「公式戦2戦目でこの勝ち方はかなりデカいでしょ。アレで勝てなかったら『今年は弱いな』とレッテルを貼られて、自分たちも自信を喪失して、相当キツいシーズンの始まりになっちゃうかもしれない」と米原監督も安堵の表情を見せたように、トリプレッタか飾った劇的な勝利は色々な意味でシーズンの始まりを告げる1勝になったと言えそうです。しかも、決勝ゴールを決めたのがスタメン落ちに奮起したであろう金子だったということも、この勝利をより意味のあるものにしたのかなあと。「4月くらいまでは手探り手探りで、色々なことを変えながらやっていかなきゃいけないようなシーズンになっちゃうのかなという感じ」と言いながらも、米原監督は相変わらず楽しそうなご様子。今年もトリプレッタはトリプレッタのようです。 土屋
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